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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科34巻9号

1980年09月発行

雑誌目次

図譜・455

Erythropoietic Protoporphyria

著者: 若松勝雄 ,   藤井光子

ページ範囲:P.788 - P.789

患者9歳,女児
初診昭和51年8月10日

原著

PseudopeladeとFibrosing Alopeciaならびに類症

著者: 橋本龍介 ,   三島豊

ページ範囲:P.791 - P.798

 特徴的なfootprints in the snow状小脱毛斑を示した2症例を病理組織学的に検索し,1例にはpseudopelade of Brocqに一致する所見をえたが,他の1例は最近Pinkusの提唱するfibrosing alopeciaを考えさせる所見であった.なお,pseudopeladeとその類縁疾患といわれるlichen planopilarisおよびLassueur-Graham Little syndromeとの異同に関する文献的考察を加えた結果,現時点ではpseudopeladeをこれら両者から独立したentityと考える立場をとり,その鑑別点を提示した.ただし,本邦例からも従来pseudopelade ofBrocqとされてきたものの中には,独自の発生機序よりなるfibrosing alopeciaの含まれている可能性が推察された.

白斑初期発症時における2症例の病変部皮膚の光顕的電顕的検索

著者: 野崎憲久 ,   水野栄二

ページ範囲:P.799 - P.808

 発症後数日ないし3ヵ月の白斑初期病変と思われる2症例(17歳,30歳,女)の,1例は顔面,頸部の限局例,他の1例は汎発例で最近腰部に発症したものにつき,光顕的,電顕的に検索した.光顕的には2例とも表皮し層におけるメラニン顆粒の排出促進,一部に水疱形成あり真皮内には種々の程度の血管周囲性浸潤を認め,電顕的にはメラノサイトの胞体内には僅少,樹枝状突起の末端部にメラノソームを豊富にみとめ,メラノソーム複合体の形をとるものが存在すること,メラノソームや細胞残渣物を貪食したマクロファージの表皮基底膜通過像を2例それぞれに観察したことより,メラノソームのメラノサイトからケラチノサイトへの移行障害を疑わせた.また炎症性と見られる機序によりケラチノサイトの変性,壊死を来し,表皮内でマクロファージにより貪食されて真皮内に滴落するpathwayも考えられた.

乳房部に生じた硬化性萎縮性苔癬の1例

著者: 橋本隆 ,   植原八重子 ,   倉持正雄 ,   原田敬之

ページ範囲:P.809 - P.815

 31歳,女子の左乳房部外側に3年前より生じた硬化性萎縮性苔癬の1例を報告した.皮疹は臨床的にWhite spot diseaseもしくはMorpheaを疑わせたが,組織学的には角栓形成,表皮萎縮,表皮直下の透明帯の存在とその部位の弾力線維の消失等,典型的な硬化性萎縮性苔癬の像を示した.さらに本邦報告例を集計し統計的観察を試みた.

Addison病の1例

著者: 高橋慶子 ,   北村啓次郎

ページ範囲:P.817 - P.822

 21歳,女子,全身諸所の色素沈着を主訴とし,第II度無月経を合併.血中cortisol,尿中17—OHCS,血清Na, K値,好酸球数等すべて正常であるにもかかわらず,水負荷試験,およびACTH testに不応性,さらに血中ACTH,β—MSH測定の結果異常高値が発見され,Addison病と診断しえた1例を報告した.治療としてはDexamethasoneの経口投与にて色素沈着は著明に改善し,電解質異常その他の副作用も認めず,現在もDexametha—soneを継続しつつ経過観察中である。我国で血中ACTH,β—MSHの測定がおこなわれ始めたのは昭和48年頃よりであるが,それ以前にAddison病と似た症状を呈しながら,確診がつかず,Addisonismusとして片づけられていた症例においても,もしこれらの血中ホルモアの直接定量がおこなわれたならばAddison病と診断しえたものもあったかと推察される.また色素沈着の目立つ症例の場合には治療として尿中排泄が遅く,ACTH抑制作用の強いDexamethasoneの投与も一考して良いであろう.

Scleromyxedemaの1例

著者: 村山史男 ,   穐山富雄 ,   阿南貞雄 ,   笹岡和夫

ページ範囲:P.823 - P.829

 45歳,主婦.関節痛にて発症し.手掌.手指,手背にびまん性の浮腫性紅斑と丘疹を,躯幹,四肢に紅斑と丘疹をみとめた.組織化学的にヒアルロン酸の沈着が証明され,臨床的所見をあわせてscleromyxedemaと診断した.リンデロン(ベタメサゾン)内服とヒアルロニダーゼおよびリンデロンの局注により関節症状と皮疹はほぼ軽快したが指関節の拘縮変形が残った.われわれが調べたかぎりでは自験例のような拘縮変形をきたした症例は本邦では報告がなく,欧米でもわずかに数例の報告をみるのみで非常に特異な症例と思われる.われわれはこの症例を報告するとともにLichen myxedematosus (Scleromyxe—dema)の本邦報告例について若干の文献的考察をおこなった.

痛風結節とTransepidermal Elimination

著者: 洲脇正雄 ,   小玉肇

ページ範囲:P.831 - P.835

 72歳男子の痛風の1例を報告するとともに,多発した痛風結節の一部が自潰し,その内容物を経上皮性に排出しているのを観察した.この現象はMehreganが提唱した皮膚の異物処理機構の1つであるtransepidermal eliminationの現象に類似すると考えた.

躯幹に特異な角化性局面を伴ったChilblain Lupus

著者: 猿田隆夫 ,   大隈貞夫

ページ範囲:P.837 - P.841

 四肢末端に凍瘡様の皮疹があり,躯幹に特異な角化性局面を有する41歳女子例につき臨床的に検討した.四肢末端の皮疹は臨床的,組織学的にChilblain Lupusに一致した.躯幹の皮疹は扁平苔癬様の組織変化を示し,これは四肢末端の組織所見と極めて類似していた.螢光抗体直接法において表皮真皮境界部にIgGの沈着を認めた.検査成績ではγ—グロブリンの上昇,抗核抗体陽性,補体の減少がみられた.以上から本例はJamisonらのいう円板状エリテマトーデス,扁平苔癬のオーバーラップ症候群が考えられたが,著者らはChilblain Lupusが基礎に存在していることを重視して,躯幹の特異な角化性の局面はChilblain Lupusと同じエリテマトーデスの基盤の上に生じた特異な臨床型であろうと考えた.

各種皮膚疾患患者血清中のEBウイルス抗Virus Capsid Antigenに対する抗体価の検索

著者: 原田玲子 ,   中山秀夫 ,   谷口貞子

ページ範囲:P.843 - P.846

 中毒疹,ジベルバラ色粃糠疹,多形滲出性紅斑,帯状疱疹,単純疱疹,風疹,紅斑性狼瘡,天疱瘡等,各種皮膚疾患におけるEBウイルスCapsid Antigenに対する血中抗体価を検索した.帯状疱疹,単純疱疹,ベーチェット病,掌蹠儂疱症においてコントロールに比し有意の抗体価高値が認められた,しかし従来の報告とは異なり,ダリエー遠心性環状紅斑,pityriasis lichenoides et varioliformis acuta,天疱瘡,紅斑性狼瘡においてはEBウィルス抗体価の高値は認められなかった.
さらに症例を重ね,かつ,他のEBウイルス関与抗原に対する抗体を検索することにより,EBウイルス抗体価高値の意味付けが可能と思われる.

増殖性天疱瘡(Hallopeau型)の1例

著者: 荘由紀子 ,   木村俊次 ,   加茂紘一郎 ,   籏野倫

ページ範囲:P.847 - P.853

 症例:80歳,女子.主訴:外陰部の腫瘤性皮疹.組織学的に,好中球・好酸球を多数含む表皮内膿疱を形成し,増殖性天疱瘡に一致する像を呈するも,前後2回にわたる螢光抗体法による抗表皮細胞間抗体の検索では,直接法・間接法いずれも陰性を示した.
治療:広域右効抗生物質に多少反応するも,完治せず.副腎皮質ホルモン剤内服により,色素沈着を残して治癒した.
自験例の診断に関して,螢光抗体法陰性の成績から増殖性天疱瘡とするにはやや難があり,増殖性膿皮症の診断も考えられた,治療に対する反応性等から表記診断としたが,本症の病因については未だ明確にされておらず,今後さらに自己抗体の検索等による検討が必要であろう.

悪性腫瘍を合併した水疱性類天疱瘡の5例

著者: 千見寺ひろみ ,   出辺義次 ,   岡本昭二

ページ範囲:P.855 - P.860

 過去7年間にわれわれは26例の水疱性類天疱瘡を経験し,そのうち5例に内臓悪性腫瘍の合併を認めた.その内訳は胃癌3例,子宮癌1例,膵臓癌1例であった.5例のうち1例に非定型的臨床像と,皮疹の消長と腫瘍のそれとの関連性がみられた.現在,水疱性類天疱瘡と内臓悪性腫瘍との合併は加令にともなう偶発的な事象であるとの意見が支配的である,本邦例を蒐集するに母集団が少ないため厳密な推計学的処理には耐えられないので一層多くの症例の集積が望まれる.加えて,少数とはいえ興味ある所見を呈する患者も散見されるので担癌状態で発生した類天疱瘡を症候学的,病理学的,免疫学的など多角的に検討する必要がある.

神経因性膀胱を併発した帯状疱疹

著者: 林原利朗 ,   坂崎善門 ,   村上励 ,   村上文男

ページ範囲:P.861 - P.864

 神経因性膀胱を併発した帯状疱疹の3例を報告した.3例共に60歳以上の男性で,皮疹部位は2例が仙髄領域,1例が下部胸髄〜腰髄領域,いずれも疼痛と同じ頃より出現し,皮疹・疼痛の軽快と前後して消失する比較的軽度の遷延性排尿障害であり,シストメトリーではhypotonic bladderのパターンが認められた.仙髄領域の2例では直腸障害もみられ,尿沈渣に膀胱炎類似の変化をみ,うち1例では膀胱三角部粘膜に帯状疱疹の粘膜疹を認めた.

局面型サルコイドーシスの2例

著者: 山本和子 ,   村田英俊 ,   大熊憲崇 ,   岸山和敬 ,   水元俊裕 ,   大河原章

ページ範囲:P.865 - P.869

 女子の顔面に生じた局面型サルコイドーシスの2例を報告した.組織学的に1例には典型的なサルコイドーシスの像がみられたが,他の1例にはnecrobioticな変化が散見され,necrobiosis lipoidicaのgranulomatous typeに類似の組織所見を示した.顔面に生ずる局面型サルコイドーシスにつき考察を加えた.

Eosinophilic Fasciitisの1例

著者: 伊東陽子 ,   水谷仁 ,   伊東早苗

ページ範囲:P.871 - P.876

 患者は18歳女子高校生.運動後突然両ふくらはぎに有痛性腫脹を来し,徐々に,四肢に拡大する硬化性病変となった.組織学的に,筋膜の肥厚がみられるとともに,末梢血の著明な好酸球増多,赤沈値の亢進,γ—グロブリンの上昇,RA(++),抗核抗体陽性等の異常所見がみられた,レイノー現象及び内臓病変は認められない.以上の所見から,自験例は,eosinophilic fasciitisの典型例と考えた.

Purpura Pigmentosa Chronicaにおける血管病変と螢光抗体法所見

著者: 岩月啓氏 ,   青島忠恕 ,   田上八朗 ,   大井正俊 ,   山田瑞穂

ページ範囲:P.877 - P.881

 Purpura pigmentosa chronicaの6例につき,生検組織の螢光抗体直接法を施行し,すべての例で乳頭部血管壁にC3,の沈着が認められ,3例には免疫グロブリンの沈着が見られた.H&E標本では,真皮上層の血管壁のフィブリノイド変性,ピアリン化物質による血管閉塞像が高率に観察された,免疫グロブリンや補体などの血清成分の血管壁への沈着の機序として,血管壁のfibrin沈着やfibrinolysis障害が考えられる.また,本症に見られる病現組織像が血管壁に沈着した免疫グロブリンや補体などにより,免疫学的機序を介して形成されている可能性もあると思われる.

1家系に優性遺伝形式を示して多発した先天性手掌足蹠角化症(Greither型)

著者: 古川雅祥 ,   辻卓夫

ページ範囲:P.883 - P.887

 20歳,女性.幼少時より手背,足蹠に軽度黄色調の角質性増殖性局面を認め,10歳頃より次第に著明になるとともに指背,手背,趾背,足背にまで皮疹が拡がり,また遺伝型式は家系内に同症9人の発生をみて常染色体優性遺伝を示す.臨床像,遺伝型式よりkeratoma palmare et plantare hereditariumのGreither型と考えられた.また文献的考察などにより,Greither型が独立したentityを持つかどうかについて述べた.

少量のステロイド外用で著明な副腎皮質抑制をきたした1例

著者: 宮地良樹 ,   内藤公一

ページ範囲:P.889 - P.892

 少量のステロイド外用剤の単純塗布で,著明な副腎皮質機能抑制をきたした甲状腺機能低下症を伴うアトピー性皮膚炎の1例を報告した.今回の場合,その原因として,アトピー性皮膚炎に対してステロイド外用剤をしばしば塗布していたこと,内分泌学的疾患を伴っていたことなどが関与していると考えられた.外用中止後,副腎皮質機能はすみやかに正常に復したが,強力なステロイド外用剤を使用する場合には,さまざまな個体の条件を考慮に入れ,副腎皮質機能に留意することが必要と思われた.

編集室だより

雑誌名の省略について フリーアクセス

ページ範囲:P.853 - P.853

 最近,引用文献に掲載される雑誌名の略称は,1970年にAmerican National Standards Committeeから出された「Interantional List of Periodical Title WordAbbreviations」による略し方が,国際標準として,一般化してきました.皮膚科領域に関係のある言葉の例を下記にあげました.御投稿の際には,これらを参考にして下さい.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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