臨床皮膚科34巻9号

1980年09月発行

原著

悪性腫瘍を合併した水疱性類天疱瘡の5例

著者： 千見寺ひろみ¹ 出辺義次¹ 岡本昭二¹

所属機関： ¹千葉大学医学部皮膚科学教室

ページ範囲：P.855 - P.860

　過去7年間にわれわれは26例の水疱性類天疱瘡を経験し，そのうち5例に内臓悪性腫瘍の合併を認めた．その内訳は胃癌3例，子宮癌1例，膵臓癌1例であった．5例のうち1例に非定型的臨床像と，皮疹の消長と腫瘍のそれとの関連性がみられた．現在，水疱性類天疱瘡と内臓悪性腫瘍との合併は加令にともなう偶発的な事象であるとの意見が支配的である，本邦例を蒐集するに母集団が少ないため厳密な推計学的処理には耐えられないので一層多くの症例の集積が望まれる．加えて，少数とはいえ興味ある所見を呈する患者も散見されるので担癌状態で発生した類天疱瘡を症候学的，病理学的，免疫学的など多角的に検討する必要がある．