icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科35巻1号

1981年01月発行

雑誌目次

図譜・459

CRST症候群

著者: 山崎正博 ,   中西重清

ページ範囲:P.6 - P.7

患者59歳,女子.飲食業
 家族歴姉たちに心臓弁膜症,脳卒中,胃潰瘍がある.

原著

皮膚筋炎に合併した落葉状天疱瘡の1例

著者: 佐々木哲雄 ,   池沢善郎 ,   石井則久 ,   黒沢伝枝

ページ範囲:P.9 - P.14

 64歳女性,皮膚筋炎の治療中に落葉状天疱瘡を併発した症例を報告した.皮膚筋炎は皮膚症状が先行し,約1年後に筋症状が顕著となり,さらにその2ヵ月後に落葉状天疱瘡を併発した.なお,発症から2年経た現在も内臓悪性腫瘍の合併は明らかではない.
 皮膚筋炎と落葉状天疱瘡がそれぞれ種々の免疫異常症に合併してくることはすでによく知られている.しかしながら,これら2疾患の合併は文献上我々の調べた限りではみあたらない.皮膚筋炎と落葉状天疱瘡の合併は,両者の発症機構ならびに共通する免疫異常を検討する上で貴重な症例と考え,症例報告を行うとともに,これら2疾患の合併につき若干の文献的考察を加えた.

抗核抗体を認めた尋常性天疱瘡の2例

著者: 橋本隆 ,   杉浦丹 ,   栗原誠一 ,   西川武二 ,   籏野倫 ,   原田敬之

ページ範囲:P.15 - P.20

 症例1は75歳,男.約4ヵ月前より躯幹を中心に水疱およびびらん出現.症例2は77歳,男.約1ヵ月前より躯幹に水疱,びらん出現.2例とも組織学的に表皮下層に棘融解性水症疱を認め,螢光抗体直接法で表皮細胞間にIgGとC3の沈着を認め尋常性天疱瘡と診断したが,血清中には抗核抗体のみ陽性で表皮細胞間物質抗体は見出せなかった.2例ともSLEとの合併を思わせる臨床症状はなく,抗核抗体の性状も1例目は抗ENA抗体に属すると考えられ,2例目は抗DNA抗体を含むものと考えられ共通性は認められなかった.
 患者血清をモルモット肝粉末で吸収すると抗核抗体の減弱とともに抗表皮細胞間物質抗体が顕性化したこと,患者血清で正常ヒト皮膚を培養すると表皮細胞間にIgGの沈着が認められたことより,抗表皮細胞間物質抗体偽陰性と考えた.そしてその原因として抗核抗体の存在が表皮細胞間物質抗体の検出を何らかの形で防害している可能性があると考えた.

Subcorneal Pustular Dermatosisの女児例

著者: 山元真理子

ページ範囲:P.21 - P.26

 9歳の時に発症した11歳,女児のsubcorneal pustular dermatosisの症例を報告した.皮疹は掌蹠を除くほぼ全身に生じ,夏季に増悪し,冬季に軽快する傾向を示し,組織学的に膿疱と汗管との連続性が認められる部分があった.末梢血の好酸球増多がみられ,ほぼ皮疹の消長に関連して変動した.皮疹はDDSによって改善する傾向がみられた.螢光抗体法は直接法,間接法とも陰性.紅斑部,水疱部を生検し,その組織学的観察から,本症の基本的病変は膿疱にはじまり,時に二次的に好中球が崩壊し,滲出液がたまり水疱様に変化することもあると考える.

Hydroa Vacciniformeの5例

著者: 長谷井和義 ,   市橋正光

ページ範囲:P.27 - P.31

 Hydroa vacciniformeの5例(18歳女,10歳男,8歳男,6歳男,11歳男)を報告した.全例7歳迄に日光裸露部に春から夏にかけて水疱が出現,日光曝露により増悪した.UV-B (FL 20 SE-Lamp)による最小紅斑量は5例とも正常範囲内で,赤血球,便のポルフィリン体も陰性であった.症例2では皮疹増悪時,視力障害が認められた.症例3および5にSE-Lamp, BLBを比較的大量に照射するも皮疹の再現は不可であった.5%パラアミノ安息香酸液の外用が皮疹新生に予防的効果を有したことより,本症の発生にはUV-Bが関与する可能性が示唆された.

Meticraneによる光線過敏症の1例

著者: 堀口裕治 ,   谷口信吉 ,   堀尾武

ページ範囲:P.35 - P.39

要約 降圧剤meticraneによる光線過敏症の1例を報告した.患者は54歳女性であり,同剤を服用しはじめて約1ヵ月後に上肢,背部,前胸部に瘙痒の強い紅斑が生じた.本例では薄手のブラウス地を通過した微量の日光曝露部位にも皮疹を見た点,meticraneによる少量の内服照射試験にて陽性所見を示した点,さらに類似の構造をもつtrichlormethiazideとの間に光交叉反応を認めたなどの点より,photoallergicな光線過敏症と考えられた.さらにその発症機序について若干の考察をつけ加えた.

汎発性鞏皮症に合併したChondrodermatitis Nodularis Chronica Helicis

著者: 堀尾武

ページ範囲:P.41 - P.44

 70歳,男性の汎発性鞏皮症患者にchondrodermatitis nodularis chronica helicisを併発した.両疾患の関連性につき若干の私見を加えるとともに,後者に関して文献的考察を行った.本症に伴う耳介軟骨の組織学的変化は,現在では,2次的なものあるいは生理的な変化と考えられており,生検に際して軟骨の採取は必ずしも必要ではないと思われる.

水銀アレルギーの3例

著者: 井村眞 ,   太田みどり ,   戸田浄

ページ範囲:P.45 - P.51

 水銀体温計破損後全身に皮疹を生じた3例を臨床症状,検査成績から水銀蒸気吸入によるsystemic eczematous"contact-type"dermatitisと診断した.全例ほぼ同様な特徴的臨床像を示し,体温計破損の事実を知れば診断は容易である.体温計は各家庭に普及しており,破損も日常茶飯事であることから,今後も同症のみられる可能性は高い.

キルシュナー鋼線によると思われるニッケル皮膚炎の1例

著者: 山田瑞穂 ,   田上八朗 ,   藤沢伸次 ,   野坂健次郎

ページ範囲:P.53 - P.56

要約 35歳男子工員.電動丸鋸で左小指に骨まで達する挫創を受け,指骨および骨折した中手骨にキルシュナー鋼線の固定を受けた1ヵ月後より,左小指の付け根付近に瘙痒性水疱を生じ増大し,左手背全体,さらに手掌にも腫脹,多数の水疱を生じた.キルシュナー鋼線の抜去後,徐々に皮疹は軽快し,治癒した.諸金属塩の貼布試験を行い,硫酸ニッケルに陽性反応が見られ,同鋼線によるニッケル皮膚炎と判断した.

ステロイド外用剤常用者にみられた毛包虫の異常寄生

著者: 山口茂光 ,   設楽篤幸 ,   永井透 ,   松尾茂 ,   佐藤良夫

ページ範囲:P.57 - P.61

要約 毛包虫を中心とする肉芽腫性病変が真皮内に認められた1例と毛包虫を中心とする強い細胞浸潤が毛包内に認められた1例を報告した.前者は,長期間にわたりステロイド軟膏による治療を受けていたところ粃糠様落屑,小丘疹,小膿疱などが著明になってきた85歳,男子の酒皶性痤瘡患者である.後者は,約10年間化粧の下地としてステロイド軟膏を使用していたところ紅斑,粃糠様落屑,小丘疹などが著明になってきた38歳,女子である.いずれも顔面の鱗屑中あるいは膿疱内に多数の毛包虫を認めた.また毛包虫に対する治療により臨床症状の改善をみた.あわせて,毛包虫が病原性を発揮するための要因とステロイド外用剤常用との関連につき考察した.

乳頭腫について—教室例の検討を中心に

著者: 木村俊次

ページ範囲:P.65 - P.69

 最近20年間に慶大皮膚科で乳頭腫と臨床診断され組織学的検索を併せ行いえた59例について臨床・病理学的に検討した.その結果,尋常性疣贅15例,脂漏性角化症12例,疣状母斑4例,尖圭コンジローム3例,線維腫2例,母斑細胞母斑2例など組織診断の明らかなものは44例で,残る15例は乳頭腫およびアカントームとする他はなかった.ただし,年齢,性,発生部位,初診迄の経過,色調などの臨床的事項は基礎疾患の診断にある程度役立つことがわかった.乳頭腫の分類については従来のものはいずれも不十分であるが,新たに提唱する必要はないこと,また乳頭腫という名称は臨床的・組織学的症状名として暫定的には便利な概念であり,これからも残して構わないとの結論を得た.

丹毒様癌の1例

著者: 山崎雄一郎 ,   田村晋也 ,   北村啓次郎

ページ範囲:P.71 - P.75

 臨床的に浸潤性紅斑の所見を呈した乳癌の皮膚転移,64歳女子例を報告した.組織学的には,真皮のリンパ管とおもわれる管腔内に腫瘍細胞が充満し,後に潰瘍化した部では,表皮向性癌の,transepidermal climinationとも考えられる所見がみられた.また真皮内腫瘍細胞周囲の間質には,アルシアン青染色・コロイド鉄染色陽性の酸性ムコ多糖類の沈着が認められ,臨床的に紅斑を呈した原因として考えられる若干の可能性について考察した.電顕的には,腫瘍細胞の細胞間に密接な接合部構造が認められた.細胞内には分泌顆粒はみられず,粗面小胞体及びゴルジ装置が豊富に存在し,乳腺上皮細胞由来の腫瘍細胞であることを示唆する所見と考えられた.

黄色爪症候群の1例

著者: 大熊守也

ページ範囲:P.77 - P.79

 13歳男児.気管支ぜんそく,左下肢リンパ浮腫,全指趾爪の黄色着色をtriadとする症例で,131I・RISA組織クリアランスは左下腿で遅延を示した.爪の生長速度は両側第1趾で0.1mm/週であり,胸部レ線像は,陰影増強のみであった.病理組織は,浮腫皮膚は浮腫,脈管周囲性リンパ球浸潤,リンパ管拡張を示し,爪は爪甲の肥厚,裂隙,爪甲下面の乳頭状突起の減少,好エオジン性帯状層の厚さの不均一化がみられた.本症例は,爪の変化は全趾指にあり,リンパ浮腫は左下肢のみで爪の黄色着色はリンバ浮腫に続発したものではないという事実を示す興味ある症例である.

MultipleおよびSolitary Piloleiomyomaについて

著者: 谷井司 ,   鈴木伸典 ,   濱田稔夫

ページ範囲:P.81 - P.85

 Multiple Piloleiomyoma及びsolitary piloleiomyomaの各1例を報告した.多発例は45歳,女性.25歳頃より胸部,上腕,前腕,下腿などに直径3〜8mm程度の褐色,弾性硬の小腫瘤が集簇性に発生している.単発例は73歳,女性.約1年4ヵ月前より右下腿前面に直径6mmに達するやや褐色,弾性硬の小腫瘤が発生した.2例とも自発痛はないが圧痛を認める.病理組織学的所見では,ともにほぼ同様の所見を示した.すなわち,表皮には異常なく,真皮乳頭下層から真皮深層にかけて腫瘍組織がみられ,それらは種々の方向に交錯する線維束により構成され,線維束はvan Gieson染色で黄染,Azan-Mallory染色で赤染し,一部で起毛筋との連絡が認められた.腫瘍組織内に血管成分の増生はみられなかった.これら起毛筋由来のpiloleiornyomaについて報告するとともに若干の考察を加えた.

Clear Cell Hidradenoma

著者: 斎田俊明 ,   田久保海誉 ,   土屋真一

ページ範囲:P.87 - P.92

 58歳女の右上胸部に生じたclear cell hidradenomaの1例を記載した.拇指頭大の皮内から皮下の結節で,表面は淡紫紅色調.組織学的には,主として類表皮細胞とclearcellおよび両者の移行細胞よりなる腫瘍で,大小多数の管腔ないし嚢腫状構造を伴い,ほぼ典型的.ただし,acinus形成性の円柱状好酸性細胞が少数ながら認められたこと,腫瘍塊全体を取り囲むが如くに大嚢腫壁が存在しており,その壁にgoblet cellやdecapitationの所見が認められたこと,電顕的に一部の腫瘍細胞内に異型mitochondria様の特異な構造物が見出されたことなどの点が注目された.
これらの諸点を検討し,clear cell hidradenomaはおそらくeccrine汗器官の真皮内汗管に由来するepitheliomaであって,その分化方向は主として真皮内汗管であるが,一部に分泌腺部や表皮内汗管への分化を伴うこともある腫瘍であろうと推測した.またclear cellの成因についても私見を述べた.

編集室だより

雑誌名の省略について フリーアクセス

ページ範囲:P.44 - P.44

 最近,引用文献に掲載される雑誌名の略称は,1970年にAmerican National Standards Committeeから出された「International List of Periodical Title WordAbbreviations」による略し方が,国際標準として,一般化してきました.皮膚科領域に関係のある言葉の例を下記にあげました.御投稿の際には,これらを参考にして下さい.

薬剤

シラミ症に対するフェノトリン粉剤の臨床試験

著者: 笹川正二 ,   香川三郎 ,   大滝倫子 ,   石川英一 ,   折原俊夫 ,   岡本昭二 ,   藤田優 ,   中内洋一 ,   福山柳 ,   木下正子

ページ範囲:P.93 - P.98

はじのに
 昭和18年〜22年の終戦前後にかけてコロモジラミ,アタマジラミ,ケジラミが全国的に蔓延したが,外国からのDDT, BHCなどの殺虫剤により,その後数年を待たずにほとんど駆除されてしまった.しかし,有機塩素剤や水銀軟膏は毒性が強く,使用禁止になって以米,適当なシラミ治療剤がなく,最近ケジラミ,アタマジラミの増加にもかかわらず,その治療に困る場合が少なくない.
 このたび,住友化学工業株式会社より提供されてピレスロイド系殺虫剤を使ったフェノトリン粉剤をシラミ症に治験する機会を得たので,その使用経験について報告する.フェノトリンは商品名スミスリンといい,合成ピレスロイドとして開発されたもので,3—フェノキシベンジルアルコールとd—シス/トランス—クリサンテマートの縮合物で,従来のピレスロイドに比し,化学的に安定で,毒性が低いことが特微的である.またパッチテストにおいても皮膚刺激性がほとんどなく,人体用としては最も安全性が高い殺虫剤であると考えられる.治験にあたってはスミスリン研究班をつくり,東京慈恵会医科大学,東京医科歯科大学,群馬大学,千葉大学,三楽病院の5施設の皮膚科を主とし,シラミに対するフェノトリン粉剤の効果,薬剤の安全性,使用方法等について調査表を用いて検討を行った.

印象記

第16回英国皮膚科学会に出席して

著者: 西岡清

ページ範囲:P.100 - P.102

 今回の私達の英国皮膚科学会(Annual meeting of British Asso—ciation of Dermatologists, BADmeeting)訪問は,1昨年盛岡で開かれたPacific Skin Rescarch Clubで来日されたOxfordのDr. T.J.Ryanの御好意によるものでした.Ryan先生は,皮膚科分野における微細循環(microcirculation)研究の第1人者であるだけでなく,1984年に開催される国際微細循環学会の会頭が予定されている方です.彼が来日された際,日本の若い皮膚科医が米国の皮膚科医と密接な関係を保っているのを御覧になり,英国の皮膚科医との間にも同様の密な交流を持つべきであると主張され,今回,私達,英国留学経験者をBAD meetingに招待頂いたという次第です.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら