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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科35巻10号

1981年10月発行

雑誌目次

図譜・468

Angiokeratoma Naeviforme

著者: 安達一彦 ,   神田行雄

ページ範囲:P.888 - P.889

患者 39歳,男性
初診 昭和54年9月10日

原著

晩発性皮膚ポルフィリン症の1例—Monochrometerによる光線過敏性の検討

著者: 久志本東 ,   藤田益子 ,   青木敏之 ,   佐藤健二

ページ範囲:P.891 - P.894

 晩発性皮膚ポルフィリン症の1例について,monochrometerにより,光線過敏性を経時的に測定した結果を,臨床症状および検査成績の推移とくらべ検討した.加療前は,370nmから長波長側でMEDが低下し,400nmで最低値を記録した.そして加療と共に光線過敏性の改善して行くのが認められた.

Erythropoietic Protoporphyriaとβ-carotene

著者: 御藤良裕 ,   小林美咲 ,   佐藤吉昭

ページ範囲:P.895 - P.900

 28歳,男.両親はいとこ同志,妹2人に同症あり.4歳頃より日光過敏症状を認め,2〜3時間の日光曝露により露光部に浮腫性紅斑が出現するが,既往に水疱形成はないという.初診時,前額,両頬部,鼻背,手背に浮腫性紅斑,皮膚肥厚,疣状結節,多数の小瘢痕を認めた.一般諸検査では軽度の肝機能障害が疑われたほか異常なし.血中,糞中のプロトポルフィリンの著増を認めたが,尿中ポルフィリン体は正常.赤血球螢光,光溶血現象はともに陽性.モノクロメーターによる400nm単色光照射で皮疹が誘発された.β-carotene内服が光線過敏に対して有効であり,その臨床効果と血清濃度との関係につき,若干の検討を加えた.

Urticarial Vasculitisの1例

著者: 長田浩行 ,   中江昌子 ,   植木宏明

ページ範囲:P.901 - P.905

要約 48歳の女性,約2年前から全身に蕁麻疹様皮疹が多発,同時に微熱,腹痛,関節痛等の全身症状を伴った.皮疹の瘙痒は軽度で,痛がゆさを訴えた.検査では,血沈の亢進,抗核抗体および抗DNA抗体陰性,最も特異な所見は,持続的な低補体血症であった,組織像では,いわゆるleukocytoclastic vasculitisの像を呈し,螢光抗体直接法で,真皮乳頭層の血管壁にIgG,IgM,C3の沈着が認められた.治療は,抗ヒスタミン剤に無効で,ステロイド内服により,症状および検査所見の改善が認められた.このことより,近年,相次いで報告されているurticarial vaseulitisと思われたので若干の検討を加えた.

IgAの細線維状沈着をみた疱疹状皮膚炎

著者: 竹内誠司 ,   田中正明 ,   増子倫樹 ,   松尾茂

ページ範囲:P.907 - P.911

 29歳,女のジューリング疱疹状皮膚炎患者において,IgAの細線維状沈着を認めた.この症例の皮膚症状,組織学的所見は本症のそれであり,DDSも有効であった.螢光抗体直接法で真皮乳頭にIgAの細線維状沈着がみられた.抗基底膜抗体は陰性,抗核抗体は20倍陽性を示し,HLA抗原はA2,A9であった.

Papulosis Cytovacuolisata Systemica(仮称)—系統的に細胞の空胞化を示す1疾患

著者: 金丸哲山 ,   増沢幹男 ,   神崎保 ,   斎藤隆三

ページ範囲:P.913 - P.919

 臨床的に皮膚及び粘膜の小結節を主体とし,季節的消長傾向があり,骨,関節症状を伴う5歳男児例を経験した.全身骨レントゲン写真にて両側脛骨,上腕骨,鎖骨,手根骨にerosionを認めた.病理組織学的所見では,病変部において,真皮(粘膜固有層)及び表皮(粘膜上皮)内に無数の空胞化した細胞がみられ,特に表皮内では,有棘細胞の空胞化が連続的に起こっているのがみられた.一方,臨床的に正常に見える皮膚,リンパ節,関節滑膜,骨にも同様の空胞化した細胞がみられた.特殊な代謝異常症を疑い,種々検索するも,特殊染色等で沈着物質を同定できなかった.さらに電顕的には,全く異なった胚葉から生じた細胞でありながら,細胞の変化(細胞質内に多数の小空胞を形成)は同一であった.また,これらの空胞化は,smooth endoplasmic reticulumと連続している所見がみられた.このことより,本症例を系統的に細胞の空胞化を示す新しい疾患と考え,papulosis cytovacuolisata systemicaと仮称した.

母乳栄養中に一過性にみられた腸性肢端皮膚炎

著者: 内山安弘 ,   新井佳代 ,   石川英一

ページ範囲:P.921 - P.924

 3ヵ月,女児.母乳栄養中に皮疹の生じた腸性肢端皮膚炎の1異型例を報告.両親,祖父はともにいとこ同志で,両親と長兄の血清亜鉛値は各々65μg/dl (正常値下限)で,患児の血清亜鉛値は皮疹悪化時24μg/dlと低値を示した.また同児分娩より5ヵ月の時点で測定した母親の母乳中亜鉛量も38μg/dlと比較的低値を示した.リンゴジュース(亜鉛量:94μg/dl)の飲用,5%チンクカーボワックスの外用にて血清亜鉛値は1週間後に45μg/dlと増加し,それに伴って皮疹も改善を示した.以上から自験例においては亜鉛低値の母乳摂取が誘発因子となって本症が発生したと考えられる点,従来の報告例と異なる.

腋窩副乳腺—2例の報告と小集計

著者: 吉田正美 ,   川島愛雄 ,   石倉多美子

ページ範囲:P.925 - P.930

 思春期になって大きくなった腋窩副乳腺の2例を報告し,あわせて金沢大学皮膚科で昭和35年4月から同55年3月までの20年間に詳細に観察された副乳の症例31例について集計を行った.それらは臨床的に,1)皮表に乳頭または乳輪の存在が,あるいはそれら両者が認められた場合(23例),および2)腋窩において表面にはそれらしきものはないが,皮下のしこりとして認められた場合(8例)の2群に大別できた.組織学的には,前者では生検した11例中6例にしか乳腺組織は認められなかったが,後者では生検できた7例の全部に乳腺組織が認められた.

後天性皮膚弛緩症の1例

著者: 白井まさ子 ,   小川秀興 ,   三宅伊豫子

ページ範囲:P.931 - P.935

 皮膚弛緩症の報告は本邦で10数例に達するが,後天性で何らかの炎症性皮疹に続発した症例の報告はない.我々は約3年間にわたり,顔面各所に虫刺様皮疹が出没した後,ほぼ顔面に限局した皮膚弛緩を来たした症例を最近経験したので報告する.皮膚弛緩部の組織所見では,真皮弾性線維の略消失を認めた.現在皮膚弛緩を見ない躯幹四肢においても,かって顔面に先発したと類似の紅色丘疹ないし膨疹の出没があり,その皮疹部,無皮疹部よりの生検で,それぞれに弾性線維の変化を認めた.

右前額部に生じた菌腫の1例

著者: 渡辺晋一 ,   滝沢清宏 ,   石橋康正 ,   奥平雅彦

ページ範囲:P.937 - P.943

要約 46歳,女.昭和47年4月頃,何ら誘因なく右前額部に痤瘡様皮疹が出現し,徐々に直径1cm大の骨様硬の皮下腫瘤となり,近医にて切除をうけるも3回再発.昭和53年5月頃,3回目に再発した腫瘤は急速に増大し,直径5cmほどとなり,表面に紅色小結節が多発し,圧痛があったため悪性腫瘍の疑診で同年11月30日当院脳外科に入院.12月1日当科初診した.右前額部に66×57×17mmの皮下の骨様硬腫瘤が存在し,下床と癒着があり,表面は米粒大から約1cm大までの弾性軟の紅色小結節が存在し,痂皮が付着している.排膿,リンパ節腫脹はない.組織学的に膿瘍を認め,膿瘍内に不規則な楕円形,半月形の顆粒を認めたため,菌腫と診断した.培養未施行のため,螢光抗体法で菌の同定を試み,併せて顆粒の電顕的検討も行った.原因菌としてはノカルジアが疑われた.

非定型環状紅斑を呈した転移性皮膚癌—環状紅斑型皮膚転移について

著者: 渡辺知雄 ,   木村俊次

ページ範囲:P.945 - P.952

1)39歳女子に生じた環状紅斑型の転移性皮膚癌の1例を報告した.
2)本例は卵巣,腸間膜リンパ節,旁大動脈リンパ節にも転移を認め,原発巣は乳癌と考えられた.
3)皮膚所見は殆んど浸潤をふれない非定型環状紅斑で,組織学的に真皮上層脈管内に腫瘍細胞の塞栓像を認めた.
4)本邦における紅斑型の転移性皮膚癌を集計し,本例と同様の臨床,病理学的所見を呈する6例を得た.
5)紅斑型の転移性皮膚癌についての従来の分類を検討し,環状紅斑型をその1亜型として加えることを提唱した.

Fluocinonideによる接触皮膚炎

著者: 川津友子 ,   時実和子

ページ範囲:P.953 - P.955

要約 52歳,女性.業務用洗剤使用後,手指に痛みと腫脹感あり.数日後両手指に瘙痒性紅色疹を生じ受診.Fluocinonide軟膏外用により治癒.その後項部に瘙痒あり,Fluo—cinonide軟膏外用にて増悪.Fluocinonide軟膏の貼布試験陽性,成分別貼布試験では,0.05%Fluocinonideワセリンにのみ陽性,基剤は全て陰性で,Fluocinonideによるアレルギー性接触皮膚炎と診断した.Triamcinolone acetonideおよびFluocinolone acetonide製剤にも陽性を呈し,交叉感作と推定された.使用洗剤の5%,使用濃度および使用濃度の1/10,1/100の貼布試験は陰性.

広範に皮疹をみた硬化性萎縮性苔癬の1例—外用テストステロン有効例

著者: 根本洋 ,   麻生和雄

ページ範囲:P.957 - P.962

 外陰部を含めた広範な部位に皮疹をみとめた硬化性萎縮性苔癬(LSA)の症例を2年にわたり経過観察した結果,外用テストステロンの有効性を認めたので報告した.本邦報告例86例につき若干の検討を行った.

Trichophyton tonsuransによるBlack Dot型頭部白癬

著者: 金原武司 ,   斎藤利子 ,   加世多秀範

ページ範囲:P.963 - P.967

 金沢市近郊の54歳の主婦で,black dot型頭部白癬の病型を示し,原因菌としてTrichophyton tonsuransが分離された症例について述べた.あわせて,本菌の同定の要点とわが国におけるT. tonsurans感染例について若干の考察を加えた.

若年性黒色腫の3例

著者: 早川和人 ,   田村晋也 ,   加茂紘一郎

ページ範囲:P.969 - P.972

 ほぼ定型的な若年性黒色腫の3例を報告し,主として病理組織学的に検討を加えた.自験3例は増殖せる細胞の形態より,それぞれspindle cell nevus型,epithelioid cell nevus型,混合型(Kernenら)に相当する.また本症の診断上価値あるものとされている多核巨細胞は,1例にのみ認められた.さらに本症の概念,名称等の変遷についても検討を試み,現在本症は一種の母斑性腫瘍と考えられていることを明らかにした.また名称に関しては,最近ではbenign juvenile melanomaなる名称が一般的であると考えた.

Congenital Canal of the Genito-perineal Raphe

著者: 羽田俊六 ,   生野麻美子 ,   濱松輝美

ページ範囲:P.973 - P.976

 Congenital canal of the genito-perineal rapheの成人例を報告した.本症の発生,臨床,病理組織および2,3の類似疾患との関係などの諸点について文献を参考に若干の考按を述べた.

「皮膚寄生虫妄想」について—当該自験の5症例の検討から

著者: 伊東昇太 ,   宇内康郎 ,   河合真 ,   村上弘司 ,   里和宏

ページ範囲:P.977 - P.980

 「皮膚寄生虫妄想」の1例を自験の既報告例に加えて検討をすすめた.加年者に頻発する一次性のこの皮膚感覚錯誤の疾病分類は様々である.治療に容易に反応せず,病像の遷延する当該症例は,殆んど皮膚科を受診していて,関心ある各位の参考までに臨床所見を描写し,考察をこころみた.ちなみに診療科相互の連携を必要とする症例群があり,この報告例はその1つであることを強調した.

編集室だより

雑誌名の省略について

ページ範囲:P.980 - P.980

 最近,引用文献に掲載される雑誌名の略称は,1970年にAmerican National Standards Committeeから出された「International List of Periodical Title WordAbbreviations」による略し方が,国際標準として,一般化してきました.皮膚科領域に関係のある言葉の例を下記にあげました.御投稿の際には,これらを参考にして下さい.

これすぽんでんす

「Infundibular Senile Keratosis」を読んで

著者: 木村俊次

ページ範囲:P.981 - P.981

 一般に老人性角化腫は附属器間表皮の基底層に初発して附属器間表皮を侵し,皮膚附属器である毛包や汗腺そのものを侵すことは稀であり1),それらへの侵襲像は悪性化の始まりとさえいわれています.その意味で大嶋氏らの論文(本誌,35;607,1981)に示された毛包漏斗部に限局した老人性角化腫という概念は斬新なものであり,強く興味を惹かれました.
 大嶋氏らの症例は著者らも述べておられるように他の毛包性腫瘍とは区別される腫瘍と考えられますし,一部に初期侵入像を生じている点からも前癌性のものであることは確実と思われます.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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