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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科35巻7号

1981年07月発行

雑誌目次

図譜・465

Cellular Blue Nevus

著者: 大原国章 ,   松川中 ,   寺山勇

ページ範囲:P.562 - P.563

患者 29歳,女性
職業 看護婦

原著

セルカリア皮膚炎

著者: 林正幸 ,   大槻典男 ,   佐野勉 ,   福代良一 ,   赤尾信明 ,   大西義博 ,   近藤力王至 ,   吉村裕之

ページ範囲:P.565 - P.568

 金沢市郊外の農夫にみられたセルカリア皮膚炎の1例を報告した.中間宿主であるヒメモノアラガイからCercaria miensisと考えられるセルカリアが証明された.組織像では,虫体の通過した跡と思われる表皮内間隙があり,また表皮内汗管周辺の海綿状態・真皮乳頭の浮腫・真皮の巣状の細胞浸潤等がみられた.本例の病因として休耕田域での作業が考えられた.

Microsporum canis感染症の18例—(付)特異な臨床像を示した症例

著者: 木村滋 ,   山田富美子 ,   沼田時男 ,   亀井幸雄

ページ範囲:P.569 - P.574

 1975年11月から1979年4月までに名市大皮膚科を受診したMicrosporum感染症18例の年齢,性,罹患部位,発症月,家族内発症,感染源,治療および臨床像についてまとめた.全例の56%が10歳以下の子供であった.性別では,15歳以下では男女ほぼ同数であるが,成人ではすべて女性であった.罹患部位は露出部の前面に多く,10歳以下ではそのうち頭および顔面に多かった.発症は春,初夏および秋に多かった.大部分が家族内発生で感染源は全例飼ネコと推定された.治療は抗白癬菌剤の外用あるいは内服との併用を行ったが,治療期間が4〜7ヵ月(ケルズス禿瘡,頭部白癬)ないしは3ヵ月(体部白癬)と長かった症例があった.本菌の体部白癬の皮疹の中には定型的とみられるもの以外に,扁平な紅色丘疹ないしは滲出性紅斑様紅斑を生じた家族例および膿痂疹様皮疹を示した1例があり,これらについて詳しく記載した.

昭和54年7月に鳥取県下で集団発生した海水浴皮膚炎について

著者: 谷垣武彦 ,   佐藤健二 ,   遠藤佐保子 ,   福田啓子 ,   那須正夫

ページ範囲:P.575 - P.580

 昭和54年7月上旬〜下旬の間,鳥取県下の日本海岸4kmにわたる4ヵ所の海水浴場において,集団発生(1,149名中493名)した海水浴皮膚炎を報告した.当時期発生海域の波高,水質検査を行った結果,海はおだやかで,環境基準海域も良好であった.海水中のプランクトンを調査し,外洋性放散虫類をはじめ,尾虫類,ヒトデ,フジツボの幼生,硅藻類を検出,かかる多種のプランクトンの小さいトゲの刺激を本症の原因と考えた.

喉頭カルチノイドの皮膚転移例

著者: 舘懌二 ,   福代良一 ,   田守昌樹 ,   上村良一 ,   新谷寿久

ページ範囲:P.581 - P.586

 皮膚転移を伴った喉頭カルチノイドの1例(59歳,男)について報告した.躯幹に蚕豆大までの有痛性の小結節が約30個見られた.小結節の電顕像では,腫瘍細胞の胞体内に140〜240mμの特殊分泌顆粒が多数認められた.血中セロトニン値と尿中5—HIAA値は正常範囲内で,カルチノイド症候群はなかった.剖検によって喉頭原発のカルチノイドと判明した.皮膚のほか,膵・心・胃などにも転移が認められた.

巨大色素性母斑に発生した悪性黒色腫の1例

著者: 晒千津子 ,   城良子 ,   西岡清

ページ範囲:P.587 - P.590

 2歳男児,生下時より躯幹特に背部のほぼ1/2を占める部に有毛性巨大色素性母斑が存在.生後6ヵ月頃,背部の同母斑より3cm大の広基性易出血性の腫瘤が出現,生検を兼ね全摘除し,組織学的に真皮内母斑細胞母斑と診断された.2歳8ヵ月頃より,前回摘除部近傍の健常皮膚に2個の腫瘤が出現,組織学的ならびにDOPA反応,電顕所見から悪性黒色腫と診断した.腫瘤の広範囲外科的摘除術を施行したが,2ヵ月後に再発し,化学療法を行ったが死亡した.

Amelanotic malignant melanoma—手術療法とそれに併用したOK−432の免疫療法が奏効したと思われる1例

著者: 谷井司 ,   石井正光 ,   高橋邦明 ,   櫻根弘忠 ,   濱田稔夫

ページ範囲:P.591 - P.597

 74歳,女性の足底に原発したamelanotic malignant melanomaの1例を報告した.初診の約15年前より両足底に左右対称性に鶏眼様皮疹があり,よくカミソリなどで削っていたが,約4ヵ月前より右足底の皮疹が急速に隆起,増大し,初診時右足底第Ⅴ趾直下に3×3×1.2cmの扁平に隆起したやや紅色の腫瘤がみられた.病理組織学的に,真皮上層から皮下脂肪層に垂直性に浸潤した腫瘍細胞群がみられ,level 5のnodular melanomaの所見を示した.細胞型はpleomorphic typeで,腫瘍細胞には一部を除いてメラニン顆粒はみられず,dopa陽性を示す部位が散見された.電顕的に腫瘍細胞内にmelaosomeがわずかに認められ,電顕dopa反応では未成熟のmelanosomc,空胞,ゴルジ装置などにdopa陽性を示した.治療として病巣部の広範囲切除に加えて,OK−432(picibani®による免疫療法を施行したところ,細胞性免疫能の亢進が認められた.

限局性白癬性肉芽腫の1例

著者: 窪田泰夫 ,   渡辺晋一 ,   滝沢清宏 ,   原田昭太郎

ページ範囲:P.599 - P.606

 42歳,男性の両下腿に発生した限局性白癬性肉芽腫の1例を報告した.発症因子としては,強迫性格という特異な精神状態に基づくと思われる過度の掻破と他医にてうけたステロイドの長期内服・外用が大きく関与したと推測された.また菌学的検査によりT.rubrumとC. albicansの2種を分離同定したが,前者が主体的役割を果たしていると考えた.合わせて1970年以後の白癬性肉芽腫の本邦報告例を蒐集し,その臨床的事項および統計的事項などにつき若干の文献的考察を加えた.

Infundibular Senile Keratosis

著者: 大嶋健三 ,   三島豊

ページ範囲:P.607 - P.612

 1976年Headington19)の詳細な毛器官腫瘍分類とレビューによっても代表されるがごとく毛器官漏斗部の前癌性および癌性腫瘍の記載は最近まで見出せない.
今回我々は新たに毛器官漏斗部に選択的にsenile keratosisと同一と考えられる前癌性腫瘍が発生し,その深部の一部より初期有棘細胞癌への転化を来した症例を見出したので表題名のもとに報告する.

Blue Rubber-Bleb Nevusの1例

著者: 松田真弓 ,   中村洋 ,   昆宰市 ,   伊崎正勝

ページ範囲:P.613 - P.616

 約16年前より左前腕から左胸部にかけ,また左肩甲部,左大腿部に毛細血管拡張性変化と帽針頭大から示指頭大にいたる血管腫を散在性に発生し,血管腫は漸次増数を示した.同時期より前額部にクルミ大にいたる腫瘤を認め,次第に左眼の突出をきたした.病理組織学的に血管腫は海綿状血管腫と診断された.臨床的にこの血管腫はいわゆるBeanの記載する第Ⅱ型に属すると考え,消化管血管腫の存在を疑い検索したが発見できなかった.

乳房外Paget病の剖検例

著者: 幸田衞 ,   籏持淳 ,   植木宏明

ページ範囲:P.617 - P.622

 乳房外Paget病の2剖検例を報告した.
症例1,66歳男,9年前陰嚢に初発し,湿疹として治療される.初診時すでに腫瘤を形成し,真皮内浸潤,リンパ節転移が認められた.手術,放射線,5—FUにて治療するも度々再発し,2年後に全身衰弱,呼吸不全のため死亡した.転移は肺,胸膜,脊椎骨および肺門,大動脈周囲,気管周囲リンパ節に見られた.
症例2, 71歳男,4年前恥丘部に初発し,湿疹として治療される.初診時すでに腫瘤形成,真皮内浸潤,リンパ節転移が認められた.放射線療法を施行したが肝転移症状が進行し,4ヵ月後に肝不全,消化管出血にて死亡した,転移は肝,肺,脊椎骨および肺門,大動脈周囲,肝門リンパ節に認められた.乳房外Paget病の全身転移で死亡した報告例を文献的に考察し,早期発見,早期治療の必要性を強調した.

多彩な組織像を示したPoroepithelioma Folliculareの1例

著者: 阿曾三樹 ,   島雄周平

ページ範囲:P.623 - P.628

 79歳女子の下腹部に生じたporoepithelioma folliculareを報告した.組織では特徴的な表皮内巣の形成のほかにporoma folliculare, trichilemmoma, tumor of the folli—cular infundibulumなどに類似した多彩な組織像を示した.毛包漏斗部に由来するporo—epithelioma folliculare には,腫瘍の分化の差により他の漏斗部起源の種々の腫瘍が認められることを示唆した.

Balloon Cell Nevus

著者: 多田廣祠 ,   佐伯誠 ,   荒田次郎

ページ範囲:P.629 - P.632

 24歳,男の頭頂部に生じたBalloon cell nevusについて組織学的に検討し報告した.本症例はほとんどの母斑細胞が明るい広い胞体を有するballoon cellで占められていた.普通の母斑細胞は多数の切片の一部にのみ胞巣をなしてみられるのみであった.本症例のごとく母斑細胞の大多数がballoon cellで占められる例は稀であり,ここに報告した.

Recklinghausen母斑症にみられたPachydermatoceleの1例

著者: 船曳雄一 ,   宮里肇 ,   田嶋公子 ,   川村太郎 ,   池田重雄

ページ範囲:P.633 - P.638

 39歳の主婦Recklinghausen母斑症の,右腰部から大腿部にわたる巨大なpachy—dermatocele (PDCと略称)の1例につき臨床所見,組織学的所見及びその治療成績につき述べた.また文献例に埼玉医大症例を加えて以下の結論をえた.
1) PDCがRecklinghausen母斑症に認められる頻度は母集団によってかなり異なる.
2)本邦報告例では顔面,特に眼瞼及びその附近に好発する.
3)組織豫は,神経線維腫を基調とし,パリセード結節,色素細胞などを混ずる.
4)拡張した血管が多数存在するので,小さな腫瘍内切除は行わない方がよい.
5)手術適応は明確にした方がよい.
6)本症例のように大きいものでは,順次切除(serial excison)が得策になりうる.
7) PDCは,悪性化する場合があるため,定期的に経過を追う必要がある.

皮膚転移をきたした上咽頭癌

著者: 前田健 ,   加藤英行 ,   竹内脩己

ページ範囲:P.639 - P.644

 80歳男子の上咽頭癌の皮膚転移例を報告し文献的考察を加えた.
1)臨床的には鼻症状で始まり,頸部リンパ節の腫脹を来たし,ついで頸部皮膚に弾性軟の結節を生じ,リニアック,電子線等の放射線治療により一旦皮疹は消失したが3ヵ月後再発して死亡した.
2)他臓器への転移は見つからず,抗EBウィルス抗体価が640倍と高値であった.
3)皮膚,鼻粘膜,左頸部リンパ節の病理組織像及び電子顕微鏡所見はいずれもtransi—tional cell carcinomaに一致した.

Microsporum gypseumによる爪白癬

著者: 岡吉郎 ,   古田島昭五

ページ範囲:P.645 - P.648

 46歳,男,医師の左中指に生じたMicrosporum gypseumによる爪白癬を報告した.本例は爪囲炎症状をもって発症し,爪甲の脱落をきたして来院した.これまでに報告された例も爪囲炎症状を伴い,爪の基部から病変が始まっており,これがM. gypseumによる爪白癬の特徴であろうかと考えた.
分離菌についてNannizia gypscaとの交配試験を行ったところ,+株,−株の両者とcleistotheciaの形成を認めた.また感染源の検索のため,飼イヌの毛,庭土からkeratino—philic fungiの分離を試みたところ,いずれからもTrichophyton ajelloiを得,当地方の土壌中にもT. ajelloiが分布していることを確かめたことになった.M. gypseumは分離できなかったが,やはり土壌中の菌が後爪廓の小外傷から侵入して発症した可能性が強いと考えた.

編集室だより

雑誌名の省略について

ページ範囲:P.586 - P.586

 最近,引用文献に掲載される雑誌名の略称は,1970年にAmerican National Standards Committeeから出された「International List or Periodical Title WordAbbreviations」による略し方が,国際標準として,一般化してきました.皮膚科領域に関係のある言葉の例を下記にあげました.御投稿の際には,これらを参考にして下さい.

薬剤

白癬菌試験用培地(DTM)による白癬菌の分離・同定の成績—Sabouraud培地による成績との比較

著者: 井上久美子 ,   福代良一

ページ範囲:P.651 - P.656

 Dermatophyte Test Medium (DTM)1)は白癬菌分離用に工夫された新しい培地である.以下,DTM (日研化学株式会社提供,商品名:スラント・D「日研」)による白癬菌の分離・同定をSabouraud培地を相手として,比較試験した成績について述べる.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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