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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科35巻9号

1981年09月発行

雑誌目次

図譜・467

エックリン汗孔腫

著者: 宮崎香代子 ,   鰺坂義之 ,   内田博子 ,   下田祥由

ページ範囲:P.786 - P.787

患者 30歳,女性
初診 昭和52年12月14日

原著

Duhring疱疹状皮膚炎—細線維状のIgA沈着を認めた症例

著者: 五十嵐良一 ,   須藤成章 ,   諸橋正昭 ,   岡吉郎

ページ範囲:P.789 - P.794

要約 16歳,男子のDuhring疱疹状皮膚炎の症例を報告した.12歳頃より瘙痒性紅斑が主に上半身に散在性に出現した.初診時,浮腫性紅斑のほか小水疱,痂皮,びらんが認められた.組織学的に表皮下水疱,表皮突起の延長,表皮下に好中球のmicroabscess様構造をみた.紅斑部皮膚について螢光抗体法を施行し,IgAの細線維状沈着が証明された.他の免疫グロブリンや補体成分の沈着はなかった.また血中抗基底膜抗体,抗レチクリン抗体は証明されなかった.HLA抗原はA10,BW35,BW40であった.DDSによく反応し,Duhring疱疹状皮膚炎の典型例であった.本邦においてこれまで報告されたDuhring疱疹状皮膚炎のうち,IgAの沈着をみた15例をまとめた.

Hailey-Hailey病の家族内発症例

著者: 鈴木陽子 ,   佐藤昭彦 ,   東條達

ページ範囲:P.795 - P.800

 4代にわたる家族歴を持つ,同一家族内に発症したHailey-Hailey病の3例を報告した.
 うち第1例では,皮疹が好発部位を越えて広範に認められ,同時に疣状角化性丘疹を伴っていた.組織学的には角化性丘疹も棘融解を伴うHailey-Hailey病の所見を呈した.

円板状エリテマトーデス様皮疹を合併した活動性慢性肝炎

著者: 荻野篤彦 ,   疋田義太郎

ページ範囲:P.801 - P.805

 症例は21歳の男性で,15歳より活動性慢性肝炎に罹患している.約3ヵ月前より左前腕と上腹部に散在性の角化性小丘疹と固着性鱗屑をともなった淡紅色ないし淡紫紅色の紅斑性局面を生じた.組織学的所見は表皮がやや萎縮状で,角化と角栓形成をみるが,明らかな液化変性はなく,真皮中層から深層にかけて附属器周囲にリンパ球を主とする密な細胞浸潤が認められる.螢光抗体直接法で表皮・真皮接合部にIgMのみが顆粒状に沈着している.活動性慢性肝炎に伴う皮疹としては座瘡,線状皮膚萎縮症のような非特異的皮疹のほかに,他の自己免疫性疾患にも合併してみられる顔面蝶型紅斑,多形滲出性紅斑,紫斑,蕁麻疹などが報告されている.活動性慢性肝炎の発症とその遷延化に自己免疫的機序の作用が想定されており,この種の肝炎と合併してみられる皮疹との関係を考察した.

MorpheaとPasini-Pierini型進行性特発性皮膚萎縮症の共存例

著者: 池端千佳子 ,   今村貞夫

ページ範囲:P.807 - P.811

 8歳,女子の左大腿部に色素沈着を伴った硬化性局面が生じ,組織学的に真皮全層にわたる膠原線維の膨化と真皮下層から皮下脂肪組織にかけてリンパ球浸潤を認め,臨床的及び組織学的に典型的な限局性強皮症と診断した.一方,腹部に,臍の両側に,淡赤褐色の,およそ手掌大の不整形色素斑が生じ,組織学的に,真皮において線維間隙の狭小化が見られる以外に著変を認めず,パッシーニ・ピエリーニ型進行性特発性皮膚萎縮症と診断した.この両病変部において真皮血管周囲にアルシャンブルー陽性物質を認めたことより,両疾患は,別症として診断はしうるが,発生機序として極めて近縁の関係にあると推測した.

Pagetoid悪性黒色腫—スナップ写真による初期病変及び拡大様式の観察並びに螢光法(Falck & Hillarp)による観察所見を中心として

著者: 森嶋隆文 ,   花輪滋 ,   長島典安 ,   遠藤幹夫 ,   岡本竹春

ページ範囲:P.813 - P.818

 右上腹部に原発し,右腋窩リンパ節転移をみた45歳,男子例を報告した.本例の初期病変は小学生頃に存した黒子様皮疹であって,これが初診10年前にも類円形の黒子の像にとどまっており,その後主として側方に拡大して初診2年前には明らかにPagetoid悪性黒色腫の臨床像を呈していたことがスナップ写真を通して確認できた.螢光法的には原発巣の腫瘍巣を構成する,またケラチノサイトに孤立性に存する腫瘍細胞に樹枝状突起を認め,転移巣では腫瘍細胞はメラニン顆粒を欠くも特異螢光を発し,さらに一見メラノサイトを思わす,多極性〜双極性の樹枝状形態を示す腫瘍細胞の混在をみた.原発巣と転移巣との生化学的分析結果から,特異螢光の起因物質は主としてPheomelaninの中間代謝産物である5-S-Cysteinyldopaの存在に基づくものと推測した.

悪性黒色腫患者における尿中5-S-Cysteinyldopa排泄について—病勢を知る上のbiochemical marker

著者: 森嶋隆文 ,   花輪滋

ページ範囲:P.819 - P.823

 Pheomelaninの中間代謝産物である5-S-Cysteinyldopa(5-SCD)の尿中大量排泄は悪性黒色腫の転移の際にみられ,黒色腫の病勢を知る上のbiochemical markerになりうることが指摘されている.Eumelanicである健常日本人の尿中5-SCDの平均値はpheomelanicであるスウェーデン人とほぼ同値であることを明らかにした.悪性黒色腫7例の測定結果から,尿中5-SCDは原発巣のみで,転移巣を欠く5症例では正常範囲内あるいは境界値内にとどまっており,所属リンパ節転移を有する例では原発巣と転移巣とを摘出すると,高値であった尿中5-SCDは正常範囲内に復し,病勢の進行とともに,再び高値となることを知った.以上の経験から,黒色腫患者の尿中5-SCDの測定の意義を考えると,1)転移の有無とその広がり,2)治療効果の判定,3)予後の判断等について有力な情報をもたらしてくれるものと期待される.

紅皮症にて発症した皮膚悪性リンパ腫の1例

著者: 長谷哲男 ,   赤尾明俊 ,   園田俊雄 ,   中嶋弘 ,   永井隆吉

ページ範囲:P.825 - P.830

 臨床症状および皮膚の生検組織より当初湿疹続発性紅皮症と考えられたcutaneousT-cell lymphoma (CTCL)に包括されると思われる1例を報告した.発症より12ヵ月後には,末梢血,リンパ節,皮膚に異型リンパ球が認められるようになり,リンパ節ではEnロゼット形成能のある異型リンパ球が認められた.

ケラトアカントーマとFocal Acantholytic Dyskeratosisを示す疣状腫瘍の併発例

著者: 石倉多美子 ,   畷稀吉

ページ範囲:P.831 - P.834

 症例は81歳の男で,右下腿にクルミ大の腫瘍を,左手関節部に大豆大の小結節を示した.前者は組織学的に典型的なケラトアカントーマであった.後者は組織学的には角質肥厚・表皮肥厚・真皮内細胞浸潤が主変化であったが,一部にDarier病に類似した棘融解性異常角化像が認められた.これはAckermanの提唱したfocal acantholyticdyskeratosis (FAD)に相当すると考えられた.

陰茎のMondor病

著者: 風間敏英

ページ範囲:P.835 - P.839

 33歳,男,会社員,未婚.陰茎の手術や外傷の既往なし.約3週間前から陰茎冠状溝後縁に索状硬結が出現した.自覚症状なし.STS (−).組織像:真皮中層〜深層に壁の肥厚した脈管があり,壁は結合織性でElastica-van Gieson染色で内弾性板を認め,増殖性静脈炎(Mondor病)と考えられた.真皮内に他の炎症性細胞浸潤はない.生検後,1ヵ月半の経過で自然消失.本邦では現在まで類似例6例の報告があり,自験例と合わせnonvenereal sclerosing lymphangitis of the penisの報告例18例とともに若干の考察をした.

ゴルフボール液芯の噴出によるバリウム肉芽腫の1例

著者: 石井芳満 ,   武富功雄 ,   井上勝平

ページ範囲:P.841 - P.845

 ゴルフボール液芯の噴出により顔面に受傷し,その後にバリウム肉芽腫bariumgranulomaを生じた15歳男子を報告した.組織学的に主として大単核球,多核巨細胞より成る成熟肉芽腫mature granulomaの像を呈した.巨細胞内外に大小不同の砂状ないし結晶様異物が多数認められ,結晶様異物は重屈折性偏光を示した.X線回析および電子顕微鏡所見から,これら組織内異物を硫酸バリウムと同定し,ゴルフボール液芯中に含まれる硫酸バリウムにより生じたバリウム肉芽腫と診断した.ゴルフボールの中心には飛行距離を延ばす目的で高圧の液芯があり,不用意に切り裂いたりすると噴出し失明,外傷の危険性が警告されているが,さらに肉芽腫形成があることを指摘した.

変形爪の治療

著者: 工藤忍 ,   工藤厚 ,   児島忠雄

ページ範囲:P.847 - P.853

 Ingrown nailを含めて,爪甲全体の彎曲が高度な変形爪の治療は,Du Vries,Fosnaugh等の方法が考案されているが,爪甲の扁平化を期待することは困難である.我々は外傷性変形爪,厚硬爪甲などの爪甲肥厚彎曲高度な症例に,指(趾)尖部皮膚の魚口切開,末節骨骨棘除去,肥厚部結合織除去,爪床裏面の瘢痕の離開等を行い,爪床爪母を障害せずに爪甲の扁平化をはかり,良好な爪甲形成をみることができた.さらに,40%尿素軟膏ODTにより,外傷性変形爪,爪白癬,爪甲鈎彎症その他の変形爪の無痛性抜爪と軟膏療法で良好な結果を得た.特に白癬による変形爪は長期間の抗真菌剤内服を不要にした点で有意義であると考える.

多発性グロムス腫瘍

著者: 坂本ふみ子 ,   東條猛

ページ範囲:P.855 - P.862

 21歳女子の多発性グロムス腫瘍の症例を報告した.両側母指爪下,左手関節掌側,左示指にそれぞれ有痛性の腫瘤が,また腹部に多数の無痛性皮疹が集簇性にみられた.組織学的に有痛性腫瘤は巣状のグロムス細胞と共に,筋性細胞の増殖像を含む血管性構造が目立ち,一方無痛性皮疹は,1〜4層の層状グロムス細胞にかこまれた拡大血管が主要病変であった.また両者の病巣部に弾力線維を,病巣周囲に特異な動静脈吻合構造を認めた.
 本邦の多発性グロムス腫瘍について,発症年齢,発生部位,腫瘤の数,疼痛の有無などを検討し,本腫瘍における弾力線維,筋性細胞などの病理発生学的意義について考察した.

Hyperkeratosis Lenticularis Perstans—自験例を含む本邦報告例の文献的考察

著者: 根木信 ,   高橋肇 ,   池谷田鶴子 ,   小川秀興

ページ範囲:P.863 - P.867

 遺伝関係を認める67歳女性の両足背・下腿・手背に散生したhyperkeratosislenticularis perstansの1例を報告した.本邦では自験例を含め34例の報告例があり,これらを総括し,本症の臨床像,組織像,電顕像,遺伝関係および鑑別診断などについて若干の文献的考察を加えた.

魚の干物によると思われるFlushing Syndrome

著者: 木村恭一

ページ範囲:P.869 - P.871

 57歳,男子.あじの干物を食べ特異なflushingを来した1例を報告し,いわゆるscombroid fish poisoningの概要を述べた.

肉芽腫型胸腺腫を伴った結節性痒疹

著者: 小川喜美子 ,   日野治子 ,   竹原和彦 ,   岡厚 ,   吉竹毅

ページ範囲:P.873 - P.878

 35歳,女性.約3年前,出産後まもなく全身に出現した結節性痒疹を主訴に来院した.入院時精査でホジキン病との異同が問題とされる肉芽腫型胸腺腫の存在が判明した.急速に頸部リンパ節腫脹が増数・増大し,上大静脈症候群が顕著となった.放射線照射,後にステロイド・ホルモン内服投与との併用にも殆んど反応せず,入院5ヵ月目に死亡した.
結節性痒疹と悪性腫瘍との合併例は文献的に極めて稀であった.

これすぽんでんす

Unilateral Nevoid Telangiectasiaの著者,須藤氏らに

著者: 三並順子

ページ範囲:P.839 - P.839

 貴著「Unilateral Nevoid Telangiectasia」(本誌,34(8);709〜714,1980)を興味深く拝読しました.引用して頂きました通り,私達も,1975年の東京地方会にこの名称で,1例を報告しましたが,その後いろいろと検討を加えた結果,診断名をGeneralized essential telan—giectasiaと改め,本誌(31(9);701〜705,1977)に原著として発表いたしておりますので,詳細に関しては一度,御高閲いただければ,幸に存じます.

印象記

第2回国際皮膚病理シンポジウムに参加して

著者: 西川武二

ページ範囲:P.879 - P.881

 第2回国際皮膚病理シンポジウムはSherlockian DermatopathologySymposiumと称し,昭和56年7月12日より15日までの4日間,ロンドン市内の一流ホテル,GrosvenorHouse Hotelの地下大ホール(Thegreat room)を借り切って行われた.主催はロンドン大学のDrs. WilsonJones, Blackおよびニューヨーク大学のDr. Ackermanらで,彼らを含め46名の講師陣と500名弱の聴講者が参加した.筆者はかつての研究室の同僚Dr. Blackから水疱症のセッションのパネルメンバーとして「天疱瘡と補体」についての講演を要請され,Royal wedding (チャールズ皇太子およびダイアナ・スペンサー嬢の御成婚)を間近に控えたロンドンへ飛び,講習会に参加したので,その印象を簡単にまとめてみた.
 本会は一種の教育講習会で,はじめの2日間は皮膚病理一般から選択したテーマが解説され,残り一日半は近頃話題の多いリンパ腫,水疱症および結合織疾患,メラノーマに焦点をしぼったテーマであり,各セッションとも演者の講演後にはパネルメンバーあるいはフロアーからの質疑を必ず含むというものであった.ホールを囲む階上の廊下の壁には薬品,顕微鏡,教育スライド,医学書の展示と並んで,14題の学術展示(慶大,橋本らを含む)が飾られ,また一角にはコーヒースタンドが特設されていた.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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