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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科36巻1号

1982年01月発行

雑誌目次

図譜・471

Rudimentary Polydactyly

著者: 奥野博子 ,   佐藤則子 ,   石川謹也

ページ範囲:P.6 - P.7

患者 22歳,男子
初診 昭和54年11月5日

原著

環状肉芽腫にみられる肉芽腫性炎症の発生機序の組織学的解析

著者: 岩月啓氏 ,   田上八朗 ,   青島忠恕 ,   山田瑞穂

ページ範囲:P.9 - P.15

 環状肉芽腫の炎症機序を組織学的,免疫組織学的および細胞化学的に検索した.Palisading granulomaが13例中8例に認められ,類壊死内の血管周囲に多核球浸潤を伴う例も認められた.血管壁にはIgM,またはC3の沈着が11例中8例に陽性であり,5例では基底層への沈着が見られた.非特異的エステラーゼ染色では,単球系細胞が密に類壊死を取り囲み,リンパ球は血管周囲性に浸潤していた,出来はじめ)のpalisading granulomaでは,中心部に血管様構造の見られるものもあった.本症は血管を中心として形成される可能性があり,細胞性免疫反応と同時に液性免疫反応が共存して,特有の病像を形成するものと考えられる.

経過中に掌蹠膿疱症様皮疹を伴ったEosinophilic Pustular Folliculitisの1例

著者: 小野真理子 ,   千葉恵子 ,   新村陽子

ページ範囲:P.17 - P.23

 22歳,男.初診約4ヵ月前に両上腕に初発し,漸次拡大.初診時,顔面・躯幹・四肢に粟粒大〜半米粒大の丘疹・漿液性丘疹が多発,一部融合し,軽快後の色素沈着も混在する手拳大までの局面を形成,一部に少数の膿疱が混在.貨幣状湿疹兼自家感作性皮膚炎の診断のもとに.ステロイド剤の内服,外用で軽快したが,症状が可燃.生検組織像は好酸球を主体とする毛包内膿瘍形成.培養検査で膿疱は,一般細菌・真菌ともに陰性.末梢血の好酸球増多(25%).以上の所見により太藤らのEosinophilic pustular folliculitisと診断.現在,抗ヒ剤の内服,ステロイド剤の外用で経過観察中であるが,皮疹は一進一退で,寛解,再燃をくり返している.さらに,最近になって,足蹠に掌蹠膿疱症様病変も併発している.1980年12月末までの自験例を含む報告例61例を総括した要点を記載した,男子に好発(85%)し,また20〜30代に好発.外国報告例は4例のみであり,本邦では特に関東以西に多い.好発部位は顔面,躯幹であり,19例では掌蹠にも皮疹が認められた.61.4%に白血球増多症.81%に好酸球増多症.定型的な病理組織像以外に,毛包,脂腺内にアルシアン・ブルー染色陽性物質が認められたのは自験例を含め4例.

局面性類乾癬のPUVA療法

著者: 藤平正利 ,   井上俊一郎 ,   林懋 ,   川田陽弘

ページ範囲:P.25 - P.28

 12例の局面性類乾癬にPUVA療法を行ない,皮疹の消失5例,改善7例で,全例に有効であった.最小紅斑量(MED)が短い症例ほどPUVA療法に対する反応が早くあらわれ,皮疹に対する有効照射エネルギー量も少ない傾向がみられた.オクソラレンの投与方法では,外用法が内服法よりも少ないエネルギー量で同等の効果が得られた.特記すべき副作用はみられなかった.

薬剤性Toxic Epidermal Necrolysisの2例

著者: 岡本昭二 ,   安良岡勇 ,   石田久枝 ,   藤田優

ページ範囲:P.29 - P.33

 症例1 32歳の男.コ・トリモキサゾールを2週間内服し,同時にベソザ・エースを3日間服用後にtoxic epidermal necrolysisが発生したが,プレドニソロン投与と補液により治癒した.投与した薬剤によるパッチテストは陰性であったが,原因薬剤としてコ・トリモキサゾールを想定した.
症例2 34歳の女.2ヵ月にわたる金チオリンゴ酸ナトリウム注射療法,ジクロフェナック・ナトリウムおよびクロルメザノン12日間内服,インドメサシン坐薬1日使用後に,toxic epidermal necrolysisと肝障害が生じて,プレドニソロン投与と補液により治癒した.クロルメザノンに対するパッチテストおよびリンパ球幼若化試験が陽性であったので,本症例におけるtoxic epidermal necrolysisの発生機序にクロルメザノンに対する遅延型過敏症が関与していると考えた.
さらに文献的に蒐集した本邦症例23例について考察を加えた.

特異なケラトヒアリン顆粒生成を示したUnna-Thost型先天性掌蹠角化腫

著者: 手塚正 ,   平井玲子 ,   山崎紘之

ページ範囲:P.35 - P.40

 8歳,男子の手掌足蹠のビマン性の著しい角化腫について述べた,本症は3代にわたって優性遺伝し,組織学的にPauly反応陽性で,部分的に減少を伴った顆粒層増多がみとめられた.電顕的にケラトヒアリン顆粒は電子密度が著しく低く,微細顆粒状の顆粒から出来ており,一部に均一で電子密度の高い正常のケラトヒアリン顆粒様部分が附着してみとめられた.Marginal bandは正常に形成されていたが,lamella granulesは著しく数が減少し,代って空胞状の顆粒が出現していた.角層には膜様構造物,脂質滴がみとめられ,脂質代謝異常の存在がうかがわれた.

Dyskeratosis Congenita

著者: 伊藤隆 ,   小池玲子 ,   斎藤寛治 ,   望月正子 ,   川勝岳夫

ページ範囲:P.41 - P.45

 症例は6歳男子.皮膚網状色素沈着,爪形成異常,粘膜白板の3主徴をそなえたDyskeratosis congenitaの典型例.再生不良性貧血の合併あり.耳介皮膚の生検にて表皮直下に硝子体様物を,爪生検にて爪母部に顆粒層の出現を認めた.
 病理組織学的所見について考察を加え,箸者らの考えを述べ,またFanconi貧血との異同についても若干の考察を加えた.

網状肢端色素沈着症について

著者: 金本雄介 ,   池永実 ,   小菅正規 ,   磯久一郎 ,   石橋康正

ページ範囲:P.47 - P.54

 Acropigmentatio reticularisは昭和18年に北村がはじめて報告して以来,今日まで自験例を含め56例の報告がみられた.今回典型的な皮疹を示す2家系の本症を経験し,電顕的観察で色素斑部にgiant melanosomeが認められた.又,文献記載を総括したところ,木症はかならずしも完全浸透を示す常染色体優性遺伝疾患とはいえず,又,東部日本を中心に発生する傾向がみられた.

Cytophagic Histiocytic Dermatitis (仮称)

著者: 日高義子 ,   山本須賀子 ,   清水正之 ,   浜口次生 ,   浦田徹 ,   吉田利通 ,   伊豆津公作

ページ範囲:P.55 - P.60

 多形浸出性紅斑様,結節性紅斑様皮疹を生じ,肝障害,肺出血にて死亡した60歳,女性例を報告した.本症例では皮膚,特に真皮に,又内臓諸臓器にerythrophagocytosis,cytophagocytosisを伴う異型性のない組織球の浸潤が特異的で,一連のregional histiocytosisの皮膚型(真皮型)を想定した.

皮膚癌を合併した疣贅状表皮発育異常症(Epidermodysplasia Verruciformis, L.-L.)の1例—皮膚悪性変化への病理発生機構

著者: 谷垣武彦 ,   前田求 ,   渡辺信一郎 ,   遠藤秀彦 ,   大鳥利文 ,   浜田陽

ページ範囲:P.61 - P.66

 疣贅状表皮発育異常症(Epidermodysplasia verruciformis, L.-L.)の34歳男子の典型例の顔面に発生した腫瘍を病理組織学的に検討した.その結果,病理発生学的に3つの段階即ち①表皮内初期変化,②ボーエン病様変化,③有棘細胞癌の移行を確認しえた.これはTodaroらのS. V. 40ウイルスによる腫瘍発生の実験結果と類似している.即ちはじめのtransformation cellは表皮細胞のDNA合成が見られる表皮,下層細胞に一致して発生し,表皮下層でのウイルス感染細胞が直ちに1〜3回細胞分裂増殖することにより,一部はtransformation cellとなり,それが異常増殖して悪性像を呈してくると推測される.本症の発癌はウイルス感染に起因すると示唆される病理所見なのでここに報告した.

乳癌の転移による腫瘍性脱毛症—Paget現象を呈した1例

著者: 小野友道 ,   城野昌義 ,   木藤正人 ,   天野冨紀子

ページ範囲:P.67 - P.71

 腫瘍性脱毛症alopecia neoplastlcaの1例を報告した.患者は45歳,女性で,乳癌の転移により多発性円形脱毛症様の脱毛巣を形成した.病理組織学的に毛包中心性に踵瘍細胞の増殖する傾向が顕著で,一部では表皮内へ侵入し,Paget現象を呈していた.脱毛症の鑑別の1つに加えておく必要があると思われる.

Interdigital Pilonidal Sinusの1例

著者: 田中栄 ,   上出良一

ページ範囲:P.73 - P.76

 37歳,男性,理容師の左第3指間に生じたInterdigital pilonidal sinusの1例を報告した.本症は外部から毛髪が指間に侵入して生じる小結節,痩孔形成で,毛髪に接する機会の多い理容師にみられる職業性皮膚疾患と思われる.

雪状炭酸圧抵治療を受けたPortwine Stain上に生じた基底細胞上皮腫の1例

著者: 大原国章 ,   尹弘一 ,   関利仁 ,   井上由紀子

ページ範囲:P.77 - P.79

 20歳,女子の右側頭のportwine stain上に生じた基底細胞上皮腫の1例を報告した.本例は乳児期にportwine stainに対して,長期間にわたり雪状炭酸圧抵治療を受けており,このための慢性皮膚障害が発癌の誘因と推察された.筆者の自験の基底細胞上皮腫52例のうら,何らかの癌前駆症から生じたものは9例で,その前駆症の内訳は慢性放射線皮膚炎4例,脂腺母斑2例,色素性乾皮症2例,雪状炭酸治療後1例(本例)であった.

クロモマイコーシスと基底細胞腫の合併した1例

著者: 今成順子 ,   池谷田鶴子 ,   種田明生 ,   小川秀興 ,   桜根孝俊

ページ範囲:P.81 - P.85

 79歳,女性.約3年前より,右頬部に皮疹出現.初診時には,17×27mm大の潰瘍を伴う陥凹性皮疹と,その周囲に11×7mm及び3×4mm大の2コの浸潤性紅斑を認めた.陥凹性皮疹辺縁と浸潤性紅斑部からの2度の生検にてsclerotic cellを認め,培養にてFonsecaea pcdrosoiと同定した.5—FC 200mg/kg/day 20日間内服後,広範囲切除,植皮術を施行した.切除標本ではsclerotic cellは全く認められず,5—FCが奏効したものと思われた、また,陥凹性局面を呈した皮疹部に一致してbasal cell epitheliomaを認めた.本例においては,腫瘍中にクロモマイコーシスが併発していたという決定的な証拠は得られなかったが,恐らく,基底細胞腫が先に出来,その上にクロモマイコーシスが感染したものと推測した.

悪性腫瘍を思わせた慢性膿皮症の1例

著者: 木村恭一 ,   安藤冨美子 ,   藤田甫

ページ範囲:P.87 - P.90

 32歳男子.大腿屈側面に,悪性腫瘍を疑わせる変化を生じた慢性膿皮症(病歴2年余)を経験した.膿皮症から分離されたものは,緑膿菌を主体とするグラム陰性桿菌と嫌気性菌であった.治療は液体窒素凍結療法と抗生剤の局注が奏効した.

多彩な臨床像を伴うT型癩の1例

著者: 白井まさ子 ,   吉池高志 ,   小川秀興

ページ範囲:P.91 - P.95

 約20年前に発症し徐々に進行した両手指の変形があり,最近1年以内に紅色皮疹,水疱形成,白斑,広汎な環状紅斑など多彩な臨床像を次々と呈した.類天疱瘡,ジューリソグ疱疹状皮膚炎などの水疱性疾患と誤診され,大量のステロイド投与を受けていた.組織では,T型所見を呈したが,抗酸菌が証明され,またレプロミン反応陰性,リンパ球幼弱化試験正常域等,矛盾する検査結果が得られたが,ステロイド治療により病像の増幅多様化が起ったものと考えられる.

編集室だより

雑誌名の省略について

ページ範囲:P.79 - P.79

 最近,引用文献に掲載される雑誌名の略称は,1970年にAmerican National Standards Committeeから出された「International List of Periodical Title WordAbbreviations」による略し方が,国際標準として,一般化してきました.皮膚科領域に関係のある言葉の例を下記にあげました.御投稿の際には,これらを参考にして下さい.

これすぽんでんす

Malignant Trichilemmoma—林氏らの論文を読んで

著者: 木村俊次

ページ範囲:P.96 - P.96

 毛包は周知のごとくいくつかのsubunitから成っており,かつ毛周期による変動を示す点で,毛包と関連した腫瘍も複雑多岐にわたっている.毛包腫瘍の記載は1960年以降のものが多くを占め,比較的最近記載された腫瘍も少なくない.したがってそれらの名称も報告者によってばらつきがみられることが多く,初学者にとって毛包腫瘍はとっつきにくい領域の1つとなっているようである.毛包腫瘍についての包括的分類もいくつか1,2)なされているが,まだ試案の段階にあるといえる.
 Malignant trichilemmomaもそうした名称のばらつきがみられる毛包腫瘍の1つであり,比較的最近,森岡教授ら3)によって通常のボーエン病から分離されたものである.本腫瘍は林氏らもその論文(本誌,35(11);1049,1981)の中で指摘しているように,follicular Bo—wen's disease, premalignant trichilemmoma. trichilem—mal carcinoma in situなどとも呼ばれている.それぞれの名称はその提唱者自身の考え方に基づくものであり,その是非・長短は簡単には論じられないが,特別な反対知見が提出されない限り原著者の提唱した名称を採用するのが一般的であろう.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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