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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科36巻10号

1982年10月発行

雑誌目次

図譜・480

Impetigo Herpetiformis

著者: 安田和正 ,   鈴木久美子 ,   平野京子

ページ範囲:P.930 - P.931

患者 44歳,主婦
第4回目入院 昭和54年9月4日

原著

Sjogren症候群を合併したいわゆるPolymorphic Pemphigoid

著者: 川出初子 ,   臼田俊和 ,   井沢洋平 ,   青山久 ,   松永恭子 ,   鳥飼勝隆

ページ範囲:P.933 - P.937

 Sjogren症候群を合併した,いわゆるpolymorphic pemphigoidの1例を報告し,皮疹のpolymorphic化に関して若干の考察を加えた.
近年,Sjogren症候群に伴った皮疹(紅斑)が注目されており,自験例の多彩な皮疹にも,Sjogren症候群に伴った紅斑が混在していた可能性も考えられた.Polymorphic pemphi—goidは一般的には水疱性類天疱瘡の亜型とされているが.従来の報告例では充分な検索が行なわれているとはいえず,今後さらに免疫血清学的検査や合併症などに関する,多面的な検討を要するものと考えられた.

扁平苔癬様皮疹を呈した全身性エリテマトーデス(SLE)の1例

著者: 長谷川澄子 ,   浜口次生

ページ範囲:P.939 - P.943

 66歳,女性.顔面,躯幹,上肢に定型的DLE皮疹とは異なる,一見扁平苔癬様の,やや浸潤のある,一部では鱗屑を伴う皮疹が多発し,又SLEとしての臨床症状は軽く,治療によく反応しており,最近の概念であるsubacute cutaneous lupus erythematosusに相当し,特に発疹の上ではpapulosquamous typeにあてはまると思われる.

紅斑性天疱瘡—補体結合性表皮細胞間抗体と若干の免疫学的知見

著者: 仲弥 ,   栗原誠一 ,   西川武二 ,   籏野倫

ページ範囲:P.945 - P.950

 血清中に補体結合性表皮細胞間抗体が見出された典型的な紅斑性天疱瘡の42歳男性例を報告するとともに,本抗体の病因性を検索すべく,自験患者の血清を本人の健常皮膚に局注することにより実験的天疱瘡の作成を試みた.その結果,表皮棘融解は惹起しえなかったが,本抗体の表皮細胞間への結合が明らかに認められたことより,天疱瘡患者血清中の補体結合性抗体は表皮細胞間に強い親和性をもち,病変発現に積極的に関与しているものと考えた.

臍部皮膚子宮内膜症の1例—月経時の組織学的所見を中心に

著者: 山城一純 ,   藤原直子 ,   鳥山史 ,   堀真

ページ範囲:P.951 - P.957

 31歳,未婚の女性.約5年前より臍窩部に有痛性の腫瘤をきたす.その腫瘤は月経時に発赤,腫脹をきたすことが多かったが,出血をみることはなかった.
月経2日目に腫瘤に生検を行ない,組織学的,電子顕微鏡的観察を試みた.
組織学的には変性像のない子宮内膜腺と共に,内腔が不規則に開大し,空胞化をきたした腺上皮細胞と,それらが腔内に剥脱したと思われる細胞集塊を認めた.また間質組織は正常子宮の月経期に一致する細血管の増生,拡張,浮腫などが認められた.
電顕的にも腺構造部の細胞には,正常子宮内膜腺の月経期の像に一致する空胞形成,多数のlysosome様顆粒の出現などが認められた.
以上の所見より,臍部皮膚子宮内膜症も黄体ホルモンの影響を受けたことが強く示唆された.

臍部皮膚子宮内膜症の1例—とくに超微細構造について

著者: 加藤英行 ,   青木重信 ,   井上俊一郎 ,   荒木正介

ページ範囲:P.959 - P.964

 47歳,女性の臍部皮膚内膜症を報告した.組織学的に2つの異なったstageが観察された.特に電顕所見では繊毛細胞と分泌細胞が観察され,真の子宮内膜組織と考えられた.臨床的には月経周期に一致した出血や疼痛,腫瘤の増大はなく,いわゆるsilent typeである.臍部に発生した本症は,血行性もしくはリンパ行性に転移移植されたとする説が有力である.

限局性Darier病の1例

著者: 川口紀子 ,   宅間幸子 ,   風間敏英 ,   小野真理子

ページ範囲:P.965 - P.971

要約 73歳,男.約30年前より左鼠径部から左陰股部に疣状角化性丘疹が存在,2年前より左大腿部に瘙痒を伴う紅色丘疹が出現,漸次拡大.初診時,左大腿伸側に4×16cmの境界明瞭な紫紅色で表面隆起した疣状の角化性局面が帯状に配列していた.組織学的に典型的なDarier病の所見.最近,左足内顆にも同様の結節が1個出現,遺伝関係なし.成年期に発症する限局性Darler病と診断し,自験例を含む本病型の本邦報告例15例を中心に定型的Darier病と比較し,若干の考按を述べた.

Actinic Granuloma(O'Brien)の1例—環状肉芽腫との組織学的鑑別を中心として

著者: 西本正賢 ,   難波紘二 ,   板垣哲朗

ページ範囲:P.973 - P.978

 57歳,男.4年前より両側頸部と前胸部に自覚症状のない隆起性連圏状皮疹が出現する.両側頸部では象牙色,軟で堤防状隆起を呈し,隆起部より内側は僅かに色素脱失を示し,毛細血管拡張は伴わない.前胸三角では連圏状隆起性紅斑を示す.組織像では定型的granuloma annulareでみられるnecrobiosis,palisading granuloma,ムチン沈着がみられず,弾性線維貪食を示す組織球肉芽腫と弾性線維の消失が認められ,電顕的にも貪食所見が確認された.これらの所見はO'Brienにより提唱されたactinic granulomaに一致すると考えられる.類縁の疾患であるgranulorna annulareとの鑑別を中心に検討した.

小児汎発性膿疱性乾癬の3例

著者: 小林まさ子 ,   児島孝行 ,   守田英治 ,   西牟田敏之 ,   中村千里

ページ範囲:P.979 - P.983

 生後4ヵ月,4歳6ヵ月,2ヵ月の男児に生じた汎発性膿疱性乾癬3例を報告した.
症例1および症例2は吉草酸ベタメサゾン外用中に膿疱化し,感染症をきっかけとした発熱とともに皮疹の急性増悪を繰返したのち,紅皮症状態が生じて発育の遅延を来したZumbusch typeであつた,両例ともPUVA療法施行し,外用剤を酢酸ハイドロコーチゾン軟膏に変更したところ略治となった.症例3は全身症状を欠き,annular typeの皮疹を全身に呈するのみであったが,酢酸ハイドロコーチゾン軟膏の外用とPUVA療法の併用により,すみやかに軽快した.
症例1,症例2のように強力なステロイド外用剤を長期にわたり全身に使用することは,小児における膿疱性乾癬の増悪を引起すのみならず,小児期における身体的発育遅延を来す恐れがある.さらに本症におけるステロイド外用療法からの離脱にはPUVA療法を加えることが有用であると思われた.

Infantile Digital Fibromatosisの1例

著者: 松尾忍 ,   松本光博 ,   村田英俊 ,   大河原章

ページ範囲:P.985 - P.990

 6ヵ月男児の左第2趾末節背面に生じた,infantile digital fibromatosisの1例を報告した.腫瘍は生下時から出現し,初診後増大傾向がみられたため,全切除および局所皮弁形成術を行なった.現時点で術後の再発はない.
組織学的に真皮全層にわたり線維芽細胞様細胞の増殖がみられ,細胞質内に特徴的な好酸性の封入体が認められた.電顕的に観察した結果,この封入体は径約50Aの細線維からなり,この封入体と連続して細胞質内を縦走する線維束が認められ,平滑筋細胞の筋線維束にみられるようなdense bodyが認められた.また細胞周囲にbasal lainina様構造が不連続にとりかこむ像がみられた.本症例の電顕所見はmyofibroblastの特徴と一致しており,本症はmyofibroblast起源であることが示唆された.

被髪頭部に生じた表在性基底細胞上皮腫

著者: 石田洋子 ,   松岡伸 ,   鈴木啓之

ページ範囲:P.991 - P.995

 30歳,男子.被髪頭部に生じた表在型基底細胞上皮腫の1例を報告した.本症の発生部位として被髪頭部は比較的特異である.表在型基底細胞上皮腫の臨床型,組織所見,発症誘因などについて述べ,結節潰瘍型と比較検討を行った.さらに自験例の特徴的所見につき考察した.

肺腺癌と皮膚有棘細胞癌を合併した多発性Bowen病の1例

著者: 土居敏明 ,   片山一朗 ,   晒千津子 ,   西岡清

ページ範囲:P.997 - P.1001

 58歳,男性,昭和15年より4年間砒素系農薬製造に従事.約25年後,多発性Bowen病が発生,昭和55年,腰部の有棘細胞癌のため入院.種々の治療行なうも死亡.剖検にて,肺腺癌及び肝,骨,リンパ節等にその広汎な転移を認めた.
併せて,昭和35〜56年の21年間に当科を受診したBowen病患者84例につき調査したところ,多発性Bowen病に砒素の関係が高いこと,砒素と関係のある症例に内臓悪性腫瘍の合併率が高い傾向がみられた.

マイボーム腺癌の1例—症例報告と本邦例の総括ならびにパラフィン切片の脂肪染色について

著者: 末木博彦 ,   安木良博 ,   藤澤龍一 ,   松浦みち子

ページ範囲:P.1003 - P.1009

 45歳,男性.初診の2年前から,左下眼瞼に小豆大小結節出現,近医にて切開術を受けたが,約1ヵ月で再発.その後も3回の切開術を受けたが,その都度,再発を繰り返し,徐々に増大した.初診時,左下眼瞼内側に,小指頭大,弾性硬の皮下腫瘤を認め,淡紅色を呈する眼瞼皮膚とは大部分で可動性を有する.瞼板とは癒着している.耳前部に大豆大リンパ節1個触知.
治療:眼科にて腫瘍全摘出術および眼瞼形成術を施行.術後,60Co1回160rad,総線量6000rad照射予定.
組織像:真皮下層より瞼板にわたり,大小の島嶼状腫瘍巣が多発.腫瘍細胞の一部は,脂腺細胞様を呈する.結膜側には,嚢腫様の腫瘍巣も散見される.諏訪らの方法に基づくパラフィン切片よりの脂肪染色を試み,その利点,欠点につき考察した.また,過去20年間における本症の本邦報告例34例につき,若干の文献的考察を行った.

乳房外Paget病3例の電顕像

著者: 森田秀樹

ページ範囲:P.1011 - P.1016

 外陰部,腋窩部,下腹部のそれぞれに発症した3症例の乳房外Paget病病巣部の微細構造を比較検討した.3症例におけるPaget細胞には.細胞内小器官に形態的な差異が認められたが,肛囲Paget病にみられるような杯細胞に類似した細胞は3症例の病巣内にはみいだされなかった.すなわち外陰部.腋窩部,下腹部のPaget病に関しては本質的な差異はないと考えられた.

ケルズス禿瘡の3例

著者: 城戸邦彦 ,   村田譲治 ,   安木良博 ,   川口紀子 ,   藤澤龍一

ページ範囲:P.1017 - P.1022

 症例1:73歳,女.項部の接触皮膚炎と足白癬で治療中,1週間後より項部から後頭部にかけて毛嚢性の膿瘍,丘疹発生.培養検査でTrichophyton rubrumを検出.
症例2:54歳,女.頭部の脂漏性皮膚炎,足白癬で治療中,2週間後より後頭部に膿疱,膿瘍を発生.培養検査でT.rubrurnを検出.
症例3:8歳,女.近医で湿疹として治療し,漸次悪化.初診時,後頭部に径3.5cmの膿瘍,病変部の脱毛,易脱毛性,圧痛あり,培養検査でMicrosporum gypseumを検出.
3例ともステロイド剤外用療法が発症誘因と推測される.本邦における最近5年間(昭和51〜55年)の本症の報告例123例について若干の統計的考察を加えた.

いわゆる皮膚混合腫瘍の一考察—特にその組織所見と発生について

著者: 足立功一 ,   足立柳理 ,   青柳俊 ,   三浦祐晶

ページ範囲:P.1023 - P.1028

 組織学的に皮膚混合腫瘍の診断を得た自験例17例の臨床的所見,組織学的所見をまとめ,本邦報告例29例と比較検討し文献的考察も行なった.
1)臨床所見に関しては男女差がなかったことを除いては,報告されているものと大きな差異はみられなかった.
2)組織学的所見は,自験例,報告例ともにエクリン汗腺,アポクリン汗腺,毛嚢脂腺系への分化と種々多彩な形態がみられ,Hcadingtonの主張しているeccrine, apocrineの2つのtypeがあることが考えられた.その発生に関しても,未分化で多分化能を有する細胞の成熟構造の分化を示す一種の過誤腫ではないかということが強く推測された.

編集室だより

雑誌名の省略について

著者: 「臨床皮膚科」編集室

ページ範囲:P.990 - P.990

 最近,引用文献に掲載される雑誌名の略称は,1970年にAmerican National Standardds Committeeから出された「International List of Periodical Title Word Abbreviations」による略し方が,国際標準として,一て下さい.

連載 皮膚病理の電顕・16

付属器腫瘍(Ⅴ)—エクリン汗口腫

著者: 橋本健

ページ範囲:P.1032 - P.1037

エクリン汗口腫
 図43 皮膚附属器腫瘍の中でも,特に分化の方向のはっきりしたものにエクリン汗口腫がある(図43A).エクリン汗管の表皮を通過する部分はacrosyringium (終末導管部)と呼ばれ,表皮稜の中でも巾の広いものである1).この部分は独自の細胞集団よりなり,その底部では表皮基底層とは別個に細胞分裂が行われ,この部分の再生と維持を行っている1,2).細胞分裂が表皮基底層よりかなり下方で行われている故か,日光性角化症などで,周囲の表皮が前癌性の変化を起こしても,この部分は正常な場合が多い1)
 このように特殊な細胞集団より発生し,その構造に向かって分化する腫瘍があっても不思議ではない.事実Pinkus等3)によって1956年に記載されたエクリン汗口腫は種々の点で終末導管部に類似した腫瘍である.すなわち,(i)好発部位はエクリン汗腺の多い足蹠である.(ii)腫瘍は表皮と連絡し,表在性である.小円形で好塩基性の細胞よりなり,表皮基底細胞に似るが(図43C),より円形で,やゝ大きい.(iii)多量の糖原を含むが(図44G),メラニンを含有しない.(iv)腫瘍中に大小の間隙を含み,そのあるものは腫瘍外のエクリン導管に連続する(図43B-F).

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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