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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科36巻11号

1982年11月発行

雑誌目次

図譜・481

特異な臨床像を呈した胃癌の皮膚転移例

著者: 伊藤隆

ページ範囲:P.1048 - P.1049

患者 46歳,男
初診 昭和54年12月6日

原著

妊娠中に発症したアナフィラキシー様紫斑病

著者: 安江厚子 ,   三田一幸 ,   安江隆

ページ範囲:P.1051 - P.1055

 重症の紫斑病様腎炎を伴ったアナフィラキシー様紫斑病に罹患し,妊娠月数がすすむにつれて蛋白尿の増加がみられたが,妊娠34週日の帝王切開により,1,800gの女児を無事分娩し得た25歳,女子例を報告した.螢光抗体直接法による検索では.紫斑部および無疹部皮膚の真皮乳頭層の小血管壁と,腎糸球体のメサンギウムにIgA, C3の顆粒状の沈着が認められた.分娩後,母親の蛋白尿は一時軽快していたが,肺炎桿菌による急性肺炎に罹患した後より,再び増加がみられた,しかし,ステロイド剤の大量投与により,半年後にはほぼ蛋白尿も消失した.出生児は一時的な副腎皮質機能不全や多毛症がみられたが,2年後の現在では特に異常はなく,発育も順調である.

汎発性単純疱疹の1例—抗甲状腺剤による無顆粒球症に伴った症例

著者: 田中俊宏 ,   石田均 ,   荻野篤彦

ページ範囲:P.1057 - P.1060

 症例は45歳女性で甲状腺機能亢進症患者である.抗甲状腺剤(チアマゾール)で治療中生じた無顆粒球症の経過中に汎発性単純疱疹とおもわれる皮疹の出現をみた.皮疹は全身に散布し紅暈を伴い,中心臍窩を有する膿疱である.血液検査では顆粒球分画の完全な消失があった.皮疹からのウイルス分離には成功しなかったが,皮疹の形態,組織像および単純疱疹ウイルス抗体価上昇から汎発性単純疱疹と診断した.

Reticulohistiocytomaの2例

著者: 石田均 ,   田中俊宏 ,   戸田憲一 ,   荻野篤彦 ,   牧野京子 ,   岡田弘

ページ範囲:P.1061 - P.1066

要約 症例1:71歳,男子.約半年前より手指背側,次いで膝,足背,臀部,手掌に一見疥癬を思わせる瘙痒性丘疹を生じた.関節症状および全身症状はみられなかった.症例2:62歳,男子.背部に孤立性の丘疹を生じ.腹部,鼠径部,肘,下腿伸側にも発症した.5年の経過後より扁桃肥大および表在リンパ節が腫脹し,病理組織学的に悪性リンパ腫と診断された.なお,両症例とも播種状丘疹は組織学的にreticulohistiocytomaであった.

エリテマトーデスを思わせた原発性皮膚形質細胞腫の1例

著者: 石田均 ,   田中俊宏 ,   戸田憲一 ,   荻野篤彦 ,   尾口基

ページ範囲:P.1067 - P.1072

 39歳,男.初診約5年前より両胸部,前胸部および背部に扁平隆起性紅斑を生じた.臨床検査所見ではγ—グロブリンが23.6%,IgGが2,100mg/dlとやや高値であった.頭蓋骨X線検査では数個の円形透亮像を認めた.骨髄像は正常であり,またBence-Jones蛋白および血清M蛋白は認められなかった.病理組織学的所見では,真皮の上層〜中層にかけて集塊をなしている形質細胞の密な浸潤が認められた.浸潤細胞はピロニン好性であり,また電顕的にも形質細胞であることがわかった.螢光抗体直接法では,浸潤細胞に一致してIgG,IgAおよびIgMの沈着を認めた.以上より本症を原発性皮膚形質細胞腫と診断した.

Pagetoid Spreadを示した脂腺癌の1例

著者: 高橋秀東 ,   大見尚 ,   矢尾板英夫 ,   上野賢一

ページ範囲:P.1073 - P.1080

 我々は,最近47歳・女性の外陰部に発症し,pagetoid spreadという特異な臨床及び組織像を呈した脂腺癌を経験し,その結節部及びpagetoid spreadの部分の光顕,電顕的観察ならびに文献的検討を行なった.

Malignant Trichilemmoma

著者: 青島敏行 ,   柳橋健 ,   雑賀興慶 ,   今村真治

ページ範囲:P.1081 - P.1084

 69歳,男子の頭部に生じたmalignant trichilemmomaの1例を報告した.臨床的には,くるみ大,半球状,表面花野菜様の灰褐色腫瘤である.組織学的には部位によって3つの異なるタイプが存在する.第1は表皮に連続する腫瘍塊で,中心部はPAS弱陽性のclear cell,辺縁部はbasaloid cellからなるもの,第2は表皮内の小葉状構造で,これらは悪性度は中等度である.第3は角化物質を満たした陥凹を取巻く部位にみられるBowen病様の腫瘍巣で,悪性度は高度で,PAS染色性は非常に弱い.これらの組織所見はPAS強陽性ではないが,森岡の定義にあてはまる.本症の発症病理について文献的に考察した.本症にはtrichilemmoma的要素とBowen病的要素が混在している.

苔癬性紅斑に,24年後,腫瘤形成を来した菌状息肉症の1剖検例

著者: 大西信悟 ,   伊東陽子 ,   浜口次生 ,   仮谷嘉晃 ,   河村幸郎

ページ範囲:P.1085 - P.1091

 37歳男性,13歳頃から生じた苔癬性紅斑に,24年後,腫瘤形成を来して死亡した菌状息肉症の1剖検例を報告した.10年前の初診時所見は浸潤期に相当すると思われるが,浸潤細胞に明らかな異型性は認められず,腫瘤期にはリンパ芽球様の細胞増殖が認められた.腫瘤形成後の経過は急速で,化学療法に反応せず,髄液中に腫瘍細胞が認められ,多彩な神経症状を呈した.剖検時,全身皮膚,髄膜〜脳実質,肝,脾,両腎,両肺及び骨髄への浸潤を認めた.

ホジキン病に合併したEcthyma Gangrenosumの1例

著者: 安野洋一 ,   丸尾充 ,   前田基彰 ,   大瀬千年

ページ範囲:P.1093 - P.1098

 42歳,女子.ホジキン病のためVEMP療法施行中に外陰・肛囲に続き右手指,口角に壊死性の潰瘍が出現した.潰瘍は始め紅斑性腫脹から水疱形成,黒褐色壊死の経過をとり,辺縁が鋭利で深く,黒色痂皮を被る.潰瘍底および水疱内容から緑膿菌を検出し,ecthyma gangrenosumと診断した.ゲンタマイシン,トブラマイシンの投与を行ったが,約2ヵ月後に黄疸を併発して死亡した.本邦では本症の起炎菌は多種で,とくにブドウ球菌性が多いとされているが,現在欧米では本症の診断は緑膿菌によって生じた場合に限り使用されているようである.自験例の概要を報告するとともにこれらの点について若干の卑見を述べた.

女子顔面黒皮症様の色素沈着を示したSjogren症候群の1例

著者: 柴田正之 ,   安江隆 ,   蔡紹嘉 ,   田中隆義

ページ範囲:P.1099 - P.1102

要約 顔面,頸部,上胸部,上肢に瘙痒性紅斑と色素沈着を生じたSjögrcn症候群の40歳女子症例を報告した.顔面の紅斑消腿後の色素沈着は,女子顔面黒皮症様であった.組織学的には,女子顔面黒皮症との間には相違点が認められ,一方,従来報告されているSjögren症候群の紅斑部における組織所見との間には共通点が認められた.検査的には赤沈亢進,白血球減少,リウマチ因子陽性,抗SS-A抗体陽性などが主たる異常所見であり,白血球減少と紅斑との関係について若干の文献的考察を加えた.

1卵性双生児兄弟にみられたBourneville-Pringle母斑症

著者: 森田秀樹 ,   森田美智子 ,   杉浦久嗣

ページ範囲:P.1103 - P.1107

 Bourneville-Pringle母斑症をもつ1卵性双生児例を報告した.症例は15歳の1卵性双生児の兄弟で,兄は中学卒で定職なく,弟は高校に進学しているが学業成績は下位である.兄弟とも本症に定型的な臨床像を呈した.顔面のいわゆる脂腺腫につき,電顕的に観察を行なった.その結果,真皮上層にリンパ球様小円形細胞とともにfibroblast様の明調及び暗調の2種類の細胞が観察された.

回帰性リウマチ

著者: 水谷仁 ,   小西清隆 ,   大西信悟 ,   中野洋子 ,   清水正之

ページ範囲:P.1109 - P.1116

 回帰性リウマチの3例を報告した.患者は36,47,49歳の男子で,四肢の関節には限局性の浮腫性紅斑を伴う関節炎を,指腹及び掌蹠には圧痛のある紅斑を生ずる.皮疹,関節炎共に2〜3日で完全に消退するが,月に1回から数回再発し,各例共10年以上同様発作を繰返している.臨床検査所見には著変なく,皮疹の組織では真皮の浮腫と血管拡張及び血管周囲のリンパ球,多核球の浸潤を認めた.螢光抗体直接法では皮疹部皮膚の真皮血管にC3とフィブリノーゲンの沈着をみた.これらの所見をもとに,皮膚科の立場から,本症の周辺疾患との鑑別と診断基準の作成を試みた.

スポロトリコーシスの2例

著者: 長谷井和義 ,   林部一人 ,   市橋正光 ,   光田篤司 ,   高見寿夫

ページ範囲:P.1117 - P.1119

 62歳,男,症例1の左第4指爪郭部,48歳,女,症例2の左前腕および左下腿に生じたスポロトリコーシスの2例につき,特に治療効果に焦点を絞り報告する.両症例ともヨードカリ内服治療を行ったが,症例1はヨードカリ内服後じんま疹が生じたため,5—fluorocytosine (5—FC)の経口投与に変更し,同時にin vitroで5—FCのMICを菌糸型,酵母型で測定した.症例2および保存株についても同様にMICを測定した.その結果,MICは菌糸型では3者とも500μg/ml以上であり,酵母型では症例1は500μg/ml以上,症例2,保存株では500μg/mlで,5—FCの血中濃度は56μg/mlであった.臨床的にも5—FC投与は皮疹改善に効果を見出せなかった.今回の我々の臨床経験,in vitro結果および文献的考察から5—FCはスポロトリコーシスにはほとんど効なしと考えられた.また5—FC内服後,症例1は日光曝露部に光過敏性紅斑を呈した.

ケジラミとヒトジラミの卵子による鑑別—走査電子顕微鏡像

著者: 熊切正信 ,   安田秀美 ,   村松隆一 ,   浜坂幸吉 ,   服部畦作

ページ範囲:P.1121 - P.1125

 ケジラミとヒトジラミ(アタマジラミ)の卵子を走査型電子顕微鏡で比較した.ケジラミは卵子後端部で毛に付着するが,セメント物質に覆われる傾向にある.卵蓋は大きく瘤状顆粒は16個前後である.一方,ヒトジラミの卵子は全長の約3分の1後端をセメント物質を介して付着するが,セメント物質には覆われず,むしろ露出する傾向にある.瘤状顆粒は小さく8個前後である.これらの特徴から感染源を異にする両昔を卵子の比較からも簡単に鑑別できることが判明した.

編集室だより

雑誌名の省略について

著者: 「臨床皮膚科」編集室

ページ範囲:P.1116 - P.1116

 最近,引用文献に掲載される雑誌名の略称は,1970年にAmerican National Standards Committeeから出された「International List of Periodical Title Word Abbreviations」による略し方が,国際標準として,一般化してきました.皮膚科領域に関係のある言葉の例を下記にあげました.御投稿の際には,これらを参考にして下さい.

連載 皮膚病理の電顕・17

付属器腫瘍(Ⅵ)—エクリン汗口癌

著者: 橋本健

ページ範囲:P.1126 - P.1130

 付属器腫瘍の分化の程度を示す基準としてnevus(organic),ncvoid(organoid),adenoma,epithelioma,carcinomaの順位を設定することは前に述べた1).付属器腫瘍とは各付属器のいろいろな部位から発生,またはその部位に向って分化してゆく腫瘍であり,例えば汗管腫は真皮内導管部で表皮に近い部分に類似の分化を示し1),エクリン汗口腫は表皮内導管部,即ちacrosyringium(終末導管部)に向った分化を示す2).それでは付属器の各々の部分に類似するnevus→carcinomaがあるのであろうか3)? エクリン汗口腫は,その分化の程度からエクリン汗腺の終末導管部の上皮腫(epithelioma)と見做されるが2),その一歩前進した癌が存在する.これがエクリン汗口癌(eccrinc porocarcinorna)4-9)である.
 図46A 脛骨部に隆起した結節がみられる.表面は潰瘍化していたが,この写真の血痂を伴う潰瘍は生検によるものである.好発部位は四肢(特に下肢),顔面,頭部で,転移を起すが初発疹は単発である10).表在性のリンバ管を介して表皮内に侵入し,パジェット様に拡大してゆくepidcrmotropic metastasisがみられることもある5,11,12).エクリン汗腺の癌はその全種類を合わせても非常に稀なものである(14,000の生検材料中1例)13)が,その中では汗口癌が約半数を占める13)

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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