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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科36巻12号

1982年12月発行

雑誌目次

図譜・482

癩腫型癩

著者: 山田清 ,   石橋康正

ページ範囲:P.1146 - P.1147

患者 27歳,男性,沖縄県石垣島出身
初診 昭和55年2月5日

原著

鱗状毛嚢性角化症(土肥)—自験3例と統計的観察

著者: 大河内享子 ,   佐藤昭彦

ページ範囲:P.1149 - P.1152

 16歳,女子および12歳男子,15歳,女子の姉弟にみられた本症の3例を報告し,病因などに関し考按した.

掌蹠点状角化症の1例

著者: 麻生和雄 ,   徳誠吉 ,   穂積豊

ページ範囲:P.1153 - P.1159

 父,妹に同症の認められた掌蹠点状角化症例について報告した.表皮下層から角層までのプレケラチン,ケラチンをアクリルアミドゲル電気泳動によって検索した成績では,明らかな角質形成異常が認められた.

顔面に生じた単発性汗孔角化症の1例

著者: 城野昌義 ,   小野友道

ページ範囲:P.1161 - P.1163

1)34歳,女性.約2年前より顔面に発生した単発性汗孔角化症の1例を報告した.
2)組織所見ではcornoid lamellaを有する典型的汗孔角化症の像を示したが,真皮上層の小円形細胞浸潤が著明であった.
3)臨床像ではいわゆる汗孔角化症4グループ i)classic plaque porokeratosis,ii)disseminated superficial actinic porokeratosis,iii)superficial disseminated eruptive porokcratosis,iv)linear or systematized porokeratosisの何れとも異なる所見が認められた.
4)最近ThomsenらやMehreganらが主張している様に,1つの独立疾患ないしは病型として検討する必要があると考える.

天疱瘡,類天疱瘡,ジューリング疱疹状皮膚炎の統計的観察—東北大学皮膚科教室5年間の観察

著者: 舛眞一 ,   横田美智子 ,   谷田泰男 ,   出光俊郎 ,   三浦隆 ,   清寺眞

ページ範囲:P.1165 - P.1172

 昭和52年秋より昭和56年末にいたる約5年間に,天疱瘡22例,類天疱瘡19例,ジューリング疱疹状皮膚炎3例が認められた.天疱瘡群22例のうち,尋常性天疱瘡が17例,落葉状天疱瘡3例,紅斑性天疱瘡と増殖性天疱瘡が各1例であった.また類天疱瘡のうち1例は良性粘膜類天疱瘡であった.初診時血中抗体は,天疱瘡では22例中20例,類天疱瘡では19例中13例で陽性であった.両名とも血中抗体価は,臨床症状とほぼ相関して変動した.ジューリング疱疹状皮膚炎では,3例中2例で細線維状のIgA沈着が真皮乳頭部に認められ,他の1例は顆粒状であった.類天疱瘡の2例で悪性腫瘍(肺癌,食道癌)の合併が認められた,この2例とも血中抗体は陰性であった.食道癌の症例では,根治的手術後,水疱の新生も止まった.また臨床的に一見ジューリング疱疹状皮膚炎に似るが,螢光抗体法や組織所見で天疱瘡あるいは類天疱瘡と診断された症例がかなり認められた.

疱疹状皮膚炎—IgA沈着を示す1例の報告および本邦例の特徴について

著者: 竹内誠司 ,   田沢敏男 ,   谷沢恵 ,   佐藤良夫

ページ範囲:P.1173 - P.1178

 IgAが主としてfibrillar,一部granularに沈着してみられた31歳,女の疱疹状皮膚炎患者を報告した.また螢光抗体法陽性の本邦例31例につき集計を行い検討した.その結果,本疾患が男性に多くみられること,linear patternを示す症例では水疱が大きい傾向にあること,組織学的に乳頭部微小濃瘍が,lincar patternを示す例で見られない症例があったことは欧米例と一致した.しかし欧米例と異なり,本邦例ではIgAの沈着様式においてlinear patternが多く,HLA-B8はIgAの沈着様式に関係なく認められなかった.またDDSはlinear pattern, papillary patternを示す症例のいずれにおいても良く反応した.小腸粘膜の異常が2例に認められたが,うち1例は欧米例では無関係とされるlinear patternの症例であった.本邦においてfibrillar patternの症例はHLA-B8を有せず,また小腸生検でも正常を示すため,本質的には同様とされながらもgranular patternの症例とはどこか異なる印象をうけた.

D-ペニシラミンによると考えられた天疱瘡様皮膚病変

著者: 加藤宏 ,   橋本隆 ,   加茂紘一郎 ,   西川武二 ,   清水宏 ,   山崎雄一郎

ページ範囲:P.1179 - P.1184

要約 患者,57歳女子.3年余のD-ペニシラミンによるリウマチ様関節炎の治療中に全身の瘙痒感,次いで同剤中止後に四肢の小水疱出現をみた.さらに,その後2ヵ月を経て天疱瘡様皮疹となったが,プレドニゾロン内服治療に速やかに反応した.組織学的に表皮内水疱の形成をみるも,光顕・電顕ともに棘融解は明らかでない.免疫学的には,螢光抗体直接法にて,表皮細胞間・基底膜部に免疫グロブリン沈着あり.免疫電顕にても,lamina lucidaへのIgG沈着が観察された.血中抗表皮細胞間抗体は皮疹増悪時のみ陽性であった.その性状については,通常の天疱瘡の血中抗体との間に差異は見られなかった.自験例は,臨床的,組織学的及び免疫学的に尋常性天疱瘡とは若干の相違を認める.この点,既報告例と比較検討するとともに,考察を加えた.

Recurrent Bullous Eruption of the Hands and Feetの母子例

著者: 古江増隆 ,   余幸司

ページ範囲:P.1185 - P.1190

 Recurrent bullous eruption of the hands and feet (RBEHF)の母子例(37歳,11歳)を報告した.2例ともに生後数ヵ月頃より発症し,瘢痕,稗粒腫,爪変形などを伴わない,主に夏季に出現する両手足の水疱を主訴とした.本邦例4例に自験例を加え,電顕所見も含めて一括して表にした.従来RBEHFはdyskeratosisを伴う基底細胞より1,2層上層の有棘細胞の解離による表皮内水疱であり,基底細胞の解離によって生ずるgen—eralized epidermolysis bullosa simplex (G-EBS)とは趣をやや異にするとされているが,本邦例,自験例ともに光顕的には基底細胞の空胞化と離開による基底膜直上の水疱形成を認め,電顕的には基底層,有棘層下部の裂隙形成,同部の表皮細胞内のtonofilamentの凝集像を認めたことは,G-EBSにおける光顕的電顕的所見と本質的には同一であり,G-EBSの限局型としてのRBEHFの位置づけを強く支持する所見であると考えた.

M蛋白血症を伴った角層下膿疱症

著者: 池川修一 ,   松井雅彦 ,   御子柴甫 ,   大久保正己 ,   北野喜良

ページ範囲:P.1191 - P.1195

 角層下膿疱症(Sneddon & Wilkinson)の49歳,女子の1例を報告した.自験例は32歳のとき,第2子妊娠時に本症に罹患し,以後増悪緩解をくり返していたが,発症17年目の検査で,IgA (κ)・M蛋白血症の合併が見出された症例である.自験例は,妊娠中発症し,出産後も月経前後に,皮疹の増悪を認めることが多く,性ホルモンとの関連を考えさせたこと,M蛋白血症を伴ったことなどが特異であった.
本症は,稀な疾患にもかかわらず,免疫グロブリン高値,M蛋白血症など血清蛋白の異常,骨髄腫の合併などの報告が少なくない.これらの合併症と本症との関連について,若干の考察を加えた.また角層下膿疱症の一部の症例は,骨髄腫の合併も考慮すべきであると考えた.

Congenital Poikiloderma with Bulla Formation and Callus-like Hyperkeratosis

著者: 木村俊次 ,   馬場恵美 ,   籏野倫

ページ範囲:P.1197 - P.1203

 特異な病像を呈したcongenital poikilodermaの15歳男子例を報告した.両親はいとこ結婚であるが家族内に同症はない.身体発育障害,知能障害ともになし.生後1週頃より全身性に水疱,4〜5歳頃から顔面にも細血管拡張性の網状紅斑を主体とする皮疹を生じ,5〜6歳頃から手足に胼胝腫様角化局面を多発した.この他趾爪の変化,舌の白色角化性発疹,軽度の白内障を併発.組織学的に水疱は表皮下に存在したが,電顕的には基底細胞の変化による表皮内水疱で,anchoring fibrilに異常なし.内分泌学的・免疫学的検査を含む諸検査成績に異常なし,過去の報告例との異同につき検討したところ,本例が先天性表皮水疱症単純型の1特異型である可能性は完全には否定できず,なお検討の余地が残されているとはいえ,水疱を伴うcongenital poikilodermaに最も近似することから,表題の如く仮称して報告した.

致死型先天性表皮水疱症(Herlitz)—その1例におけるHemidesmosomeの態度について

著者: 奥田長三郎 ,   近藤裕昭 ,   設楽篤幸 ,   佐藤信輔 ,   佐藤良夫

ページ範囲:P.1205 - P.1210

 致死型先天性表皮水疱症(Herlitz)は未だまれな疾患である.その1例を経験し,電顕的に従来と異なる所見を認めたので報告した.自験例は生下時より四肢に水疱があり,爪の変形や一部の爪の脱落も見られ,種々の治療にもかかわらず生後約3ヵ月半で死亡した.経過中に皮膚の萎縮,瘢痕や稗粒腫は出現しなかった.電顕的にjunctiolysisを確認したが,非水疱部のhemidesmosomeには最近指摘されているような明らかな異常は認められなかった.

良好な経過をとったDiffuse Sclerodermaの1例

著者: 狩野葉子 ,   塩原哲夫 ,   長島正治

ページ範囲:P.1211 - P.1216

 69歳,男性.皮膚硬化が躯幹から始まり,Raynaud現象・手の硬化を欠如していた全身性強皮症の1例を経験した.当初diffuse scleroderma (Tuffanelli)か考えられ,約3年間の観察期間をもったが,現在,皮膚硬化は全く消褪し,内臓器官への侵襲は認められず,全身状態は良好である.
以上の自験例の経験または文献的考察からdiffuse sclerodermaには従来の内臓侵襲が速やかで予後不良のいわゆる悪性型に加えて,自験例のような内臓侵襲のほとんどみられない予後良好な病型の存在することを述べ,後者をその良性型と呼ぶことを提唱した.併せて鑑別診断を行い,治療経過について検討した.

Biphasic Amyloidosisの1例における沈着アミロイドの検討

著者: 前田秀文 ,   北畠雅人 ,   石川英一

ページ範囲:P.1217 - P.1223

 アミロイド苔癬様皮疹と斑状アミロイドーシス様皮疹を共有する44歳,女性例のアミロイドについて検討を加えた結果,1)アミロイド細線維は抗ケラチン抗体と反応し,2)アミロイド細線維間基質にはヘパラン硫酸が豊富に認められた.また,アミロイド苔癬部の表皮内には細胞内小体(intracytoplasmic homogeneous bodies)が散見されたが,アミロイド細線維との関連性は見出し得なかった.

汎発性膿疱性細菌疹の3例

著者: 春日井和子 ,   芝吉輝 ,   福永千嘉子 ,   楠健二 ,   河村甚郎 ,   朝田康夫

ページ範囲:P.1225 - P.1230

 我々は,掌蹠を中心に汎発性に膿疱を生じた3例(51歳女,29歳男,61歳女)を経験した.2例は再発傾向があり,臨床経過,白血球増多,細菌抗原による皮内反応の結果等より病巣感染による掌蹠膿疱症(散布型または全身型)と考えた.他の1例は急性の経過をとり,高ASLO値を示し,Tanの提唱するacutc generalized pustular bacteridに合致するものと考えた.これら3例ならびに類似例の報告を検討し,上記2疾患の経過に差はあるものの,細菌疹という同一の範疇に入るものと考えた.

編集室だより

雑誌名の省略について

著者: 「臨床皮膚科」編集室

ページ範囲:P.1230 - P.1230

 最近,引用文献に掲載される雑誌名の略称は,1970年にAmerican National Standards Cotmmitteeから出された「International List of Periodical Title Word Abbreviations」による略し方が,国際標準として,一般化してきました.皮膚科領域に関係のある言葉の例を下記にあげました.御投稿の際には,これらを参考にして下さい.

連載 皮膚病理の電顕・18

付属器腫瘍(Ⅶ)—エクリン汗腺分泌部の癌(1)

著者: 橋本健

ページ範囲:P.1234 - P.1237

 前回まではエクリン汗腺の導管部,特にその表皮内終末部より由来,またはそれに類似の分化を示す癌につき記述した.細胞があればそれの腫瘍化した状態があり(例えばリンパ球→リンパ腫),組織があればそれの癌化した状態があってよい.従って,エクリン汗腺の分泌部の悪性化した腫瘍が考えられる.分泌部腫瘍の分類には,研究者によりいろいろな方法が提唱されている.三島と神畠1)は,この部分に向った分化を示す悪性腫瘍をeccrine spirocarcinomaと呼んでいる.実際に遭遇する分泌部癌は光顕のレベルでも多様な分化を示し,腺癌(adenocarcilloma),明調細胞癌(clearcell eccrine carcinoma),粘液性癌(mucinouseccrhle carcinoma),更に分泌部と導管部の混在する汗管腫様癌(syringoid eccrine carcinoma)などに分類されているが,これらに当てはまらない例も多い.

これすぽんでんす

中年女性の顔面の色素沈着について

著者: 木村俊次

ページ範囲:P.1238 - P.1238

 荻野氏の論文「女子顔面黒皮症と誤れる両側性太田母斑」(本誌36(9);875,1982)を興味深く拝見しました.私どもの外来でもこの2,3年の間に,顔面に対側性に渇色の色素斑ないし色素沈着をきたした中年女性の症例で,初診時は色素沈着性接触皮膚炎と区別しにくい臨床像を示しながら,アレルゲン検索結果や生検結果などから最終的に両側性太田母斑と診断された症例が相次いで経験されています.組織学的には荻野氏の例と同様に,真皮上層のみならず中下層にもメラニン顆粒に富む細胞が散在性に認められました.
 しかしながら,これらの細胞を真皮メラノサイトと断定するのは組織学的には難しいようであることから,1例について電顕的検索も併せ行ったところ,従来,伊藤母斑1)や太田母斑2)で指摘されている通りの変化,すなわち細胞の周囲に連続性の基底板とその外側の厚い鞘状構造が認められ,これらの細胞がメラノファージや青色母斑の真皮メラノサイトではなく,太田母斑の真皮メラノサイトであることが明らかになりました.これらの症例の詳細は後日報告する予定です.

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臨床皮膚科 第36巻 総索引

ページ範囲:P. - P.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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