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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科36巻2号

1982年02月発行

雑誌目次

図譜・472

陰茎結核疹

著者: 中安清 ,   西村彰文 ,   丸尾充

ページ範囲:P.106 - P.107

患者 48歳,男子
初診 昭和54年3月17日

原著

IgA Linear Dermatosis of Childhood(Chronic Bullous Disease of Childhood)

著者: 松尾仁子 ,   辻卓夫 ,   濱田稔夫

ページ範囲:P.109 - P.113

要約 2歳,男児に生じた水疱症について報告した.初診の約1週間前より顔面・四肢に瘙痒性の紅斑・水疱が出現してきた.組織学的には表皮下水疱と,真皮乳頭層の微小膿瘍を認め,また直接螢光抗体法で表皮基底膜部にIgAのlinear depositsを認めた.臨床検査成績に著変なくヨードカリテストも陰性であった.臨床的,組織学的にはbullouspemphigoid,dermatitis herpetiferms Duhringのいずれとも診断し難いが,螢光抗体法による所見よりchronic bullous disease of childhoodという名称が適切と思われるので報告した.

Plantar Fibromatosisの1例

著者: 太居英夫 ,   久岡千里 ,   奥地敏恵 ,   村松勉 ,   白井利彦

ページ範囲:P.115 - P.119

 69歳,女性の糖尿病に併発したPlantar Fibromatosisの1例を報告した.本症を糖尿病のDermadromeの1つと考える.

Polymorphic Pemphigoidの1例

著者: 橋本隆 ,   杉浦丹 ,   栗原誠一 ,   西川武二

ページ範囲:P.121 - P.123

 64歳,男子.約1年前より略全身に小水疱出現.手掌足蹠に掌蹠膿疱症様の皮疹を認めたが,水疱性類天疱瘡特有の大型緊満性水疱は経過中一度も認められなかった.免疫学的検査は水疱性類天疱瘡に一致し,DDSが有効であった.疱疹状皮膚炎との鑑別が問題となる種々の水疱性類天疱瘡の亜型を文献的に考察し,すべての病型をHoneymanらの報告したpolymorphic pemphigoidとして包括し,水疱性類天疱瘡の一亜型として整理するのが妥当と考え,自験例もpolymorphic pemphigoidに合致するものと考えた.

乳腺線維腺腫

著者: 中野朝益 ,   大熊守也 ,   手塚正

ページ範囲:P.125 - P.128

 14歳,女の乳腺線維腺腫(管内型)の典型例を報告した.本症は乳腺の良性腫瘍のうちで最も多く,乳腺腫瘍全体の5〜10%を占める.しかし大部分外科領域で扱われ,皮膚科医が接する機会は少ない.乳腺腫瘍の鑑別診断上重要と考え文献的考察をおこなった.

水様透明液の漏出を主訴とした皮様嚢腫の1例

著者: 船曳雄一 ,   宮里肇 ,   川村太郎 ,   池田重雄 ,   坂口新

ページ範囲:P.129 - P.132

 生下時から水様透明液の漏出を主訴とする,2歳男児の右前側頭部にみられた皮様嚢腫の1例を報告した.嚢腫の最も深い部分は,頭蓋骨板間層内にあり,内板,外板をそれぞれ外方に圧迫隆起させ,管腔により皮下嚢腫と連絡していた.脳外科で頭蓋骨内嚢腫を,皮膚科で皮下嚢腫を全摘し,術後1年では再発を認めていない.いずれの嚢腫壁も表皮成分で構成され,汗腺,脂腺,毛包が付属していた.

特異な皮膚症状が先行した白血性悪性リンパ腫

著者: 細井洋子 ,   浅井芳江 ,   濱田稔夫 ,   上野隆己 ,   北条憲二 ,   平峯千春

ページ範囲:P.133 - P.139

 47歳,男.大阪府出身.初診の4年前より全身に紅色丘疹および点状出血斑(組織学的にPautrierのmicroabscess様所見を伴う真皮上層の単核性細胞浸潤)を生じ,ステロイドクリームのO.D.T.により皮疹は軽快した.初診1年後,発熱とともに顔面,四肢に紅色浸潤性丘疹を生じ,両鼠径リンパ節腫脹(異型単核性細胞の副皮質域浸潤)および肝脾腫がみられた.末梢血所見では白血球48, 800/mm3,リンパ球84%で異型リンパ球を含んでいた.Prednisoloneおよびvincristineを併用し,丘疹およびリンパ節腫脹はほぼ消失した.翌年,発熱とともに全身リンパ節の著明な腫脹をきたし,リンパ節は悪性リンパ腫細胞のびまん性浸潤におきかえられ正常構造は破壊されていた.VEMP療法,放射線治療を行なうも効果なく,末期には白血化をきたし死亡した.剖検で全身リンパ節,諸臓器にリンパ腫細胞のびまん性浸潤がみられたが,骨髄の侵襲はごく軽度であった.
皮疹を初発する悪性リンパ腫症例は少ない.本例は特異な皮疹を先行した興味ある症例であり,組織学的には非ホジキンリンパ腫のpleomorphic type (おそらくT細胞性)に相当すると考えられる.

多発性皮膚平滑筋腫

著者: 青島敏行

ページ範囲:P.141 - P.144

 40歳,女子の頸部,胸部にみられた多発性皮膚平滑筋腫の1例を報告した.皮疹は粟粒〜小豆大,淡褐色丘疹で自発痛はなく,子宮筋腫の合併もなかった.本邦報告47例について文献的考察を試みた.男女差は2:3で女子に多く,年齢的には男子では10歳代,女子では30歳代に約半数が発症する.好発部位は女子では上肢,胸部,背部の順,男子では上肢,背部,肩の順で,男女共下半身には少ない.子宮筋腫合併は30,40歳代発症例の半数近くにみられ,本症との関連が示唆される.男子では68%に自発痛が認められたが,女子では疼痛のないものが半数近くあり,疼痛は本症の必発症状ではない.疼痛のある例では皮疹が小豆大以上のものが大部分であり,部位的には背部,肩,下半身に皮疹を有するものに疼痛が多くみられた.

悪性萎縮性丘疹症(Degos)—症例報告と本邦報告例のまとめ

著者: 荻野篤彦 ,   樋口貴子 ,   山元真理子 ,   滝川雅浩

ページ範囲:P.145 - P.150

 32歳の主婦.3年前より悪性萎縮性丘疹症(Degos)に特有な皮疹が顔面・頭部を除く全身性に生じ,5ヵ月前に腹膜炎症状を起こし開腹術を受けたが,その後良好に経過した.約1年半の間,アスピリンとペルサンチンの併用療法を続けたが皮疹はほとんど反応していない.鉄欠乏性貧血あり.皮疹の螢光抗体法で真皮の血管壁およびその内腔にIgM・C1qの沈着.電顕で血管内皮細胞および線維芽細胞内にウイルス様管状構造を観察した.
本症は主に欧米で報告され,現在まで約80例が集められている.本邦でも自験例を含めて6例が報告されており,うち3例がいずれも急性腹膜炎にて死亡している.本邦では女性例が多いということ以外に,欧米の報告例と比較して箸しい差異はない.

皮膚に初発したLymphoblastic Lymphomaの1例

著者: 片山勲 ,   扇田智彦 ,   中山秀夫

ページ範囲:P.151 - P.154

 LSG分類を含む最近のリンパ腫分類は例外なく,リンパ芽球型リンパ腫を独立疾患として別個に扱っている.若年者に縦隔洞腫瘍として初発し,急性リンパ性白血病を続発して死の転帰をとるのが定型的な臨床像とされているが,皮膚に初発することも稀でない.また,新しい化学療法により予後の著しい改善もみられつつある.本報告例は3歳の少女で,顔面のトマト状腫瘤として初発し,治療により一時寛解したが,急性リンパ性白血病を続発して間もなく死亡した.文献によれば,(1)リンパ芽球型は非ポジキンリンパ腫の3.0-11.8%を占め,(2)リンパ芽球型リンパ腫の6,7-11.0%が皮膚に初発し,(3)皮膚に初発する非ポジキンリンパ腫(mycosis fungoidesを除く)の5-12%がリンパ芽球型である.

爪変形を伴った両側性線状苔癬

著者: 戸田憲一 ,   堀尾武

ページ範囲:P.155 - P.158

 3歳,女.右肩から右上肢外側にかけて並びに左殿部から左大腿屈側に及ぶ線状に連なる皮疹と,右拇指爪に縦割をみた線状苔癬を報告した.本疾患は片側性かつ単発例が多く,本例のように爪変形を伴い,両側性の皮疹分布を示した症例の本邦における記載は過去にみられない.本例を線状苔癬と診断した上で,本疾患とその皮疹分布,とくに爪変形との関連について若干の文献的考察を行った.

乳房外Paget病の3例

著者: 猿田基司 ,   飯塚一 ,   三浦祐晶

ページ範囲:P.159 - P.163

 典型的な乳房外Paget病3例を報告した.第1例は82歳男性の肛囲ならびに外陰部に存在し,組織学的に腫瘍細胞巣は表皮内に限局していた.コバルト照射により治療したが再三再発をみた.第2例は78歳男性の外陰部に存在し,組織学的に面皰癌であった.外科的治療を施行したが,術後脳血栓症を併発した.第3例は71歳男性の外陰部に存在し,組織学的に面皰癌であった.外科的に治療を行ない,現在経過観察中である.乳房外Paget病の起源および治療法の選択について考察を加えた.

多形紅斑を伴ったBcell Lymphoma

著者: 西尾千恵子 ,   神保孝一

ページ範囲:P.165 - P.169

 全身の滲出性紅斑を主訴として来院し,全身的検索にて後腹膜原発のB cell ly—mphomaが確認された1例を報告した.皮疹は一部に水疱を有する境界鮮明な浸出性紅斑で,四肢では虹彩状,躯幹では連環状ないし地図状の局面を形成し,中心部は色素沈着を残して治癒傾向を示した.組織学的に真皮の強い浮腫と血管周囲のリンパ球性細胞浸潤を示し,異型細胞は認められなかった.螢光抗体直接法で表皮基底膜部の免疫グロブリン,補体の沈着は認められなかった.Lympbomaに合併したerythema multiformeと診断した.悪性腫瘍に合併する紅斑性病変を文献的に考察し,occult malignancy検索の必要性を強調した.

Acral Lentiginous Melanoma

著者: 寺尾祐一 ,   浅井芳江 ,   濱田稔夫

ページ範囲:P.171 - P.176

 51歳,女性の右第3指末節に原発したacral lentiginous melanoma (ALM)の1例を報告した.初診の約7年前に同部に外傷の既往があり,以後褐色調の色素斑に気付いたが放置していたところ,初診の約6ヵ月前に色素斑部に,表面に潰瘍を有する結節を認め,治癒しにくいため当科を受診した.原発巣の組織像は,色素斑部では表皮基底層に異型のメラノサイトの増殖と,多形性を示す腫瘍細胞から構成される胞巣が存在し,腫瘤部では真皮全層に亘って,主として紡錘形の腫瘍細胞が密に浸潤している.Dopa反応はいずれの部位の腫瘍細胞もdopa陽性を示した.ALMの組織像と他のmelanomaの組織像との鑑別について若干の考按を試みるとともに,ALMは増殖過程がradial growthphaseとvertical growth phaseの二相性を有し,予後の悪いもので,悪性黒色腫の第4の病型として一つのentityをもつものであることを強調した.

Basal Cell Nevus Syndrome—父子例の報告

著者: 仲村洋一 ,   大槻典男 ,   福代良一

ページ範囲:P.177 - P.181

 4歳の長女を発端者とし,1歳の次女と36歳の父にも皮膚症状を認めたBasal cellnevus syndromeの父子例を記述した.長女は左側の眼瞼下垂,両眼の軽度離開,顔面の色素沈着・黒点・稗粒腫,両側手掌のpits等の症状を示した.次女は顔貌が長女に類似し,両側の掌蹠にpitsがあった.父の両側手掌にもpitsを認めた.長女の顔面の黒点は真皮上〜中層に位置した花模様をなす基底細胞上皮腫様胞巣から成っており,またpitsの組織像では3例ともに角質菲薄と下方表皮の蕾状増殖がみられた.3例とも骨奇形・その他の異常はなかった.

編集室だより

雑誌名の省略について

ページ範囲:P.119 - P.119

 最近,引用文献に掲載される雑誌名の出各称は,1970年にAmerican National Standards Committeeから出された「International List of Periodical Title WordAbbreviations」による略し方が,国際標準として,一般化してきました.皮膚科領域に関係のある言葉の例を下記にあげました.御投稿の際には,これらを参考にして下さい.

薬剤

悪性黒色腫に対するDacarbazine(DTIC)の臨床的研究

著者: 池田重雄 ,   石原和之

ページ範囲:P.183 - P.188

はじめに
 本邦における悪性黒色腫による死亡数は,昭和54年人口動態統計によれば240人であり,近年はやや上昇の傾向にある.本症の治療はできるだけ早期に発見し,十分な外科療法を行うことが第一であることは論を待たないが,初期症状が余りに目立たず,患者が見過しやすく,そのうえ症状の進展が速いため,残念ながら早期における適切な外科治療が及ばない場合が多い.
 Dacarbazinc(DTIC)は1959年に初めて合成され,米国National Cancer Instituteが中心となって基礎研究,臨床研究を行って開発された抗癌剤である1,2).実験腫瘍ではL 1210白血病,Sarcoma 180などに対する効果が認められ3),臨床的には悪性黒色腫に対し特に高い効果が認められた4〜6).悪性黒色腫は化学療法に反応しにくい腫瘍であり,それまで多数の抗癌剤が試みられてきた7,8)が,満足しうる成績が得られていなかった.しかし,DTICが開発されるに及んで,DTICを中心に,他のいくつかの抗癌剤との組み合わせによる化学療法が一般に行われるようになっている,DTICは米国においては1975年に市販が許可され,現在では世界各国で使用されている.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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