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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科36巻3号

1982年03月発行

雑誌目次

図譜・473

アジソン病

著者: 久野尚子

ページ範囲:P.202 - P.203

患者 73歳,男性
初診 昭和54年11月28日

原著

Symmetrical Lividities of the Soles of the Feetの2例

著者: 吉国好道 ,   数田稔

ページ範囲:P.205 - P.207

 32歳女性の足底から足縁,41歳女性の足底から足縁,さらに足背に生じたSymme—trical lividities of the soles of the feetの2例を報告した.臨床所見は健常部とは明瞭に境界された軽度に隆起した紅斑性局面で,症例2では蒼白な感を有していた.組織学的には表皮の密な増殖と真皮乳頭層の血管拡張が認められた.症例1においては小さな靴が,症例2においては長時間の雨靴の使用が大きな原因と考えられた.

経静脈高カロリー輸液施行中に発生した腸性肢端皮膚炎様皮膚病変

著者: 嵯峨賢次 ,   本間光一 ,   千葉雅史 ,   竹田勇士 ,   杉山貞夫 ,   久保富夫 ,   山本直

ページ範囲:P.209 - P.212

 経中心静脈高カロリー輸液(IVH)施行中に発症した腸性肢端皮膚炎様皮膚病変の2症例を報告した.症例1は62歳の女性である.小腸切除術後の縫合不全の為にIVHを受けていた.IVH開始後70日目から四肢末端,開口部,間擦部位に水疱を伴った紅斑が出現し,水疱はビラン,痂皮化した.血清亜鉛は19μg/dlに低下していた.症例2は57歳の女性である.胃癌による通過障害の為にIVHを受けていた.IVH開始5ヵ月後に症例1と同様な皮疹が出現した.血清亜鉛は35μg/dlに低下していた.組織学的には表皮にはacan—tholysisとdyskeratosisが,真皮には強い浮腫が存在した.症例1は硫酸亜鉛の内服により,症例2は亜鉛製剤の点滴静注により,皮疹は速やかに消失し,血清亜鉛は正常値にもどった.

好酸球性膿疱性毛嚢炎の2例

著者: 安達幸彦 ,   石川英一 ,   服部瑛

ページ範囲:P.213 - P.219

 いわゆる好酸球性膿疱性毛嚢炎の2例を報告した.第1例では顔面,躯幹,および四肢に毛孔一致をみることの多い紅色丘疹ないし膿疱が散在,集簇ないし局面を形成し,組織学的に表皮,毛嚢,脂腺内に好酸球性膿疱を認めた定型例であった.第2例はほぼ掌蹠に限局し小水疱が散在性に認められ,組織学的に多数の好酸球を含有する表皮内水疱がみられた.本例は非定型例であるが,従来の報告より掌蹠に皮疹が生じた症例と考えた.本症の病因はなお不明であるが,第1例で施行したパッチテスト,皮内反応の結果から非特異的刺激で本症皮疹が誘発される可能性がうかがわれた.また第2例では発熱に続いて,末梢血好酸球増多,肝機能障害および皮疹の出現を認めたことで定型例と異なる発症過程を示した.

Primula obconicaによる接触皮膚炎

著者: 崔洙公 ,   新井裕子 ,   永井隆吉

ページ範囲:P.221 - P.225

 昭和56年2月から6ヵ月の間に18名のPrimula obconicaによると思われる接触皮膚炎の患者を経験した.患者のほとんどが中年以上の主婦であり,皮疹の好発部位は顔・手・前腕・頸部であった.allergenであるpriminが入手不能のため,パッチテスト用試薬は植物から調製しなければならないが,priminの含量が季節的影響を受けるため,至適濃度の試薬を作るのが難かしい.われわれの行なったパッチテストの方法を紹介し,感作の問題,問診上の注意に触れ,また最近この接触皮膚炎が急増している社会的背景についても探ってみた.

Subcorneal Pustular Dermatosisを考えさせた再発性環状紅斑様乾癬の2例

著者: 池端千佳子 ,   堀尾武 ,   堀口典子 ,   堀口裕治 ,   尾崎元昭

ページ範囲:P.227 - P.231

 再発性環状紅斑様乾癬(E.C.R.様乾癬)の2症例を報告した.臨床的には2症例とも,subcorneal pustular dermatosis (S.P.D.)を強く疑わしめたが,組織学的には,皮疹の採取時期,場所により,また,同一切片上にでさえ,典型的なS.P.D.像を示す部分と,Kogojの海綿状膿疱を認める部分の両者が見られたことより,S.P.D.よりE.C.R.様乾癬に近い症例と考えられた.又,臨床的にも,皮疹の形態,好発部位,経過などから考えてE.C.R.様乾癬として矛盾はない.このように,E.C.R.様乾癬とS.P.D.の境界領域の症例が存在する事から,両疾患が,極めて近縁な関係にあるのではないかと推論した.

Acute Febrile Neutrophilic Dermatosis(Sweet)—表皮真皮接合部にC3,C4およびIgMの沈着を認めた症例

著者: 辻正幸 ,   熊野公子 ,   谷昌寛

ページ範囲:P.233 - P.236

 31歳,家婦.顔面,四肢,頸部,背部の有痛性隆起性浸潤性紅斑と39〜40℃の発熱,並びに末梢血白血球増多,CRP強陽性,赤沈の亢進等の所見を認めた.病理組織学的には,真皮全層に密な好中球,単核球から成る細胞浸潤を見,多数のnuclear debrisを認めた.螢光抗体直接法にて,病巣部表皮真皮接合部にC3,C4およびIgMのlincarな沈着を認め,Ⅲ型アレルギーを示唆する興味ある所見と思われた.

悪性腫瘍を合併したSweet病の2例

著者: 篠田英和 ,   大石信美 ,   吉田彦太郎

ページ範囲:P.237 - P.242

 悪性腫瘍を合併したSweet病の2例を報告し,若干の文献的考察を行った.症例1:61歳,女性.高熱と両手掌,アキレス腱上方の有痛性紅斑,著明な膝関節痛があり,同時に性器出血を認め子宮頸癌(carcinoma in situ)と診断された.症例2:72歳,男性.胃癌術後経過観察中,発熱,両手掌に有痛性の紅斑と肩関節痛を認めた.症例1, 2ともに組織所見はSweet病に一致するものであった.現在まで,悪性腫瘍を合併するSweet病は自験例を含め16例報告されている.悪性腫瘍を合併しないSweet病と比較すると,40〜50歳代に多い,性差は認められない,など2点があげられた.合併する悪性腫瘍は白血病が75%を占め,しかも骨髄性白血病が大部分であった.一方,自験例のような上皮性悪性腫瘍を合併した症例の報告は少なく,両者の関連が有意であるか否かは不明である.しかし将来の統計学的検討の資料の1つになることを期待して2症例を報告した.

木村病の姉妹例

著者: 太居英夫 ,   久岡千里 ,   奥地敏恵 ,   村松勉 ,   林宏治 ,   坂本邦樹

ページ範囲:P.243 - P.247

 木村病の姉妹例を報告した.患者は38歳,36歳の主婦で臨床的,病理学的にいずれも典型例であった.木村病についての報告は本邦において既に300例を越すが,著者らの調べた限り,家族内発症例は見当らなかった.したがって本症の病態に家族内発症因子を窺うことは不可能であり,今回の報告例も偶発である確率が高い.

索状硬結を呈したAngiolymphoid Hyperplasia with Eosinophilia

著者: 大西一徳 ,   石川英一

ページ範囲:P.249 - P.252

 27歳男子の前額部索状硬結としてみられたangiolymphoid hyperplasia with eosi—nophiliaの1例を報告した.臨床的に索状硬結を呈した本症報告例は未だないが,組織学的には幼若な血管増殖,好酸球を多数伴うリンパ球浸潤およびリンパ濾胞様構造を認め,また末梢血好酸球増多あり,これまでの本症報告例の記載と一致する。ただし,本症と類似点の多い木村病では索状硬結の報告例がある.

SLEと中枢神経障害—痙攣発作と脳萎縮を起こした1例

著者: 堀越貴志 ,   本間光一 ,   神保孝一

ページ範囲:P.253 - P.257

 SLEの中枢神経障害は,多彩な精神神経症状を呈し,予後も重篤であることが多い.患者:30歳,女子.SLEで入院加療中,突然,寡黙,見当識障害,軽度の痴呆状態を呈し,数日後に,全身痙攣発作を起こし昏睡状態に陥った.その後,意識障害,脳萎縮を残した.頭部CTスキャンで,両側前頭葉白質,左側頭葉実質および左内包後脚部の低吸収域と,脳室,脳溝の拡大を認め,脳波では,α—波は認められず,low voltage, slow waveが主体で,広汎な脳機能低下を示した.臨床的には,視野失認,発語障害,構語障害,失語症,難聴および右下肢の軽度の尖足を残した.SLE患者では,精神神経症状が,臨床的に出現する以前から,微細な脳血管炎に基づく脳実質病変が進行している可能性があり,事前に脳波,CTによる検索を実施し,早期診断および治療に結びつける必要があることが示唆された.

結節状皮疹を認めた汎発性鞏皮症の1例

著者: 北畠雅人 ,   石川英一 ,   斉藤義雄

ページ範囲:P.259 - P.264

 59歳,女性.レイノー現象に続いて,手指の短縮,拘縮,前腕から手指,足趾,顔面の皮膚硬化の出現したAcrosclerosis型(タイプⅡ)と思われる汎発性鞏皮症において,その項背部,胸腹部に皮膚面より隆起する結節性皮疹の合併を認めた.組織学的には著明な真皮の肥厚と,特に下層に膠原線維の塊状膨化を認め,電顕的に膠原線維束の配列不整,膠原細線維の大小不同があり,鞏皮症,とくにモルフェアに一致する所見であった.結節性病変は他の鞏皮症病変とともに出現し,鞏皮症病変の軽快とともに軟化するものがあるのを認めた点,汎発性鞏皮症の皮膚病変の1表現型と考えられる.その原因につき,有機溶媒との接触,薬剤の摂取の有無,結節性皮疹内の好酸性細菌の有無について調べたが,とくに原因と思われるものは発見できなかった.

モルフィア様病変および皮下結節を伴ったCRST症候群

著者: 野村和夫 ,   三橋善比古 ,   門馬節子 ,   古川隆 ,   羽田知子

ページ範囲:P.265 - P.269

 23歳女,約8年前より両下腿に限局性皮膚硬化があり,2年前よりレイノー症状,手指の硬化が出現し,また殿部,下腿に皮下結節がみられている.顔面,胸部などに多数の毛細血管拡張があり,下肢X線で皮下石灰化像を認め,全身性強皮症,とりわけCRST症候群が考えられた.下腿の局面の組織は膠原線維の増生,血管の閉塞性変化が主体であり,この部の螢光抗体直接法でIgG, A, M沈着がみられた.皮下結節部の組織は脂肪織内塞栓形成,真皮小血管の閉塞性変化であった.検査では,免疫グロブリン高値,DNCB感作不成立,リンパ球幼若化反応低下など全身的に免疫異常の存在が疑われた.これらのことから,CRST症候群,下腿の限局性皮膚硬化,皮下結節は偶然の合併ではなく,血管変化,免疫異常などを基盤とした一元的な病態と考えられた.

皮疹部に多量のムチン沈着を認めた全身性エリテマトーデス—症例報告

著者: 岡田芳子 ,   大槻典男 ,   川島愛雄 ,   三崎俊光 ,   岡田保典

ページ範囲:P.271 - P.277

 症例は22歳の男で,顔面・四肢・背部に広汎な皮疹を示した全身性エリテマトーデス(SLE)の患者である.それら各所の皮疹では組織学的並びに螢光抗体法においてSLEに一致する所見がみられたが,そのほか,皮疹部の真皮内に多量のヒアルロン酸の沈着のあることが組織化学的並びに電顕的に証明された.なお,皮疹部の真皮の血管周囲には線溶活性の低下が認められた.

IgG-IgM混合型クリオグロブリン血症の1例

著者: 菅野聖逸 ,   松尾聿朗 ,   只野寿太郎 ,   岡島慶明

ページ範囲:P.279 - P.282

 64歳,主婦.両下腿の紫斑と足背の潰瘍,両手指尖部の欠損,レイノー症状などの典型的な臨床症状と,既往歴に潰瘍性大腸炎,梅毒のあるIgG-IgM混合型クリオグロブリン血症の1例を報告した.クリオプロテインの分類,およびクリオグロブリン血症の原因,分類についてimmune complexの重要性を強調し,さらにクリオグロブリン血症をcryoimmune complex diseascとして考按した.

いわゆる悪性関節リウマチと思われる1例

著者: 木村恭一 ,   元木良昭 ,   三宅孝弘 ,   藤田甫 ,   福代新治

ページ範囲:P.283 - P.288

 56歳,女子.慢性関節リウマチの経過中に,全身症状,皮膚潰瘍,Livedo,末梢神経炎などの関節外症状を来し,発病以来4年弱で死亡した1例を報告,いわゆるリウマチ血管炎の臨床病理と発症機序について,若干の検討を行った.

電顕上3種類のケラトヒアリン顆粒の認められた遺伝性掌蹠角化腫

著者: 手塚正 ,   平井玲子

ページ範囲:P.291 - P.295

 19歳,男子の手掌指腹に指頭大までの胼胝状角化局面,足底にビマン性で一部斑状に著しい角化を示す角化腫について報告した.本症は3代にわたって優性遺伝し,組織学的にHypergranulosisが認められ,電顕的に3種類の,それぞれ電子密度の異ったケラトヒアリン顆粒生成が認められた.Marginal bandは正常に生成されていたが,層板顆粒の数は正常足蹠表皮に認められる数に比較して明らかに減少していた.

いわゆる多発性斑状色素沈着症小児例

著者: 徳留康子 ,   相場節也 ,   大河内享子 ,   舛真一 ,   三浦隆

ページ範囲:P.297 - P.300

 多発性斑状色素沈着症と思われた3小児例を報告し,本症の診断基準などに関し考按した.

肥大および萎縮を伴ったKlippel-Trenaunay-Weber症候群

著者: 山崎正博 ,   山崎玲子 ,   地土井襄璽

ページ範囲:P.301 - P.305

 28歳,女子.顔面左側と左下肢の肥大,口唇内側,躯幹から四肢にかけての単純性血管腫,および両大腿の静脈怒張,静脈瘤を呈し,さらに左上肢の萎縮を伴っている.血管造影にて肥大した左下肢の深部静脈叢の異常ならびに萎縮した左上肢の橈骨動脈の閉塞を認めた.肥大に併せて萎縮を伴うKlippel-Trenaunay-Weber症候群と考え,これを報告するとともに,本症候群における脈管系異常の意義について推察を述べた.

編集室だより

雑誌名の省略について

ページ範囲:P.257 - P.257

 最近,引用文献に掲載される雑誌名の略称は,1970年にAmerican National Standards Committeeから出された「International List of Periodical Title WordAbbreviations」による略し方が,国際標準として,一般化してきました.皮膚科領域に関係のある言葉の例を下記にあげました.御投稿の際には,これらを参考にして下さい.

これすぽんでんす

網状肢端色素沈着症—金本氏らの論文を読んで

著者: 荒川保徳

ページ範囲:P.306 - P.306

 本症の発生分布については東日本皮膚科学会(昭56,9月.秋田)でも討論がなされ興味深く拝聴した.東大江上波夫教授(東洋史・考古学)は縄文時代人が日本全土に行き渡っていたところに,弥生時代以降,農耕民族や騎馬民族が入って来て縄文人は南北に分けられ,その結果,九州北部から瀬戸内を通って畿内,伊勢湾あたりとその外側(九州南部を含む)では頭の形も気質も違うと云う.また京都芸大梅原猛教授(哲学)も縄文時代人の日本に弥生時代人が進入し,九州〜近畿地方を中心にして日本国を統一し,日本固有の土着民は北と南に追われ,その結果,人種において,言葉において,また風習においても琉球がアイヌに似ていると云っている.こうしてみると此の病気のルーツは案外,縄文時代にまでさかのぼるのではあるまいか.非常にロマンを秘めた疾患のように思われる.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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