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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科36巻4号

1982年04月発行

雑誌目次

図譜・474

肘窩に単発した嚢胞型基底細胞上皮腫

著者: 佐山重敏 ,   田上八朗

ページ範囲:P.318 - P.319

患者 79歳,男
初診 昭和54年9月18日

原著

Diphenylhydantoinの内服が有効であったEpidermolysis Bullosa Hereditaria Dystrophicaの1例

著者: 北島康雄 ,   森俊二

ページ範囲:P.321 - P.326

 22歳,男性.生下時から水疱形成,瘢痕形成をくりかえし,指趾の爪の欠損,指趾の変形拘縮が発生.また,上背部には爪甲大の象牙色の扁平隆起性皮疹が散在性,一部集簇,融合性に存在.組織学的に基底膜下に水疱形成がみられた.臨床と組織所見から栄養障害性先天性表皮水疱症(epidermolysis bullosa hereditaria dystrophica)と診断した.Diphenylhydantoin(アレビアチン®)を経口投与したところ,血中濃度10〜15μg/mlで水疱の発生がおよそ1/3に抑制された.この薬剤の作用機序について考察した.

家族性良性慢性天疱瘡の1例

著者: 森田美智子 ,   白井利彦

ページ範囲:P.327 - P.332

要約 46歳,男性.初診の約1年前より間擦部に瘙痒性皮疹の出現した家族性良性慢性天疱瘡に外科的治療を施行し,良好な結果を得たので報告した.

Duhring疱疹状皮膚炎—細線維状および顆粒状沈着について

著者: 五十嵐良一 ,   須藤成章 ,   諸橋正昭 ,   岡吉郎

ページ範囲:P.333 - P.338

要約 49歳,男子のDuhring疱疹状皮膚炎の症例を報告した.33歳頃発症し,瘙痒を伴う紅斑・小水疱が顔面,頸部,胸部,背部および両上肢に散在性に拡大した.34歳から現在までDDSを投与され,皮疹はDDSで良くコントロールされている.皮疹の再発時に皮疹部および無疹部の螢光抗体法による検討を行ない,細線維状のIgA沈着を両者に,また顆粒状のC3沈着を前者に認めた.さらに切片標本の切る角度とIgAの沈着形式との関係について,無疹部皮膚を使用して検討した.この結果からIgAの細線維状沈着と顆粒状沈着はむしろ異なった沈着形式である可能性が示唆された.

Scar-forming Pemphigoid

著者: 長尾洋

ページ範囲:P.339 - P.345

 63歳,家婦.主に頭,顔,頸に紅斑で始まり,容易に結痂し,糜爛ないし潰瘍を生じる症例を報告した.組織学的には表皮真皮接合部に裂隙ないし解離を認め,螢光抗体直接法により基底膜部にC3とC1qの線状ないし顆粒状沈着を証明した.当初DLEを疑い精査加療したが,各種外用剤は無効であり,副腎皮質ホルモン剤の全身投与にも強い抵抗性を示した.経過中病勢の最盛期には眼,口腔や鼻咽喉にも粘膜病変を認め,血中抗基底膜抗体(IgG,32倍)を証明した.そして皮疹の治癒に際して瘢痕化を認めた.

慢性甲状腺炎を合併した水疱性類天疱瘡の1例

著者: 四本秀昭 ,   前田宣久 ,   田代正昭

ページ範囲:P.347 - P.351

 慢性甲状腺炎と水疱性類天疱瘡の合併した,54歳,女子例を報告した.教室で最近経験した水疱性類天疱瘡6例の自己抗体の検索では,本症例のみがマイクロゾームテスト,サイロイドテスト高値を呈した.水疱性類天疱瘡と自己免疫疾患との合併例,自己抗体の出現頻度について文献的考察を行なった.本症例は水疱性類天疱瘡の自己免疫的性格を更に支持するものと考えた.

Cryosurgeryが奏効したGiant Condyloma(Buschke-Loewenstein)の1例—症例報告と本邦例の集計

著者: 早川和人 ,   渡辺知雄 ,   村木良一 ,   加茂紘一郎

ページ範囲:P.353 - P.360

 42歳男子の陰茎亀頭部に生じ,cryosurgeryにより治癒せしめたgiant condyloma(Buschke-Loewenstein)の1例を経験した.著者らが渉猟し得た限りでは,本邦報告例は自験例を含め64例を数える.自験例の報告とともに本邦例について若干の考察を試みた.本症に対する治療法としては,古くより種々の方法が試みられているが,電気凝固療法は悪性化の誘因となり易く,最も不適当な治療法と考えられる.また機能面も考慮にいれた場合,外科的な治療法よりもcryosurgeryが勝ると考えられる.自験例では電顕的に錯角化部の細胞核内にウイルス様粒子の集積像が認められ,病因との関連性が示唆されるが,かかる所見については他に報告をみない.

Bowenoid Papulosis—高齢男子例の螢光抗体法的検索

著者: 小松威彦 ,   木村俊次 ,   原田玲子 ,   稲本伸子

ページ範囲:P.361 - P.365

 60歳,男子.約2ヵ月前から亀頭および包皮に黒褐色調皮疹が出現.組織学的にBowen病に一致する所見を得た.電顕的には有棘層上層〜角質層下部のケラチノサイト核内に,ヒト乳頭腫ウイルス様粒子を見出した.さらに抗ヒト乳頭腫ウイルス抗血清を用いた螢光抗体間接法を施行し,表皮上層の核に一致する特異螢光を得た.Bowenoidpapulosisは一般に40歳以下に多く,それ以上は稀で,本症例は本邦最高齢と思われる.また今回の検索により,本症とヒト乳頭腫ウイルスとの関係は,さらに確実性を増したといえる.

Eccrine Angiomatous Hamartomaの2例

著者: 井上邦雄 ,   松本吉郎 ,   深水秀一 ,   森口隆彦

ページ範囲:P.367 - P.370

 6歳男児と2歳女児の下肢に発生したeccrine angiomatous hamartomaの2例を報告した.本症は血管腫様組織にエックリン汗腺の増殖を伴う稀な疾患である.過去の報告例をも含めて本症の概要について述べた.自験例の第1例は典型例であったが,第2例は臨床像,組織像ともに,一見,被角血管腫を思わせる点で特異な症例であった.また,本症はsudoriparous angiomaという名称で呼ばれることもあるが,われわれは非発汗型のものも含めて,組織学的所見からeccrine angiomatous hamartomaという名称を採用した.

"Large Cell Lymphocytoma"と思われる1例

著者: 崔洙公 ,   長谷哲男 ,   中嶋弘 ,   永井隆吉 ,   平井義雄

ページ範囲:P.371 - P.373

 59歳,女子.半年前に出現した頭頂部の赤褐色腫瘤を摘出したところ,特異な組織像を呈していた.真皮全層に著しい多型性を示す巨大なリンパ球様の細胞と均一な小リンパ球との大小2種の細胞が,それぞれ独立に集積して密に浸潤し,両者が相接する部分に移行は認められず,境界明瞭であった.悪性リンパ腫かcutaneous lymphoid hyperplasiaかに関して諸説紛紛として見解の一致をみなかったが,1980年にDuncanらが新たに提唱した"Large Cell Lymphocytoma"にきわめてよく似ており,両者は同一の疾患と思われた.われわれの症例を報告し,この新しい疾患概念に対し考按を加えてみた.

悪性末梢部汗管系腫瘍—Malignant Hidroacanthoma SimplexおよびEccrine Porocarcinoma—を生じたエクリン汗器官母斑

著者: 谷沢恵 ,   岡吉郎 ,   日戸平太

ページ範囲:P.375 - P.381

 84歳,女子の臀部に生じた,多彩な組織像を示すエクリン汗器官系腫瘍を報告した.この腫瘍には表皮内汗管,真皮内汗管および分泌部とエクリン汗器官全体の奇形的変化がみられ,また毛嚢脂腺の欠損と起毛筋の増加,拡張した静脈などを認め,これを毛嚢脂腺系,血管系の異常を伴う一種のエクリン汗器官母斑と考えた.この腫瘍の中心部では細胞明澄化を示すhidroacanthoma simplex (HS)の像がみられる.また末梢部汗管の奇形の特に著明な部ではHS腫瘍胞巣の巨大嚢腫化,表皮内転移,真皮内浸潤像を認め,これに加えてクチクラを伴う管腔形成性の腫瘍胞巣と著明な異型性を示す角化細胞の胞巣がみられた.これらは母斑性の末梢部汗管細胞を起源としてH.S.とeccrine poromaの両型の,異なった方向への分化を示す腫瘍が発生し,それぞれが種々の段階の悪性化像を示したものと考えた.

Lymphangioma Circumscriptum—自験3例と本邦報告例の統計的観察

著者: 末木博彦 ,   末次敏之 ,   藤沢龍一 ,   橋本謙

ページ範囲:P.383 - P.387

 過去10年間に経験したlymphangioma circumscriptumの3例について報告した.症例1:20歳,女子.6年前に放射線療法を受けたが,5年後に再発,軟レ線療法にて略治した.症例2:28歳,男子.10年前に発症.上腕伸側に小水疱が集簇した1.5×1.8cmの局面.症例3:16歳,女子.2歳頃より漸次増加し,左臀部に軟らかい結節が集簇した大小の局面形成.いずれも自覚症状なく,また組織像は定型的.過去20年間における本症の本邦報告例43例につき若干の文献的考察を加えた.

巨大な単発性グロムス腫瘍の1例

著者: 園田俊雄 ,   内山光明 ,   中嶋弘 ,   永井隆吉

ページ範囲:P.389 - P.393

 約30年を経過した右肘部伸側に生じた鶏卵大のグロムス腫瘍の1例を報告した.動脈造影では拡張した異常血管へのpoolingが多数みられたが,動静脈吻合の有無については,不明であった.組織学的には単発性および多発性グロムス腫瘍の両者の成分を有しているように思われた.またボディアン染色,S100 protein染色により,神経線維は被膜中に認められたが,腫瘍組織内には認められなかった.

Oral Facial Digital症候群の1例

著者: 菅野与志子 ,   高橋仁子 ,   松尾聿朗 ,   長田光博

ページ範囲:P.395 - P.400

 2歳9ヵ月,女児.生下時より軟口蓋裂,舌尖部分裂,舌尖部腫瘤,舌癒着症などの口腔内奇形,顔面の粟粒大皮疹,乏髪,縮毛,左環指と小指の合指症などが認められ,頭部の乏毛を主訴として来院した.我々はこの症例を,口腔,顔面,指趾領域の奇形を主とするoral facial digital症候群と診断し,ここに報告するとともに,その多彩な症状をはじめ2, 3の問題をまとめてみた.

広範な潰瘍を生じた基底細胞腫の1例

著者: 浜田昌 ,   岡本昭二

ページ範囲:P.401 - P.404

 初診時,52歳,女性.右下眼瞼に結節潰瘍型の基底細胞腫を生じて受診し,手術をすすめるも来院せず.6年後,右眼瞼・右こめかみに広範な潰瘍を形成したため,広範囲腫瘍切除兼眼球摘出術を施行した.切除標本の組織学的検索により,腫瘍巣は皮下脂肪織,一部表情筋組織にまで浸潤し,眼窩では眼球強膜直下まで浸潤を認めた.本腫瘍は通常の基底細胞腫に比して極めて速い発育速度を示し,かつ広範な潰瘍を生じたが,我々は結節潰瘍型基底細胞腫と臨床分類した.

脂肪肉腫の1例

著者: 牧田敦宣 ,   柳川茂 ,   三比和美 ,   土屋真一

ページ範囲:P.405 - P.410

 71歳女性の左手関節と左膝関節部皮下に発生した脂肪肉腫の1例を報告した.病理組織所見から本例はWHO分類およびHajduらの分類でいうpleomorphic typeに相当し,腫瘍細胞にはSudan III染色で多数の脂肪滴を証明した.電顕的に腫瘍細胞の細胞質内には多数の粗面小胞体,異型ミトコンドリアおよび脂肪滴を認めた.本症例は左手関節と左膝関節とに同時に発生した脂肪肉腫で,両部位とも脂肪肉腫の好発部位であること,両腫瘤の出現に約4年半と比較的長期の差があること,および肺,肝などに転移巣が認められなかったことから多中心性の脂肪肉腫と思われる.
AdriamycinとDTICとによる化学療法を施行し,手関節部腫瘤の著明な縮小を認めた.本療法は最も予後の悪いとされているpleomorphic type liposarcomaに対しても有効であり,本症の延命効果を期待しうる治療法の1つであると考えた.

特異な臨床像を呈したInflammatory Linear Verrucous Epidermal Nevus—電顕的検討と文献的考察

著者: 宮入宏之 ,   前田哲夫 ,   諸橋正昭

ページ範囲:P.411 - P.417

 41歳,男性.幼小児期より左上肢に列序性配列を示す皮疹を認める.この皮疹は幅が広く,上腕から前腕上部にかけては色素沈着性で,それと連続性に脱色素性の皮疹が手背までおよぶという特異な臨床像を呈する.電顕像では真皮毛細血管において,基底膜の多層化,肥厚化と核が均質化して電子密度の高くなった特異な形態を示す内皮細胞が観察された.また血管周囲にリンパ球,組織球のほか,マスト細胞の浸潤もかなり多くみられた.本例はその臨床像とともに,経過中に定型的なミベリ汗孔角化症を合併した珍しい症例と考えた.

Kasabach-Merritt症候群の電子線療法

著者: 友田哲郎 ,   浜田聖子 ,   大山勝郎

ページ範囲:P.419 - P.423

 Linacによる電子線照射を試み,良好な結果を得たKasabach-Merritt症候群の2例(症例1:2ヵ月女児,症例2:2ヵ月男児)を報告した.電子線は皮下の巨大血管腫である本症の治療に多くの長所を有するため,本症に最適の放射線と考えられる.コルチコステロイドの併用については,放射線単独で十分治療効果があり,その副作用を考慮すれば,例外を除いてなるべく避けるべきと考える.

編集室だより

雑誌名の省略について

ページ範囲:P.326 - P.326

 最近,引用文献に掲載される雑誌名の略称は,1970年にAmerican National Standards Committeeから出された「International List or Periodical Title WordAbbreviations」による略し方が,国際標準として,一般化してきました.皮膚科領域に関係のある言葉の例を下記にあげました.御投稿の際には,これらを参考にして下さい.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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