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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科36巻5号

1982年05月発行

雑誌目次

図譜・475

潰瘍化の見られた斑状強皮症型基底細胞上皮腫

著者: 大原国章 ,   井上由紀子

ページ範囲:P.438 - P.439

患者 30歳,女性
初診 昭和53年10月25日

原著

毛嚢性ムチン沈着症を伴った播種性好酸球性膠原病の1例

著者: 稲本伸子 ,   中村絹代

ページ範囲:P.441 - P.448

 48歳,女子.骨盤腔内,腋窩,乳房部膿瘍を主訴とし,喘息および神経皮膚炎様皮疹と脱毛を伴い,心不全にて死亡した播種性好酸球性膠原病'(DECD)の1例を報告した.生検および剖検にて,心筋梗塞,諸臓器における血栓形成および骨盤腔内膿瘍壁,子宮筋層,リンパ節被膜下に好酸球増多を伴う炎症性病巣,および結節性動脈周囲炎様の血管炎が認められ,一部の血管炎には僅かではあるが異物型多核巨細胞を伴う肉芽腫性炎も存在した.皮膚所見が特徴的であり,初期には毛嚢破壊を中心とし,多数の好酸球を伴う肉芽腫性炎症と,小血管周囲性の非特異的炎症,末期には毛嚢のムチン様変性すなわちfollicular mucinosisおよびpoikiloderma様変化が認められた.
 同時に,最近のDECD報告例15例につき,特にその皮膚所見,剖検所見につき考察を加えた.

経過中に特発性大腿骨頭壊死を合併した全身性エリテマトーデスの1例

著者: 中野朝益 ,   大熊守也 ,   手塚正

ページ範囲:P.449 - P.453

 34歳主婦のSystemic Lupus Erythematosus (SLE)の経過中に特発性大腿骨頭壊死を合併した1例を報告した.特発性大腿骨頭壊死は大腿骨頭への血行障害によって骨頭の壊死,破壊,変形を生じ,関節痛,可動制限,歩行障害など日常生活に著しい障害をもたらす重要股関節疾患である.その病因についてはSLEが骨壊死を生じる基礎疾患であるのか,原疾患の治療に使用されたステロイド剤の影響によるものか未だ定説は得られていない.しかし特発性大腿骨頭壊死は最近増加の傾向にあり,治療上早期に的確な診断を下すことが重要であり,皮膚科医も本疾患の存在を認識し,早期発見に努める必要があると考え,SLEと特発性大腿骨頭壊死の関係について文献的考察をおこなった.

Candida albicans Allergyと考えられる慢性蕁麻疹について

著者: 二條貞子 ,   井上隆義

ページ範囲:P.455 - P.458

 慢性蕁麻疹患者55例に,各種アレルゲン皮内テストを施行し,カンジダの陽性率が52.7%と高いことを認めた.カンジダ陽性症例のうち15例に,カンジダの特異的減感作療法を試み,12例に完全治癒をみた.慢性蕁麻疹の原因の一つとして,Candida albicansallergyがあり,その頻度が比較的高いものと考えた.

多彩な皮膚症状を呈した結節性動脈周囲炎の1例

著者: 加茂紘一郎 ,   平井昭男

ページ範囲:P.459 - P.464

 72歳・主婦,皮下硬結をはじめ種々の形態をとる紅斑等の皮膚症状やTolosa—Hunt症候群の末梢神経症状の他に,腎不全・麻痺性陽閉塞等の内臓症状を有する結節性動脈周囲炎(P.N.)の1例を経験した.
自験例はその臨床像・病理組織像・臨床検査成績から生前にP.N.の確定診断が得られたものの,糖尿病を合併した為に副腎皮質ホルモン大量投与を成し得ず遂には死に至らしめた例であるが,剖検により腎動脈の変化も確かめられた.かかる1例を報告すると共にP.N.に伴う皮膚症状,治療について若干の考察を試みた.

Duhring疱疹状皮膚炎—IgA沈着形式による症例の比較

著者: 五十嵐良一 ,   須藤成章 ,   諸橋正昭 ,   岡吉郎

ページ範囲:P.465 - P.471

 IgAの沈着がfibrillarを示した2例とlinearを示した1例について,その臨床像,組織所見,DDSの効果を比較検討した.この結果,fibrillarを示す症例ではその発症年齢は若く,また紅斑と水疱は小型の傾向があった.さらにDDSに対しては著効を示した.一方,linearを示す症例は高齢者であり,また紅斑と水疱は大型で,紅斑は一部融合傾向を示した.さらにDDS単独では皮疹の再発がみられた.組織学的には3例とも表皮下水疱,好中球を主とする微細膿瘍,核片などが認められ,特に差はみられなかった.また,これまで本邦において報告されたIgA沈着陽性の症例を集計し,その沈着形式によって比較したところ,自験例とほぼ同じ結果が得られた.

マムシ咬傷—急性腎不全を併発した症例

著者: 舘懌二 ,   富和 ,   藤田幸雄 ,   岡村利勝 ,   村上健治 ,   浅香敏 ,   上原元 ,   黒田満彦

ページ範囲:P.473 - P.476

 55歳の女性で,マムシ咬傷後に急性腎不全を起こし,血液透析によって救命しえた1例を報告した.本例では咬傷後,CPK・LDH・GOT等の値が急速に上昇,また血中と尿中のミオグロビン値も高値を示した.本例の急性腎不全の原因として,ミオグロビン血症を推測した.

反復日光照射により寛解した日光蕁麻疹の1例

著者: 高橋仁子 ,   菅野与志子 ,   松尾聿朗

ページ範囲:P.477 - P.480

 18歳,女性,昭和54年夏より突然,日光照射部位に一致して蕁麻疹の発生をみるようになった.1)光線テストの結果,膨疹発生の作用波長は386nmから452nm,2)患者血清中には,日光および作用波長域の光照射で,患者皮内に膨疹を惹起する因子が存在した.3)膨疹発生閾値量以下の日光照射の反復後,膨疹発生充分量の日光照射を行っても,膨疹は発生しなかった.4)30分間の日光照射により膨疹が発生した部位に24時間後,充分量の日光照射を行っても,膨疹は出現しなかった.5)日光照射10分間で膨疹が発生するが,約30分間日光照射を続けている間は膨疹は出現せず,遮光後はじめて出現する.すなわち,latent periodの延長が認められることから,長谷井らのいうinhibition spectrumの存在が推測された.

歯科用コバルト合金による口腔粘膜扁平苔癬

著者: 林原利朗 ,   大山勝郎 ,   児玉圀昭

ページ範囲:P.481 - P.485

 義歯に使用されていた合金,コバルタムRの貼付試験で強陽性反応を認め,口腔内金属の全除去により略治に至った口腔粘膜扁平苔癬の1例を報告し,若干の考察を加えた.
歯科用に用いられる各種金属の貼付試験では,塩化コバルトのみが強陽性を示し,コバルトが原因物質と推定された.

島根県におけるスポロトリコーシス—気候からみた発生頻度の差について

著者: 大畑力 ,   高垣謙二 ,   地土井嚢璽

ページ範囲:P.487 - P.492

 49歳,主婦,島根県大田市在住.顔面に生じた皮膚リンパ管型スポロトリコーシスの1例を報告した.本症例は,われわれの調べた限りでは島根県における第2例目の報告となる.
スポロトリコーシスは,その発生に地理的偏差をみとめ,関東地方,九州地方,近畿地方に多く,北海道,東北地方,北陸地方,山陰地方に少ない.そこで本症の比較的多い地方と少ない地方の気温,湿度,雨量,地表面温度などの気候上の観点から,本症の発生の地理的偏差について考察した.

北海道における最近のTrichophyton violaceum(glabrum)感染症

著者: 久保等 ,   岸山和敬 ,   大河原章 ,   月永一郎 ,   芝木秀臣

ページ範囲:P.493 - P.497

 Trichophyton(T. と略) violaceumによる白癬は一般に温暖な地方に多く,北海道においては稀で大正14年高橋の報告以来,少数の報告がみられるのみであった.
 この度,われわれは北海道北部の稚内市で3例,羽幌町で1例のT.violaceum(glabrum)による白癬を経験したので報告した.
症例1は5歳男児.頭部にblack dotを形成.症例2は9歳女児.症例1の姉で頭部にblack dotを形成.症例3は50歳女性の手白癬と足白癬例.症例4は1歳男児.頭部にblackdotを形成.症例1と症例2からはT. glabrumが検出され,症例3と症例4からはT.violaceumが検出された.
近年,北海道においてT. violaceum(glabrum)による白癬が増加傾向にあることにつき若干の考察を加えた.

Tuberculosis Subcutanea Fistulosaの1例

著者: 東儀君子 ,   山本昇壮 ,   地土井嚢璽 ,   斎藤肇 ,   森山英彦 ,   森木省治 ,   松嶋慎吾 ,   久野正治

ページ範囲:P.499 - P.504

 50歳,男性,約18年前より肛囲にはじまって会陰,臀部に有痛性皮下硬結,膿瘍が多発した,初診時(昭和56年2月10日),肛囲から両臀部にわたって広範囲に暗紫黒色の色素沈着と著明な浸潤肥厚がみられ,板状硬結の中に波動性膿瘍が数ヵ所散在し,多数の瘻孔形成がみられた.同部の膿汁より人型結核菌が検出された.また活動性肺結核,不完全痔瘻の合併もみられた.皮膚結核のなかでも稀なTuberculosis subcutanea fistulosaと考え,自験例を含め本邦報告例について臨床的考察をおこなった.

クロモミコーシスにみられたTransepithelial Elimination

著者: 加藤宏 ,   西川武二 ,   生冨公明

ページ範囲:P.505 - P.508

 63歳男性の右上腕背側に生じたクロモミコーシスの1例を報告した.3×1.5cmの皮疹は全摘の後,5—FC 1日6gを1ヵ月内服させ,半年後の現在も再発をみない.切除組織の連続切片の組織学的検索を行ない菌要素が経表皮的に排除される像を見いだし,Transepithelial elimination (TEE)の機序がクロモミコーシスの菌体排泄においても存在するものと考えた.あわせてTEEの概念について若干の考察を加えた.

ヒトイボウイルス(human papilloma virus)の新しい型が分離された疣贅状表皮発育異常症—(Epidermodysplasia verruciformis, Lewandowsky-Lutz,1922)の1例

著者: 谷垣武彦 ,   田代実 ,   湯通堂満寿男 ,   羽倉明 ,   津森孝生 ,   渡辺信一郎 ,   遠藤秀彦

ページ範囲:P.509 - P.514

 24歳,男子の疣贅状表皮発育異常症の患者の背部,胸部の紅色斑からウイルスを分離し,そのウイルスDNAに制限酵素による解析を行ったところ,今までに報告のない新しいヒトイボウイルスの型であることが明らかになった,その臨床例について報告した.

急性痘瘡状苔癬状粃糠疹(Mucha-Habermann)様皮疹を初発としたMalignant Histiocytosisの1例

著者: 宇仁田美恵子 ,   伊東陽子 ,   浜口次生 ,   仮谷嘉晃 ,   野田雅俊

ページ範囲:P.515 - P.520

 Pityriasis lichenoides et varioliformis acuta (PLVAと略記)様皮疹を初発としたmalignant histiocytosis (MHと略記)の72歳男性例を報告した.初期疹には異型性のない組織球がみられたのみであるが,約3ヵ月後組織学的に異型組織球が多数増殖してみられた.文献的に本例のようにMHの皮疹として小丘疹が播種状に認められる症例は本邦ではみられない.本例に関連してPLVA様皮疹が細網症の1徴候を示唆する報告例のみられる点に注目した.

B-KMole Syndrome(Sporadic Nevi)の1例

著者: 堀越貴志 ,   阿久津裕 ,   本間光一 ,   高橋博之 ,   神保孝一

ページ範囲:P.521 - P.526

 21歳男.躯幹,上腕に,長径10mm大の,辺縁不整で一部に"しみ出し様"現象を有する,円形〜楕円形の非隆起性の色素斑が多数存在し,2〜3mm大の色素斑も含めると,全身に100個以上存在した.色素斑の色調は,赤褐色,茶褐色,黒色が混在し多彩であった.10数個の色素斑は,幼少時から存在していたが,18歳頃から,急激に数が増加し,長径が大きくなり,同時に色調も多彩となってきた.家族に同症はない.組織学的に,異型melanocyte(MCと略す)が,表皮堰底層に増生し,また比較的大きな胞巣形成,junctional activity,casting offを認め,真皮では,異型MC周囲の小円形細胞浸潤,乳頭層の膠原線維の増生を認めた.真皮に存在する異型MCは,通常の複合母斑に認められるneurotizationの構築を呈しなかった.真皮中層の異型MCにも,melaninの産生を認めた.自験例を,B-K mole syndromeのsporadic neviと診断し,将来malignant melanomaに移行する危険性が高いと考え,長径10mm前後の大型の色素斑を切除した.電顕にて,異型MCの細胞質に,主としてspherical granular structureのmelanosomeを認めた.異型MCが,nevocyte由来であることを示唆した.

気管支Carcinoidの皮膚転移の1例

著者: 尾口基 ,   宮地良樹 ,   尾崎元昭 ,   今村貞夫 ,   河村甚郎 ,   高橋清之

ページ範囲:P.527 - P.532

 気管支に生じたcarcinoidより皮膚へ転移を来した63歳家婦の1症例を報告した.本患者においてはいわゆるcarcinoid症候群は呈せず,生化学的にも血中serotonin値,及びその代謝産物である尿中5—HIAA値の増加は認められなかった.転移病巣の光顕組織像と,組織化学的検索に基づき,carcinoidと診断された.本腫瘍は従来より比較的良性と考えられ,皮膚への転移は非常にまれであり,今日まで本邦第2例目に当る自験例を含め21例報告されているのみであった.それらを文献的に検討し,報告した.

編集室だより

雑誌名の省略について

ページ範囲:P.532 - P.532

 最近,引用文献に掲載される雑誌名の略称は,1970年にAmerican National Standards Committeeから出された「International List of Periodical Title WordAbbreviations」による略し方が,国際標準として,一般化してきました.皮膚科領域に関係のある言葉の例を下記にあげました.御投稿の際には,これらを参考にして下さい.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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