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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科36巻6号

1982年06月発行

雑誌目次

図譜・476

単発型グロムス腫瘍の2例

著者: 辻正幸 ,   谷昌寛

ページ範囲:P.548 - P.549

〔症例1〕
 患者 44歳,男性.1年前より左肘頭の小結節に気付く.漸次,圧痛接触痛が増強して来た.
 家族歴・既往歴 特記すべき事なし.

原著

鱗状毛嚢性角化症ならびにその鱗屑の生化学的分析

著者: 吉池高志

ページ範囲:P.551 - P.555

 鱗状毛嚢性角化症の2例(32歳,女子.46歳,女子.)を報告した.2例とも,腹部,殿部,下肢に中心性毛孔性色素沈着を伴う鱗屑を徐々に多発してきた.1例では出産を発症の契機とした.病理組織学的には毛嚢拡大と毛嚢開口部を中心とした角質増殖および毛嚢におけるメラニン色素の軽度増加をみとめた.鱗屑より得たケラチン線維分画では電気泳動において,症例2で異常パターンを示したもののアミノ酸組成は正常であった.可溶性分画の電気泳動では分子量約10,000のパンドの欠損ないし低形成をみた.膜および膜間物質分画のアミノ酸組成ではセリン,グリシン残基の著明な増加とアスパラギン,グルタミソ,プロリン,ロイシソ,リジン,ヒスチジン残基の減少をみた.

免疫グロブリン,補体の沈着をみたSweet病

著者: 竹内誠司 ,   増子倫樹 ,   五十嵐美保

ページ範囲:P.557 - P.562

 40歳,女性.下腿ついで顔面,前腕に小水疱や膿疱を伴う有痛性浮腫性紅斑が出現し,組織学的には好中球を主とする細胞浸潤,核崩壊を認めた.末梢血白血球数増加,血沈中等度九進,CRP陽性,補体成分増加がみられたがASLO正常,免疫グロブリン正常,抗核抗体は陰性であった.螢光抗体直接法で表皮真皮接合部にIgM, IgG, IgA,フィブリノーゲンおよびC3の顆粒状沈着を認め,C3は乳頭血管にも陽性であった.この事実は,鼻炎が先行しStreptococcusの皮内反応が陽性であったこととあわせ,本例が特に細菌の関与するimmune complex diseaseの可能性をもつ症例であることを示唆する.

丹毒—細菌ワクチン皮内反応が陽性の症例

著者: 大熊守也 ,   手塚正 ,   高橋喜嗣 ,   奥井啄

ページ範囲:P.563 - P.566

 79歳,男子,高熱を伴う左上肢の紅斑,浮腫,疼痛,後に肩,前胸に拡大した.2週の抗生物質全身投与により一時軽快していたが再燃した.臨床検査では,ASLOは1週間後に軽度上昇,IgG高値,細菌培養で皮疹は陰性,咽頭は黄色ブ菌のみであった.Bluedyeテストで患側のリンバ循環障害が推定され,細菌ワクチン,Strepto. pyogenesに対して皮疹部に似た反応が組織学的にみられた.セファレキシン,AB-PCの投与により皮疹は軽快した.

特異な皮疹を合併した水疱性類天疱瘡の1例

著者: 津田眞五 ,   花田雄介 ,   樋口満成 ,   一木幹生 ,   加治英雅 ,   笹井陽一郎

ページ範囲:P.567 - P.571

要約 73歳,男性.初診の1ヵ月前より瘙痒を伴う水疱が頭部に初発.前腕,躯幹にも小指頭大までの水疱が出現.病理組織学的および免疫螢光抗体直接法および間接法所見より水疱性類天疱瘡と診断した.手背部の水疱は瘙痒のため掻破を繰り返しているうちに,扁平苔癬様外観を呈する結節状局面を形成.病理組織学的には角質肥厚と表皮肥厚を示すが,表皮下水疱の形成はない.免疫螢光抗体直接法では,水疱部と同様にIgG, C3の線状沈着を認めた.以上の所見より両手背部の皮疹も水疱性類天疱瘡と診断したが,本症としては特異な形態を呈しており,hyperkeratotic scarring bullous pempbigoidあるいはpemphigoid nodularisという報告例と類似している.

環状の皮疹を呈した先天性表皮水疱症の1例

著者: 安藤巌夫 ,   余幸司 ,   小川喜美子 ,   石橋康正 ,   野間剛

ページ範囲:P.573 - P.578

 7ヵ月男児の先天性表皮水疱症の1例を報告する.生下時に発症し,四肢・体幹に環状紅斑とその上に集簇する小水疱を認める.皮疹は中心部色素沈着を残して治癒し遠心性に拡大する.夏季増悪し外力による機械的な刺激で水疱形成する.瘢痕・爪変形を認めず遺伝型式は常染色体性優性型.組織学的に光顕にて表皮下の水疱を認め表皮真皮間に裂隙が存在する.電顕にて基底細胞の膨化と,その細胞質内に微細顆粒状物質が充満し,トノフィラメントは細胞辺縁におしやられているかの如き所見を得た.また,多核の大型な表皮細胞が散見され,組織培養でも同様の細胞の出現をみた.環状の皮疹を呈した先天性表皮水疱症の報告は,本邦では自験例の他1例のみであり欧米でも数例にすぎない.これらと自験例の異同につき若干の考察を行なったが,Dowling-Mearaらの例と近い症例と考えた.

有痛性腫瘤と高カルシウム血症を伴った皮膚のT細胞型悪性リンパ腫の1例

著者: 長谷哲男 ,   園田俊雄 ,   黒沢伝枝 ,   高橋泰英 ,   宮本秀明 ,   中嶋弘 ,   永井隆吉 ,   湊啓輔 ,   下山正徳

ページ範囲:P.579 - P.584

 有痛性皮膚腫瘤および皮下腫瘤と骨への浸潤,高Ca血症を特徴としたT細胞型悪性リンパ腫の1例を報告した.有痛性皮膚腫瘤を初発とし,末梢血や骨髄,リンパ節への浸潤は明らかでなく,経過中骨への浸潤,高Ca血症が出現した.皮膚腫瘤の生検組織像では,真皮を中心に,著しい多型性のある細胞の,稠密な浸潤が認められた.それらの浸潤細胞では,多核の巨細胞にもEnロゼット形成能が認められ,T細胞型とした.臨床症状,病理組織像,細胞診,表面膜性状より,cutaneous T cell lymphoma(CTCL)とは考えられず,adult T cell leukemia lymphoma(ATLL)の近縁疾患と考えられる特微をそなえている悪性リンパ腫と結論づけた.

粘液水腫性苔癬(Discrete Papular Forms)の1例

著者: 進藤泰子 ,   内山紀子 ,   御子柴甫 ,   秋山純一 ,   大久保正己

ページ範囲:P.585 - P.588

要約 26歳,男性.16歳から20歳頃までに発生したlichen myxedematosusと思われる1例を報告した.皮疹は左腎部から大腿にかけて,米粒大〜1cm大の丘疹〜結節が多数散在している.褐色調で比較的大型の結節の表面は粗糙である.病理組織変化の主たるものは,真皮上層の浮腫性病変と,そこのピアルロン酸の著明な沈着である.甲状腺機能,肝機能ともに異常はなく,Perry分類のlichen myxcdematosusのうちの1型であるdiscrete papular formsと診断した.

局面型サルコイドーシスの2例—骨格筋生検にてサルコイド結節を認めた1例を含めて

著者: 内山紀子 ,   進藤泰子 ,   藤井光子

ページ範囲:P.589 - P.594

 サルコイドーシス(以下サ症と略記)は病因不明の多臓器性肉芽腫疾患である.今回局面型の皮疹を伴ったサ症の2例を経験し,そのうちの1例に大腿四頭筋生検において筋肉内にサルコイド結節を認めた.
サ症における,外国と本邦の無作為骨格筋生検の肉芽腫陽性患者について若干の文献的考察をし,サ症診断の一手段としての無作為骨格筋生検の有用性を述べた.

糖尿病患者にみられたPalmar Fibromatosis(Dupuytren拘縮)の2例

著者: 窪田泰夫 ,   堀嘉昭 ,   中川秀巳

ページ範囲:P.595 - P.599

 症例1:60歳女性.症例2:55歳男性.糖尿病患者にみられたpalmar fibromatosis(Dupuytren拘縮)の2例を報告した.さらに近年注目されてきた本症と糖尿病(特にdiabetic microangiopathy)との関連につき若干の考察を加えた.

面皰母斑の1例

著者: 柳沢宏実 ,   村田譲治 ,   末木博彦 ,   藤澤龍一 ,   橋本謙

ページ範囲:P.601 - P.608

 38歳,男子.小児期より右大腿に面皰様皮疹が出現し,漸時増大・増加し,感染を反復するため切除を希望して来院した.右大腿部内側に黒色角栓を有する面皰,大豆大の皮内結節が幅2cmで列序性に配列し,その局面の一部は萎縮性.組織所見は多彩であり,表皮からのbudding様所見,巨大角栓の形成,角質嚢腫などがみられ,毛包上皮には,毛包腫を思わせる延長・増殖した細胞索を伴うものもあった.脂腺は,ほとんど認められなかった.外科的に摘除し,経過観察中である.自験例を含む本邦報告例57例を中心に,若干の文献的・電顕的考察を加えて報告した.

いわゆる皮膚混合腫瘍の3例

著者: 宅間幸子 ,   小野真理子 ,   新村陽子 ,   福留恵子 ,   鳥山悌 ,   藤澤龍一

ページ範囲:P.609 - P.616

 最近経験したいわゆる皮膚混合腫瘍の3例を報告した.症例1:33歳,女.左鼻唇溝部の径7mmの小腫瘍.症例2:46歳,男.左鼻唇溝部の径8mmの小腫瘍.症例3:45歳,男.左頤部の径17mmの小腫瘍.自験例を含む1981年10月までの調べ得た本邦報告例140例を集計した.30〜50代に好発し,男性にやや多い傾向があり,また,顔面発生例が91%を占めた.さらに本腫瘍の起源について考察し,エクリン汗器官系,アポクリン汗器官系の2系統が考えられた.自験症例1,3は軟骨様所見が認められエクリン系と考えられたが,症例2は毛脂腺・アポクリン汗器官などとの関連が推測され,脂肪組織も含有し複雑な組織所見を呈していた.

Eccrine Hidrocystoma

著者: 斎田俊明 ,   土屋真一

ページ範囲:P.617 - P.623

 64歳女の顔面に多発した典型的なRobinson型のeccrine hidrocystoma(EH).約30年前より小丘疹状皮疹が生じ,発汗時に顕著化することをくり返しつつ,増数してきた.組織学的には真皮内の円形の嚢腫で,その壁は約2層の上皮性細胞で構成されていた.電顕的には,嚢腫壁外層部の細胞は表面に不規則な短絨毛状突起を有し,細胞質内にはmitochondria,glycogen顆粒が多数存在していた.内腔側の細胞は概して暗調で,desmosomeの発達がよく,細胞間の結合は比較的緊密である.この細胞の内腔面には多数の絨毛状突起がみられ,細胞内にはmitochondria,glycogen顆粒の他にlysosome様の高電子密度の顆粒が存在していた.細胞間の内腔側端にはtight junctionが認められた.
EHの組織発生について考察し,少くともRobinson型の本症は,eccrine汗管末梢部での閉塞に多汗の状態が加って生じるretention cystであろうと結論した.

編集室だより

雑誌名の省略について

ページ範囲:P.584 - P.584

 最近,引用文献に掲載される雑誌名の田各称は,1970年にAmerican National Standards Committeeから出された「International List of Periodical Title WordAbbreviations」による略し方が,国際標準として,一般化してきました.皮膚科領域に関係のある言葉の例を下記にあげました,御投稿の際には,これらを参考にして下さい.

これすぽんでんす

境界群らいの増加—白井氏らの論文を読んで

著者: 尾崎元昭

ページ範囲:P.624 - P.624

 近年わが国のらいの新患は著しく減少し,過去に隔離中心のらい対策が推進されたこととあいまって,皮膚科医がらい患者を診る機会はますます少くなる一方である.このこと自体は喜ばしいことといえるが,反面,らいの診断が遅れて驚くほど重症化した状態で専門医にまわってくる患者もめだってきている.らいの病像に関する基本的な誤りのみられる報告が散見するようになったのも,らいの流行の消褪がもたらした現象の一つとしてよいのであろうか.化学療法の進歩により,らい患者は一般医療施設で充分治療できる時代になっているだけに,皮膚科医の方々により一層,より正確にらいへの関心と知識をもっていただきたいと願うものである.
 本誌36巻1号(1982年1月)に記載された報告1)の症例は,類結核型のらい(T型)とされているが,明らかに境界群(B群)の例と考えられる.この症例のような環状隆起疹の多発,打ち抜かれたように境界明瞭な環状疹内部に知覚障害を伴うことはB群の皮疹の基本的な特徴である2). このような皮疹は,皮膚組織液塗擦標本による菌検査で菌指数2〜4のことが多く,レプロミン反応は疑陽性ないし陰性をしめす.T型では皮疹はこのようにほぼ対称性に分布することはなく,環状疹の内部の境界はより不鮮明,菌指数は0〜1で菌陽性であっても短期間に消失する.

多彩な臨床像を伴うT型癩の1例—白井氏らの論文を読んで

著者: 肥田野信

ページ範囲:P.625 - P.625

 水疱を生じたために類天疱瘡や疱疹状皮膚炎と長らく誤診されていた癩症例であり,興味深く読ませて頂いた(本誌36巻1号−1982年1月).
 癩には時に水疱を生ずることがあって,古くは記載皮膚科学的に癩性天疱瘡と呼ばれたが,その実態については必ずしも明らかでない。大部分は無自覚で受けた熱傷や外傷によると想像されるが,かかる要因なしに特発性に生ずる水疱があるのかどうか,あるとすればその組織像や成因はどうか,今日の知見はまだ乏しい.著者らは水疱自体を観察された訳ではないようで,その臨床,組織学的記載が見当らないのは誠に惜しい気がする.現病歴の記載からすると四肢に水疱を生じ,類天疱瘡を疑わせた所から熱傷に起因するのみでは片づけられないような気もする.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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