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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科36巻7号

1982年07月発行

雑誌目次

図譜・477

持久性隆起性紅斑

著者: 木花光 ,   木村俊次

ページ範囲:P.646 - P.647

患者 37歳,男子
初診 昭和54年4月7日

原著

表皮細胞核にSpeckled型抗核抗体のみられた症例について—抗RNP抗体価と補体結合能の検討

著者: 岩月啓氏 ,   田上八朗 ,   山田瑞穂 ,   森口道子 ,   佐野勉

ページ範囲:P.649 - P.654

 螢光抗体直接法にて,表皮の細胞核にspeckled型抗核抗体の認められた14例の臨床症状と抗核抗体の性状につき検討した.12症例より得られた血清試料については抗RNP抗体価を測定し,その補体結合能について,SLE患者血清を対照として検討した.対象とした14例には,臨床所見よりSLEと考えられる2例,MCTDの1例のほかに,確定診断に至らない不全型のいわゆる膠原病が11例含まれていた.しかし,検索した血清のすべてに高値の抗RNP抗体が認められた.つまり,表皮細胞核へのspeckled型抗核抗体沈着は高値の抗ENA抗体,とくに抗RNP抗体を有することの表現型であるが,MCTDに特異的な所見ではなかった.臨床症状ではRaynaud現象を示す頻度が高かった.また,抗RNP抗体はSLE患都血清中の種々の抗核抗体とくらべ,遜色のない補体結合性を持っていた.

掌蹠膿疱症および尋常性乾癬の両親をもつEosinophilic Pustular Dermatosisの女性例

著者: 猿田隆夫 ,   大隈貞夫 ,   中溝慶生

ページ範囲:P.655 - P.659

 父親に掌蹠膿疱症,母親に尋常性乾癬を有するeosinophilic pustular dermatosisの22歳女性例を報告した.本症がしばしば掌蹠膿疱症様病変を伴うこと,掌蹠膿疱症は尋常性乾癬と近縁疾患と考えられていることから遺伝的背景に興味がもたれ,両親を含めてHLA locus A,B,C抗原の検索を行った.しかし.これらの結果からは遺伝的背景は不明であった.
本症の毛嚢脂腺部の一部の浮腫部には,しばしば酸性ムコ多糖類の沈着が存在することを明らかにした.この酸性ムコ多糖類は,細菌性ヒアルロニダーゼにより完全に消化されたことからヒアルロン酸であろうと推察された.
本症の名称について,本症にみられる色素沈着斑,局面形成,毛嚢一致性丘疹.丘疹の頂点にみる小膿疱などの多彩な臨床症状は,「folliculitis」とするより「dermatosis」と称した方がふさわしく,加えて本症の部分症状とされる掌蹠の皮疹では毛嚢を欠くところから,eosinophilic pustular dermatosisの名称を提唱した.

金療法が奏効したMCTDの1例

著者: 杉本憲治 ,   小西清隆 ,   日高義子 ,   浜口次生

ページ範囲:P.661 - P.664

 55歳,女性,初診の4ヵ月前よりレイノー症状,関節痛,手指腫脹,手指のしびれ感を来す.各種臨床検査所見では,赤沈亢進,白血球減少,高γ—グロブリン血症があり,speckled型抗核抗体陽性,抗RNP抗体高値陽性,正常部皮膚の螢光抗体直接法にて,表皮細胞核にspecklcd patternのIgG沈着を認める.以上よりMCTDと診断し,ステロイド内服を開始した.プレドニソロン40mg/日より開始したところ,すみやかに症状は改善したが,20mg日に減量した頃より赤沈亢進を再び来し,金療法を併用した.以後,金維持量投与をつづけ,ステロイドの減量を順調に行ない得た.

小児の結節性動脈周囲炎の1例

著者: 井上文雄 ,   岩月啓氏 ,   佐野勉 ,   田上八朗

ページ範囲:P.665 - P.668

 小児の結節性動脈周囲炎の報告は成人例に比して稀である.症例は8歳男児で四肢,体幹部に散在する紅斑,分枝状皮斑,および圧痛を伴う皮下結節を主訴として来院し,左下腿の皮下結節の生検標本で組織学的に結節性動脈周囲炎に特異な壊死性動脈炎が皮下脂肪層に認められた.入院後,頭痛,腹痛,関節痛,筋肉痛などの多彩な全身症状が出現したため,全身型の結節性動脈周囲炎と考えた.

遮光化粧料と紫外線防禦

著者: 御藤良裕 ,   佐藤吉昭 ,   小林美咲 ,   入交敏勝

ページ範囲:P.669 - P.674

 新しく開発された遮光化粧料について,健康人を対象にその紫外線防禦効果を室内および屋外実験で検討した.その結果,すぐれた防禦効果,実用性を認め,色素性乾皮症などの光線過敏症患者にも十分応用できると判断した.

皮膚抗酸菌症・最近20年間の統計的観察

著者: 高橋泰英 ,   田中盛久 ,   黒沢伝枝 ,   中嶋弘 ,   金子保

ページ範囲:P.675 - P.680

 最近20年間(昭和35〜54年)における,当教室の皮膚抗酸菌症を統計的に観察した.
 皮膚抗酸菌症は108例あり,全新患者数の0.09%を占めていた.その内訳は,皮膚結核が71例(真性皮膚結核31例,結核疹40例),らいが23例,非定型抗酸菌症が14例(M.marinum11例,M.chelonei 3例)であった.これとは別に,顔面播種状粟粒性狼瘡が74例あった.皮膚結核は減少傾向にあり,特にバザン硬結性紅斑において顕著であった.また高齢化の傾向が窺われた.しかし顔面播種状粟粒性狼瘡は増減傾向,高齢化傾向は認められなかった.らいは結核同様減少傾向が認められた.これらに対し,非定型抗酸菌症は増加傾向を示し,最近では最も多い皮膚抗酸菌症になった.

壊死性痤瘡

著者: 長江浩朗 ,   荒瀬誠治 ,   重見文雄

ページ範囲:P.681 - P.683

要約 症例は33歳,男.子供の頃より,顔面,背部に丘疹が多発していた.毎年冬に増悪し医治の効果なく,夏には軽快していた.初診時,上背部,顔面に小豆大前後の淡紅色丘疹が多発し,頭部,上胸部,上腕伸側にも数個認めた.ほとんどの丘疹は中央が陥凹し,黄褐色痂皮を付け,治癒後の瘢痕も混在していたので壊死性痤瘡と診断した.組織像で,表皮から真皮にかけての壊死とその周辺への小円形細胞の浸潤,血管腔に血栓をみた.

Pilomatrixomaの1例—電気焼灼法により完治した大型隆起例

著者: 横田朝男 ,   風間敏英 ,   藤澤龍一

ページ範囲:P.685 - P.688

 66歳,女.約2年前より発症し徐々に増大.初診時,右眉毛部に3×2cm,表面凹凸不平,やや分葉状を呈し半球状に降起した腫瘍で,典型的組織像を呈した.外科的摘除術でなく,4回の分割電気焼灼法により完治した.また1971年〜80年の過去10年間における当科の症例36例(37個)と,調べ得た本邦報告例287例について総括し,多発例,大きさ,骨化の頻度について述べ,特に本症の臨床型を,a.皮内〜皮下型,b.隆起型,b'.潰瘍形成型,c.特殊—水疱〜偽嚢腫形成型,に分類して記載するとともに,隆起型では,本例に施行した分割電気焼灼法も有効な治療法であることを強調した.

Apocrine Cystadenomaの1例

著者: 斎田俊明 ,   土屋真一

ページ範囲:P.689 - P.693

40歳男の左下眼瞼内側部に約10年前,小結節が生じ,徐々に増大してきて淡紅黄色の大豆大結節となった.組織学的には,ほぼ典型的なapocrine cystadenoma(AC)であった.この腫瘍を酵素組織化学的に検索したところ,嚢腫壁内腔側の胞体豊富な細胞はacid phosphatase活性強陽性,β-glucuronidase活性強陽性,indoxyl esterase活性中等度陽性で,succinic dehydrogenase,phosphorylase,leucine aminopeptidaseの各活性はいずれも陰性であった.この反応パターンは正常apocrine汗器官の分泌腺細胞のそれに一致するものである.また嚢腫壁基底側の扁平な細胞はalkaline phosphatase活性陽性であって,これは筋上皮細胞であると考えられた.
ACについて内外の文献例を検討し,その分布,色調の変化等につき考察を加えた.また眼科領域で"retention cyst of the gland of Moll"と診断されている眼瞼縁の嚢腫とACとの異同について考察し,両者は本質的には同一の腫瘍と考えられる旨を述べた.

Microsporum canis感染症と愛玩動物—感染源動物の統計と愛玩動物の実態調査

著者: 笹川和信

ページ範囲:P.695 - P.700

 人獣共通感染症で,zoophilic dermatophyteでもあるM.canis感染症では,感染源としての愛玩動物にも眼を向けなければならない.
感染源動物の統計では,ネコが圧倒的に優位で,品種は首位である雑種の台頭が著しく,純血種ではシャムネコが多かった.
感染源でネコが多い理由は,ヒトとの接触頻度が高く,濃厚接触することが主要因であるが,他の原因も関与していることが考えられた.

Giant Bullaを伴った肺気腫を合併したPseudoxanthoma Elasticum

著者: 村野早苗 ,   藤田優 ,   栗山喬之

ページ範囲:P.701 - P.705

 57歳,女性.15年前より頸部に淡黄色丘疹出現,徐々に増加し,腋窩,腹部にも拡大.初診時,両側頸部に,淡黄色丘疹が集簇,表面隆起し,peau d'orange様を呈し,腋窩,腹部にも淡黄色丘疹を認めた.3年前より歩行時呼吸困難出現,6ヵ月前より増悪,胸部レ線にて,肺気腫とgiant bullaを指摘された.頸部の病理組織標本より,真皮内の弾力線維の変性,断裂像とCa沈着を証明,肺病変を伴ったpseudoxanthoma elasticumと診断した.Angioid streaksなし.軽症の糖尿病を合併.
Pseudoxanthoma elasticumと肺病変についての文献的考察を加え,本症例が本症に基づく肺病変を有する可能性がある事を示唆した.

Nevus Lipomatosus Cutaneous Superficialis(Hoffmann-Zurhelle)—単発型自験例を中心とした文献的考察

著者: 新村紀子 ,   鈴木久美子 ,   平野京子

ページ範囲:P.707 - P.712

 42歳女子の右臀部に発生した単発型nevus lipomatosus cutaneous superflcialisの1例を経験した.本疾患は多発型と単発型に分けられ,従来多発型は10歳台に,単発型は20歳台までと40〜50歳台に発症する例が多いとされてきた.今回,私達は本邦報告例76例(多発型47例,単発型29例)の統計的観察を行ない,発症年齢と発生部位を合わせて検討を加えた.

編集室だより

雑誌名の省略について

著者: 「臨床皮膚科」編集室

ページ範囲:P.674 - P.674

 最近,引用文献に掲載される雑誌名の略称は,1970年にAmerican National Standards Committeeから出された「International List of Periodical Title Word Abbreviations」による略し方が,国際標準として,一般化してきました.皮膚科領域に関係のある言葉の例を下記にあげました.御投稿の際には,これらを参考にして下さい.
「臨床皮膚科」編集室

一頁講座

尿毒症性瘙痒症に対する紫外線療法

著者: 中村雄彦

ページ範囲:P.713 - P.713

 1975年Saltzer1)は,尿毒症性瘙痒症の患者に紫外線照射を行い,8例中7例に有効であったと報告している.
 その後1977年Gilchrestら2)が追試を行い,やはりその有効性を認めている.彼らは,慢性腎不全で4ヵ月から8年の間血液透析を受けていて,2ヵ月以上瘙痒を訴え中ており,通常の注射,内服薬,外用剤などによる瘙痒に対する治療が無効であった18例(男11,女7)の患者を対象とした.

薬剤

Kojic Acid外用による肝斑の治療

著者: 中山秀夫 ,   渡辺直昭 ,   西岡和恵 ,   早川律子 ,   比嘉良喬

ページ範囲:P.715 - P.722

1.はじめに
 肝斑(chloasma又はmelasma)は思春期以後の女子顔面に生ずる褐色の非炎症性色素沈着症のひとつで,その発症原理は,melanocyteの機能亢進によりひきおこされた表皮細胞核上部melanosomeの量の増大と考えられている1).肝斑はある程度高度になると,vitamin Cの連続内服位では改善しないことが多く,皮疹が目立つ場合には,女性にとってかなりの悩みの種になる.本症は治療の歴史の上で余りに強いmelanin合成抑制効果を求めすぎたために,かえって昭和30年代にhydroqui—none monobenzyletherが難治の斑状〜網状の白斑を副作用として生じたことがあり2,3),そのためによりmildでありながら日本ではhydroquinoneが外用剤としての許可を得られない現状にある4).事実,5%hydroquino—ne creamは肝斑に対して十分に有能な外用剤であるが5),筆者らの経験でも変色しやすいこと,無効例もあること,稀に皮膚炎を生じて不適合例のあることが認められ,今後肝斑に対する外用薬はhydroquinoneも含めて強弱何種類かのmelanin合成抑制剤を選択して使いうれば理想的ではないかと思われる.
 肝斑は本来,純美容上のみの疾患であるため,肝斑治療用の外用剤には以下のことが要求される.

印象記

第8回国際医真菌学会議に出席して

著者: 中嶋弘

ページ範囲:P.723 - P.725

 第8回国際医真菌学会議(VIII thCongress of International Societyfor Human and Animal Mycology,ISHAM)は,盛夏の2月8日から同12日まで,5日間,ニユージーランド,パーマーストン・ノース市,Massey大学(図1,2)において,M.Baxter会長(Massey大学獣医病理,公衆衛生学教室教授,真菌学者)(図3)のもとに開催された。
 此度,本会議に参加する機会に恵まれたので,その印象を少しく綴ってみたい.

これすぽんでんす

Inflammatory Linear Verrucous Epidermal Nevus(ILVEN)とPorokeratosis of Mibelli

著者: 木村俊次

ページ範囲:P.726 - P.726

 宮入氏らの論文「特異な臨床像を呈したInflammatory Linear Verrucous Epidermal Nevus」(本誌,36(4);411,1982)を興味深く拝見しました。ILVENと鑑別を要するものとして,宮入氏らも記載されているごとくいくつかの疾患があげられますが,宮入氏らの症例に関しては,Porokeratosis of Mibelliのとくに列序型1)との鑑別を十分に行う必要があるように思われます.
 すなわち,まず図3で"本来の皮疹"とされているものは,写真でみる限り中央に皮丘・皮溝はみられず萎縮性かつ平滑であり,また辺縁部には多少の隆起も認められるようであることから,Porokeratosisの臨床所見として矛盾しないと思われます.また手背の脱色素性苔癬化皮疹は,やはりPorokeratosisの角質増殖型1)あるいは炎症性増殖型2)として矛盾しないようです.さらに色素沈着性皮疹については,Porokeratosisにも色素沈着を伴うものがあること1,3),および稀ながら自然退縮をきたす場合には辺縁部の隆起が消失すること1)から,これもPorokeratosisの臨床所見の1つと考えて差しつかえないと思われます.一方,自覚症状に関しても瘙痒を伴うことが少なくないこと4)から,これをもってPorokeratosisを否定することはできないと考えられます.皮疹の列序性配列はILVENのみならずPorokeratosisの列序型の1つの特徴となっています.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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