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文献詳細

雑誌文献

臨床皮膚科36巻8号

1982年08月発行

文献概要

連載 皮膚病理の電顕・14

付属器腫瘍(Ⅲ)—汗管腫(1)

著者: 橋本健1

所属機関: 1

ページ範囲:P.807 - P.810

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汗管腫
図37 汗管腫を電顕のレベルでみると,この腫瘍が分泌腺の構造を持たず,むしろ導管の構造を有することがわかる.すなわち管腔(Lumen)を取囲む上皮は分泌顆粒や糖原を含む大型で"juicy"な腺細胞1)ではなく,扁平で内容に乏しく,核(N)のみが目立つ細胞であることがわかる.一般に外界に向かって開口する分泌腺の導管部は同様の構造を示す.たとえばアポクリン腺とエクリン腺の導管部を微細構造によって区別することは困難である.H&E染色で好エオジン性に染まりPAS染色陽性を示した僧腔内の物質は多数の小胞よりなるが(*),この拡大では無数の点にみえる,壁細胞の管腔面こは多数の微絨毛(v)が分化しているが,この拡大では明瞭でない.導管の外側を密な膠原線維束(C)が取囲む.これが光顕による観察で硝子様にみえた間質に相当する.その中に分断された弾力線維の断片(E)が散在する.壁細胞の周囲に沿って多数の黒点(矢印)としてみえるのがデスモゾームである.これらの点より多少大きい黒点(矢尻)が細胞質中にみられるが,これらは角硝子質(kcratohyalin)顆粒である,すなわち,これらの壁細胞は角化の傾向を示している.細胞質内には多数のリゾゾーム(Ly)も混在している.角化の傾向を有し,多数のリゾゾームを持つ細胞は人体ではエクリン汗腺の麦皮内導管部しかないので1),これらの所見を綜合すると,汗管腫がエクリン汗腺の炎皮内導管部に類似した分化を示すことがわかる.また,このように正常器官の微細構造を知っていると,腫瘍を構成する細胞の特徴と比較することにより,その腫瘤の分化の方向,ひいては組織由来を決定することができる.悪性腫瘍のように分化の程度の低いものでも大体の予想は可能であり,例えば皮膚転移腫瘍の原発臓器を推定することができる場合がある.×2,750

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1324

印刷版ISSN:0021-4973

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