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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科36巻9号

1982年09月発行

雑誌目次

図譜・479

Mucous Cyst of the Finger

著者: 石原紘 ,   小浜幸俊

ページ範囲:P.826 - P.827

患者 27歳,男性
初診 昭和54年10月24日

原著

Pseudo-Kaposi Sarcomaの1例

著者: 相場節也 ,   酉抜和喜夫 ,   三浦隆 ,   渡部信之

ページ範囲:P.829 - P.837

 症例は右手背の有痛性暗赤色丘疹ならびに硬結を主訴とする50歳女性.病理組織学的には未分化な血管増殖像を呈し,動脈造影にて多数の動静脈吻合が確認されpseudo—Kaposi sarcomaと診断した.以下,自験例を報告し,併せて本症の診断,angioblastomaとの鑑別の要点および本症例のhistogencsisにつき若干の考按を加えた.

Malignant Clear Cell Hidradenoma

著者: 坂本ふみ子 ,   竹内誠司

ページ範囲:P.839 - P.846

 61歳男性の,生来の血管腫局面上に原発し,前胸部に転移巣を認めたmalignantclear cell hidradenomaの1例を検索した.真皮から皮下にわたる腫瘍胞巣は,PAS染色陽性の明るい細胞よりなり,それらに核の異型性,ケラトヒアリン顆粒を含む角化巣,嚢腫様構造などをみる.腫瘍細胞は,コハク酸脱水素酵素陽性,酸性フォスファターゼ陽性,フォスフォリラーゼ陽性,β—グルクロニダーゼ陽性,アルカリフォスファターゼ陰性であった.電顕的には腫瘍細胞は,ロゼット型グリコーゲンと脂肪滴,大小種々の電子密度の分泌顆粒,トノフィラメントなどを種々の程度にそれぞれ含む細胞よりなる.以上の点より,自験例は,i)汗管,ii)分泌部,iii)分泌部と汗管の両者,へのそれぞれの分化を示す腫瘍細胞からなるものと思われた.

Bowen病と皮膚悪性腫瘍の合併例について—自験2例の報告と本邦報告40例の集計

著者: 新村陽子 ,   村田譲治 ,   安木良博

ページ範囲:P.847 - P.853

 多発性Bowen病に基底細胞腫が合併した70歳,女子例,72歳,男子例の2例を報告したが,後者は老人性角化腫も併発していた,本邦におけるBowen病と皮膚癌前駆症あるいは皮膚悪性腫瘍との合併例40例について統計的に検討し,さらにBowen病と皮膚腫瘍との関連について考按した.

転移性皮膚癌にみられたElimination現象

著者: 森下美知子 ,   設楽篤幸 ,   佐藤良夫

ページ範囲:P.855 - P.859

 51歳,男子.肺癌の治療中に右側頭部に紅色腫瘤が出現.組織学的にtubularadenocarcinomaの転移像であった.内臓悪性腫瘍の皮膚転移,特に男性における肺癌の皮膚転移はまれなものではないが,組織学的に腫瘍細胞のelimination現象を示唆する所見が認められた.すなわち腫瘍細胞が経毛包性に,一部は経表皮性に排出される像を認めた.また転移性皮膚癌の頻度と肺癌の皮膚転移についても若干述べた,Elimination現象が認められた転移性皮膚癌の本邦報告例は4例で,自験例も含めてすべて腺癌である点は興味深いところである.

下口唇に生じた特異な組織球様細胞の増殖を伴った皮膚線維腫の1例

著者: 山崎雄一郎 ,   戸田道子

ページ範囲:P.861 - P.863

 下口唇に生じ,発症後4週間で切除した皮膚線維腫の1例を報告し,若干の考按を加えた.臨床像は一見軟属腫に似た,中心にわずかに臍窩を有する扁平隆起性の丘疹で,組織学的には交錯し走行する密な膠原線維束,線維芽細胞から構成され,一部に一見上皮性の細胞をおもわせる特徴的な形態の組織球様細胞からなる細胞集団がみられた.発症後短期間で切除されたため,腫瘍の初期に近い組織像がえられたと考えられた.

Angioleiomyoma:嚢腫様構築を示した1例

著者: 加藤光子 ,   堀越貴志 ,   千葉雅史 ,   神保孝一

ページ範囲:P.865 - P.870

 自験例は左下腿の皮下腫瘤を主訴として来院した25歳,女性である,臨床診断は,dermatofibromaとされ,組織学的所見からは,Antoni A型のneurilemmomaかまたは,angioleiomyomaが疑われた.組織学上,腫瘍は結合織性の薄い被膜に囲まれ,中央部は粘液変性をおこし,嚢腫様の構築を示していた.腫瘍細胞はMallory染色で赤色に染まり陽性所見を呈したために.神経細胞由来かまたは筋細胞由来を思わせた.電子顕微鏡下で腫瘍細胞は基底膜を有し,細胞質内には筋細胞の特徴を示す50Åのfilamentおよびdense bodyが束状に密に集積していた.以上の所見から,自験例は嚢腫様の構築を示したangioleiomyomaであると確定診断した.各種の腫瘍性疾患の診断にあたっては,電子顕微鏡的所見が極めて有用であることを強調したい.

てんかんおよび精神運動発達遅延を伴ったNevus Leiomyomatosusの1例

著者: 出光俊郎 ,   富田靖 ,   飯沼一宇

ページ範囲:P.871 - P.874

 1歳10ヵ月女児,生下時より両肩甲から両上腕伸側,両臀部から両大腿外側にかけて多毛がみられ,同時に左下腿後而の限局性多毛,横走する数本の深いしわとともに皮膚が隆起していた.一方,生後8ヵ月頃よりけいれん発作が頻発し,小児科にて,てんかん,精神運動発達遅延を指摘された.左下腿後面の皮膚肥厚は,組織学的に真皮内に比較的よく分化した立毛筋類似の筋線維束をみとめnevus leiomyomatosusと診断した.本邦において,現在までに24例の本症の報告があるが,中枢神経異常との合併例はみられない.さらに本邦報告24例につき若干の検討を行った.

女子顔面黒皮症と誤れる両側性太田母斑

著者: 荻野篤彦

ページ範囲:P.875 - P.878

 女子顔面黒皮症と類似する顔面の色素沈着症の5例を経験し,その臨床像と組織学的所見から両側性太田母斑の一型と考えた.全例とも38歳以上の中高年女性で,30〜40代に発症しており太田母斑としては遅発性といえる.色素斑の分布は額部全体またはその両辺縁あるいは両こめかみに対称性に生じ,びまん性ないし色素斑が融合する傾向を示し,色調は黒褐色ないし灰褐色である.さらに頬骨部および眼周囲に紫褐色ないし灰褐色の小色素斑が散在している.本症例は真皮メラノサイトを認める点で太田母斑の範疇に入れられるが,色調は青みがほとんどなく,両側対称性で,遅発性であり,限球メラノーシスおよび口蓋色素沈着を認めないことより通常の片側性太田母斑とはかなり異る.なお本疾患は女子顔面黒皮症,肝斑,雀卵斑などと臨床的に類似するので鑑別診断が重要である.

ノルウェー疥癬の1例

著者: 村越三千代 ,   早川浩太郎 ,   町田暁 ,   小澤明 ,   難波煌治 ,   村越正典 ,   堤寛 ,   名倉宏

ページ範囲:P.879 - P.885

 症例は79歳女性,神奈川県平塚在住.正確な発症時期は不明であるが,約3ヵ月間で異常な厚さの乾燥した泥状の痂皮が固着した特異な紅皮症状態に進展した.全身症状は重篤.合併症として肝硬変あり.皮疹部皮膚生検組織の免疫組織化学的検索(酵素標識抗体法)で,真皮結合織および表皮細胞間隙にIgG沈着が,虫体表面にIgEの沈着が認められた.真皮上層結合織内には多数のIgG,IgE形質細胞が浸潤していた.さらに臨床検査によって高IgE血症が認められ,虫体をアレルゲンとした生体反応(アレルギー反応)が惹起されていることが想像された.自験例が,通常の疥癬からノルウェー疥癬へと発展したのは,患者の特殊な生活環境,肝硬変の合併,あやまった外用療法など多くの因子が関連したと考えられた.

原発性皮膚クリプトコックス症

著者: 木花光 ,   岩崎弘幸 ,   石川謹也 ,   西川武二

ページ範囲:P.887 - P.891

 原発性皮膚クリプトコックス症の27歳男子例を報告した.初診の3ヵ月前,右拇指に外傷,一旦治癒したかに見えたが1ヵ月前より同じ部位に湿潤腫脹をきたした.病理組織学的に真皮に小円形細胞,組織球などより成る稠密な細胞浸潤があり,PAS染色にて多数の菌要素を認めた.生検皮膚のサブロー培地培養にてクリーム状集落が得られ,分離菌はCryptococcus neoformansと同定された.また有性世代は,Filobasidiella neoformans,ma—ting type α,scrotype Dと同定された.3%小川培地での培養では典型的な厚い莢膜をもった菌細胞が得られた.生検後軽快傾向が見られ,クロトリマゾール含有軟膏の外用にて,半年後患部はほぼ正常に復した.経過中全身症状なく皮疹の新生なし.以上より本例は自然治癒と考えられた.また原発性皮膚クリプトコックス症につき若干考察を加えた.

Becker母斑を合併したPringle病の1例

著者: 鎌田英明 ,   松崎孝子 ,   山口全一

ページ範囲:P.893 - P.897

 17歳,男子.いわゆる脂腺腫,癩癇発作,知能障害の3主微を具備する典型的なBourneville-Pringle母斑症にBecker母斑を伴った1例を報告した.本例では,臨床的に右肩甲部のBccker母斑病巣内にshagreen skinを伴っている,病理組織学的に右肩甲部のBecker母斑病巣内に見られたshagreen skin,背部の脱色素性病巣の深部に見られた硬結,および腰部のshagreen skinは真皮結合織の増殖と弾性線維の欠如という共通の所見が見られた.

コルチコステロイド剤に誘発されたマジョッキー限局性白癬性肉芽腫の1例

著者: 井村眞 ,   戸田浄 ,   香川三郎

ページ範囲:P.899 - P.903

 コルチコステロイド剤外用部位に生じた表在性白癬病巣内の結節を検討し,培養所見,病理組織所見よりT.rubrumによる限局性白癬性肉芽腫と診断した.同一個体に急性深在性白癬病巣を共有する点,トリコフィチン反応陽性を呈し自然治癒を営む点で古典的症例と異なり,急性深在性白癬からの移行を推測させる.

毛ジラミの走査電顕像

著者: 中村進一 ,   神谷俊次 ,   林厚生 ,   星健二 ,   中山恵二 ,   中村小枝子

ページ範囲:P.905 - P.907

 人の皮膚に外寄生し,準性病(STD)の一つとしても良く知られている毛ジラミを,光顕的および走査電顕的に観察した.毛ジラミは他の人シラミと異なり全体に幅広く,また異常に発達した後2対の胸脚と,レーダー状に突出した気門に特徴がみられた.

編集室だより

雑誌名の省略について

ページ範囲:P.897 - P.897

 最近,引用文献に掲載される雑誌名の略称は,1970年にAmerican National Standards Committeeから出された「International List of Periodical Title Word Abbreviations」による略し方が,国際標準として,一般化してきました.皮膚科領域に関係のある言葉の例を下記にあげました.御投稿の際には,これらを参考にして下さい.

連載 皮膚病理の電顕・15

付属器腫瘍(Ⅳ)—汗管腫(2)

著者: 橋本健

ページ範囲:P.908 - P.913

図39汗管腫.管腔に沿った壁細胞の一部を強拡大で示した.読者は次の微細構造を識別するのに困難を感じないと思う.すなわち核(N),リゾゾーム(Ly),管腔周囲の張原線維束(T),デスモゾーム(矢尻),管腔へ突出する多数の短い微絨毛(v),および多数の糖原顆粒(g)などである.糖原顆粒はリボゾームに大きさや電子密度が似ているのでロゼット状をなすか,または多量に集積している場合(図38参照)を除いて鑑別しにくい.リゾゾームは周囲を膜で限界された中に多数の小胞を入れ,更に電子密度の高い均一性の物質も含んでいる.この型のものを多胞性電子密小体(multivesicular dense body)と呼ぶ.最も普通の型であり,酸性フォスファターゼをはじめ多くの水解酵素や蛋白分解酵素を含有している.リゾゾーム内の小胞と管腔内のそれらが非常に似ており,更に他の成分も管腔内にあるものと似ているので(*),前者が管腔内へ排出されて後者の一部となる可能性を考えさせる.×58,500

印象記

第16回国際皮膚科学会の印象

著者: 佐藤昌三

ページ範囲:P.914 - P.917

 Dermatology in a Changing Wo—rldをモットーに第16回国際皮膚科学会は,1982年5月23日から28日まで6日間の会期で,新緑の美しい東京で開催された.93年に及ぶ国際皮膚科学会の歴史を通じ,開催地がヨーロッパ,アメリカ大陸を離れ,極東の地,東京を選んだのは意義のあることであった.今学会の登緑者は同伴者を含めると世界の75カ国から2,614名,我が国から2,922名,総計5,536名の多数に達した.演題数は1,600題を上回り,質量ともに空前の規模の国際学会である,本国際学会にかける関心が世界的に高かったと考えられる.1982年東京学会が決定したのは1977年,Mexico Cityの第15回学会においてである.以来,5年の長期間,名誉会頭安田利顕教授,会頭久木田淳教授,事務総長清寺眞教授を中心に,日本皮膚科学会,国際皮膚科学会組織委員会をはじめ関係各位の並々ならぬ御尽力があった.学会開催に向けて遺漏なく企画,準備作業が継続されたことも,我々の熟知するところである.東京学会は,全会期を通じ運営は驚異的な円滑さで行なわれ,絶好の晴天に恵まれ,参加者は東京学会の大成功に惜しみない賛辞をおくった.誠に御同慶に耐えない.
 学術発表に先立ち,5月23日午後,学会開会式が挙行された.Inter—national Committee of Dermatology会長Otto Braun-Falco教授,本学会会頭久木田淳教授の開会挨拶にひきつづき,Marchionini Gold Me—dalが皮膚科学の発展と国際交流に努められたBraun-Falco教授に贈呈された.Marchionini賞は,神保孝一札幌医科大学助教授とスエーデン国ウプサラ大学Anders Vahlquist教授に夫々贈られた.神保助教授は色素細胞,悪性黒色腫の研究が高く評価されたわけである.折角の東京学会に我が国から同賞受賞者が選出されたのは感激的で,同君の今後益々の学問的発展を祈る次第である.Vahlquist教授はビタミンA,レチノイドに関する秀れた研究者である.

これすぽんでんす

Papilloma VirusとPolyoma Virus

著者: 木村俊次

ページ範囲:P.918 - P.918

 ヒト乳頭腫ウイルス(human papilloma virus,HPV)についての研究は最近10年間にかなりの進歩を遂げ,とくにHPVから取り出したDNAについてendonucleaseやhybridization法を用いた研究が行われるようになってから,HPVのDNAにはいくつかのタイプが存在すること,そしてそれらのタイプと臨床病型や組織所見が或る程度対応することが知られるようになった.
 こうした状況のもとで谷垣氏らの論文「ヒトイボウイルス(human papilloma virus)の新しい型が分離された疣贅状表皮発育異常症(Epidermodysplasia verrucifor—mis,Lewardowsky-Lutz,1922)の1例」(本誌,36(5);509,1982)が発表されたのはまことに時宜を得ており,きわめて興味深いものである.とくにこうした研究が本邦の施設でなされたということは力強い限りである.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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