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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科37巻1号

1983年01月発行

雑誌目次

図譜・483

顔面に発生したEccrine Poroma

著者: 内藤美子 ,   政田佳子 ,   晒千津子 ,   谷垣武彦

ページ範囲:P.6 - P.7

患者91歳,男性,会社役員
初診昭和55年6月

原著

Cowden's Disease

著者: 生野麻美子 ,   羽田俊六 ,   溝口藤雄 ,   濱松輝美 ,   江川直人

ページ範囲:P.9 - P.16

 34歳女子のCowden's diseaseのり典型例を報告した.本症に特有な顔面・口腔粘膜・外陰部の多発性小丘疹,四肢末端の角化性皮疹がみられた.既往に甲状腺腫,口蓋扁桃乳頭腫,胃の多発性ポリープ,癌性変化を示す大腸ポリーブなど多彩な内臓病変があり卵巣癌で死亡した.顔面の丘疹3コの組織像のうち2コはangiofibromaに一致し,1コはangiofibromaに毛孔一致性の表皮増殖を伴う変化であった.足背の丘疹は特微的な組織像を呈し,既報例のそれと同様であることから,本症の診断上価値あるものと考えた.本症の過去の報告例47例と自験例を皮膚粘膜所見を中心にまとめた.

表在性播種型汗孔角化症に併発したBowen病

著者: 久志本東 ,   青木敏之 ,   居村洋

ページ範囲:P.17 - P.22

 表在性播種型汗孔角化症の1皮疹にBowen病が併発した56歳の男子例を報告した.あわせて汗孔角化症の皮疹の悪性化を来した報告例37例につき集計したところ,数十年間存在していた皮疹が,中年以降に悪性変化をおこす傾向が認められた.

分化度の異なる有棘細胞癌の組織培養

著者: 奥知三 ,   深水秀一 ,   吉国好道 ,   田上八朗 ,   山田瑞穂

ページ範囲:P.23 - P.27

 ヒトの正常表皮,前癌状態であるボーエン病,老人性角化症そして有棘細胞癌について組織培養を行ない,有棘細胞が悪性化するにつれて,どのように培養形態が変化していくかをしらべた.また,生体内での表皮増殖と培養表皮での増殖の違いについて,若干の考察を加えた.

皮膚扁平上皮癌と放射線照射部に皮膚転移が生じた肺小細胞性未分化癌の併発例

著者: 幸田衞 ,   武井洋二 ,   植木宏明

ページ範囲:P.29 - P.33

 61歳,男.陰茎包皮原発の扁平上皮癌患者.手術およびLinac計10,400rad照射で治療したが完治せず進行した.死亡1カ月前より肺異常陰影や多発性肝腫瘍が認められた.剖検の結果,肺小細胞性未分化癌の全身転移が確認され,皮膚扁平上皮癌は局所に残存するも転移巣はなかった.また肺癌の皮膚転移は放射線照射部にのみ生じていた.

Tricholemmal Keratosis—4例の報告と本症の位置づけ

著者: 小松威彦 ,   木村俊次

ページ範囲:P.35 - P.39

 Tricholemmal keratosisの4例を報告した.症例は53歳男,55歳男,74歳男,43歳男で,何れも頭頸部に発症し,経過は長期間に亙る.組織学的に著しい角質増生とその底部の上皮の外毛根鞘性角化とを特徴とする他,腫瘍周辺部表皮が腫瘍辺縁部を襟飾り状に覆う所見が得られた.3例に電顕的検索を施行し,従来,外毛根鞘ないしtrichilemmal cystに報告されていた所見とやや異った像を得,さらに有棘層上層〜角質層の核内にヒト乳頭腫ウイルス様粒子を認めた.又,全例にホルマリン処理ヒト乳頭腫ウイルスに対する抗血清を用いた螢光抗体間接法を施行し,2例に有棘層上層〜角質層下部の表皮細胞核に一致する特異螢光を得た.以上より本症はウイルス性疣贅と関連大なるものと考えた.

Proliferating Trichilemmal Cystの2例

著者: 藤田優 ,   土居敦子

ページ範囲:P.41 - P.44

 Proliferating trichilemmal cystの2例を報告する.第1例は82歳女性,右前頭部の直径約2cmのドーム状腫瘤で,組織像は多数の嚢腫からなり,その壁細胞は好酸性,大型のいわゆるintermcdiate cellを主とし,trichilemmal keratinizationを示した.第2例は62歳男性,右耳後部の直径約3cmの有茎性腫瘤で,組織像は第1例と同様の所見に加え,ケラトヒアリン顆粒を有する角化も示した.
 本症の統計的観察,組織発生の機序の考察を行い,本症が既往の嚢腫からも発生し,さらに外毛根鞘のかなり広い部分への分化を示すことを述べた.

電顕的にMyofibroblastの増殖が認められたInfantile Digital Fibromatosisの1例

著者: 稲田修一 ,   功野泰三 ,   松林由希子 ,   片岡和洋 ,   岡野伸二 ,   前田元道

ページ範囲:P.45 - P.50

 1歳,男児の右第4指に生じたinfantile digital fibrornatosisの1症例を報告した.組織学的には増殖細胞にエオジン好染性封入体が認められ,定型像を示した.電顕的には増殖細胞は,fibroblastの所見の外に束状をなしdense bodyのある直径5〜7nm大のmicrofilament, pillocytotic vesicleがありmyofibroblastと見做された.
 本腫瘍はmyofibroblastの増殖からなり,封入体は,その原因は不明であるが,microfila—mentの集合により形成されると思われた.

Immunoblastic Lymphadenopathyの1例

著者: 行木弘真佐 ,   石川英一

ページ範囲:P.51 - P.56

 49歳,男子に発生したimmunoblastic lymphadenopathyと考えられる1例を報告した.抗生物質,消炎鎮痛剤の使用後,滲出性紅斑を全身に来たし,表在性リンパ節腫脹を認め,その後紅皮症状態になり,検査にて高γ—gl血症,クームス試験陽性,EB virus抗体価高値を認め,リンパ節生検で,1) immunoblastの増殖,2)分枝状小血管の増生,3)間質の好酸性無構造物質を認め,全経過約5カ月で死亡した.また末梢血で認められた異型リンパ球は,好塩基性,ピロニン好性の細胞質をもつ大型の細胞で,電顕的にリンパ節のimmunoblastに類似していた.この末梢血異型リンパ球はE-RFCで,nylon-fiber通過性,C3 receptor陰性で,T細胞の性格を有し,電顕的にもSaidのいうT-immuno—blastに一致していた.従来,IBLで認められるimmunoblastはB cell originであると言われており,T細胞由来のimmunoblast類似異型細胞が末梢血に出現した事は注目に値する.

爪甲下に生じたAcquired Digital Fibrokeratomaの1例

著者: 滝野長平 ,   御藤良裕

ページ範囲:P.57 - P.62

 50歳男性の右第1趾爪床部に発生し,爪甲下を索状に伸びて先端を遊離縁より僅かにのぞかせるという特異な臨床像を呈したacquired digital fibrokeratomaの症例を報告した.この機会に爪囲・爪床部における本症の問題点について文献的に検討するとともに,本症のこの部における局所解例学的に異なる発生部位,すなわち爪廓・爪溝・爪床・爪母などでの臨床形態の特徴について検討したが,それぞれに特徴はみられるものの現時点ではいまだ事例が少なく,これらを明らかにするためには一層の症例の積み重ねが必要であることを述べた.ちなみに本邦における1981年までの誌上掲載例は40例で,このうち爪囲・爪床例は4例.爪床例は自験例のみであった.

Amelanotic Melanomaの1例

著者: 林正幸 ,   松本鐐一 ,   太田真人

ページ範囲:P.63 - P.67

 62歳,男子の右踵部にみられたamelanotic melanomaの1例を報告した.臨床像は胼胝腫ないし鶏眼様で,病理組織学的にはメラニン顆粒の全くみられないnodular me—lanomaであった.電子顕微鏡による検索でプレメラノソームがみつかった.Amelanoticmelanomaの臨床診断がきわめて困難であることを強調した.

乳び胸を併発し死の転帰をとったAngiosarcomaの1例

著者: 片岡和洋 ,   山田悟 ,   岡野伸二 ,   野間隆文 ,   土岐尚親 ,   嶋本文雄

ページ範囲:P.69 - P.73

 55歳,女性.頭部に碗豆大淡紅色腫瘍及び周囲に小豆大までの腫瘍を認め,当初転移性皮膚癌が考えられたが,病理組織学的には,未分化な核をもつ腫瘍細胞が充実性に増殖し,一部では管腔様構造もみられ,その内腔に腫瘍細胞の突出する像を認めたことより血管肉腫と診断した.自験例において興味ある点は乳び胸を併発したことであり,その発症の原因は,縦隔への広範囲な腫瘍の連続的浸潤によるものが考えられた.

Osler痛斑(結節)の1例

著者: 末木博彦 ,   福岡俊明 ,   村田譲治 ,   藤澤龍一 ,   井上紳 ,   篠原文雄

ページ範囲:P.75 - P.79

 24歳,女性.12歳時,僧帽弁閉鎖不全症の診断を受ける.55年4月,抜歯後,38℃台の発熱を繰り返し,不整脈も出現.同年9月4日当院第三内科に入院.亜急性細菌性心内膜炎の診断のもとに,抗生物質を中心とした治療中,11月25日,右足底から足縁にかけ,浸潤を触れる半米粒大〜小豆大の有痛性紅斑が出現.27日には合計15個となった.組織学的には,真皮上中層を中心とするleukocytoclastic vasculitisの所見を含む血管炎と血管周囲性細胞浸潤を呈した.皮疹の全経過は7日間であった.本症は従来,塞栓によるものと考えられていたが,最近の免疫学的検索により,アレルギー機序の関与が推定される.

Pseudocyst of the Auricleの4例

著者: 斉藤眞理子 ,   八木茂 ,   森嶋隆文

ページ範囲:P.81 - P.85

 Pseudocyst of the auricle (耳介仮性嚢腫)(Engel)の4例を報告した.本症の特徴を要約すると,以下の如くである.1)中年の男子に多い.2)罹患部位は耳介前面上半部で,対耳輪脚連結部〜対耳輪〜耳輪上部とに囲まれた部位である.3)臨床的には疼痛を欠き,表面皮膚は常色,扁平台状〜半球状に隆起,大きさは拇指頭大前後の軟骨内に位置する嚢腫様病変である.4)内容液は黄色透明,粘稠性であり,蛋白の組成やコレステロール値の検索から内容液は血清由来を思わせた.5)組織学的には嚢腫は軟骨内に形成され,表皮や真皮に著変はない.6)治療法は病理組織学的検索を兼ねて,嚢腫壁を小切除し,乾ガーゼ挿入・圧迫固定が良いように思われる.

編集室だより

雑誌名の省略について

著者: 「臨床皮膚科」編集室

ページ範囲:P.62 - P.62

 最近,引用文献に掲載される雑誌名の略称は,1970年にAmerican National Standards Committeeから出された「International List of Periodical Title Word Abbreviations」による略し方が,国際標準として,一般化してきました.皮膚科領域に関係のある言葉の例を下記にあげました.御投稿の際には,これらを参考にして下さい.

連載 皮膚病理の電顕・19

付属器腫瘍(Ⅷ)—エクリン汗腺分泌部の癌(2)

著者: 橋本健

ページ範囲:P.86 - P.89

 図51エクリン分泌部の一つの特徴である細胞間小運河(intercellular canaliculus)(IC)9)が腫瘍組織にもみられる.正常組織では小運河は主腺腔より分岐した支流に相当し,腺腔の分泌面積を拡大するのに役立っている.本図では主腔が見当らず,左上には膠原(C)を含む間質がみられる.小運河の胎生発生は明らかではないが,このように独立した小腺腔が発生して,やがて主腺腔に連続するのかもしれない(図52B参照).この小運河は4-5個の腺細胞によって取囲まれているが,それらが腺腔の近くで接合する部分にはデスモゾーム(d)と密着接合(tight junction)(t)が連続して存在し,正常エクリン汗腺分泌部上皮の腺腔近傍での接着構造に類似する9).勿論,他の分泌腺でも腺腔側で細胞膜の癒着が起こるから,このデスモゾームと密着接合の組合せだけでエクリン腺由来と決めることは不可能であろう.本図でも弾力線維の一部(e)が腫瘍細胞に取囲まれており,この部分の腫瘍が真皮を破壊して増殖し,膠原(c)は破壊するが,弾力線維は完全に分解し得ないことを示唆している.
g:糖原頼粒,m:糸粒体,N:核x22,800

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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