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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科37巻10号

1983年10月発行

雑誌目次

図譜・492

Chloromaの1例

著者: 長谷哲男 ,   宮本秀明 ,   池澤善郎 ,   内山光明 ,   中嶋弘 ,   永井隆吉

ページ範囲:P.854 - P.855

症例58歳,男性
初診昭和52年9月30日

原著

正常および病的表皮基底側表面の走査電顕的観察—塩酸・コラゲナーゼ消化法を用いて

著者: 大草康弘 ,   長島正治 ,   高田邦昭 ,   平野寛

ページ範囲:P.857 - P.861

 塩酸・コラゲナーゼ法を用い,正常および病的皮膚(尋常性白斑・尋常性乾癬・ボーエン病)の表皮基底側表面を走査電顕下に観察した.
 正常表皮では表皮突起の立体構築が観察されると同時に,メラノサイトと考えられる細胞の真皮側への突出像もみられた.尋常性白斑では表皮突起の扁平化とメラノサイトと考えられる細胞の減少・消失が,尋常性乾癬では表皮突起の肥大・延長・融合が,ボーエン病では巨大な表皮突起がそれぞれ観察された.
 塩酸・コラゲナーゼ法は,従来用いられた種々の方法に比べ組織の変形などの人為的影響が少なく,しかも非遊離細胞表面の直接的観察を可能とさせるため,表皮基底側表面などの走査電顕的観察にきわめて有用な手段であると考えられる.

小膿疱を汎発した川崎病の1例

著者: 榎本充邦 ,   荒瀬誠治

ページ範囲:P.863 - P.868

 5歳,男.経過中に,掌蹠を除くほぼ全身に無菌性小膿疱が汎発した再発性の川崎病の1例を経験した.臨床検査で,赤沈の亢進,核左方移動を伴う白血球増多,CRP:5+,血小板増多などがめだったが,ASLO価は陰性.組織所見は,角層下膿疱であった.膿疱性乾癬,角層下膿疱症,acute generalized pustular bacteridなどの疾患と鑑別し,集めえた文献からMCLSの病因,膿疱の発生機序に言及した.

マンソン孤虫症—免疫学的手法を用いて診断した1例

著者: 浦野聖子 ,   菅谷圭子 ,   夏目典子 ,   岩月啓氏 ,   田上八朗 ,   山田瑞穂 ,   記野秀人 ,   石井明 ,   森岡洋子

ページ範囲:P.869 - P.873

 大腿部の無痛性硬結を主訴として来院した52歳の男性患者において.虫体の確認はできなかったが,①生のカエルを食べた既往,②虫体抗原を用いた皮膚反応で陽性を示したこと,③オクタロニー法,間接螢光抗体法にて虫体抗原に対する血清抗体が認められたこと,④組織標本にていわゆる"航跡所見"(虫体移動のあとの虫道)と思われる像が認められたこと,などより,マンソン孤虫症と診断した.
 また,その組織標本において認められた多数の好酸球浸潤の機序に関し,検索を行い,生体の免疫反応が好酸球の遊走に大きな役割りを果たしていることを推測した.

Herpes Gestationis Factorと抗基底細胞抗体を認めたHerpes Gestationisの1例

著者: 渡辺剛一 ,   石川英一

ページ範囲:P.875 - P.878

要約 22歳,女性.第2回目妊娠1カ月頃より両下肢に瘙痒性紅色丘疹が出現し,次第に全身に拡大するとともに,妊娠9カ月頃より小豆大までの小水疱を認めた.水疱は組織学的に表皮下水疱で,螢光抗体直接法で病変部に免疫グロブリンおよび補体の沈着は認められなかったが,モルモット食道を基質とした間接法でvan Joost1)の記載した抗基底細胞細胞質抗体が患者血清中に認められた.また補体法ではHG因子陽性であった.皮疹は分娩後3週間で消失し,抗基底細胞抗体,HG因子も陰性化した.

Temporal Arteritisの1例

著者: 丹野和穂 ,   飯島進 ,   古川富士弥

ページ範囲:P.879 - P.885

 37歳,男.初診の1カ月前より,頭痛と共に両側頭から前頭部にかけて蛇行せる有痛性皮下索状硬結と数個の小潰瘍を生じた.検査ではBSR亢進,CRP (+),末梢血好酸球24%を認む.眼科的異常なし.右側頭動脈の生検像は血栓による内腔閉塞,内膜の破壊,内弾性板は断裂破壊され,その一部は組織球によるphagocytosisが確認された.中膜は軽度の好酸球浸潤,外膜は顕著なリンパ球と好酸球の浸潤であった.螢光抗体直接法で病巣部血管壁にはIgG, A, C3の沈着は認めなかった.側頭動脈炎と診断し,betame—thasone 1.5mg/day投与にて硬結と腫脹は約6カ月で消失した.病理組織所見は非定型的と思われた.

Unusual Variant of Lupus Erythematosus or Lichen Planus

著者: 大野佐代子 ,   尾口基 ,   今村貞夫

ページ範囲:P.887 - P.891

 49歳,男性.数年前より両手背,耳介,膝蓋部に対称性に角化性紫紅色紅斑が出現.組織学的にはHE染色で基底層の液状変性と真皮上層に帯状の細胞浸潤,螢光抗体法でdermo-epidermal junctionにfibrinogenの線状沈着,真皮上層にcolloid bodyが認められた.臨床的には円盤状エリテマトーデス(LE),組織学的には扁平苔癬(LP)に近く,LEともLPとも断定できなかった.
 最近,LEとLPのいずれとも断定できないが,両者の特徴を併せもった症例が散見されている.過去の報告例に自験例を加えた24例に関して文献的に考察した.

ネフローゼ症候群を併発したMixed Connective Tissue Diseaseの1例

著者: 安達幸彦 ,   石川英一

ページ範囲:P.893 - P.897

 30歳,女性.22歳のとき手指の腫脹,レイノー現象が出現した.23歳時より筋肉痛,25歳時より心嚢炎を併発し,抗核抗体(speckled pattern)高値,抗RNP抗体高値と合せ26歳のとき最終的にSharpの記載に準じ,mixed connective tissue discaseと診断した.その後(28歳),妊娠中毒症に罹患し蛋白尿が持続し,30歳時ネフローゼ症候群を呈した.同時に一過性に抗DNA抗体の軽度上昇,補体低下を認めた.本症例はSLEに関するARA診断基準を4項目満足した.文献例での検討でも,SLEとしての特徴の顕著なmixed connective tissue diseaseでは腎病変を伴い易い傾向が窺われる.

遺伝性出血性毛細血管拡張症(Osler-Rendu-Weber病)—その電顕像について

著者: 森尚隆 ,   熊切正信 ,   三浦祐晶 ,   稲葉秀一

ページ範囲:P.899 - P.903

 53歳,女性.顔面および口腔内に血管拡張,鼻出血が家族内にも発生した症例で,肺動静脈瘻を伴った典型的なOsler病の1例を経験した.皮膚病変を組織学的,電顕的に検討し,以下の所見を得た.1)血管病変は真皮上層から皮下に及ぶ.2)真皮上層から皮下にかけての血管は高度に拡張し,壁が薄く伸展している.3)真皮下層では中等度に拡張した太い血管があり,内弾性板,多層化した平滑筋細胞が観察された.

Pseudocyst of the Auricleの2例

著者: 滝野長平 ,   古井良彦

ページ範囲:P.905 - P.909

 2年間に経験した2例について報告した.ともに男性(51歳,46歳),片側例で,部位は左三角窩と右舟状窩であった.組織学的に本体は最内壁が線維性組織からなる偽嚢腫で軟骨内に位置することを確認した.1例に施行した内容液の生化学的検索では,血清に比し多くは低値を示したが,A/G比・GOT・LDHのみは高値を示し,とくにLDHは5.6倍を示した.天蓋部の一部を切除・縫合・圧迫,1例ではヨードチンキの内壁塗布の追加で変形を残すことなく治癒せしめた.自験例を含む本邦報告14例と欧米例10例についての臨床事項の比較では,男性好発・片側優位などは共通したが,発症年齢は本邦例でより高年齢に生じる傾向がみられた.本症の報告例は内外共に少なく,未だ発症機序に不明な点も多く,また本症の自然経過も明らかにされていないことなどは独立症としての地位を危うくするものであり,今後の症例の積み重ねと一層の研究が必要であることを述べた.

Bourneville-Pringle母斑症—特に非上皮性の培養細胞について

著者: 秋山純一 ,   進藤泰子 ,   高瀬吉雄

ページ範囲:P.911 - P.916

 幼児期より長期間にわたり観察しえたBourneville-Pringle母斑症の1例を報告した.13歳頃から,いわゆる脂腺腫(As)が著しく増加し,桑実状腫瘤にまで成長した.同患者のAs部分及び健常部より非上皮性細胞の培養を行い,それぞれの培養細胞について形態,DNA合成能および継代数を比較した.As部より増殖した細胞は健常部よりのものと比べ,collagenの産生はより著しく,また3H-thymidineの取り込み実験により,DNA合成速度の亢進も推測された.興味あることに両細胞の継代を繰り返すことにより,健常部の細胞は早期即ち7代に変性を起こし,年齢から見た通常の継代可能回数よりも少なかった.しかしAs部よりの細胞は,現時点で15代まで継代培養を続けており,今後の推移が注目される.

癌性変化したOral Florid Papillomatosisの1例

著者: 高橋博之 ,   山本昇壯 ,   太田和博

ページ範囲:P.917 - P.920

 70歳女性の頬粘膜から口唇部にかけて出現したoral florid papillomatosisの1例を報告した.生検組織にて良性像を示す部位と悪性像を示す部位が混在しており,その臨床経過から考え,OFPからの癌性変化と考えた.ペプレオマイシン,炭酸ガスレーザー,コバルト照射等の治療を行なったが,広範な全身転移をきたし死亡した.転移腫瘍の組織像は,かなり未分化な扁平上皮癌であった.

悪性黒色表皮腫の長期観察例

著者: 高瀬孝子 ,   馬場徹 ,   上野賢一 ,   川北勲

ページ範囲:P.921 - P.925

 78歳男,胃癌に合併した黒色表皮腫.胃癌根治療法後,まず疣贅様皮疹が軽快,次いで乳頭状増殖も退縮した.その経過を1年7カ月に亘り臨床的ならびに組織学的に観察した.
 過去10年間の31例の悪性黒色表皮腫のうち,8例に治療後皮疹の軽快が報告されている.

上咽頭癌及び頸部リンパ節に結核様肉芽腫を合併した爪甲下悪性黒色腫

著者: 丸尾充 ,   堀江順子 ,   岸本三郎 ,   安野洋一 ,   上田恵一 ,   安田範夫

ページ範囲:P.927 - P.931

 73歳,男性の上咽頭癌および頸部リンパ節に結核様肉芽腫を合併した左第1指爪甲下悪性黒色腫の1例を報告した.悪性黒色腫に対しては左第1指切断術を施行し,上咽頭癌に対してはCo60を照射したが,5,000rad終了時に左頸部リンパ節が腫脹し,生検の結果,結核様肉芽腫であった.胸部レントゲン,喀痰培養,ツベルクリン反応などで結核を示唆する所見は認められなかったので,悪性腫瘍に随伴しておこる所属リンパ節の結核様肉芽腫様変化と診断した.
 また重複癌,特に悪性黒色腫と他の悪性腫瘍の合併および悪性腫瘍に伴う所属リンパ節の結核様肉芽腫病変について若干の文献的考察を行なった.

陰茎に生じた転移性皮膚癌の1例

著者: 久保和夫 ,   橋爪鈴男 ,   下田祥由 ,   栗原正典 ,   高桑俊文

ページ範囲:P.933 - P.936

 48歳,男性.直腸癌手術後,約1年経過してから陰茎亀頭部に皮下小結節出現.病理組織学的に原発巣に類似した腺腔構造を有する腫瘍塊が認められ,電顕的にも短い微絨毛,分泌顆粒及び杯細胞に類似した細胞がみられた.転移経路は逆行性静脈行性あるいは逆行性リンパ行性転移が考えられた.

気管支カルチノイドの皮膚転移—電顕的観察

著者: 吉永花子 ,   松尾孝彦

ページ範囲:P.939 - P.943

 59歳主婦の頭部に小腫瘤を多発し,臨床的および光顕組織学的に診断困難であったが,電顕観察により定型的カルチノイドの像を認め,気管支鏡下での生検にて同様の腫瘍を見出し得たことから,気管支カルチノイドの頭皮転移と診断した.

編集室だより

雑誌名の省略について

著者: 「臨床皮膚科」編集室

ページ範囲:P.891 - P.891

 最近,引用文献に掲載される雑誌名の略称は,1970年にAmerican National Standards Committeeから出された「International List of Periodical Title Word Abbreviations」による略し方が,国際標準として,一般化してきました.皮膚科領域に関係のある言葉の例を下記にあげました.御投稿の際には,これらを参考にして下さい.

連載 皮膚病理の電顕・28

付属器腫瘍(XVII)—毛鞘嚢腫(6)

著者: 橋本健

ページ範囲:P.946 - P.950

 図69A外毛根鞘峡部の角化の電顕的特徴のすべてが毛鞘嚢腫に当てはまるわけではないが,その大部分が観察できる.即ち,多数の空胞を含む不完全な角化細胞が,不規則な突起或は嵌合により接着されている模様は既に弱拡大の写真(図66)で明瞭である.本図では不完全に角化した細胞(H)の中に大きな空胞が多数あり,その中に変性した層板状構造(1,2)がみられる.これらは図69Bでそれぞれ拡大して示す.更にこの細胞の中には多数の電子密なリゾゾーム様構造が含まれている(*).この細胞はその下に位置する細胞(G)に比較して線維束の大きさや電子密度が増加しているが,表皮でいえば顆粒層か,有棘層上層の細胞程度の分化しか示さず,かつケラトヒアリン,周辺帯の形成が全然みられない.
×30,000

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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