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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科37巻11号

1983年11月発行

雑誌目次

図譜・493

潰瘍形成を伴った単球性白血病の1例

著者: 長谷哲男 ,   宮本秀明 ,   池澤善郎 ,   中嶋弘 ,   永井隆吉

ページ範囲:P.960 - P.961

患者79歳,女性
初診昭和53年12月12日

原著

Mooren潰瘍を伴った持久性隆起性紅斑の1例

著者: 佐々木哲雄 ,   中嶋弘

ページ範囲:P.963 - P.966

 59歳,男.臨床所見,病理組織学的所見ともに典型的な持久性隆起性紅斑の症例を報告した.皮疹の螢光抗体直接法で血管壁にIgG,C3,フィブリノーゲンの沈着を認めた.全身的には気管支拡張症を伴い,血清IgAは高値を示した.皮疹の出現と同時期より眼症状があり,両眼のMooren潰瘍と診断された.皮疹および眼症状の両者にDDSが有効であった.本症とMooren潰瘍の合併の報告は見出せないが,Mooren潰瘍においても自己免疫学的機序が提唱されており,自験例は同一の免疫学的機序により皮膚病変および眼病変が発症したものと考えた.

Keratoma Palmoplantaris Progrediens et Transgrediens(Greither病)について

著者: 金本雄介 ,   池永実 ,   磯久一郎 ,   久保田俊郎 ,   石橋康正

ページ範囲:P.967 - P.972

 Greither病と思われる1家系を経験した.1家系で6人の患者が観察され,いずれも紅斑性角化性局面の皮疹を示し,掌蹠の多汗がみられた.皮疹部を電顕的に観察したところ,オドランド小体の減少やkeratohyalin droplet patternなどが認められた.

日光曝露部に小紅斑の多発をみた麻疹の1例

著者: 吉田正己 ,   本藤良 ,   青山友三

ページ範囲:P.973 - P.977

 23歳の主婦にみられた麻疹を報告した.
 海水浴後に生じた麻疹の小紅斑の分布を,日光曝露部と海水着で被覆された部位とで比較すると,初診日,小紅斑は後者より前者に多数生じていたが,翌日には後者も前者とほぼ同様に小紅斑の数を増していた.
 大腿部の紅斑を第3皮疹日に生検した病理学的所見では表皮に著変なく,真皮上層の小血管拡張とその周囲に浮腫とリンパ球,組織球の浸潤を認めるのみで,これだけでは非特異的所見であった.しかし,このホルマリン固定パラフィン包埋切片を脱パラフィン後トリプシン処理し,免疫螢光間接法にて検索した結果,真皮上層の小血管内皮細胞,血管内および周囲のリンパ球の細胞質内に麻疹ウイルス特異抗原を検出した.これらの所見から麻疹にみられる紅斑の発症機序を真皮小血管内皮細胞の麻疹ウイルス特異抗原に対する免疫学的反応と考えた.また小紅斑が特異な分布を生じた発症病理については,日光曝露部の真皮小血管内皮細胞には被覆部のそれより早く麻疹ウイルスが侵入するために生じると推察した.

水疱を伴ったSLEの1例

著者: 河村葉志子 ,   三橋善比古 ,   八木橋陽子 ,   羽田知子

ページ範囲:P.979 - P.983

 31歳,女性.増悪期に水疱の出現をみたSLEの1例を経験した.水疱は躯幹および四肢に散在し,小豆大までの小水疱で,個疹は一見ヘルペス様であった.水疱性疾患の合併を考慮して検索したところ,1)水疱部の病理組織所見は,基底細胞の著明な液状変性がみられ,水疱は液状変性に連続して形成されているように思われ,棘融解はみられず,2)直接免疫螢光法では,無疹部,紅斑部,水疱部ともに表皮真皮境界部に,IgG,IgM,C3の沈着を認めたが,IgAの沈着はみられなかった.3)皮膚成分に対する血中抗体の検索では,抗核抗体を認めた以外,表皮細胞間や表皮真皮境界部への抗体はみられなかった.4)電顕所見では,基底細胞の空胞変性と断裂を示したが,基底細胞とbasallaminaとの接合は保たれていた.以上から,本症例にみられた水疱はSLEの皮膚病変であり,高度の液状変性が水疱形成の原因と考えられた.

Behçet病との鑑別が困難であったSweet病の2例

著者: 増田智栄子 ,   中嶋弘

ページ範囲:P.985 - P.989

要約 Behçet病と鑑別困難であったSweet病の2例を報告した.症例1は51歳,男.2年来,顔面,前腕などに浸潤性隆起性紅斑ないし痤瘡様皮疹をくり返し生じ,ときに発熱,関節痛,アフタ,陰部潰瘍,軽い紅彩毛様体炎を伴うred eyesなども生じた.白血球増多,皮疹部の好中球浸潤などもあり,ヨードカリが有効であった.症例2は56歳,女.7年来,主に顔面,四肢に浸潤性隆起性紅斑ないし痤瘡様皮疹,発熱,アフタなどが出没し,ときに結節性紅斑様皮疹も生じた.針反応も陽性であり,白血球増多,皮疹部好中球浸潤も認められた.両例ともSweet病の4主徴を有するが,Behçet病としての前者は4主徴,後者は2主徴を有し,Behçet病との鑑別が困難であった,両疾患は定型例でみる限り別症と考えるが,近縁の疾患と思われ,鑑別困難な症例も少なくないものと思われる.鑑別点を中心に若干の考察を試みた.

Atypical Bullous Pemphigoidの3例

著者: 木花光 ,   仲弥 ,   西川武二 ,   田村晋也 ,   石川謹也

ページ範囲:P.991 - P.994

 非定型的臨床像を呈した類天疱瘡の3例を報告した.略全身に中心部色素沈着傾向を有する環状紅斑が多発融合し,紅斑上に若干の小水疱が見られた.臨床検査成績では好酸球増多症を2例に認めた.組織学的には2例で表皮下水疱を認め,他の1例ではeosinophilic spongiosisが見られた.螢光抗体法にて3例共,病変皮膚の表皮基底膜部にIgG,C3の沈着を認め,2例に循環抗基底膜抗体が陽性であった.1例はDDSが一時的に有効,1例は併発していた膀胱癌にて死亡した.若干の文献的考察を加え,現時点では自験例は免疫病理学的所見を重視して,類天疱瘡の非定型例としておくのが最適であると考えた.

高ガンマグロブリン血症性紫斑—限局性強皮症,尋常性乾癬を伴った症例

著者: 斉藤隆三 ,   亀山孝一郎 ,   加藤一郎

ページ範囲:P.995 - P.999

 40歳,男の両下腿に2年前より点状紫斑が出没する.運動負荷をかけると軽い痛みのような不快感が下腿に生じ紫斑をみるが,約1週間で消褪する.別に背部に10年来,萎縮局面があり病理組織所見により限局性強皮症と診断.また,3年前より乾癬病変がある.肝障害に基づく高ガンマグロブリン血症性紫斑と考えられ,強皮症,乾癬は紫斑と直接の関連性はないものと思われた.検査所見で,高ガンマグロブリン血症,RAテスト(+),RAHA 2,560倍,抗核抗体陽性などの所見があり,螢光抗体直接法ではIgMとフィブリノーゲンが血管壁に認められた.血中免疫複合体は陰性であった.これらの所見は何らかの自己免疫的性格を有し,それによる蛋白異常を来したものと思われる.過去10年間に経験した本疾患6例を集計し,免疫学的所見などについて文献的に考察した.

遺伝性出血性血管拡張症の1家族例

著者: 出光俊郎

ページ範囲:P.1001 - P.1007

 遺伝性出血性血管拡張症の1家族例を報告するとともに,本邦報告例につき,若干の統計的観察を試みた.
 症例は8歳女児.幼児期より鼻出血の既往があり,顔面の易出血性紅色丘疹を主訴として来院.口唇および手掌に血管腫様丘疹,口唇粘膜,鼻粘膜に毛細血管拡張をみとめ,さらに母親,弟にも類症をみた.
 わが国の本疾患の報告は必ずしも多くないが,見逃されている例が多いと考えられ,従来いわれるほど稀な疾患ではないと思われる.本例のように,8歳で既に易出血性皮疹を生じた報告は稀と考えられる.

腎血管造影にて典型的な微小動脈瘤を認めた結節性動脈周囲炎の1例

著者: 増田光喜 ,   北村啓次郎

ページ範囲:P.1009 - P.1014

 51歳男子,四肢の網状紅斑を主訴として来院し,皮膚生検にて結節性動脈周囲炎(PN)に相当する壊死性血管炎像を得た.入院後,血沈亢進,貧血,白血球増多,好酸球増多,血小板増多,各種尿所見等の検査成績に加え,選択的腎血管造影にて両側腎に多発性微小動脈瘤を認め,末梢神経炎,腹痛等の臨床所見と併せPNと診断した.治療は,PSL,イムラン,カプトプリルにより現在良好に経過している.組織学的に皮膚の中等大動脈の壊死性血管炎を呈する場合,リベド様皮疹が臨床上重要な所見であり,また腎血管造影は,PN等の壊死性血管炎を臨床的に診断する上で価値の高い診断法と思われた.さらに本例は,慢性関節リウマチを有しており,PNと悪性関節リウマチの関連につき若干の考察を行なった.

蜂刺傷によるアナフィラキシーショック

著者: 青島敏行 ,   三谷恒雄 ,   桜井みち代

ページ範囲:P.1015 - P.1018

要約 蜂刺傷によるアナフィラキシーショック(重症全身反応)の4例を報告した.症例は39歳女子と56歳,36歳,49歳男子で,刺傷後10数分〜2時間以内に意識消失,血圧低下,嘔気嘔吐,しびれ,全身の紅斑膨疹などを来し緊急入院となった.尿便失禁,腹痛下痢を伴ったものもある.諸症状の多くは入院当日中に,刺傷部の発赤,疼痛,瘙痒も翌日,翌々日には軽快し,入院期間は2〜6日であった.検査成績では白血球数,好中球の増加が全例に,IgE高値が1例に認められた,当院における蜂刺症は1982年1年間に42例(男子25例,女子17例)を数え,季節的には8,9月に集中し,12〜3月には1例もみられない.重症全身反応は3例(7.1%),軽症全身反応は4例(9.5%)に認められ,これらの年齢は30〜60歳台である.全身反応の頻度,血清学的研究について文献的に考察した.

糖尿病を合併したGeneralized Perforating Granuloma Annulareの1例

著者: 清水宏 ,   馬場恵美 ,   原田敬之 ,   倉持正雄

ページ範囲:P.1019 - P.1024

 59歳,男.初診時,前胸部,両上肢に典型的なgranuloma annulare (GA)が存在したが,1年後に小豆大のGAの皮疹が全身に汎発性に新生多発し,generalized GAへと変貌した.さらに半年後,新生した一部の皮疹の中央部が陥凹,潰瘍化し,generalizedperforating GAの疹へと変化した.精査により顕性糖尿病の合併が発見され食事療法を開始したところ,糖尿病の改善に伴いすべての皮疹が色素沈着を残し消褪した.PerforatingGAが糖尿病の改善とともに消腿したとの報告は,自験例の他には未だなく,注目に値するものと思われた.またperforating GAの既報告23例を集計し文献的に考察を行ない,皮疹の臨床形態から,中心臍窩を有する数mmの小丘疹が多発するものをpapular perforatingtype (P型),爪甲大前後の比較的大きな潰瘍局面を形成するものをulcerative perforatingtype (U型)の2型に大別しうることを提唱した.また,とくにU型には糖尿病の合併例が多いことから,両者に強い相関関係があることが示唆された.

Delayed Cutaneous Metastases

著者: 下田祥由 ,   鰺坂義之 ,   久保和夫 ,   土屋雅則 ,   橋爪鈴男

ページ範囲:P.1025 - P.1028

 皮膚原発以外の癌が摘出され,5年から10年以上経過したのち,原発巣の再発,再燃が無いにもかかわらず転移性皮膚癌が認められた6例について報告した.原発巣のうち5例は乳癌,1例は大腸癌であった.転移部位は頭部2例,頸部,腹部,左大腿部,胸部各々1例ずつであった,皮膚転移ののち検索により5例に肝,骨などに広範囲に転移巣が認められた.また1例は皮膚転移出現部位を2年前に強く打っており,1例は皮膚転移とほぼ同じ時期に視力障害を来し,脳にも転移が認められた.Deiayed cutaneous metastasesの機構ははっきり解らないが,dormant cellが何等かの刺激が引き金になり転移巣を形成,増殖したものと思われる.原発病巣が完治し,再発再燃が永年認められないにも拘わらず,内臓悪性腫瘍の証拠として皮膚にも転移が出現することがある事に注意したい.

腱鞘巨細胞腫—光顕的ならびに電顕的観察

著者: 大草康弘 ,   長島正治

ページ範囲:P.1029 - P.1034

 30歳,女性の左手掌に発生した腱鞘巨細胞腫の1例を報告した.組織学的に腫瘍塊は多核巨細胞を混じえた密な組織球様細胞の胞巣状の増殖と胞巣をとりまく線維性結合組織より成り,泡沫細胞・ヘモジデリンの沈着も認められた.電顕的検索より組織球様細胞は4種類に大別され,滑膜上皮細胞に由来することが示唆された.
 本症は光顕的また電顕的検索から線維性組織球腫の亜型として扱うべき腫瘍であることを述べた.

編集室だより

雑誌名の省略について

著者: 「臨床皮膚科」編集室

ページ範囲:P.977 - P.977

 最近,引用文献に掲載される雑誌名の略称は,1970年にAmerican National Standards Committeeから出された「International List or Periodical Title Word Abbreviations」による略し方が,国際標準として,一般化してきました.皮膚科領域に関係のある言葉の例を下記にあげました.御投稿の際には,これらを参考にして下さい.

連載 皮膚病理の電顕・29

付属器腫瘍(XVIII)—脂腺癌(1)

著者: 橋本健

ページ範囲:P.1038 - P.1041

 図71付属器腫瘍の最後として皮脂腺の腫瘍を観察しよう.汗腺腫瘍の項で述べた如く,皮脂腺の腫瘍にも増殖(hyperplasia),腺腫(adenoma),上皮腫(epithelioma),癌(carcinoma)の区別をつけると便利である.図71Aは顔面の皮脂腺であるが,各毛包に付属する大きな分葉した腺体がみられる.成人の皮膚では,この程度の脂腺の発達は正常であるが,図71Bに示した様な脂腺となると増殖の範疇に入る.即ち,真皮上層を完全に占める脂腺塊は,一個一個の細胞に異常はないが,全体として異常に増殖している.このような像は老人性脂腺増殖症(senile sebaceous glandhyperplasia)や,Fordyce病に見られる変化である.ここでも各個の細胞は正常に分化して明調な脂腺細胞となっている.しかし図71Cで示した腺腫となると,未分化な細胞が多数増殖して,その中の僅かな細胞だけが脂質を産生する明調な細胞に分化している.間質のリンパ球浸潤を除けば,腫瘍の実質は分葉した腺構造を示す.更に分化の程度が低く増殖の傾向の強い上皮腫(図71D)となると,脂質を含む明調細胞の分化は著しく減少し,腺体構造も失われ,ただ不規則に分岐する細胞索として発育する.基底細胞上皮腫の脂腺分化を遂げたものとの区別が困難である.以上は良性腫瘍であって,せいぜい上皮腫が局所的な侵入を示すに止まる.
A,B:×10C,D,F:×40E:×63

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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