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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科37巻12号

1983年12月発行

雑誌目次

図譜・494

Malignant Acanthosis Nigricansの1例

著者: 森本淑恵 ,   西岡清 ,   佐野榮春

ページ範囲:P.1054 - P.1055

患者48歳,男性
初診昭和53年10月18日

追悼

高橋吉定先生を偲んで

著者: 橋本謙

ページ範囲:P.1058 - P.1059

 先生は本年8月31日未明,ご療養の甲斐なく順天堂大学病院第1外科病室で死去されました.享年77歳でした.
 先生は明治39(1906)年1月30日のお産れで,昭和4年3月東京帝国大学医学部卒業後,直ちに同大皮膚科泌尿器科教室(故遠山郁三教授)に籍を置かれ,昭和12年7月には東京警察病院皮膚科泌尿器科医長兼講師,昭和17年4月には助教授になられました.昭和25年4月には順天党大学医学部教授,昭和32年4月には東北大学医学部教授となられ,昭和44年3月,同大学を定年退職されたあと,昭和46年4月には帝京大学医学部教授兼医学部長の要職につかれ,昭和55年4月からは副学長になられました.帝京大学医学部長時代には医学部大学院の設置に尽力されたご様子で,そのご苦労話を本誌の編集会議でお聞きしました.

原著

皮下型環状肉芽腫—圧痛を伴った1例

著者: 木村俊次

ページ範囲:P.1061 - P.1066

 1歳2カ月女児に2週間来生じた圧痛ある皮下型環状肉芽腫の1例を報告した.本例は頭頂部に2個,左右下腿伸側にそれぞれ1個,2個,計5個の皮下結節を有する.これらの結節は大豆大〜碗豆大,弾性硬で,2個を除き被覆皮膚・下床と可動性である.被覆皮膚には著変をみない.組織学的に結節は皮下脂肪織内の類壊死巣とその周囲の柵状肉芽腫とを特徴とし,血管の壊死像や小血管の増生像も認められる.類壊死部には酸性および中性粘液多糖類の沈着が著明である.本例はリウマチ性疾患を思わせる全身症状,理学的所見,検査成績を欠き,未治療にて経過観察したが,1カ月半後結節新生をみたものの半年後には結節の消褪もみられ,自然治癒傾向が窺える.皮下型環状肉芽腫の既報告例を中心に,その臨床所見,組織所見,および位置づけ・病因について若干の考察を加えた.自験例における圧痛の原因としては神経系の関与が考えられた.

Livedoid Vasculitisの1例

著者: 加藤卓朗 ,   角田克博

ページ範囲:P.1067 - P.1071

 17歳,男子にみられたlivedoid vasculitisの1例を報告した.臨床的には,下腿から足背にかけて,毛細血管拡張と色素沈着を伴う暗赤色斑が散在し,その中央部には有痛性潰瘍がみられた.明らかなlivedo所見はなかった.病理組織学的には,乳頭層と潰瘍直下の真皮中層に小血管の拡張と充血,壁の肥厚,内皮細胞増殖,および小円形細胞を主とする血管周囲性の細胞浸潤をみた.また血管壁には,IgA,IgM,C3C,フィブリノーゲンの沈着が証明された.
 現在,本症との異同が注目されているlivedo reticularis with summer ulcerationとatrophieblancheを含めて検討を加えた.

Relapsing Polychondritis

著者: 杉本憲治 ,   清水正之 ,   浜口次生 ,   太田千鶴子

ページ範囲:P.1073 - P.1078

 62歳,男.ブドウ膜炎,強膜炎などの眼症状を初発症状とし,1カ月後に耳介軟骨炎,鼻軟骨炎をみたrelapsing polychondritisの1例を報告した.検査所見では赤沈亢進,γ—グロブリン高値,CRP強陽性,白血球増多,RA陽性を認めたが,尿中酸性ムコ多糖体は正常であった.組織学的には多数の多核白血球浸潤を伴う軟骨細胞の変性,融解を示し,alcian blue染色にて病変部軟骨にムコ多糖体の減少を認めた.治療では,消炎剤,抗生剤には反応せず,プレドニゾロン40mg/日にて症状は劇的に改善した.治療中,本症に特有のsaddle nosc deformity,wash leather earを呈した.

Eosinophilic Cellulitisの1例

著者: 大和谷淑子 ,   西井美代子 ,   川津友子

ページ範囲:P.1079 - P.1083

 54歳,男性.昭和57年5月中旬より左前腕全体が腫脹し,皮疹が全身に拡大した.皮疹は淡紅色〜白色調丘疹,浸潤性紅斑,紅色結節よりなり,結節は中心より褪色し長期間緑灰色浸潤性局面を残す.組織学的に真皮の密な好酸球浸潤と,変性した結合織を組織球と好酸球がとり囲む像(flame figure)を認める.末梢血中及び骨髄中好酸球増多(最高54%),IgE高値,ダニ抗原皮内反応強陽性以外検査に異常所見なく,全身状態も良好である.抗ヒスタミン剤内服とステロイド外用治療を行ない,皮疹新生は約3カ月続いたが,以後しだいに軽快し,昭和58年3月にはほぼ消褪した.血中好酸球も正常値となり,IgEはなお高値ながら低下傾向を認める.

獲得性IgA単独欠損症を併発したMCTDの1例

著者: 北島淳一 ,   辻卓夫 ,   細井洋子 ,   濱田稔夫 ,   佐藤博之

ページ範囲:P.1085 - P.1089

 30歳,女性.初診の約15年前より手足のしびれ感,6年前よりレイノー症状,関節痛が存在している.手指腫脹,手指尖潰瘍,表在リンパ節腫脹,筋力低下などの自他覚症状とともに,臨床検査所見では,赤沈亢進,軽度貧血,高γ—globulin血症,CPK,aldolase高値,およびspeckled型抗核抗体陽性,抗RNP抗体高値陽性,抗Sm抗体陰性,低補体血症,血中immune complex上昇が認められ,螢光抗体直接法にて表皮細胞核にIgGの沈着を認める.以上よりMCTDと診断した.橋本病,Sjögren症候群の合併もみられた.自験例にて注目すべきことは,4年前に正常であった血清IgAが10mg/dl,唾液IgAが1mg/dlと著減し,他の免疫globulinに低下がみられないことで,獲得性IgA単独欠損症を併発したと考えられる.本症例のような自己免疫疾患に伴う免疫不全は続発性として別個に考えるのではなく,基盤としての免疫異常に基づくものとして,それらを一体として把握すべきものと思われる.

Transient Acantholytic Dermatosisの2例

著者: 川田暁 ,   入交敏勝

ページ範囲:P.1091 - P.1095

 85歳.女.58歳,男.2例のtransient acantholytic dermatosisについて述べた.症例1は3年6カ月,症例2は8カ月と.Groverの定義に比べると,両者とも比較的経過が長い.病理組織学的には,症例1はspongiosisとacantholysisを,症例2はDarier病に類似の像を示した.また2症例ともEtretinate (Ro 10-9359)が有効であった.

I-cell病(Mucolipidosis Type II)の1例,特にOculocutaneous Albinismとの関連について

著者: 沢村大輔 ,   橋本功 ,   帷子康雄 ,   佐藤雄一 ,   武部幸侃

ページ範囲:P.1097 - P.1103

 先天性汎発性色素減少を伴う8カ月の女児,検査成績と合わせてI-cell病(Mu—colipidosis type II)と診断した.自験例が眼症状として羞明を伴うこと,ならびに本邦19例中14例に皮膚の色素減少が記載されていることより,本症はoculocutaneous albinism(以下OCA)の範疇に含めてよいと考えられる.よって本症をOCAの1型として加えることを提唱したい.

チアミンジスルフィド注射剤による局所型紫斑型薬疹

著者: 中村義朗 ,   青木敏之

ページ範囲:P.1105 - P.1108

 一医院でチアミンジスルフィドを主成分とする注射剤の静脈注射を受けた77歳と62歳の婦人に,注射部位に一致して溢血がみられた.1例は2日後に同部位に同注射を受け,溢血が拡大するとともに著明な上肢の腫脹を来した.この症例では一過性の出血傾向が認められたが,注射剤によるパッチテスト,皮内テストは陰性であった.著者らおよび製薬会社が患者に注射されたのと同一ロットの注射液と別ロットの注射液とを比較しながら,動物において皮内注射による血管透過性試験,静脈注射を行ない,化学検査としてpH測定,電気伝導度の測定,薄層クロマトグラフィー,細管式等速電気泳動法を行なったが.両者間に有意な差を認めなかった.両婦人はそれぞれ神経痛の悪化,感冒様症状が先行していたので,何らかの感染症があって,それが誘因となって出血傾向を来し,そこに注射剤の化学的刺激が加わって,注射部位を中心にこのような症状をおこしたものと推定した.

胃癌を合併したScleropolymyositisの1例

著者: 太居英夫 ,   高木圭一 ,   松本博仁 ,   広田さち子 ,   宮川幸子 ,   坂本邦樹

ページ範囲:P.1109 - P.1114

 胃癌を合併せるscleropolymyositisの1剖検例を報告した.患者は58歳の男性でレイノー現象と漸次全身に拡大する皮膚硬化が先行し,皮膚が萎縮するに至った発症約2年後,突然に近位筋の筋力減弱と萎縮が出現し入院した.入院後胃癌が疑診され,臨床的にmyopathyが出現した約4カ月後に肺炎で死亡した.著者の調べたかぎりではsclero—polymyositisに悪性腫瘍の合併した例は稀有である.

瀰漫性肉芽腫性間質性肺炎を伴った広範いれずみの2例

著者: 花田勝美 ,   山田秀樹 ,   鈴木真理子 ,   大熊達義 ,   羽根田やえ子

ページ範囲:P.1115 - P.1120

 上半身の広範囲ないれずみ施術部に皮膚炎を生じ,リンパ節腫脹とともに間質性肺炎を併発した31歳,35歳,男子の2症例を経験した.光顕的に如支,リンパ節,肺はいずれも乾酪壊死を欠く異物肉芽腫像を示した.電顕的には肺組織でも各種色素顆粒の存在が確認された.色素の発光分光分析は赤にHg・Mg,緑にTi・V・Al・Co,黄にTi・V・Al・Co・Feがそれぞれ含まれていた.各組織内色素のX線微小部分析では共通元素としてHg・S,Al,Siが検出され,自験例はHgを主因とする全身性肉芽腫形成疾患と考えた.いれずなによる禰漫性肉芽腫性間質性肺炎の発生例としては初めての報告である.

皮膚骨腫を伴った偽性副甲状腺機能低下症の1例

著者: 島田真路 ,   都留紀子 ,   堀嘉昭 ,   山本通子 ,   尾形悦郎

ページ範囲:P.1121 - P.1123

 皮膚骨腫を伴った典型的な偽性副甲状腺機能低下症の1例を報告した.症例は,27歳,女で,家族内に同症はない.14歳頃より意識消失発作が出現したが,<てんかん>と診断され,抗てんかん剤の投与を受けていた.身長136.5cm,体重41.5kg,円形顔貌(+),白内障(+),両手第V指,両足第1趾の短縮あり.知能低下(+).Chvostek徴候陽性.大脳基底核石灰化(+).Ellsworth-Howard testにて尿中リン,c-AMPの排泄とも無反応.腹部,背部,左栂指基部に典型的な皮膚骨腫あり.幼少時より気づくも放置されていた.皮膚骨腫は,我々の観察6)では,生後2〜3カ月で出現し,またその気で観察すると視診にて容易に鑑別できるので本症の早期診断に重要である.皮膚骨腫をみた際にも,単に原発性皮膚骨腫とせず,本症ないし偽性偽性副甲状腺機能低下症を疑って検査することが必要と思われる.

編集室だより

雑誌名の省略について

著者: 「臨床皮膚科」編集室

ページ範囲:P.1108 - P.1108

 最近,引用文献に掲載される雑誌名の略称は,1970年にAmerican National Standards Committeeから出された「International List of Pcriodical Title Word Abbreviations」による略し方が,国際標準として,一般化してきました.皮膚科領域に関係のある言葉の例を下記にあげました.御投稿の際には,これらを参考にして下さい.

連載 皮膚病理の電顕・30

付属器腫瘍(XIX)—脂腺癌(2)

著者: 橋本健

ページ範囲:P.1124 - P.1127

 図73リンパ節転移巣.前図では脂腺細胞に類似した空胞を持った細胞が存在し得ることを述べたが,それではこの細胞はどうであろうか?先ず細胞質が,より電子密である.その密度の大部分は,細胞に含まれる大量のトノフィラメント(t)によることがわかる.その量の少ない*周囲の細胞は非常に明調である.次にこの細胞は,周囲の明調細胞とデスモゾーム(矢尻)により連結されている,更に細胞内に不規則な形をした多数の空胞(S),或いは脂質滴を含む.電子密な顆粒(K)はケラトヒアリン顆粒に類似する.正常な脂腺細胞は胎生発生的に表皮より毛芽を経て発生してくるので,従って少量ではあるがトノフィラメントを含み,細胞はデスモゾームにより連結されている1).脂腺導管部ではトノフィラメントの量が増加し,ケラトヒアリン顆粒が産生され,デスモゾームも良好な発達を示す.その反面,脂質の産生は低下する.これらの事実より,この細胞は脂腺導管部の細胞に似た分化を示すといえる.勿論,癌化した組織では病的な分化が起こり得るし,腺細胞がトノフィラメントを大量に分化することも考えられるので,1個や2個の細胞をもって本腫瘍を脂腺導管部癌と断定することはできない.
X:図74で拡大した部分×7,800

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臨床皮膚科 第37巻 総索引

ページ範囲:P. - P.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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