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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科37巻2号

1983年02月発行

雑誌目次

図譜・484

Apocrine Hidrocystoma

著者: 山田清

ページ範囲:P.104 - P.105

患者43歳,女性
初診昭和55年11月26日

原著

Perforating Granuloma Annulareの2例

著者: 小幡正明

ページ範囲:P.107 - P.112

 11歳女児の左肘頭および5歳女児の両手掌,指腹,指背に発症したperforatinggranuloma annulareの2例を報告した.これらはいずれも小児の限局例で,個疹は痂皮,中心臍窩を有する丘疹としてみられ,ステロイド外用が著効を呈した.組織学的には真皮上層に局在するpalisading granulomaとその直上の穿孔形成およびそれをとりかこむ表皮の偽癌性増殖がみられた.また現在までの報告例26例を集計した.

糖尿病と肝硬変を合併した女性にみられた汎発性穿孔性環状肉芽腫

著者: 荒瀬誠治 ,   榎本充邦 ,   岩田克美 ,   重見文雄 ,   玉田伸二

ページ範囲:P.113 - P.117

 68歳女性の四肢伸側,手指背に出現した汎発性穿孔性環状肉芽腫について報告した.皮疹は大豆大までの扁平丘疹よりなり,約半数に中心臍窩もしくは中心部痂皮状物質付着が認められた.組織学的には,典型的な柵状肉芽腫が真皮上層にあり,臨床的に中心臍窩と一致する部に,表皮をつらぬくperforating canalを認めた.同部を通り,種々の物質が体外に排出されている像(transepithelial elimination)も認められた.自験例を含め論文記載例を総括したところ,本症の皮疹は全例丘疹の形で出現している事,経過が速やかな事,糖尿病の合併が多い事が特徴的であった.本症は丘疹型の汎発性環状肉芽腫の亜型と考えられる.

Pseudopyogenic Granuloma—増生脈管の由来についての検討

著者: 石川治 ,   前田秀文 ,   石川英一

ページ範囲:P.119 - P.123

要約 32歳,女子.約1年前に左耳介内面に瘙痒を伴う紅色小結節が1個出現した.3カ月後に左耳介を中心として,同様の小結節が多発し,以後漸次増大した.組織所見は定型的で,真皮全層から一部皮下脂肪織にかけて肥厚した内皮細胞に囲まれた小脈管が増生し,リンパ球・好酸球を主体とする,び漫性細胞浸潤を伴っていた.電顕学的に増生脈管は,postcapillary venule類似の構造を示した.

横紋筋肉腫を合併したvon Recklinghausen病の1例

著者: 高橋博之 ,   阿久津裕 ,   堀越貴志 ,   竹田勇士 ,   水無瀬昻 ,   今信一郎

ページ範囲:P.125 - P.130

要約 35歳,女性.幼少時からある胸壁神経線維腫部に外傷を受け,2〜3年前から皮下腫瘤出現.病理組織学的に横紋筋肉腫.所属リンパ節廓清を含む切除術,化学療法,放射線療法を行なったが椎骨,肺,縦隔に転移.上大静脈症候群にて11カ月目に死亡.
 von Recklinghausen病に横紋筋肉腫の合併は比較的稀であり,発生学的にも興味深く,若干の文献的考察を加えた.

Lichen Myxedematosusの1例

著者: 松尾忍 ,   岸山和敬 ,   水元俊裕 ,   大河原章 ,   中根幸雄

ページ範囲:P.131 - P.135

 53歳,女性.約1年前より左手関節伸側に自覚症状のない黄白色蝋様光沢を有する丘疹が出現し,顔面,耳介,両上肢に拡大.丘疹は顔面,耳介では集簇し,両上肢では散在性にみられた.臨床検査成績では,甲状腺機能,肝機能に異常はみられず,血清蛋白分画でM蛋白が認められ,免疫電気泳動法にてlambda型IgGと判明した.骨髄像では形質細胞の軽度増加がみられ,皮疹増悪時には骨髄形質細胞がさらに増加し,軽度異型性も認められた.螢光抗体法では,病変部には免疫グロブリンの沈着は認められず,骨髄組織の直接螢光抗体法では抗lambda型L鎖血清に陽性を示す細胞が多数認められた.治療としてはステロイド外用剤は無効で,ステロイドの内服により皮疹の著明な改善をみた.

特発性陰嚢石灰沈着症—自験例の報告とその発症機序について

著者: 大草康弘 ,   長島正治

ページ範囲:P.137 - P.140

 43歳,男性に発症した特発性陰嚢石灰沈着症の1例を報告した.主訴は約半年前から陰嚢にみられた自覚症状のない結節で,初診時大豆大および小豆大の表面平滑・半球状に隆起した黄白色の硬い結節を2個認めた.組織学的には,真皮中層から肉様膜にかけて,上皮性壁を欠く大小の石灰沈着巣が認められた.石灰沈着巣はジアスターゼ抵抗性PAS陽性,ヒアルロニダーゼ抵抗性コロイド鉄並びにアルシャンブルー陽性,トルイジンプルーで異染性を示し,ヘパリチン硫酸の存在が考えられた.また,その周囲に多くは脱顆粒を示す肥満細胞が多数認められた.
 以上の所見から本症はcutaneous calculusの場合と同様,なんらかの原因により陰嚢に肥満細胞が集積・脱顆粒をきたしヘパリチン硫酸を放出し,これに石灰が沈着して発症すると考えた.

放射線照射部位に発生した悪性脈管内皮細胞腫の1例

著者: 林正幸 ,   松本鐐一 ,   吉田康二郎 ,   杉浦仁

ページ範囲:P.141 - P.147

 58歳の女性の下腹部に生じた悪性脈管内皮(細胞)腫の1例を報告した.腫瘍は6年前の子宮頸癌術後の60Co照射野に一致した暗紅褐色の板状硬結の上に生じ,後にlymphangiomaを思わせた暗紅色ブドウの房状の多発性丘疹であった.他方,下肢の浮腫や腹水も存在しStewart-Treves症候群も示唆された.組織学的には異型性の強い腫瘍塊が赤血球を容れた管腔を形成しながら増殖している像がみられた.鍍銀染色,第1抗体に抗ヒト第VIII因子ウサギ血清を用いたPAP法により腫瘍細胞が脈管内皮由来であることを確認した.

Trichophyton rubrumによるBlack Dot Ringwormの1例

著者: 仲村洋一 ,   安井裕子 ,   金原武司

ページ範囲:P.149 - P.152

 74歳,男.汎発性白癬があり,同時にblack dot型頭部白癬がみられた.原因菌としてTrichophyton rubrumが分離されたが,T.r.によるblack dot型は稀である.

日光蕁麻疹と多形日光疹の併発例

著者: 田中俊宏 ,   荻野篤彦 ,   堀尾武

ページ範囲:P.153 - P.156

 55歳,女性で日光蕁麻疹と多形日光疹の併発例を経験した.自験例の日光蕁麻疹の作用波長は280〜690mmであり,被動転嫁および逆被動転嫁試験はともに陰性.また,in vitroで日光照射した患者血清を皮内注射したが膨疹は生じなかった.一方,本例の多形日光疹はUV-A (320〜400nm)および可視光線(〜740nm)照射では誘発されず,UV-B(280〜320nm)に対するMEDは正常であったが,UV-Bの比較的大量照射により遅発性の湿疹型反応が惹起された.日光蕁麻疹と多形日光疹の併発例は,われわれが渉猟した限りでは本邦ではいまだ報告をみない.

長期観察した血管芽細胞腫の1例

著者: 西村素 ,   続木千春 ,   金子佳世子 ,   佐藤昌三

ページ範囲:P.157 - P.160

 6歳,女児.生後7カ月頃,右下腿に鶏卵大の皮下腫瘤出現し,生検にて血管芽細胞腫と診断し,軟レ線療法を1歳半時に施行した.さらに5年間経過を追跡したが,硬結局面上に暗赤色斑の出現を見たため,再度生検を行ない,組織学的に前回と同様の典型的所見をえた.再び軟レ線療法を施行後,浸潤はほぼ消失した.本邦報告74例についても若干の考察を加えた.

いわゆるAcropustulosis of Infancy—疥癬罹患乳幼児に生じた4症例

著者: 笹岡和夫 ,   赤星吉徳 ,   鳥山史

ページ範囲:P.161 - P.166

 乳幼児の四肢末端,主として掌蹠に,丘疹,小水疱および無菌性膿疱が再三出現して難治である,いわゆるacropustulosis of infancyなる疾患に該当する4症例を報告した.自験4症例(3例は1歳未満の乳児)とも,家族ごと疥癬に罹患し,治療により患児の疥癬が一応治癒した後,本症が発症したが,この時点で疥癬虫は検出されず,膿疱は無菌性であった.本症と鑑別を要する疾患として,乳幼児に生じた掌蹠膿疱症があげられる.
 本症は疥癬罹患とは無関係に生ずる例もあり,また単なる疥癬感染症でないことは明らかであるが,真の病因および独立疾患か否かについては,まだ不明である.しかし,疥癬感染が先行している症例では,多分,乳幼児の皮膚という生理的特異性を基に,済癬虫,虫卵,虫毒素などに対する遅延型アレルギー機序が関与して生じた皮疹ではないかと推察された.

Proliferating Trichilemmal Cystの電顕的検討

著者: 宮入宏之 ,   高橋省三 ,   前田哲夫 ,   小田島陽子 ,   諸橋正昭

ページ範囲:P.167 - P.175

 73歳,女性.後頭部に10年来のクルミ大の腫瘤あり.組織学的には,腫瘍巣は大小種々の嚢腫様構造から成り,嚢腫壁は定型的なtrichilemmal keratinizationを示す.またsquamous eddies様構造が多数認められた.電顕的には,嚢腫壁にはグリコゲンを多量に含む細胞が多数認められた.角層下の細胞では小型円形のケラトヒアリン顆粒もみられた.角層では明瞭なdesmosomeが残存しており,脂質滴が集塊状をなすところもみられた.以上の所見は毛包中間部上部および毛包漏斗部下部の構造的特徴に類似していた.
 興味ある所見として,トノフィラメント様物質やケラトヒアリン顆粒様物質の核内封入体が,嚢腫壁中央部付近の細胞に認められた.核内封入体の存在は,その細胞の核の異常とともに,角化異常をも示すものであろうと推測した.

顔面半側萎縮症の1例

著者: 小西清隆 ,   長谷川澄子 ,   清水正之

ページ範囲:P.177 - P.181

 36歳,女子.18歳頃より左下顎部の変形を家人に指摘されていた.来院時,左下顎部を中心として上顎部・耳前部・側頭部の色素沈着,脱毛を伴う萎縮性局面が存在し,左側下顎骨の萎縮を認めた.組織学的には真皮内の膠原線維はむしろ増加し,線維間に散在性に小円形細胞浸潤を認めた.弾力線維の減少は認めなかった.病変部皮膚の螢光抗体直接法による所見は,毛嚢周囲の細胞浸潤部に一致してIgMの沈着を認めた.検査所見中,抗核抗体はspeckled型弱陽性,抗DNA抗体陽性を示し,赤沈亢進,血中γ—グロブリン高値,IgG高値,補体値の低下を認めた.血中免疫複合体値は上昇を示した.細胞性免疫能検査でもPHA添加リンパ球幼若化反応の低下を認めた.本症を強皮症と異なる独立疾患とするよりも,汎発性強皮症などと深い関連を有する疾患であり,強皮症の中で部位的特徴を有する一型とした方がよいと考えた.

先天性皮膚欠損症の家族発生例

著者: 深水秀一 ,   松本吉郎 ,   岡山英世 ,   井上邦雄 ,   森口隆彦

ページ範囲:P.183 - P.185

 9カ月の男児を発端者とし,7歳の姉,38歳の母親に認められた先天性皮膚欠損症の家族発生例を報告した,3人とも,頭頂部の矢状縫合部近傍に,瘢痕性脱毛斑の形で病変が存在し,他に外表奇形は認められなかった.本症の本邦における家族発生例はきわめて稀であり,とくに母と子の頭部に生じた病変の記載はみられない.本症の成因を遺伝関係に求める報告も多く,われわれの症例は本症と遺伝因子との関連を強く示唆するものと思われる.

Furosemideによる水疱型薬疹

著者: 堀口裕治 ,   高橋千恵 ,   堀尾武 ,   越村邦男 ,   田中俊宏 ,   荻野篤彦

ページ範囲:P.187 - P.191

 Furosemide内服中の腎不全患者にみられた水疱型薬疹の2症例(57歳男性例および49歳男性例)を報告した.第1例は解離性大動脈瘤,多発性脳梗塞および高血圧症を伴う急性腎不全患者であり,furosemide 40mgを含む各種降圧剤と透析による治療中,扁平苔癬様の皮疹とともに爪甲大,透明な水疱が生じた.第2例はネフローゼ症候群を伴う慢性腎不全の患者であり,腎不全増悪時にfurosemide 20mgを数日間投与されたのち,指頭大,透明な水疱が生じた.いずれの症例も皮疹発生部位は躯幹あるいは大腿,上腕であり,日光露出部ではない.また,螢光抗体直接法および間接法にて,組織中の免疫グロブリンあるいは補体成分の沈着,血清中の自己抗体を認め得なかった.2例ともfurosemide投与中止後,皮疹は消失した.Furosemideによる蓄積型薬疹と考えた.

外歯瘻の2例

著者: 大野佐代子 ,   尾口基 ,   堀尾武

ページ範囲:P.193 - P.195

 初診時,皮膚腫瘍および血管拡張性肉芽腫を疑って治療を試みたが,難治性で再発が見られ,口腔外科的に外歯瘻であることが明らかとなった2症例を経験した.2症例とも上顎歯由来で,痩孔は鼻翼付近の頬部に開口していた.原因はともに齲歯によるもので,原疾患の加療により治癒せしめ得た.皮膚科領域では報告が少なく,必ずしも診断が容易でないと思われたのでここに報告した.

新潟大学皮膚科における帯状疱疹の統計的観察

著者: 丸山友裕 ,   伊藤雅章 ,   設楽篤幸

ページ範囲:P.197 - P.202

 昭和51〜55年の5年間に新潟大学皮膚科を受診した帯状疱疹患者398例について統計的観察を行った.さらにその後の経過について郵便によるアンケート調査を施行し,回答が得られた174例の疼痛の残余期間,合併症とその予後等について分析した.その結果,次の結論を得た.1)年度や季節による著明な発症数の変動はない.2)女性にやや多い(男:女=1:1.20).3)高齢者に多いが20代に小さなピークがある.4)顔面・頭部では左側に多く,頸部より下では左右差はない.5)50歳以上では顔面・頭部,次いで胸部に好発し,50歳未満では一定の傾向がない.6)帯状疱疹後神経痛は高齢者ほど遷延しやすい.7)放射線照射後,照射部に発症することがある.8)手術や外傷が誘因となることがあるが,部位的関連性はない.9)悪性腫瘍の末期に発症することが多い.10)細胞性免疫能の低下が示唆された.11)汎発型は限局型に比して他疾患の合併率が高いとはいえない.

編集室だより

雑誌名の省略について

著者: 「臨床皮膚科」編集室

ページ範囲:P.166 - P.166

 最近,引用文献に掲載される雑誌名の略称は,1970年にAmerican National Standards Committeeから出された「International List of Periodical Title Word Abbreviations」による略し方が,国際標準として,一般化してきました.皮膚科領域に関係のある言葉の例を下記にあげました.御投稿の際には,これらを参考にして下さい.

連載 皮膚病理の電顕・20

付属器腫瘍(Ⅸ)—エクリン汗腺分泌部の癌(3)

著者: 橋本健

ページ範囲:P.204 - P.207

 図54汗管腫様エクリン汗腺癌を電顕で検索すると大体3種類の上皮を区別できる.即ち,角化上皮(A),導管上皮(B),および分泌上皮(C)である.これらは大体においてエクリン汗腺の表皮内終末導管部,直管部および分泌部上皮に相当する.腫瘍の大部分はAおよびBの像を示し,分泌上皮の形態を示す部分は僅かであり,且つその分化は不十分である.即ち,Cに示した大型で絨毛を生じた細胞はその明調度,糖原含有量において図50, 51で示した漿液細胞に劣る.
 Aに示した部分では腺腔(L)に向って角化してゆく状態が明瞭である.即ち最内層には半分崩壊して多数の空胞を生じ,電子密度の落ちた細胞(*)があり,次に完全に無傷な角化細胞(H)が並び,その外側には多胞性のリゾゾーム(1)と考えられる空腔や張原線維束(矢印)を含む細胞が位置する.この構造はエクリン汗腺の終末導管部(acrosyringium)の構造にそっくりである2).V1はリゾゾームの大きくなったものか変性空胞で,V2はおそらく脂質顆粒であろう.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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