原著
顔面半側萎縮症の1例
著者:
小西清隆1
長谷川澄子1
清水正之1
所属機関:
1三重大学医学部皮膚科教室
ページ範囲:P.177 - P.181
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36歳,女子.18歳頃より左下顎部の変形を家人に指摘されていた.来院時,左下顎部を中心として上顎部・耳前部・側頭部の色素沈着,脱毛を伴う萎縮性局面が存在し,左側下顎骨の萎縮を認めた.組織学的には真皮内の膠原線維はむしろ増加し,線維間に散在性に小円形細胞浸潤を認めた.弾力線維の減少は認めなかった.病変部皮膚の螢光抗体直接法による所見は,毛嚢周囲の細胞浸潤部に一致してIgMの沈着を認めた.検査所見中,抗核抗体はspeckled型弱陽性,抗DNA抗体陽性を示し,赤沈亢進,血中γ—グロブリン高値,IgG高値,補体値の低下を認めた.血中免疫複合体値は上昇を示した.細胞性免疫能検査でもPHA添加リンパ球幼若化反応の低下を認めた.本症を強皮症と異なる独立疾患とするよりも,汎発性強皮症などと深い関連を有する疾患であり,強皮症の中で部位的特徴を有する一型とした方がよいと考えた.