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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科37巻3号

1983年03月発行

雑誌目次

図譜・485

線状に結節が多発したスポロトリコーシス

著者: 熊井則夫 ,   相場節也 ,   三浦隆 ,   相沢郁造

ページ範囲:P.220 - P.221

患者69歳,男性,仙台市在住
 家族歴・既往歴3〜4年前より胃潰瘍および高血圧として加療を受けている以外に特記することはない.

原著

Xanthoma Disseminatumの1例

著者: 渡辺晋一

ページ範囲:P.223 - P.227

 59歳,男性に生じたxanthoma disseminatumの1例を報告した.自験例では口腔・咽頭粘膜および眼科的に異常所見なく,また尿崩症もなかった.血清脂質はむしろ全般的なhypolipoproteinemiaであった.皮疹は融合傾向に乏しく,益田らのいうnon-Alt—man型に相当すると思われた.皮疹の電顕的観察ではミトコンドリアの変性が多くみられ,本症の発生に何らかの関与をしていることが推測された.

ダリエ病に合併したカポジー水痘様発疹症—ダリエ病の皮疹が消褪した症例

著者: 谷垣武彦 ,   畑清一郎 ,   中村義朗 ,   辻和男

ページ範囲:P.229 - P.234

 22歳,ダリエ病の患者に発生したカポジー水痘様発疹症,その水疱内容液から単純疱疹ウイルスI型の分離について報告した.カポジー水痘様発疹症の皮疹の消褪後6カ月間,ダリエ病の皮疹の再発は見られなかった.この機序が明らかになれば今後,皮膚疾患の治療面に何か役立つのではないかと思われる.

Verruciform Xanthomaの陰嚢発生例

著者: 木村俊次 ,   鈴木明宏

ページ範囲:P.235 - P.242

 76歳,62歳,60歳の男子陰嚢に生じた,verruciform xanthomaの3例を報告した.いずれもポリープ状の有茎性乳頭腫をなし,特有の赤橙色ないし帯黄赤色を呈する.組織学的には脂肪染色陽性の泡沫細胞が真皮乳頭および乳頭下層に浸潤し,表皮突起の肥大・延長,真皮上層血管の増生・拡張・うっ血をみる.症例1では電顕的観察および足底疣贅ウイルスに対する抗血清を用いた螢光抗体法的検索も施行したが,増殖表皮内にウイルス粒子は見出しえなかった.また症例1では泡沫細胞浸潤を有する淡紅色丘疹が乳頭腫近傍に多発していたが,これらは半年後自然消褪した.本症の口腔内および皮膚発生例について集計・検討したところ,陰嚢発生例はきわめて特徴的な臨床像を有し,臨床診断も可能と考えられた.本症の病因は不明であり,発生病理に関しては従来の表皮増殖先行説と泡沫細胞浸潤先行説に加えて,両者が同時に進行する可能性も考えられた.

Diffuse Normolipemic Plane Xanthomaの1例

著者: 菅野聖逸 ,   松尾聿朗 ,   大城戸宗男

ページ範囲:P.243 - P.247

 68歳,男性.顔面,頸部,体幹,四肢のdiffuse normolipemic plane xanthoma(DNPX)にIgG-kappa型Mタンパク血症を伴った1例を報告した.
 文献的に既報告例を検討し,高脂血症型び漫性扁平黄色腫とDNPXとの比較,およびDNPXの発症機序について若干の考按を加えた.

Mycobacterium chelonei皮膚感染症の1例

著者: 新井裕子 ,   中嶋弘 ,   永井隆吉 ,   神永陽一郎 ,   溝口周策

ページ範囲:P.249 - P.253

 本邦第5例目と思われるMycobacterium chelonei皮膚感染症の1例を報告した,症例:58歳,女性,初診の1カ月前より前額に2〜3個の小丘疹出現.自覚症状なし.外傷の既往なし.ステロイド外用にて増悪.現症:前額に数個の丘疹が融合して形成された紅色浸潤局面あり.所属リンパ節腫脹なし.生検組織学的所見:肉芽腫性炎症性反応.組織学的に菌要素は検出されず.組織片からの分離株の同定成績より,Mycobacterium che—lonei subsp. cheloneiと同定した.ツ反疑陽性.ヨードカリ内服およびカイロによる温熱療法約3カ月にて治癒した.

Corynebacterium minutissimumのin vivoでの微細構造

著者: 工藤清孝

ページ範囲:P.255 - P.261

 Erythrasma 2例の症例報告と共にCorynebacterium minutissimumの角質中での寄生状態を,透過型電顕と走査型電顕の両方を用いて観察した.透過型電顕の観察では菌体がケラチン線維と細胞膜を破壊していること,走査型電顕の観察では菌体が表面に繊毛構造を持ち,それにより角質細胞に接着している像が認められた.

Juvenile Spring Eruptionの1例

著者: 中村雄彦

ページ範囲:P.263 - P.266

 7歳,男児,3月初旬より両側の耳輪より耳垂にかけて紅斑,丘疹,水疱を生じ,皮疹は約7日で一旦軽快するが再燃する,尿中コプロポルフィリン,ポルフォビリノーゲンは陰性.血中免疫グロブリン値正常.組織学的に,表皮の肥厚,角質の増殖,真皮血管周囲の小円形細胞浸潤がみられる.晴天下で長時間,戸外で耳を露出させて野球をやった翌日に皮疹の新生があり,紫外線との関連が病因として考えられた.本例は,症状,経過などよりjuvenile spring eruptionと考えられる.

Tricholemmal Keratosis—毛嚢間上皮増殖を示した1例の報告

著者: 増田光喜 ,   木村俊次

ページ範囲:P.267 - P.270

 組織学的に興味ある像を示したtricholemmal keratosisの1例を報告した.症例は48歳男子で,右頬部に発生し,組織学的に,正常構造を示す毛嚢と,trichilemmal keratini—zation (TKZ)を特徴とするU字状の上皮増殖が交互に並列し,増殖上皮は,隣接する毛嚢の漏斗部のみと連続性を有する.これら増殖上皮の個々の角質細胞の輪廓は,PAS及び鍍銀染色にて殆ど認められず,この点trichilemmal cystで報告された角質層の所見と異っている.また毛嚢間に1カ所,TKZとepidermal keratinizationとの中間的角化様式を示す大型明澄細胞の胞巣が認められ,これは表皮または毛嚢漏斗部.上皮からTKZを示す上皮増殖に至る過渡的所見と考えられた.以上より,本症の病理発生として,表皮または毛嚢漏斗部角化細胞のphenotypicな変化とみなす考え方を支持した.

手掌に限局した光沢苔癬

著者: 前田健 ,   姉小路公久

ページ範囲:P.271 - P.275

 10歳の女児の手掌に生じたlichen nitidusの1例を報告した.左手掌のみに多数の角化性小丘疹があり,我々は臨床的には診断し得なかったが,組織学的に典型的なlichennitidusであった.身体他部にlichen nitidusがあり手掌,足蹠にも発疹した症例は十数例みられるが,手掌だけに限局した症例は極めて稀である,手掌に生じた皮疹は通常の丘疹と異なり角化性が強いようであるが,組織学的所見は他部位に生じた丘疹と同一である.

Pilonidal Sinusの1例

著者: 野村茂 ,   水谷仁 ,   清水正之 ,   竹内隆司

ページ範囲:P.277 - P.280

 31歳,男性,座位を多くとっている銀行員の仙尾部に生じたpilonidal sinusの1例を報告した.本症例の発生には,先天的な皮膚瘻の存在とともに,その周辺に迷入した毛包と共に存在する毛が,思春期に至り,硬毛となり,機械的刺激と共に異物性肉芽腫を生み,症状を表わしてきたものと考えた.

Poroepithelioma Folliculareの1例

著者: 大野宏守

ページ範囲:P.281 - P.285

要約 70歳女性,初診より約1年前,鼻背右側に瘙痒性黒褐色小結節に気づき,漸次増大傾向を呈した.病理組織学的所見に,一見表皮性腫瘍と思われた,poroepithelioma folliculareの1例を経験したので,報告するとともに,若干の考察を行なった.

特異な臨床像を呈した先天性多発性グロムス腫瘍

著者: 遠藤千鶴子 ,   片山洋 ,   川田陽弘

ページ範囲:P.287 - P.290

 特異な臨床像を呈した4歳女児の多発性グロムス腫瘍の1例を報告する.皮疹は生下時より認められ,両側上肢屈側,前胸部,腹部,上背部にかけて列序性に配列する.主として暗赤色〜青色の海綿状血管腫様変化を示す.一部では皮表より膨隆して静脈瘤様変化を示し,蔓状血管腫を疑わせる部位もあるが,コマ音,拍動及び疼痛はない.
 組織学的には,真皮下層から皮下組織にかけて大小の小血管が増殖,拡張し,その外周に,円形〜楕円形の濃染する核を有するグロムス細胞が1〜3層,所によっては5〜6層または塊状に増殖している.また動脈撮影により,血管腫様の造影剤の貯溜像を認めた.

Thrombosed Angiokeratoma

著者: 生野麻美子 ,   羽田俊六 ,   濱松輝美

ページ範囲:P.291 - P.294

 単発および多発型のthrombosed angiokeratomaの2症例において皮疹の形態および色調の経時的観察を行なった.血栓形成によって生ずる皮疹の変化は1〜2週間の観察で明瞭に認められ,悪性黒色腫との鑑別に有効であった,機械的刺激が血栓形成の一因であると思われた.

悪性黒色腫:経過中にCompensated及びDecompensated DICを発症した症例

著者: 伊崎誠一 ,   後藤尚 ,   堀恵二 ,   佐藤恵 ,   田中洋

ページ範囲:P.295 - P.300

 2年2カ月の経過中に,特徴のある凝固線溶異常を合併した悪性黒色腫の一症例を紹介した.患老は77歳男,原発巣は右踵部.来院時すでにLevel(V),Stage(III),T3N2M0.放射線・化学・及び免疫療法を行ううちに典型的なDICを合併し,回復した.来院時より死亡に至るまでの凝固線溶検査値の変動を検討した結果,血小板数,フィブリノーゲン値及び血漿FDP値の変動が,Cooperらの提唱したcompensated及びdecompensatedDICの概念をよく支持する実例であることが判明した.加えて本症例の凝固及び線溶の引ぎ金因子並びにこれに対する生体の補償作用について考察を加え,悪性腫瘍に伴う凝固線溶異常の本態を探ろうとした.

編集室だより

雑誌名の省略について

著者: 「臨床皮膚科」編集室

ページ範囲:P.266 - P.266

 最近,引用文献に掲載される雑誌名の略称は,1970年にAmerican National Standards Committeeから出された「International List of Periodical Title Word Abbreviations」による略し方が,国際標準として,一般化してぎました.皮膚科領域に関係のある言葉の例を下記にあげました.御投稿の際には,これらを参考にして下さい.

連載 皮膚病理の電顕・21

付属器腫瘍(X)—石灰化上皮腫(1)

著者: 橋本健

ページ範囲:P.304 - P.306

 図56前図まででエクリン汗腺系の腫瘍を記述したが,本図では毛に由来する腫瘍を取り上げよう.毛には毛皮質(cortex)と毛小皮(cuticle)があり,前者が毛幹の大部分を占め,後者はその表面を被覆するウロコ状の鞘にあたる1).何故皮質というかというと,動物の毛では毛髄が良く発達しているので,その周囲を包む皮という意味である,人毛では毛髄の発達が悪いので皮質が毛の実質となる.ここに記述する石灰化上皮腫(calcify—ing epithelioma或はpilomatricoma, pilomatri—xoma)はこの毛皮質に向った分化を示す毛の腫瘍である.
 多くの附属器腫瘍がそうであるように,臨床的に診断の決め手となるような特徴はない.石灰化が著明な例では,触診すると固く触れる皮下結節を作る(A).ほとんどの例は単発し,好発部位を持たないため,生検により診断がついた時点では臨床写真が撮れないことになる.本例は多発した腫瘍が顔面頬部にみられる.多発型には家族性で強直性筋萎縮症(myotonic dystrophy)を合併する例が10例程報告されている2).本症例にはそのような症候はみられなかった.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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