icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科37巻4号

1983年04月発行

雑誌目次

図譜・486

Trichostasis Spinulosa

著者: 酒井勝彦 ,   山田雅啓

ページ範囲:P.316 - P.317

患者33歳,女
初診昭和55年12月17日

原著

第VIII因子間接螢光抗体法の皮膚疾患への応用

著者: 森田秀樹

ページ範囲:P.319 - P.323

 2,3の皮膚疾患における第VIII因子間接螢光抗体法所見を報告した.老人性血管腫では血管単位で特異螢光の強弱の差が認められた.結節性紅斑や多形滲出性紅斑では,特異螢光の減弱している血管が認められ,時に血管周囲にも特異螢光が認められた.同時にアンチトロンビン第III因子についても間接螢光抗体法で検索したが,特異螢光が弱く,種々の病態における螢光所見の差異は判定が出来なかった.

視力障害を伴ったPseudoxanthoma Elasticum

著者: 清水宏 ,   今井民 ,   原田敬之 ,   土屋清一 ,   倉持正雄

ページ範囲:P.325 - P.328

 Angioid streaksに伴う黄斑部変性にもとづく視力障害を伴ったpseudoxanthomaelasticumの42歳男子例を報告した.患者は初め著明な右眼視力低下を主訴として当院眼科を受診し,眼底検査にてangioid streaksが発見されたことが端緒となりpseudoxanthomaelasticumの診断が下された点が興味深い.
 Pseudoxanthoma elasticumにおける皮膚病変以外の眼症状,その他の全身的合併症について文献的考察を行なうとともに,本邦例と外国例とにおける諸症状の発現頻度を対比させ,その発現率に著しい差を認める原因などにつき若干の考察を加えた.

Eosinophilic Panniculitisと思われる1例

著者: 秋山尚範 ,   片山治子

ページ範囲:P.329 - P.332

要約 50歳,女性のeosinophilic panniculitisと思われる1例を報告した.本症は,病理組織学的診断名と考えられ,組織学的に脂肪組織を中心とした主に好酸球よりなる稠密な細胞浸潤像が特徴である.自験例の臨床像は,背部,殿部を中心に出没を繰り返す発赤を伴う瘙痒性皮下硬結である.螢光抗体直接法で,真皮深層の血管壁にIgM,C3の沈着が認められた.

Nodular(Pseudosarcomatous)Fasciitisの2例

著者: 高橋邦明 ,   櫻根弘忠 ,   濱田稔夫

ページ範囲:P.333 - P.337

 Nodular(pseudosarcomatous)fasciitisの2例を報告した.症例1:44歳,男性.初診の6日前に左大腿伸側に弾性硬,エンドウ大,圧痛性の皮下結節があるのに気付く.症例2:45歳,男性.初診の約1カ月前に右腹部に弾性硬,小指頭大,無症候性の皮下結節があるのに気付く.組織像は2例ともほぼ同様で,皮下脂肪組織深部に線維芽細胞が浸潤性に増殖し,一部には毛細血管増生,赤血球の管外溢出,リンパ球・組織球性の細胞浸潤がみられる.間質の一部はPAS陽性,アルシアンブルー(pH 2.5)陽性を示し,酸性ムコ多糖類の沈着と考えられた.さらに症例1では炎症性細胞浸潤内に多核巨細胞を認めた.以上より,2例ともほぼ典型的なnodular(pseudosarcomatous)fasciitisと診断した.いずれも全摘出後,現在まで再発はみられない.臨床医にとって,特にfibrosarcomaなどの肉腫との鑑別において本症の概念を熟知しておくことは重要なことと思われる.

色素失調症の1例

著者: 山田晃司 ,   馬野詠子 ,   横山美保子 ,   伊藤一成 ,   渡辺靖 ,   堀祥子 ,   村山隆志 ,   岩田純介 ,   余幸司 ,   石橋康正

ページ範囲:P.339 - P.345

 色素失調症の1例を経験し,生後13日目の右前腕の紅斑より得た皮膚組織を用いて電顕的検索に供した,その結果,表皮内の所々に変性したケラチノサイトを認め,それらの一部はcolloid bodyに近い形態を示していた.又,表皮内メラノサイトと思われる細胞内に車軸様構造を示す物質を認めたが,その本態は不明であった.

躯幹,四肢に発生した特異な色素沈着症について—第1報

著者: 谷垣武彦 ,   畑清一郎 ,   喜多野征夫 ,   野村政夫 ,   佐野栄春 ,   遠藤秀彦 ,   津田道夫 ,   橋本誠一

ページ範囲:P.347 - P.351

 19〜31歳の青年男女の背部,胸部,四肢の骨が突出した部分に一致して淡褐色〜暗黒褐色の色素沈着を生じた症例を6例まとめて報告した.6例中5例に3〜10数年間にわたり健康タオルの使用歴があった.皮疹の分布状態,パッチテスト,病巣部の組織学的所見などから,この色素沈着は健康タオル,タワシで皮膚に摩擦,圧迫などの機械的刺激を加えて発生してきたものと考えられた.このような色素沈着は最近は増加の傾向があり,更に症例を追加して原因を確認し,健康タオルに起因したものであれば,その正しい使用方法を徹底して指導する必要があろう.

天疱瘡抗体を認めた水疱性類天疱瘡の1例

著者: 影下登志郎 ,   野尻桂子 ,   城野昌義 ,   小野友道

ページ範囲:P.353 - P.357

 72歳女子,全身に紅斑・水疱・糜燗を生じ,生検標本では病理組織学的に表皮下水疱が認められたが,螢光抗体直接および間接法で表皮細胞間と表皮真皮境界部にIgGおよびC3の沈着と抗表皮細胞間抗体・抗基底膜抗体の両者が証明され,天疱瘡抗体を認めた水疱性類天疱瘡もしくは尋常天疱瘡と水疱性類天疱瘡の合併例と考えられる成績が得られた.この稀な症例はまだ本邦では報告されず,海外に7例の報告があるに過ぎないが,自己免疫制御機構の破綻という機序を考慮すれば,必ずしも稀有な所見ではないかもしれない.

悪性リンパ腫に合併した抗核抗体陽性の尋常性天疱瘡

著者: 木花光 ,   石川謹也 ,   橋本隆

ページ範囲:P.359 - P.362

 悪性リンパ腫の発病2年後に尋常性天疱瘡を併発した65歳男子例を報告した.臨床検査成績で抗核抗体320倍陽性,抗DNA抗体28.8U/ml, LE細胞陽性であったが,SLEの合併は臨床的に否定された.病変皮膚の表皮細胞間にIgG沈着あり.患者血清中には抗核抗体のみ陽性で抗表皮細胞間抗体は陰性であったが,血清を肝粉末で吸収したところ,抗表皮細胞間抗体が出現した.Paramethasone 16 mg/日内服治療にて皮疹は軽快したが,悪性リンパ腫が進行し敗血症にて死亡した.若干の文献的考察を加え,自験例が免疫系の異常を共通の基盤として悪性リンパ腫,天疱瘡および抗核抗体陽性という3つの病態を発症したものと考えた.

原発巣が自然消褪した悪性黒色腫の1例

著者: 斎田俊明 ,   土屋真一

ページ範囲:P.363 - P.368

 脳外科にて悪性黒色腫(MM)の脳転移が疑われて皮膚科を受診した42歳の男性例.全身の皮膚,粘膜,眼底などにMMの原発巣を思わす病巣は見出せなかった.しかし左背部に略硬貨大の完全脱色素斑が存在し,その中央には半米粒大の丘疹が認められた.患者の記憶によれば,約4年前ここに紫黒色の大豆大結節が生じたが,約半年の経過で自然に消槌して,後に脱色素斑が残ったという.組織学的に,丘疹部の真皮上層には母斑細胞様の胞巣が認められ,周囲に線維化と軽度のリンパ球浸潤を伴っていた.左腋窩にはリンパ節転移が確認された.これらより,この脱色素斑を自然消褪したMMの原発巣部と診断した.患者はその後,全身に転移が多発して死亡した.免疫学的には,末期での検索だが,患者末梢血リンパ球の同種MM細胞に対するcytotoxicityの増強はみられず,抗MM抗体も検出しえなかった.MMの自然消褪現象における免疫学的機序の重要性について考察を加えた.

増殖性天疱瘡(Hallopeau型)の1例

著者: 辻和男 ,   南光弘子

ページ範囲:P.369 - P.374

 我々は62歳女性の頭部・躯幹・大腿に生じた皮疹の生検から表皮内好酸球性膿瘍と,螢光抗体直接法で表皮細胞間にIgGの沈着を認め,また一方,間接法で抗表皮細胞間抗体320倍陽性を示したことから,増殖性天疱瘡Hallopeau型と診断した症例を経験したので報告する.この症例は同時に肝硬変を合併していた.
 検査の結果,末梢血好酸球が皮膚病変と平行して増減したが,IgE値は病初期に特に高値を示したのみで(5,200U/ml),以後のIgE値は皮膚病変とは無関係に高値を示した.

Syringocystadenoma Papilliferum—とくにその電顕像について

著者: 中村保夫 ,   清水正之 ,   浜口次生

ページ範囲:P.375 - P.381

 46歳,男子の左側頭部の器官母斑上に生じたsyringocystadenoma papilliferumについて,電顕的検索を行なった.腫瘍細胞は,トノフィラメントやケラトピアリン顆粒を有し,角化傾向を示すものと,ライソゾームと思われるmultivesicular bodyを豊富に含み,一部で細胞内空洞形成を認めるものが,混在してみられた.明らかな分泌顆粒や,アポクリン汗器官に特有な微細構造は認められず,全体的にはeccrine poromaなどのエクリン表皮内汗管腫瘍の電顕像と類似する点が多く,本例は,その電顕所見のうえからはエクリン分化が疑われた.

疣贅様表皮発育異常症に対する各種治療法の試み—特にOK−432・Retinoid・Interferonの治療効果について

著者: 真鍋求 ,   小川秀興

ページ範囲:P.383 - P.386

 51歳男子の疣贅様表皮発育異常症(epidermodysplasia verruciformis)例に対してOK−432(picibanil)・retinoid (Ro−10-9359)・interferon (I.F.)を用いて治療を試みた.その結果,OK−432・retinoidは無効であったが,I.F.の全身投与によりわずかながら皮疹の軽快が認められた.又,I.F.の局所注射では,対照に比べ臨床的に著明な皮疹の軽快が観察され,組織学的にも空胞細胞の消失が認められた.以上の結果,本症に対するI.F.による治療は今後,投与法・投与量などに関する検討が進めば効果的な治療法となることが示唆された.

基底細胞上皮腫と老人性疣贅像の共存例

著者: 竹島真徳 ,   高橋久

ページ範囲:P.387 - P.390

 66歳,男子.約30年前より,左大腿部内側に黒褐色の小結節あり.徐々に増大してきた.初診時,25×20mmの境界明瞭な有茎状隆起性の黒褐色腫瘤を認め,固く触れる.表面は疣状を呈し,一部で角質増殖及び鱗屑を認める.軽度炎症症状がみられるものの,領域リンパ節腫脹は認めない.組織学的には,腫瘍の大部分は,basaloid cellで構成される細胞集団で,典型的な基底細胞上皮腫の像を示す.一方,所々に,過角化,有棘細胞増殖,仮性角化嚢腫などを伴う老人性疣贅の縁が見られる.腫瘍の深層部では,基底細胞上皮腫の下方に接して老人性疣贅が残存してみられ,両者の移行が認められる.また,多数の場所で,両者の増殖が連続している.本症は,既存の老人性疣贅の中から基底細胞上皮腫が発生したとも考えられ,ここに報告し,若干の考えを述べた.

悪性黒色腫のAngiotensin Ⅱによる昇圧化学療法

著者: 竹松英明 ,   富田靖 ,   加藤泰三 ,   清寺眞

ページ範囲:P.391 - P.396

 悪性黒色腫における化学療法で,その効果を高めるため,angiotensin Ⅱにより昇圧しながら抗癌剤を注入し,抗癌剤の腫瘍組織への到達性を選択的に増強する方法を試みた.皮膚,肺,リンパ節に転移のみられた40歳,男性例で,BCG内服との併用により,全ての転移巣の消失が認められた.この転移巣の消失には,angiotensin Ⅱによる昇圧化学療法の効果が大と考えられた.術後の患者5人にも同様の治療を行ったが,昇圧による副作用は認められなかった.

連載 皮膚病理の電顕・22

付属器腫瘍(XI)—石灰化上皮腫(2)

著者: 橋本健

ページ範囲:P.398 - P.400

図58角化が更に進行し,好塩基性細胞の核が崩壊し形骸細胞となると,核の占めた細胞の中心部(N)が抜けた状態となる.ほぼ円形の細胞の輪郭が想像できる.これらの細胞の周囲には間質の膠原(C)が侵入しているが,細胞質の中にはほとんどみられない.×5,750
 図59以上の記述から,本腫瘍が組織化されて排列する線維束を含み(複屈折),SH,S-S基を含み,かつ電顕的には毛皮質細胞の角化様式に従って角化を行うということが確認された.勿論,少数ではあるが毛包の他の細胞に類似の角化様式を示す腫瘍細胞も混在する.例えば毛小皮は小さいケラトヒアリン顆粒の凝集を伴う角化を示すし,内毛根鞘の細胞は巨大なケラトヒアリン顆粒を産生し乍ら角化するので1),その区別は容易である.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up
あなたは医療従事者ですか?