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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科37巻5号

1983年05月発行

雑誌目次

図譜・487

Linear Unilateral Basal Cell Nevus

著者: 羽田俊六 ,   生野麻美子 ,   濱松輝美 ,   富田義男

ページ範囲:P.412 - P.413

患者45歳,男,運転手
 家族歴両親の血縁結婚なく,患者と同症なし.

原著

クリオグロブリン血症の1例

著者: 山蔭明生 ,   石川英一

ページ範囲:P.415 - P.419

 46歳主婦のクリオグロブリン血症の1例を報告した.当初,左前腕・手背・全指背のlivedo racemosa,左第IV, V指末節の壊疽,左上肢の脈なし症状と蛋白尿,レイノー現象を認め,経過中に下大静脈血栓によるmilk leg,皮下出血が生じた.クリオグロブリンはIgG-IgM mixed typeで,血中immune complexの分析では抗原物質はENAである可能性が示唆された.

皮下硬結を伴ったサルコイドージスの4例

著者: 岡本祐之 ,   尾崎元昭 ,   堀尾武 ,   今村貞夫 ,   泉孝英

ページ範囲:P.421 - P.423

 皮下硬結を伴ったサルコイドージスの4例を報告した.全例とも上腕に生じており,1例は他の皮膚病型を伴わないのに対し,3例は結節型あるいはびまん浸潤型を合併する混合型であった.皮下型サルコイドージスに関し考察を加えるとともに,上腕の皮下硬結はサルコイドージスの診断の補助的手段になると考えた.

Herpetiform Pemphigusの1例

著者: 阿部真哉子

ページ範囲:P.425 - P.428

 46歳男の,herpetiform pemphigusの1例を報告した.9カ月前より右前腕伸側,右側腹部に拇指頭大環状紅斑出現,辺縁に小水疱を認め激痒あり.同様の皮疹は次第に増生,4カ月後には全身に及んだ.ヨードカリ貼布試験陽性で,臨床的にジューリング疱疹状皮膚炎に類似するが,ニコルスキー現象陽性,病理組織学的にeosinophilic spongiosis,螢光抗体法で表皮細胞間にIgG沈着を認め,IC抗体価40倍.DDSに対して反応せず,トリアムシノロン内服で皮疹は軽快した.

たばこ皮膚炎

著者: 中村雄彦

ページ範囲:P.429 - P.432

 たばこの葉の刈り入れ作業に従事して,皮膚炎を生じた3例を報告した.2例に貼布試験を施行し,2例とも陽性であった.対照者19名のうち3名が陽性を示した.たばこによる皮膚炎の報告は諸外国でもみられるが,はっきりとしたアレルゲンは確認されていない.自験例も症状,経過などより一次性刺激によるものと考えられる.

腋窩Paget病—自験例および報告例のまとめ

著者: 藤本亘 ,   雀部将

ページ範囲:P.433 - P.439

 37歳,女性の右腋窩にみられたaxillary Paget's diseasc (a. P.)の1例を報告し,あわせて,腋窩に病変のみられた乳房外Paget病(a. P. のほかに,double extramammaryPaget's disease=d. e. P.,triple extramammary Paget's disease=t. e. P.,multilocular Paget'sdisease=m. P. を含む)の既報告例をまとめた.自験例は,組織学的に浸潤癌の像を示し,下床のエクリン腺体の一部に癌性変化を認め,右腋窩リンパ節転移もみられたが,アポクリン腺には異常を認めなかった.腋窩に病変のみられた乳房外Paget病は自験例を含め41例が報告されており,そのうちa. P. が30例,d. e. P. が3例,t. e. P. が7例,m. P. が1例であった.a. P. と他部位の病変合併例(d. e. P.,t. e. P.,m. P.)とを比較すると,下床の癌や転移は前者に高率に認められ,また後者は前者に比してより高齢で,かつ男性に多発する傾向がみられた.

悪性血管内皮腫の剖検例

著者: 松永悦治 ,   小林與市 ,   西岡清 ,   佐野榮春

ページ範囲:P.441 - P.446

 79歳,男子.初診約2カ月前から,何ら誘因なく右頭頂部の出血と小豆大の疣状結節をきたした.入院時,左前頭部に7×4cmの血痂に被われた浅い潰瘍,および右頭頂部に4×4cmの硬い痂皮に被われた暗赤色の皮面より軽度隆起した結節と,小指頭大以下の境界明瞭な淡紅色斑が散在.生検組織では,真皮上層に多数の出血巣と,赤血球をいれた管腔を形成する腫瘍細胞の増殖を認めたので,悪性血管内皮腫と診断.頭皮全体に腫瘍病巣が撒布されていることと高齢の為,手術不可能と判断して放射線療法(コバルト,リニアク)を施行した.潰瘍部は上皮化したが,痂皮に被われた腫瘤はほとんど変化しなかった.放射線療法を繰り返し施行したが腫瘍は増大し,初診より1年後,血小板減少とともに,肺転移によると考えられる左肺の血気胸をきたして死亡.剖検所見では,悪性血管内皮腫の左肺舌区と右肺下葉への転移が認められた.

有棘細胞癌の発生をみた汗孔角化症の1例

著者: 小松威彦 ,   田村晋也 ,   木村俊次 ,   加茂紘一郎

ページ範囲:P.447 - P.452

 65歳,女子.20年来多発性汗孔角化症を有し,その最も大きい局面上に有棘細胞癌を併発した1例を報告した.悪性像を伴う汗孔角化症の報告は稀とされているが,自験例も含め内外合わせて42例を数える.これら症例の検討から,悪性化は,1)長期間を要すること,2)列序型のものに多いこと,3)大型の皮疹に生じ易いこと,また4)半数以上の例で腫瘍が多発していること,さらに腫瘍としては5)有棘細胞癌が最も多いが,Bowen病,基底細胞上皮腫等も認められること等の結果が得られた.

熱傷瘢痕癌の1例—その発癌の重複に関する臨床的考察

著者: 千葉純子 ,   玉田嗣親 ,   昆宰市 ,   黒沢誠一郎

ページ範囲:P.453 - P.457

 62歳,男子.1歳の時,頭部から顔面に熱傷を負い,瘢痕治癒の状態であった,受傷51年後,左頬部に癌化を認め有棘細胞癌と診断し,腫瘍摘出および植皮術により治癒した.その10年後,左前頭部の熱傷瘢痕上にびらんを形成,一部潰瘍化した.細胞診により有棘細胞癌と診断したので,局所を広範に切除し植皮術を施行した.われわれは本症を癌の再発ではなく,同一熱傷瘢痕上の異なる部位に,10年間に2度有棘細胞癌を発生した症例と考えた.

陰茎縫線嚢腫の1例

著者: 大津晃 ,   高橋秀東 ,   上野賢一

ページ範囲:P.459 - P.463

 17歳,男子にみられた陰茎縫線嚢腫の1例について報告し,本邦例における文献的考察を行なった.自験例は,尿道粘膜より発生したmucous cystで尿道周囲腺が存在し,尿道癒合異常による尿道周囲腺の異所的遺残によるものと考えた.

Desmoplastic Trichoepithelioma

著者: 北島淳一 ,   庄司昭伸 ,   古川雅祥 ,   濱田稔夫

ページ範囲:P.465 - P.469

要約 48歳,女の右頤部に生じたdesmoplastic trichoepitheliomaの1例を報告した.臨床的には境界鮮明なほぼ正常皮膚色,弾性硬の皮面より僅かに隆起した小円形局面で,辺縁には淡黄白色の小丘疹が環状に配列して堤防状に隆起している.組織学的には真皮内に多数の角質嚢腫,基底細胞様細胞の索状配列,結合織形成の強い間質がみられ,異物肉芽腫および石灰化もみられた.また一部に脂腺分化を思わせる所見や,毛幹様構造物もみられた.以上より自験例はBrownstein & Shapiroの提唱したdesmoplastic trichoepitheliomaのほぼ典型例と考えられた.本症は臨床病理組織学的に明らかに1つのentityを有するものであり,solitary trichoepitheliornaとは別個に取り扱われるべきであるが,その毛包への分化度はtrichoepitheliomaとほぼ同等であると考えられた,その中でも自験例はやや分化の高い位置にあると考えられた.

Cerebriform Intradermal Nevusの1例

著者: 佐山重敏 ,   田上八朗

ページ範囲:P.471 - P.473

 生下時より存在し,加齢とともにしだいに増大して異様な外観を示すに至った,37歳男性の後頭部腫瘍例を報告した.組織像は典型的なintradermal typeの色素性母斑であり,脳回転状の外観は呈していないが他の特徴を多く備えており,cerebriform intra—dermal nevusの症例と考えられた.

多発性脳神経障害を呈した眼部帯状疱疹の1例

著者: 藤垣奉正 ,   田中壮一 ,   広永正紀 ,   渡辺昌平 ,   水原誠一 ,   斎藤春雄

ページ範囲:P.475 - P.478

 動眼神経・滑車神経・顔面神経の各脳神経麻痺と,皮疹部の高度な知覚障害,さらに視神経炎を合併した眼部帯状疱疹の1例を経験し,その経過を比較的長期にわたり観察した.また各脳神経麻痺や視神経炎の発生機序についても,若干の文献的考察を試みた.

躯幹に生じたスポロトリコーシスの2例

著者: 繁田美香 ,   岩津都希雄

ページ範囲:P.479 - P.482

 躯幹に生じたスポロトリコーシスの2例(52歳女,51歳女)を報告した.また,昭和40年から57年2月までの本邦におけるスポロトリコーシス躯幹発症例を集計し,若干の考察を加えた.

最近10年間に経験した疥癬の統計的観察

著者: 野崎昭 ,   大松孝子 ,   斉藤裕 ,   楠俊雄 ,   原田誠一

ページ範囲:P.483 - P.485

 日本医科大学付属病院皮膚科外来において,昭和48年1月から昭和57年6月までに経験した192例の疥癬患者の臨床統計に考察を加えた.
 症例数は最近急激に増加傾向を示し,季節別受診数では冬にピークがみられた.当科を受診するまでに他の医療機関で疥癬と診断されていた例は少なく,多くの例は湿疹,皮膚炎としてコルチコステロイド外用療法がなされていた.

編集室だより

雑誌名の省略について

著者: 「臨床皮膚科」編集室

ページ範囲:P.452 - P.452

 最近,引用文献に掲載される雑誌名の略称は,1970年にAmerican National Standards Committeeから出された「International List of Periodical Title Word Abbreviations」による略し方が,国際標準として,一般化してきました.皮膚科領域に関係のある言葉の例を下記にあげました,御投稿の際には,これらを参考にして下さい.

連載 皮膚病理の電顕・23

付属器腫瘍(XII)—毛鞘嚢腫(1)

著者: 橋本健

ページ範囲:P.486 - P.487

 図60皮膚に発生する多くの嚢腫のうち,毛包に由来するものは頭部,顔面に好発する.特に頭部の嚢腫は大部分が毛鞘嚢腫(trichilemmal cyst)といって差支えないであろう.他の部位に高頻度にみられる嚢腫は表皮性(epidermal)或は表皮様(epidermoid)嚢腫である.日本の古い文献では前者を仮性粉瘤,後者を真性粉瘤と呼んでいる.これらは臨床的には区別し難く,一般にこぶ(瘤)といわれる所以であろう,米国でもPinkus1)が毛鞘嚢腫を他の嚢腫より分離する以前は,すべてを混同してsebaceous cyst (脂性嚢腫)**,或はwenなどと呼んでいた.表皮性嚢腫は表皮が外傷,その他の機転により真皮内へ陥入するか,または毛包の脂腺付着部より上部,即ち漏斗部(infundi—bulurn) (infun)が表皮との連絡を断たれた後に増殖して生ずると考えられ,あまり興味のある腫瘍ではない.即ち,すべての構造,機能が表皮と同一である.
 これに反し,毛鞘嚢腫では,その分化が毛包の外毛根鞘(outer root sheath)(o)の特定の部分,即ち峡部(isthmus)(is)の角化2,3)に一致している.毛は毛包の下部で作られ,角化し乍ら表皮に向って成長してくるが,完全に角化するまでの間,即ち脂腺(s)の開口部付近までは早期に角化を終えた内毛根鞘(i)に包まれ保護されている.内毛根鞘がその役目を終えて脱落するレベル,即ち脂腺の毛管への開口部付近では,毛の外側を取巻くものは外毛根鞘(o)となる.一方,外毛根鞘は毛包下部では2,3層の角化しない細胞よりなるが,表皮に近づくにつれて厚くなる.毛包下部では内毛根鞘により毛と隔離されているが,内毛根鞘が角化脱落すると毛管の内壁を担当することになり,従って毛と直接に関係することになる.勿論,内毛根鞘の角化落屑した物質,脂質,細菌などがその間に介在するので,成人の剛毛では外毛根鞘と毛は必ずしも常に接触しているわけではない.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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