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文献詳細

雑誌文献

臨床皮膚科37巻5号

1983年05月発行

文献概要

連載 皮膚病理の電顕・23

付属器腫瘍(XII)—毛鞘嚢腫(1)

著者: 橋本健1

所属機関: 1

ページ範囲:P.486 - P.487

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 図60皮膚に発生する多くの嚢腫のうち,毛包に由来するものは頭部,顔面に好発する.特に頭部の嚢腫は大部分が毛鞘嚢腫(trichilemmal cyst)といって差支えないであろう.他の部位に高頻度にみられる嚢腫は表皮性(epidermal)或は表皮様(epidermoid)嚢腫である.日本の古い文献では前者を仮性粉瘤,後者を真性粉瘤と呼んでいる.これらは臨床的には区別し難く,一般にこぶ(瘤)といわれる所以であろう,米国でもPinkus1)が毛鞘嚢腫を他の嚢腫より分離する以前は,すべてを混同してsebaceous cyst (脂性嚢腫)**,或はwenなどと呼んでいた.表皮性嚢腫は表皮が外傷,その他の機転により真皮内へ陥入するか,または毛包の脂腺付着部より上部,即ち漏斗部(infundi—bulurn) (infun)が表皮との連絡を断たれた後に増殖して生ずると考えられ,あまり興味のある腫瘍ではない.即ち,すべての構造,機能が表皮と同一である.
 これに反し,毛鞘嚢腫では,その分化が毛包の外毛根鞘(outer root sheath)(o)の特定の部分,即ち峡部(isthmus)(is)の角化2,3)に一致している.毛は毛包の下部で作られ,角化し乍ら表皮に向って成長してくるが,完全に角化するまでの間,即ち脂腺(s)の開口部付近までは早期に角化を終えた内毛根鞘(i)に包まれ保護されている.内毛根鞘がその役目を終えて脱落するレベル,即ち脂腺の毛管への開口部付近では,毛の外側を取巻くものは外毛根鞘(o)となる.一方,外毛根鞘は毛包下部では2,3層の角化しない細胞よりなるが,表皮に近づくにつれて厚くなる.毛包下部では内毛根鞘により毛と隔離されているが,内毛根鞘が角化脱落すると毛管の内壁を担当することになり,従って毛と直接に関係することになる.勿論,内毛根鞘の角化落屑した物質,脂質,細菌などがその間に介在するので,成人の剛毛では外毛根鞘と毛は必ずしも常に接触しているわけではない.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1324

印刷版ISSN:0021-4973

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