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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科37巻6号

1983年06月発行

雑誌目次

図譜・488

ペラグラ

著者: 村野早苗 ,   川津智是

ページ範囲:P.500 - P.501

患者48歳,男性
初診昭和55年8月25日

原著

外陰部Paget病—螢光抗体法によりCarcinoembryonic Antigenを病巣部に証明しえた1例

著者: 森田秀樹

ページ範囲:P.503 - P.507

 69歳男性に発症した外陰部Paget病の病巣部を対象として,螢光抗体法によりcarcinoembryonic antigenの検索を行なった.その結果,carcinoembryonic antigenは病巣表皮内のPaget細胞にほぼ一致して認められた.同時にPaget病の病巣部におけるimmunoglobulin,補体,第Ⅷ因子,アンチトロンビンIIIについても螢光抗体法で検索したが,病巣部にIgA,表皮真皮境界部にC3が認められた.しかし,病巣部には第Ⅷ因子およびアンチトロンビンIIIに対する特異螢光は認められず,真皮の血管に一致してこれらに対する特異螢光が証明された.

Acrocyanosisを主症状としたCold Agglutinin Syndromeの1例

著者: 東禹彦 ,   政田佳子

ページ範囲:P.509 - P.512

 41歳,女性に生じた急性寒冷凝集素症候群の1例を報告した.症状は露出部皮膚のチアノーゼを主とし,溶血性貧血やヘモグロビン尿はなかった.チアノーゼは寒冷により生じ,加温により正常皮膚色にすみやかに復した.寒冷凝集素価は2048倍以上で,採血時,組織採取時に自然凝集を認めた.組織学的には真皮の血管腔に赤血球が充満している所見を認めるのみであった.本例ではマイコプラズマに対する抗体価は正常範囲内であったが,自然に治癒したことから,おそらく何らかの感染に続発したものと考えられる.

2例のメレダ病様病変表皮にみられた角化過程の変化について

著者: 手塚正 ,   栗本圭久 ,   高橋喜嗣

ページ範囲:P.513 - P.519

 9歳および8歳女児の手指背,手掌指腹,足背足蹠,膝蓋,肘頭部に境界鮮明な,軽度浸軟した角化局面で潮紅と発汗を伴う角化異常症について報告した.2例共に同胞には同症状を示す者はみとめられず,突然変異第1代と考えられる.組織学的に2例共中等度の角化,表皮肥厚と著しい顆粒層増多がみとめられた.ケラトヒアリン顆粒はPauly反応で正常の陽性所見を示した.DACM染色では—SH基,S-S結合の量,存在部位共に正常対照と変りなかつた.電顕的にケラトヒアリン顆粒は正常の電子密度を示し,均一な顆粒であり正常と異なった変化はみとめられなかった.層板顆粒,marginal bandも正常にみとめられ,又,ケラチン線維の量,走行も正常で特にケラチン線維の増生像はみとめられなかった.電顕的に正常と異なる点は脂質滴が少数みとめられたことのみである.本疾患ではケラチノサイトに生じる分化は脂質滴の存在を除くと形態学的および—SH, S-Sの動態の面で正常で,臨床症状はむしろ角質のhyperproductionによると考えられた.

一過性に経過したLinear IgA Bullous Dermatosisの1例

著者: 三橋善比古 ,   佐藤静生 ,   橋本功 ,   鈴木真理子

ページ範囲:P.521 - P.525

要約 52歳,女性,初診の半年前から慢性関節リウマチにて治療中,3カ月前より全身に瘙痒を伴う小水疱,紅斑出現.組織学的に水疱は表皮下にあり,真皮乳頭層に好酸球と好中球の浸潤がみられた.電顕的に水疱はsubbasal lamina zoneに形成され,螢光抗体直接法で,表皮真皮境界部にIgAの線状沈着が証明された.抗ヒスタミン剤の内服のみで経過観察したところ,1カ月後に皮疹は消褪し,以後再発はみられなかった.本邦報告例を,IgAが真皮乳頭に顆粒状または細線維状に沈着するものと,境界部に線状に沈着するものに大別して罹病期間を調べたところ,前者の6例では,されぞれ5カ月,1年,4年,8年,15年,16年であるのに対し,後者では9例中6例が1年未満であり,両者間には経過にも違いがあるように思われた.

血清亜鉛低下を伴った尋常性天疱瘡の1例

著者: 大崎正文 ,   法村晢史 ,   武田克之 ,   仁科喜章

ページ範囲:P.527 - P.530

 67歳,女性.2カ月前より口腔粘膜にびらんが始まり,全身に水疱とびらんが拡大.血清ZnとFeの低下があったが,Zn投与では皮疹は改善しなかった.天疱瘡の水疱形成機構およびZn欠乏時の酵素異常とプラスミンの関与につき,文献的に考察した.

D-ペニシラミン服用中の患者に生じたHerpetiform Pemphigus様皮膚病変

著者: 森尚隆 ,   熊切正信 ,   金子史男 ,   三浦祐晶

ページ範囲:P.531 - P.537

 33歳,女性.慢性関節リウマチ(RA)治療のためD-ペニシラミン(DPA)の反復投与を受けたところ,天疱瘡様皮膚病変を生じ,投与中止後も長期にわたり皮疹の新生がみられた.臨床的にジューリング疱疹状皮膚炎を考えさせたが,組織学的・電顕的には表皮内水疱で,棘融解像はないが,好中球の浸潤を伴ったspongiosisを示した.螢光抗体直接法で病変部表皮細胞間にIgG,水疱部にIgG,C3の沈着を認めた.間接法では血清中の正常人皮膚を用いた抗表皮細胞膜抗体は40倍陽性であり,患者健常部皮膚による自家間接法でも同様の抗体価を示した.一方,RA患者でDPAの長期治療を受けている皮疹のない4人の血清における正常人皮膚を用いた抗表皮細胞膜抗体の検出はいずれも陰性であった.
 最近,DPAに誘発されたと思われる天疱瘡様皮膚病変についての報告がいくつかみられるが,これらと比較して本症の発症機序について考察を行なった.

種々の治療を行なった老人性角化腫の1例—とくにβ-Interferon局注療法について

著者: 和田和枝 ,   大津晃 ,   大見尚 ,   上野賢一

ページ範囲:P.539 - P.542

 67歳,女子の頬部に多発した老人性角化腫に5FU軟膏ODT,human fibroblastinterferon局注,冷凍療法,切除等,種々の治療を行なった.とくにinterferon局注療法について詳しく記載した.

悪性血管内皮細胞腫と第VIII因子関連抗原

著者: 赤城久美子 ,   清野和子 ,   北郷修 ,   坂東正士 ,   椎名芳男 ,   村瀬卓平 ,   林幸子

ページ範囲:P.543 - P.547

 67歳,男の左側頭部に生じた典型的な悪性血管内皮細胞腫の1例.4カ月前から小腫瘤が出現し,難治性の潰瘍を形成.広範囲切除植皮術を施行したが,3カ月後に再発.再び切除,化学療法,放射線照射を行なったが脳転移をきたして死亡した.組織像は紡錘形ないし卵円形の異型性の強い腫瘍細胞が増殖して,一部に管腔の形成がみられる.今回われわれはPAP法(peroxidase-antiperoxidase complex method)によって,この腫瘍細胞内に第VIII因子関連抗原が局在しており,腫瘍細胞が管腔を形成する部位では特に強く染まることを認めた.さらに他の血管性病変にもこの方法を用いて検討し,正常の毛細血管,小動静脈の血管内皮細胞が特に強陽性で,悪性血管内皮細胞腫では染色性が低下していることを観察した.第VIIII因子関連抗原は血管内皮細胞の特異的markerであり,腫瘍性病変の由来や血行の動態を知る上で,重要な物質である.

皮下腫瘍を思わせた眼窩内海綿状血管腫の1例

著者: 沢田幸正 ,   野村和夫 ,   小川俊一

ページ範囲:P.549 - P.552

 症例は53歳,女性.誘因なく14年間にわたり徐々に増大した左下眼瞼腫瘤を主訴とした.病理組織学的に左眼窩に発生した海綿状血管腫と判明.以下,眼窩海綿状血管腫診断上の問題点,皮膚海綿状血管腫との臨床経過の異同などについて若下の考按を加えた.

Leukocytoclastic Vasculitis—8例の免疫病理組織学的検討

著者: 森田秀樹

ページ範囲:P.553 - P.558

 病理組織学的にleukocytoclastic vasculitisの像を示した8例の皮疹部および無疹部皮膚を経時的に生検し,それらを螢光抗体法により検索した.その結果,immunoglobulinや補体の血管壁への沈着がまずおこり,ついでフィブリノーゲンの沈着が認められる,との所見を得た.病理組織像と対比してみると,nuclear dustが未だ多くは出現せず,かつ血管破壊が進んでいない時期の病巣部ではimmunoglobulinや補体の血管壁への沈着が強く認められた.又,無疹部皮膚では8例中3例の真皮血管壁にimmunoglobulinや補体の沈着を証明した.

ヒマシ油による口紅皮膚炎

著者: 崔洙公 ,   永井隆吉

ページ範囲:P.559 - P.563

 口紅,リップクリームの塗布後に口唇の腫脹,発赤をきたすという珍しい訴えの患者が来院した.パッチテストを繰り返してようやくつきとめることのできた原因物質は,これまで口紅皮膚炎の原因にはなり得ないと考えられてきたヒマシ油であった.われわれは内外の文献を探し求めたが,口紅による接触皮膚炎で原因がヒマシ油であったという報告は1例もみられなかった.そこでこの特異な症例を報告し,口紅皮膚炎の原因物質として,今までかえりみられることのなかったこのヒマシ油を新たに追加したいと思う.

片側性に皮疹の出現したAshy Dermatosisの小児例

著者: 末久聖子 ,   岩月啓氏 ,   田上八朗

ページ範囲:P.565 - P.568

 躯幹および下肢の片側に皮疹が出現した,ashy dermatosisの5歳の女児例を報告した.リウマチ因子が陽性を示したことや,螢光抗体直接法で皮疹部の表皮・真皮境界部に顆粒状のIgMの沈着が認められたことは,免疫学的反応の関与を示唆しており,特異な臨床像とともに興味ある所見と考えられる.

連載 皮膚病理の電顕・24

付属器腫瘍(XIII)—毛鞘嚢腫(2)

著者: 橋本健

ページ範囲:P.572 - P.575

 図61頭部で完全に真皮内に埋没した毛鞘嚢腫を弱拡大でみると,壁は内容に圧迫されて薄く,大量の無構造物質が腫瘍の内容の大部分を占めている(A).壁に沿った周辺部では好酸(エオジン)性が強く赤く染り,中央部では好塩基性が強くなり青灰色に染っている(A).同一の標本を偏光下で観察すると,好酸性の部分にのみ光輝性の複屈折が現われ,好塩基性の中心部には複屈折が現われない(B).壁の比較的厚い部分(C)を偏光下で観察すると,壁細胞の中にも光輝性を示す線維が検出できる(D).これらの所見より,壁細胞で線維成分が産生され,これらが嚢腔へ脱落する際に,形成された線維も一緒に嚢腔内へ移行し,しばらくはそのまま線維として存在するが,次第に中央部へ移動するにつれて崩壊し,線維としての形態を保持しなくなると考えられる.複屈折を発生するためには,その物質が整然と排列する分子構造,例えば線維束,結晶などである必要がある(図8参照).
 壁細胞を中拡大で観察すると,PAS染色で赤く染った基底膜(H)の上に並ぶ小型で好塩基性の基底細胞が壁の最外層をなす(C, E, F).基底細胞は3,4層の所もあるが(F),大抵は1層で,中心部へ向って成長するにつれて次第に明調で大型の細胞に変化する(C, E, F, J).これは細胞内に糖原の蓄積が起こるためで,PAS染色により証明することができる(H, I).PAS染色はいろいろな物質を染めるが,基底膜の場合は中性ムコ多糖類を染めているので,従ってジアスターゼ消化を行った切片でも陽性である.糖原はこの処理により消失する.大型明調細胞は所により乳頭状に嚢腔へ突出する(E, I).大部分の明調細胞はそれ以上,何の変化も起こさずに角化し,好エオジン性の嚢腔の内容物となるが,電顕的には少数のケラトヒアリン顆粒を作っている(図64, 65参照).実際,角化する直前の細胞,即ち最内層に位置する明調細胞の中に,小さい塩基性顆粒を認めることがある(F).更に明調細胞全体が好塩基性に薄く染まる場合があり(E),これらは極めて微小なケラトヒアリン顆粒が星屑のように細胞質中に拡散しているためである.明調細胞の中には糖原を使い果してPAS陰性のものもみられる(I).角化が急速に起こった場合には核の消化消失がおくれ,その残存物が嚢腔内に見出される場合もある(J).これは表皮の不全角化(parakeratosis)に相当する.嚢腔の中心部にかけて,即ち古い細胞の崩壊物中には石灰沈着がしばしば観察され(C, G),その中に偏光で複屈折を示す結晶成分も検出される(G).嚢腔を満す物質は一見無構造にみえるが,PAS染色により角化した細胞の間を満す糖蛋白が赤く染まり,細胞の輪郭を規定するので(H, I),少くとも壁に近い周辺部では細胞形態を保持していることが想像できる(図66参照).

編集室だより

雑誌名の省略について

著者: 「臨床皮膚科」編集室

ページ範囲:P.575 - P.575

 最近,引用文献に掲載される雑誌名の略称は,1970年にAmerican National Standards Committeeから出された「International List of Periodical Title Word Abbreviations」による略し方が,国際標準として,一般化してきました.皮膚科領域に関係のある言葉の例を下記にあげました.御投稿の際には,これらを参考にして下さい.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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