原著
2例のメレダ病様病変表皮にみられた角化過程の変化について
著者:
手塚正1
栗本圭久1
高橋喜嗣1
所属機関:
1近畿大学医学部皮膚科教室
ページ範囲:P.513 - P.519
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9歳および8歳女児の手指背,手掌指腹,足背足蹠,膝蓋,肘頭部に境界鮮明な,軽度浸軟した角化局面で潮紅と発汗を伴う角化異常症について報告した.2例共に同胞には同症状を示す者はみとめられず,突然変異第1代と考えられる.組織学的に2例共中等度の角化,表皮肥厚と著しい顆粒層増多がみとめられた.ケラトヒアリン顆粒はPauly反応で正常の陽性所見を示した.DACM染色では—SH基,S-S結合の量,存在部位共に正常対照と変りなかつた.電顕的にケラトヒアリン顆粒は正常の電子密度を示し,均一な顆粒であり正常と異なった変化はみとめられなかった.層板顆粒,marginal bandも正常にみとめられ,又,ケラチン線維の量,走行も正常で特にケラチン線維の増生像はみとめられなかった.電顕的に正常と異なる点は脂質滴が少数みとめられたことのみである.本疾患ではケラチノサイトに生じる分化は脂質滴の存在を除くと形態学的および—SH, S-Sの動態の面で正常で,臨床症状はむしろ角質のhyperproductionによると考えられた.