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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科37巻7号

1983年07月発行

雑誌目次

図譜・489

頸部巨大腫瘤を呈したSarcoidosis

著者: 土居敏明 ,   西岡清 ,   佐野榮春 ,   田村信司 ,   椿尾忠博

ページ範囲:P.588 - P.589

患者38歳,女性
主訴左側前頸部の巨大腫瘤

原著

Aromatic Retinoid内服療法が奏効した毛孔性紅色粃糠疹の幼児例について

著者: 森嶋隆文 ,   桧垣美奈子 ,   森嶋和子

ページ範囲:P.591 - P.595

 レチノイド内服8週後に完全寛解し,休薬5カ月後の現在,皮疹の再燃をみない毛孔性紅色粃糠疹の幼児例を報告した.寛解導入量としてレチノイド1日0.5mg/kgを用いたが,この投与量は臨床効果の点からも血清中未変性体・主代計謝物の薬物動態との観点からも妥当であると考えられた.内服中止2カ月および5カ月後ともに未変性体・主代謝物のいずれも検出しえず,蓄積による毒性の発現の危険性は少ないものと予測された.

Pseudocyst of the Auricleの3例

著者: 長谷川隆 ,   小林まさ子 ,   伊藤達也

ページ範囲:P.597 - P.601

 Pseudocyst of the auricleは現病歴,内容物,組織像に特徴を有する疾患として,1966年Engelにより初めて記載された.最近,我々は本症の3例(35歳,男性.32歳,女性.51歳,男性)を経験したので報告した.全例,耳介前面,上半分の嚢腫様腫瘤および変形を主訴に来院.内容物は黄色調粘液で,組織学的にEngelと同様の所見を得た.治療は2例に腫瘤前壁の軟骨およびこの内面を被う肉芽様線維組織を切除,摘出する手術的治療を施行し,満足のいく結果を得た.本症は保存的治療に抵抗性で,容易に耳介の変形を来す.従って,再発を繰り返す症例はすみやかに手術的治療をすべきであると考える.

アトピー性皮膚炎にみられた重篤な眼合併症

著者: 西尾千恵子 ,   高橋誠 ,   勝島晴美 ,   中川喬

ページ範囲:P.603 - P.605

 アトピー性白内障の2例を報告した.2例ともに術後に網膜剥離,ブドウ膜炎を併発し,視力低下をきたした.アトピー性白内障は術後合併症が高頻度にみられ,視力予後が悪い.本症の治療については,今後充分検討される必要がある.
 1例にみられた両眼の開放隅角緑内障は,長期間使用したステロイド外用剤の関与が疑われる.顔面のステロイド外用療法においては,定期的な眼圧測定を要する.

水疱性類天疱瘡の走査電顕像

著者: 大草康弘 ,   長島正治 ,   高田邦昭 ,   平野寛

ページ範囲:P.607 - P.611

 水疱性類天疱瘡2例の新旧多数の水疱を主として走査電顕下に観察し,次の結果を得た.
 新しい水疱の水疱膜底面には変性した基底細胞の残存が認められた.これら細胞の細胞間橋は伸長していた.
 古い水疱の水疱膜底面に基底細胞は認められず,水疱膜底は有棘層の細胞に由来すると考えられる扁平な細胞により構成されていた.これら細胞の表面には多数の微絨毛がみられた.本症における抗基底膜抗体は近年,基底細胞とも反応することが知られているが,われわれの観察は抗体の結合に基づく反応により,lamina lucidaのみならず基底細胞も障害され,これが変性・脱落した結果,二次的に有棘細胞が水疱膜底構成細胞となる過程を示したものと考えられる.

先天性側頸瘻の1例

著者: 原田玲子 ,   磯貝豊

ページ範囲:P.613 - P.619

 19歳・男子に,生下時より認められた不完全側頸瘻の1例を報告した.従来の本症の報告は他科領域におけるものがほとんどであるが,皮膚科を受診することも稀ならずあるものと思われる.本症の治療上,内口を含めた痩管の完全摘出が必要であるが,そのためには瘻管造影により,あらかじめ瘻管の走行を確認しておくことが望ましい.
 1970年から1980年までの本邦報告例を集計し,特に側頸嚢胞との関係等につき,若干の文献的考察を加えた.

Solitary Enchondromaの1例

著者: 前田健 ,   姉小路公久 ,   神山慎二

ページ範囲:P.621 - P.625

 32歳,女性.昭和56年6月より右第1指が腫脹し,時々疼痛もあったが放置していた.昭和57年1月,左第Ⅴ趾骨骨折のため当院整形外科入院時,右第Ⅰ指の内軟骨腫を指摘される.皮膚科初診時,右第Ⅰ指は時計皿状で,爪甲は波状を呈していた.右第Ⅰ指X-P所見にて,末節骨中央に嚢腫状陰影を認める.病理組織学的所見では硝子様軟骨を主体とする腫瘍で,細胞数は正常で核に異型性はなく,単核のものが多かった.本腫瘍は手指骨に多く発生するが,第Ⅰ指には比較的少ない.又,基節骨,中節骨に多く,末節骨にも比較的少ない.本症例はこの稀な第Ⅰ指,末節骨に発生し,爪甲変形を伴っていた.皮膚科領域では今までに4例の報告があった.無症状で進行が遅いため,患者は腫瘍に気付かず,爪甲変形を主訴として皮膚科へ来院することも考えられるので,爪甲変形を来す疾患の鑑別に加える必要がある.

爪下外骨腫の2例

著者: 四本秀昭 ,   下川優子 ,   久留博史 ,   花田正明 ,   田代正昭

ページ範囲:P.627 - P.630

 爪下外骨腫の2例を報告した.2例ともに女性例で第1趾爪甲下に生じた腫瘤を主訴に来院したが,組織学的には1例はexostosis typeで,他の1例はosteochondroma typeであった.
 組織学的記載の確かな本邦報告例66例を,exostosis typeとosteochondroma typeの2型に分け,臨床的考察を行ない報告した.

列序性疣状母斑の1例

著者: 下田淳子 ,   籏持淳 ,   植木宏明

ページ範囲:P.631 - P.635

 列序性疣状母斑の1例(21歳,女性)を報告した.皮疹は,生直後より存在し,広範囲左右対称性で,より間擦部に著明であった.四肢には線状,躯幹には渦巻状の配列を認めた.足底の角層より得た線維性ケラチンは,SDS—ポリアクリルアミドゲル電気泳動像,アミノ酸組成において,正常人のものと異なった.黒色表皮症などとの鑑別を行なった.

Actinomycosisの1例

著者: 中川知子 ,   幸田衛 ,   中川昌次郎 ,   植木宏明 ,   福田道男

ページ範囲:P.637 - P.640

 67歳,男性,農業.約1年前に誘因なく左下顎下縁部に発赤状の腫瘤を生じ,次第に増大して鶉卵大になった.圧痛,開口障害はなく,口腔内の異常などは認められなかった.細菌培養検査は陰性であったが,病理組織学的に菌塊が確認された.腫瘤全摘出後,ペニシリン剤の投与を6週間行ない,現在再発を認めていない.

北海道における最近のM.canis感染症について

著者: 久保等 ,   大河原章 ,   浜坂幸吉 ,   芝木秀臣

ページ範囲:P.641 - P.645

 昭和52年1月から昭和55年12月までの4年間に旭川医大付属病院皮膚科および協力医療施設を受診したMicrosporum canis (M.canis)感染症136例について検討した.その結果,ケルズス禿瘡の減少,体部白癬の増加傾向がみられ,またM.canisによる足白癬3例を経験した.
 北海道におけるM.canis感染症は昭和8年に発見されて以来,昭和20年代に第1次流行期をむかえ,昭和40年代の第2次流行以来,今日まで約15年間継続して発生がみられる.

ネコノミによる皮膚炎

著者: 前田健 ,   姉小路公久

ページ範囲:P.647 - P.651

 昭和57年,6例のネコノミによる皮膚炎患者を経験したので報告する.皮疹は下腿に多く,次いで前腕に出現している.腹部にも3名が出現しており,臀部にも出現を認めている.皮疹は紅色丘疹が散在しており,中心は掻破のため糜爛している.水疱も全例に出現している.又,小結節様紅色丘疹,膿痂疹様湿潤性局面を示す症例もあった.現在,東京都で見られるのはほとんどがネコノミであり,イヌノミはほとんど見られず,イヌに寄生しているのもほとんどネコノミである.ネコノミは昭和54年より増加傾向を示しているが,昭和57年夏,それまで涼しい日が続いており,8月中旬に急に暑くなったため,一時期に大量のノミの発生を見た.そのため,皮膚科患者も増加したようである.今後ネコノミは増加傾向にあり,皮膚科患者も増加するものと思われ,その駆除対策が必要である.

編集室だより

雑誌名の省略について

著者: 「臨床皮膚科」編集室

ページ範囲:P.645 - P.645

 最近,引用文献に掲載される雑誌名の略称は,1970年にAmerican National Standards Committeeから出された「International List of Periodical Title Word Abbreviations」による略し方が,国際標準として,一般化してきました.皮膚科領域に関係のある言葉の例を下記にあげました.御投稿の際には,これらを参考にして下さい.

連載 皮膚病理の電顕・25

付属器腫瘍(ⅩⅣ)—毛鞘嚢腫(3)

著者: 橋本健

ページ範囲:P.654 - P.656

図63毛鞘嚢腫の基底細胞を中拡大で更に詳しく示したのが本図である.比較的大きな核(N),トノフィラメントの網(t)などが明瞭で,その間に散在または集塊をなす顆粒(G)はリボゾームか糖原である.両者の区別は後者がロゼットを作る場合以外は鑑別困難である.この細胞の基底側(BASAL)をよくみると,分岐した細胞突起が伸び,それを基底板の不連続なもの,または重層したものが取囲んでいる(B).基底細胞との間には半デスモゾームも作られている(d).基底板の重層したものの間には多数の細線維が集合している(*).これらは係留線維(anchoring fibril)の未熟なものと考えられ,その証拠に,その中にはかなり典型的なもの(矢尻)も混っている.基底板が増殖し,係留線維がそれにつれて増加する現象は,他の付属器腫瘍の周辺部,例えば円柱腫の実質と間質の境界部に著しい7).図62で基底細胞(B)と膠原(C)は直接に接触しているように見えるが,実は多くの腫瘍における如く,実質と間質のinteractionが行われていることがわかる.これは腫瘍がその本性である増殖を行って常に拡大しようとする場合,細胞分裂や本図に示した基底側(BASAL)より伸びる偽足により基底板が破壊され,その部分の修復が行われ,破れた墓底板の一部が後に残る.このような部分的な破壊と修復をくり返すうちに基底板の破片や重積が生ずる(b).基底細胞,特に腫瘍のそれは活発な代謝を営んでいるので,間質より栄養を取り込む必要があり,多数の胞飲小胞(pinocytotic vesicle)(p)が基底側に沿って並んでいる.一番右のものは細胞膜の陥凹により西洋梨状の小胞が形成されつつある像であり,その他は既に基底細胞内へ取込まれている.図の左側にみえる蜂窩状の構造は,その上にあるような細胞突起が退行変性を起こしたものと考えられる.×32,300
 図64毛鞘嚢腫.図の左下半分に明調で糖原の抜けた細胞(S)があり,右上半分に角化の傾向を示すが線維束が密にならず,かつ核(N)を保持している不全角化の細胞がみられる(図61J参照).図の右下に一部がみえる細胞(K)は完全に角化して,内容は一様に電子密で,線維束をこの拡大で見分けることができない.明調細胞(S)と不全角化を示す細胞には多数の空胞(*)とケラトヒアリン顆粒(矢尻)が存在する(図61E,F参照).空胞は糖原の抜けたあと,或は不全角化の細胞ではセメントゾームやリゾゾームの細胞内貯留物が抜けたあととも考えられる.後者の多くは角化の直前に細胞外へ放出され,細胞間に拡散するが,毛鞘性角化の場合には拡散せずに集塊を作ったり(C-L),不全角化の細胞内に止っていたりする(図65—次号—参照).異常に長いデスモゾーム(D)が角化した細胞を接着している.
×12,000

これすぽんでんす

Juvenile Spring Eruptionについて—佐藤氏の質問に答えて

著者: 中村雄彦

ページ範囲:P.657 - P.657

 拙著「Juvenile Spring Eruptionの1例」(本誌,37(3);263,1983)について佐藤吉昭氏より,本症はpri—maryのphotodermatosisか,あるいは背景に何らかの病態があってnon-primaryにphotoaggravateされているのかという点と,polymorphous light eruptionと同様に北陸,北欧などの寒冷地方に多いのは何故か,という2点について質問をいただいた1).このことについては筆者も同様の疑問を持ちながら論文に記載しなかった点もあり,本症の病態についての基本的な問題を指摘されたと考えるので,本欄をお借りして若干の知見を述べてみたい.
 まずprimaryのphotodermatosisか否かの問題である.ここでのprimaryのphotodermatosisとはRamsay2)の分類のidiopathicのものを指し,Bruckhardt3)の分類ではLicht und endogener Faktor wirksamに入れられたものを指すと考える.この項にはpolymorphouslight eruption, summer prurigo, hydroa vacciniformeなどとともにRamsayはjuvenile spring eruptionを記載し,またBruckhardtもFrühlingsdermatoseという病名を用いて記載している.問題は本症を多形滲出性紅斑の1型とする考えである.筆者は本症と多形滲出性紅斑は発疹の部位,発症の時期などから区別すべきであるとした.特に自験例のごとく耳にのみ生じた場合は独立疾患としての意義を持つと考える.しかし本症は組織学的に多形滲出性紅斑あるいは急性エリテマトーデスを思わせる所見があるとの報告もある4).またRyan5)は本症患者の手背に典型的な多形滲出性紅斑の皮疹が生ずることがあると記載している.Baran6)も手背,顔面,前腕に多形滲出性紅斑様の皮疹が出現すると記載している.Ramsay2)の分類によると多形滲出性紅斑はidiopathicではなく,diseases aggravated by sunlightの項に分類されている.この項にはrosacea, herpes simplex, lupuserythematosus, lymphocytomaなどがある.本症の病因が確定していない現在,結論は不明であるといわざるを得ない.しかし発症の状況,臨床症状などから本症はdiseases aggravated by sunlightに分類される疾患群よりは,polymorphous light eruption, summer prurigo, hy—droa vacciniformeなどにより近い疾患と考えられる.いくらかの内的要因はあるにしても,紫外線およびそれ以外の気温,気圧,湿度といった外的因子の方が発生因としてより重要であると考えたい.

基底細胞上皮腫と老人性疣贅

著者: 木村俊次

ページ範囲:P.658 - P.658

 竹島氏らの論文「基底細胞上皮腫と老人性疣贅像の共存例」(本誌,37(4);387,1983)を興味深く拝読しました.組織全体像では確かに粗大網状構造を示す表皮増殖が基底細胞上皮腫の下方および側方に認められ,竹島氏らも考察されているごとく,基底細胞上皮腫により圧排された老人性疣贅の組織像に一致すると考えることも可能であると思われます.
 しかしながら一方,基底細胞上皮腫の有茎状増殖に伴う茎部表皮の反応性増殖,すなわちepidermal colla—rette形成が顕著になったものと考えられなくもありません,既に私共は基底細胞上皮腫の教室例の病理組織学的再検討の際,周辺表皮の変化としてepidermal coll—arette形成を高率に認めています.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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