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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科37巻8号

1983年08月発行

雑誌目次

図譜・490

Lupus Vulgaris

著者: 杉浦丹

ページ範囲:P.670 - P.671

患者49歳,男,無職(屠殺業の経験あり)
初診昭和56年1月21日

原著

Mycobacterium marinum皮膚感染症の2例

著者: 恩田周太朗 ,   楠本敬子 ,   中村進一

ページ範囲:P.673 - P.678

 M. marinum皮膚感染症の2例を報告した.症例1は40歳,男性,趣味で熱帯魚を飼育.RFP内服で効果なく,塩酸ミノサイクリンに変えたところ皮疹改善.症例2は25歳,男性,水族館職員.RFP内服で軽快.症例2は感染源追求のため,勤務先の水族館の水槽および濾過槽あわせて11カ所から試料を採取し,抗酸菌の検索を行ったが,M. marinumは検出されず,M. fortuitumを3カ所から検出した.M. marinum,M. fortuitum,M. tuberculosisの三者の走査電顕像を比較検討するとともに,抗酸菌の形態について若干の文献的考察を加えた.

自然消褪した足底疣贅

著者: 木村俊次 ,   早川和人

ページ範囲:P.679 - P.684

 19歳女子の両足底に多発し,全経過約4カ月で自然消褪した足底疣贅の1例を報告した.発疹ははじめ著明な圧痛を伴う半透明小鶏眼様を呈したが,約1カ月後には大部分が黒化し,黒化した皮疹は圧痛が消失した.小鶏眼様皮疹は組織学的に足底疣贅本来の所見の他,病変表皮の染色性の変化,真皮乳頭層・乳頭下層の血管の著明拡張・壁の肥厚・うっ血・血栓形成をきたし,周囲には好中球を主とし小円形細胞・好酸球を混じる稠密な細胞浸潤を示した.一部出血もみられた.これらの浸潤細胞は病変表皮内にも侵入し,そのため表皮真皮境界が不明瞭となる部分もみられた.電顕的にはヒト乳頭腫ウイルス粒子を,また螢光抗体法的にはその抗原の存在を確認した.足底疣贅も含めた疣贅一般の自然消褪につき若干の文献的考察を加えたところ,自験例では扁平疣贅と異なり,アルサス型の反応が主体をなしていると考えられた.

マダニ皮膚寄生の1例

著者: 加藤一郎 ,   向井秀樹 ,   伊藤洋一 ,   山口昇 ,   石井孝男

ページ範囲:P.685 - P.688

 タネガタマダニ雌成虫の皮膚寄生の1例を報告した.症例は1歳男子で今までの報告例の中では最年少のマダニ寄生である.また茨城県においても初めての報告である.本邦におけるマダニ寄生の過去報告例を検索し,若干の文献的考察をなした.1981年より過去20年間に報告された例数は60例.種別ではヤマトマダニが最も多い.また稀ではあるが刺咬後に野兎病が発症する場合もある.

小児の粘膜苔癬

著者: 向井秀樹 ,   西山茂夫

ページ範囲:P.691 - P.695

 4歳,女児.約1年前より左紅口角部に白色のビラン面出現.漸次,左頬粘膜にまで拡大し,右頬粘膜にも同様の発疹が出現.病理組織学的に,典型的苔癬型反応と診断した.1955年から1981年までに,報告された扁平苔癬は総数2,511例であり,好発年齢は30〜60歳台が最も多い.自験例の如く10歳以下の小児に発症した症例は,27例(0.01%)と極めて稀であり,さらに粘膜に限局して発症したとする報告は自験例のみであった.最後に,当院開院以来10年間に経験した扁平苔癬93例に関し,若干の統計的考察を加えた.

Lichen Planus Actinicusの1例

著者: 清水良輔 ,   中西孝文 ,   谷昌寛

ページ範囲:P.697 - P.701

 Lichen planusのまれな亜型であるlichen planus actinicus (LPA)とulcerativelichen planusが合併し,光照射試験にて皮疹の誘発に成功した,48歳の日本人女性例を報告した.
 LPAは,中東よりの報告が大部分を占め,人種ならびに地域的偏位のみられる疾患であるが,本邦においても発症し得ること,ならびに,その診断,名称の選択,光照射試験等について,若干の文献的考察を加えた.

悪性神経鞘腫の1例—特にS100蛋白について

著者: 末木博彦 ,   実川久美子 ,   佐藤昌三 ,   安西喬

ページ範囲:P.703 - P.707

 46歳,女の左手背尺骨側に生じた悪性神経鞘腫の1例を報告した.既往歴,家族歴にRecklinghausen病を認めない.腫瘍は病理組織学的に,真皮〜皮下組織に存在し,深部神経との直接の連絡を有しない点が,特異であった.S100蛋白酵素抗体法では,被膜の小神経内に明瞭な陽性像を示したのに対し,腫瘍塊はほとんど陰性であった.本症の発生病理および悪性軟部腫瘍との鑑別について,若干の考察を加えた.また,S100蛋白に関する最近の知見について文献的考察を行った.

Eosinophilic Pustular Folliculitis—特にFollicular Mucinosis様所見について

著者: 木村俊次

ページ範囲:P.709 - P.713

 20歳,女子.右頬部,背部,臀部に生じた臨床・組織像とも典型的なeosinophilicpustular folliculitis (EPF)を報告した.本例では毛包の一部にfollicular mucinosis (FM)様変化あり,ムチン沈着を認めたが,これを機会にFM様変化を伴うEPFとFMそのものとを文献的に比較・検討したところ,ムチン沈着部については組織学的に両者を区別しうる決定的な所見はなく,従ってEPFに伴うFM様所見はFMそのものということができ,EPFの中には続発性ないし症候性のFMを伴う例が存在すると考えられた.臨床的にも毛孔一致性丘疹や局面状皮疹形成など類似する所見が存在する.今後EPFをFMとの関連性においても捉える必要があると思われる.

皮膚線維腫—組織内にVerocay小体様構造と多量の脂質が認められた症例

著者: 石倉多美子

ページ範囲:P.715 - P.716

 29歳の男の右手背尺骨側よりにみられた皮膚線維腫について述べた.腫瘍は直径1cm位で,約6年経過していた.組織像では,表皮は腫瘍中心部では萎縮状,辺縁部では肥厚,真皮全層に亘って横に卵円形を成す腫瘍組織があり,辺縁部では紡錘形細胞と線維成分が多く,後者は錯綜していわゆるcartwheel patternをも示し,一部にはVerocay小体様構造もみられた.腫瘍中心部では組織球と泡沫細胞が多く,それらの胞体の内外には多量の脂質滴と紡錘形空隙が多数認められた.

Eccrine Porocarcinoma in situの1例

著者: 中村節子 ,   森田吉和

ページ範囲:P.717 - P.722

 67歳男性.2カ月前より右下腹部に生じた腫瘤につき各種検索を実施した.腫瘍細胞は,やや小型で巣状に配列し,細胞の異型性が強く核分裂像も著明.細胞質内には,PAS染色陽性顆粒が散見され,ジアスターゼ・PAS染色で陰性.ムチン・ケラチン染色で被覆表皮(ケラチノサイト)と区別出来る.電顕的には,細胞間隙広く,絨毛突起豊富で,デスモゾーム,トノフィラメント少なく,又細胞内空胞形成を認めた(この空胞は,将来管腔を形成するものと考えられる).本症例は,転移巣,真皮への浸潤のない点より,eccrine porocarcinoma in situと考えられる貴重な症例で,本邦報告例中のeccrine poro—carcinomaと比較検討し,その意義について考察を加えた.

Malignant Clear Cell Hidradenoma

著者: 久保田潔 ,   熊切正信

ページ範囲:P.723 - P.727

 92歳,女性の顔面に生じ,遠隔転移を起こしたmalignant clear cell hidradenomaの1例を報告した.臨床的には,中心が潰瘍化した鮮紅色の巨大な腫瘤である.組織学的には,胞体が明るく,異型性のある核をもつ腫瘍細胞が小葉状の集塊を作り,薄い間質によって境されており,一部では管腔様構造,癌真珠の形成もみられた.酵素組織化学的には,フォスフォリラーゼとβ—グルクロニダーゼ陰性,コハク酸脱水素酵素,酸性フォスファターゼ,ロイシンアミノペプチダーゼ及びインドキシルエステラーゼはいずれも陽性であった.電顕的には,真皮内汗管への分化を示す細胞が不規則な空隙を作っていた.
 本症はエクリン由来の汗腺癌とされているが,自験例もエクリン由来と考えた.

京都府立医科大学皮膚科における最近10年間(昭和47年〜56年)の皮膚付属器腫瘍の統計

著者: 丸尾充 ,   大瀬千年 ,   松原基夫 ,   岸本三郎 ,   安野洋一 ,   上田恵一 ,   外松茂太郎

ページ範囲:P.729 - P.733

 昭和47年から56年までの10年間に京都府立医科大学皮膚科において経験した皮膚付属器腫瘍185例について統計的観察を行った.
1)10年間の外来新患総数は49,027人で,新患総数に対する割合は0.38%であった.
2)汗器官腫瘍は43例であり,エックリン系腫瘍は8例,アポクリン系腫瘍3例,未決腫瘍が32例であった.
3)毛包腫瘍は85例であり,毛母腫,多発性毛包嚢腫が多くみられた.
4)脂腺腫瘍は57例であり,大部分は脂腺母斑であった.
5)悪性腫瘍は7例であり,4例に転移が認められた.悪性度において付属器以外の表皮から発生する有棘細胞癌より高いと思われるので,診断に際しては臨床所見,組織学的検索と共に酵素化学的,電子顕微鏡的検索をあわせて行ない,より確実に診断することが肝要と思われる.

編集室だより

雑誌名の省略について

著者: 「臨床皮膚科」編集室

ページ範囲:P.690 - P.690

 最近,引用文献に掲載される雑誌名の略称は,1970年にAmerican National Standards Committeeから出された「International List of Periodical Title Word Abbreviations」による略し方が,国際標準として,一般化してきました.皮膚科領域に関係のある言葉の例を下記にあげました.御投稿の際には,これらを参考にして下さい.

連載 皮膚病理の電顕・26

付属器腫瘍(ⅩⅤ)—毛鞘嚢腫(4)

著者: 橋本健

ページ範囲:P.734 - P.737

図65毛鞘嚢腫.明調細胞(S)と不全角化細胞(PN)の境界部を更に拡大を大きくしてみると,前者は一般に明るく,一本一本のトノフィラメント(t)が明瞭にみえるに反し,後者では細胞質は暗調でトノフィラメントも束となり(T),一本一本の線維ではなくなっている.核(N)は辛うじて認識できる程度に残り,その中にリボ核酸(RNP)顆粒と考えられる粒子や,一見ケラトヒアリン顆粒と同様の物質(kn)を含む.後者は細胞質内のケラトヒアリン顆粒(k)と全く区別できず,核膜(矢尻)がやがて消失して核の内容が細胞質と混合する場合,両者は同一のケラトヒアリン顆粒と呼ばれるであろう.ケラトヒアリン顆粒の一部が核に由来するとの考えは,毛を含めて8)他の角化上皮でもいわれている.正常表皮の角化では以上の角化機転が急速に進行するため,顆粒層の一層上では既に核がなく,細胞質の一様に暗調な細胞が出現する.従って,トノフィラメントの凝集,核の壊死などをスローモーションで観察することはできない.これに反し,毛,外毛根鞘峡部,エクリン汗腺表皮内導管部(acrosyringium),乾癬などでは角化細胞の代謝が急速なために,十分に角化成熟しない細胞が下からの突き上げによって上層へ押し上げられ,従って角化機転のパノラマを見ることができる.このような不全角化細胞はトノフィラメントの凝集,側鎖による連結などによる細胞の強化が十分でなく,周辺帯(ma—rginal band)による細胞膜の補強も不十分なため,角質層を形成して重積することなく,すぐに落屑する.これは乾癬などでみられる多量の鱗屑をみれば理解できよう.外毛根鞘峡部における角化も,本図と同様な不全角化を示す細胞を多数産生するが,それらはやがて毛管内へ脱落して消失する.毛鞘嚢腫においては,その内容が既に壁を圧迫する程充満しているので,これらの不全角化細胞は重積して壁に付着し,その角化と崩壊の経過を観察できる.本図では更に多数の空胞とリゾゾーム様の小器官(*)がこれらの不全角化細胞に見られる.前者は糖原の抜けたあと,脂質などである.後者にはセメントゾームの放出されずに残留したものも含まれているであろう.×15,000

印象記

第82回日本皮膚科学会の印象記

著者: 青柳俊

ページ範囲:P.738 - P.740

 日本医学会の分科会として第82回日本皮膚科学会総会・学術大会が大阪大学教授佐野会頭のもとで,本年4月3日(日),4日(月),5日(火)の3日間にわたって開催された.特別講演2(国際交換講座を含む),シンポジウム2,教育講演10,クリニカルカンファランス2が企画されたほか,一般演題,学術展示,EnglishSpeaking Sessionをあわせ300以上の演題発表が行なわれた.大阪商工会議所7階の国際会議ホールを中心に5つの会場に分かれての学術大会であったが,全ての会場が同一ビル内にあり,各会場への移動は比較的容易でありたように思われる.
 国際皮膚科学交換講座の講演者Klaus Wolff教授はウィーン大学第1皮膚科主任教授として,臨床研究および基礎研究の分野で精力的に活躍されている方で,今回は最近話題のLangerhans細胞について講演された,1960年代から現在までプロジェクトを組んで研究を続けられており,Langerhans細胞の特微を形態学的な面と機能的な面から述べられるとともに,ETAF (epidermal cell—derived thymocyte activating factor),表皮細胞層内にみられたIa (+),Ly 5(+)が別個に標識される細胞が存在することを示された.これらはいずれもLangerhans細胞の働きを解明する上に重要なもので,本年度のヨーロッパ・アメリカ合同皮膚科研究学会(ワシントンで開催)でも話題の1つであった.Wolff教授はゆっくりと明瞭な英語で話され,口演内容も別冊で用意されていたため理解し易かった.Wolff教授は学会終了後,札幌にも立ち寄られ,学生を対象に講義をされたが,いくつかの質問に対し懇切ていねいに答えるなど非常に誠実味を感じさせるお人柄のようであった.同行されたWolff夫人もウィーン大学皮膚科で準教授として活躍されている方で,本学会においても,稀な遺伝性角化症の症例を供覧されたが,用意した口演原稿をゆっくりした英語で読まれていた.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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