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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科37巻9号

1983年09月発行

雑誌目次

図譜・491

痛風結節

著者: 堀川達弥 ,   村田洋三 ,   谷昌寛

ページ範囲:P.754 - P.755

患者32歳,男
初診昭和56年8月7日

原著

Pseudopyogenic Granulomaの1例—光顕および電顕的観察

著者: 泉谷一裕 ,   濱田稔夫 ,   鈴木伸典

ページ範囲:P.757 - P.764

要約 22歳,主婦,妊娠3カ月.約1年前より左耳介および外耳道入口部に瘙痒を伴う紫赤色,米粒大から豌豆大丘疹が4個存在しており,所属リンパ節は触知しない.組織学的に真皮上・中層に壁の増殖を伴う異常血管とリンパ球,組織球,好酸球の密な細胞浸潤を示した.電顕的には異常血管の内皮細胞は,不規則な核と無数のcytoplasmic filamentsやWeibel-Palade granuleも認められ,典型的なpseudopyogenic granulomaと考えられた.Pseudopyogenic granuloma,angiolymphoid hyperplasia with eosinophiliaの両者は臨床的,組織学的に非常に類似する所見が多いが,現時点では,臨床像,光顕所見および電顕所見に特異的な像を呈するpseudopyogenic granulomaを独立疾患としておく方が賢明であると考えた.

経過中肺への一過性浸潤を認めたCutaneous T-cell Lymphomaの1例

著者: 安田和正 ,   平野京子 ,   根本則道

ページ範囲:P.765 - P.770

 症例:75歳,男.初診:1979年8月.約半年程前より右下腿伸側ほぼ中央に鶏卵大の皮下腫瘍を認め,次第に増大し表面に潰瘍を形成してきた.病理組織学的には真皮より皮下組織にかけてびまん性の密な細胞浸潤を認めた.抗T抗体を使用した酵素抗体法,腫瘍細胞の表面形質及び電顕所見より,腫瘍細胞が末梢型のinducer/helper T-cellと同定した.初診より約2年経過して肺に突然多数の腫瘍の浸潤像を認めたが,predonine 10mg/dayの投与で2週間後には肺への浸潤像は全く消失した.その後更に1年を経過した現在,リンパ節,骨髄及び末梢血などへの腫瘍細胞の出現はみられていない.

Stewart-Treves症候群の1例—特に電顕的,免疫組織学的検索について

著者: 高橋博 ,   岡部秀子 ,   春山秀城 ,   内藤真 ,   塚原哲夫 ,   石川勝 ,   飯島進

ページ範囲:P.771 - P.777

 67歳女性の左上腕に発生したStewart-Treves症候群の1例を剖検所見を含めて報告した.組織学的にangiosarcomaの像を呈し,電顕的に管腔形成を示す腫瘍細胞は明瞭な基底膜を有し,細胞質内にWeibel-Palade body類似の桿状構造物が観察され,これら腫瘍細胞の囲りには周皮細胞と思われる紡錘形細胞がみとめられた.PAP法による第Ⅷ因子の検索で腫瘍細胞に明瞭な陽性像が得られた.以上の検索結果より,本症例の腫瘍細胞に血管内皮細胞の性格が示され,本腫瘍が血管内皮由来であることが示唆された.本症の病態につき若干の文献的考察を試みた.

脊髄腫瘍を伴った潜在性二分脊椎による足穿孔症

著者: 竹中緑 ,   井上多栄子 ,   島雄周平 ,   川上俊文

ページ範囲:P.779 - P.783

 58歳,女性.初診時,右踵部に周辺部過角化を示す27×14×7mmの穿孔性潰瘍があり,両膝関節以下の全知覚障害と神経因性膀胱を伴っていた.腰仙部正中に皮膚の陥凹があり,腰椎単写でL5に潜在性二分脊椎をみとめ,腰部脊髄造影にてL4〜S1の脊髄腫瘍をみとめた.CTにてL4〜S2の潜在性二分脊椎とL4〜S1にかけて脊椎管後部寄りにlow densityで,均一のmassを認めた.脊髄腫瘍を伴った潜在性二分脊椎による症候性足穿孔症と診断し,全麻下に脊髄腫瘍の亜全摘出術をおこなった.術後,一時的に潰瘍の上皮化がみられたが,再発した.

Balloon Cell Nevusの1例

著者: 稲田修一 ,   功野泰三 ,   松林由希子 ,   片岡和洋 ,   岡野伸二 ,   菊川洋祐

ページ範囲:P.785 - P.788

 22歳,女性の腹部に生じたballoon cell nevusの1例を報告した.肉眼的には母斑細胞性母斑(複合母斑)と診断された.組織学的には複合母斑病巣にとりかこまれる様に胞体が大きく泡沫状を呈するballoon cellの増殖巣が真皮全層にあり,かかる病巣は腫瘍の60%以上を占めていた.Balloon cellは通常の母斑細胞との移行を示し,パラフィンブロックからのもどし電顕でmelanosomeと見做されるdense bodyを有し,母斑細胞に由来すると考えられた.

生前に肺病変を確認した菌状息肉症

著者: 重本圭子 ,   姉小路公久 ,   田口洋 ,   鈴木恒道

ページ範囲:P.789 - P.794

 55歳,女.25年前,乾癬様皮疹で始まり,皮疹の一進一退をくり返しつつ,末期の2年間に急速に皮疹が拡大,増悪し,腫瘤,潰瘍形成がみられ,多剤併用化学療法(COP,メソトレキセート)及びデルモパン療法を試み,皮膚症状は一時軽快したが,その後皮疹の再燃,著明な肺病変が出現し死亡した菌状息肉症の1剖検例を報告した.本症例の肺病変は,左肺野のcoin lesionに始まり,左肺門影の拡大,肺門部気管支周囲リンパ節腫大へと進展し,気管支鏡下生検により菌状息肉症の肺病変であることを確診し,COP療法,コバルト照射により,一時陰影の縮小がみられたが,その後再び肺門腫瘤影の増大,右肺にも浸潤影が出現し,末期には胸水貯留を伴うなど,多彩なX-P所見を呈した.生前に本症の肺病変が確診されることは稀であるが,本症に肺病変をみた場合には,治療上からも,生検による組織学的診断が必要と思われる.

血漿交換療法を施行した落葉状天疱瘡の1例

著者: 古賀美保 ,   清佳浩 ,   樋口道生 ,   滝内石夫

ページ範囲:P.795 - P.799

 通常のステロイド内服による治療が,その副作用のために,きわめて困難であった落葉状天疱瘡に対し,血漿交換療法を施行し,その症状の改善とともに,ステロイド剤の減量が容易に出来た症例について報告し,現在,皮膚科領域においておこなわれている血漿交換療法について,自験例の特微的所見を交えながら,その目的と方法,それに伴う血清抗体価の変動,副作用,臨床効果等について考察した.

水疱性類天疱瘡—自験10例の報告と水疱型,小水疱型の比較

著者: 三橋善比古 ,   橋本功 ,   帷子康雄 ,   古川隆 ,   野村和夫 ,   伊藤泉 ,   門馬節子

ページ範囲:P.801 - P.806

要約 水疱性類天疱瘡の10例を報告した.うちわけは男8例,女2例で年齢は50歳から88歳まで,平均72歳であった.Chorzelskiらの臨床分類に従い,水疱型6例,萎縮・瘢痕を伴う水疱型1例,小水疱型3例に分け,水疱型と小水疱型の相違について検討したところ,以下の点が明らかとなった.1)水疱型は全例70歳以上と高齢で,瘙痒は認めないか,あっても軽度のものが多いのに対し,小水疱型は3例とも50歳台で,激痒を伴い,2)臨床検査所見で水疱型は赤沈亢進が6例中4例,CRP陽性(1+〜4+)も4例に対し,小水疱型では3例とも赤沈,CRPに異常を認めなかった.3)組織所見で,小水疱型は著しく好酸球優位の細胞浸潤がみられ,2例で真皮乳頭に微小膿瘍を認めた.4)免疫螢光法所見,電顕所見およびDDSに対する反応性では特に差はみられなかった.

妊娠性疱疹の1例—本邦38症例の統計的考察

著者: 佐藤恵 ,   許培炘 ,   黒田啓美 ,   堀恵二 ,   昆宰市

ページ範囲:P.807 - P.812

 26歳妊婦の第2子妊娠24週に,ジューリング疱疹状皮膚炎様皮疹をもって発症した妊娠性疱疹の1例を報告した.組織は表皮下水疱,螢光抗体直接法で表皮基底膜にC3の沈着を認めた.電顕では基底細胞とbasal laminaの間に空隙を形成,細胞間のdesmosomeの減少ないし消失が認められた.臨床検査ではE3の低値があった.妊娠36週で早産した.なお,既往歴で,第1子妊娠時に多形滲出性紅斑様皮疹を発生していた.
 現在まで報告された38症例の文献的考察では比較的高年妊婦(平均29.6歳)に多く,妊娠4ヵ月以降の発症が33例と圧倒的に多かった.初回妊娠に発症したのが17例で,2回目以後の妊娠に発症したのが14例であった.臍部に初発,ついで躯幹,四肢に多形滲出性紅斑様皮疹をみることが多く,38例中6例は早産の報告であった.

Cicatricial Pemphigoid of Brunsting & Perryの1例

著者: 大畑力 ,   高垣謙二 ,   地土井襄璽

ページ範囲:P.813 - P.817

要約 64歳,女子.初診の約3,4年前より冬期になると,下肢,腹部に痒疹様皮疹をみとめるようになった.瘙痒が著明で掻破により,びらん,痂皮形成を繰り返していた.初診の7カ月位前より,頭頸部,躯幹,四肢に同様な皮疹が生じ,掻破によりびらん,痂皮となり,その辺縁に水疱を生じ表在性瘢痕を残すようになった.喉頭蓋に一過性に水疱をみとめたが,瘢痕を残すことなく治癒した.組織学的に表皮下水疱を形成し,免疫螢光抗体法にて,皮疹増悪時に直接法で基底膜に一致してIgG,C3の沈着を,間接法にて抗基底膜抗体(IgG,32倍)をみとめた.
本症例を,cicatricial pemphigoid of Brunsting & Perryと診断し,その発症に自己免疫機序の関与を考えた.

慢性肝障害,糖尿病を伴った粘液水腫性苔癬の1例

著者: 石井康子 ,   町田暁 ,   大城戸宗男

ページ範囲:P.819 - P.822

 62歳,女性.頸項部,背部,前胸部,腰部,更に顔面の一部に,白色または淡褐色の丘疹の集籏および淡紅色の硬い浸潤局面を認め,組織検査にて真皮上層にムチンの沈着をみ,粘液水腫性苔癬と診断した.また,この症例は慢性肝障害,糖尿病を伴ったが,M—蛋白は陰性であった.これまでにわが国で報告された本症の症例を検討すると,合併症としては肝障害が最も多く(43%),次いで糖尿病が比較的高頻度(17%)に認められた.これに対して検査所見でM—蛋白陽性症例は少かった(12%).一方,欧米においてはM—蛋白陽性の報告が多く,本症の発生機序とM—蛋白の存在とを関連づける報告もなされており,この点に関して若干の文献的考察を行った.

多発性神経炎,内分泌異常を伴った全身皮膚色素沈着(いわゆる高月病)

著者: 野村和夫 ,   松木哲文 ,   小川俊一 ,   大道寺七兵衛

ページ範囲:P.823 - P.827

 近年,色素異常,内分泌異常,多発性神経炎などを呈する症候群が注目されており,その本態はplasma cell dyscrasiaと考えられているものの未だ不明の点が多い.今回著者らは本症と考えられた1例を報告し,本症における皮膚症状は間接的デルマドロームであり,十分な診断的意義を有するものであることを強調した.
 症例は63歳,男.初診1年半前より全身びまん性に褐色の色素沈着出現.特に乳暈で著明であり,また口腔内,手掌皺にもみられる.爪蒼白,下肢にいわゆる剛毛,躯幹に血管腫様病変もみられ,また,るいそう著明で腹水も伴っている.同時に多発性神経炎,エストロゲン上昇などの内分泌異常を認める.ステロイドおよびエンドキサン投与により,全身状態は著しく改善,それにつれて色素沈着,爪蒼白などの軽快をみた.

ベルロック皮膚炎の1例

著者: 高橋仁子 ,   松尾聿朗 ,   柿島博

ページ範囲:P.829 - P.831

 34歳,女性,事務員.患者はコロン水をスプレーで両耳の後ろにつける習慣があった.昭和57年6月,突然両側頸部の色素沈着に気づいた.常用コロン水2種の分析により,bergapten(5-methoxypsoralen),tonalide,musk keton,2-acetonaphtonなどの光増感物質が検出された.患者と正常対照者2名にコロン水2種と,検出された上記物質の光貼布試験を行った.患者ではbergapten含有コロン水とbergaptenに,対照者ではbergaptenにのみ光毒性反応を認め,本症例をbergapten含有コロン水による光毒性反応と考えた.近年では稀な古典的ベルロック皮膚炎の1例を報告した.

リシノール酸による口紅皮膚炎

著者: 崔洙公 ,   永井隆吉

ページ範囲:P.833 - P.835

 さきにわれわれは"ヒマシ油による口紅皮膚炎"と題して特異な症例を内外に報告した.口紅による接触皮膚炎でallergenがヒマシ油であったという報告は,これまで皆無であった.そこでさらに一歩進めて,ヒマシ油中のいかなる成分がallergenであるのかを追究してみた.当初は見当もつかなかったが,その後のパッチテストにより,これがリシノール酸であることを明らかにすることができたので報告する.

編集室だより

雑誌名の省略について

著者: 「臨床皮膚科」編集室

ページ範囲:P.812 - P.812

 最近,引用文献に掲載される雑誌名の略称は,1970年にAmerican National Standards Committeeから出された「International List of Periodical Title Word Abbreviations」による略し方が,国際標準として,一般化してきました.皮膚科領域に関係のある言葉の例を下記にあげました.御投稿の際には,これらを参考にして下さい.

連載 皮膚病理の電顕・27

付属器腫瘍(XVI)—毛鞘嚢腫(5)

著者: 橋本健

ページ範囲:P.836 - P.840

 図67毛鞘嚢腫(trichilemmal cyst)が果して外毛根鞘の峡部より発生,またはそれに向った分化を示す腫瘍であるかは,前回までの記述で完全に納得できたとは考えられない.両者の角化機転が電顕のレベルで似ていることを示す必要があり,以下この点に触れる.本図AとBでヒトの外毛根鞘峡部の角化を示し,図68AとBで峡部より少し下部で内毛根鞘が未だ脱落しない部分を示すことにする.
 図67Aでは非常に薄い2,3層の角質層(H)に分化したヒトの外毛根鞘峡部がみられる.この部分の角化に特異的な所見として,ケラトヒアリン顆粒の産生不全,多房性のセメントゾーム(*)の産生,糖原顆粒(g)の存在などがみられる.セメントゾームのあるものは典型的な層板構造を含む(矢尻)が,他のものは多房性或は電子密な物質を含むのみで層板構造は著明ではない.これらはむしろリゾゾームに類似する.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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