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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科38巻1号

1984年01月発行

雑誌目次

図譜・495

Alopecia Mucinosa

著者: 木花光 ,   岩崎弘幸 ,   石川謹也 ,   佐藤健

ページ範囲:P.6 - P.7

患者2歳,女子
初診昭和56年9月28日

原著

Eruptive Cellular Naevi

著者: 山本綾子 ,   坂本ふみ子 ,   鷲尾勝

ページ範囲:P.9 - P.16

 16歳,女子にみられたeruptive cellular naeviの本邦第1例と思われる症例を報告した.本例は1年前より誘因なく.背部から大腿にかけて多発性の皮疹が出現した,新しい皮疹は淡紅色の柔らかい小丘疹であるが,数週から数カ月の経過で扁平化し,色調も茶褐色へと変化する.その性状から皮疹をtype 1〜3の3型に分類し,おのおのの組織学的,電顕学的特徴を検討した.電顕的には腫瘍細胞は大型の不整形の胞体に変形の強い,一部に切れ込みや偽性核封入体のみられる核を有し,羽毛状からellipsoid型のeumelano—someと,inner lamellar structureを有さないかあるいは不完全なメラノソームが共存し,melanosome complexも存在するなど特異な所見を示した.

列序性配列を示す網状色素沈着症の1例

著者: 長尾貞紀 ,   佐藤紀夫 ,   飯島進

ページ範囲:P.17 - P.22

 8歳,女児の躯幹・四肢に列序性に配列する網状の色素沈着症の1例を報告した.本症例は3〜4歳頃右前胸部に色素斑を生じ,徐々に増加した.自覚症はなく,17歳まで全身状態は良好である.個疹は1〜5mm×7〜10mm大の境界明瞭な淡褐色斑で,その色調は単一で濃淡は殆どなく,わずかに陥凹している.これらは互いに融合して網状を呈し,躯幹では帯状に,四肢では線状に配列している.組織学的に表皮のメラニン増加がある.手背・足背は正常である.本症例を鑑別すべき疾患と比較検討したところ,これまで自験例のような症例の報告はみられないので,ここにこれを列序性網状色素沈着症(仮称)として記録した.

大量の消化管出血を来した弾力線維性仮性黄色腫の1例

著者: 坪井良治 ,   石橋明 ,   藤田恵一 ,   広木忠和 ,   高橋淳

ページ範囲:P.23 - P.27

 原因不明の大量下血にて入院し,皮疹と眼底所見からpseudoxanthoma elasticum(PXE)と診断された35歳,女性例を報告した.入院後の緊急内視鏡所見から,この大量消化管出血は系統的な弾力線維の異常によって血管壁が脆弱となり,胃壁の小動脈が破裂したため起こったと考えられた.

爪床部に生じたEpidermal Cystの1例—爪床部表皮とのSH基,S-S結合の動態の比較について

著者: 高橋喜嗣 ,   手塚正

ページ範囲:P.29 - P.33

 35歳の男性,左示指爪甲下に生じた大豆大の腫瘤.病巣部のX線検査により,左指末節骨の背面,中央部に骨侵蝕像がみられる.その臨床像のみでは初診時診断が困難であったが,手術時所見組織学的所見から,爪甲下に生じたepidermal cystである.組織学的にはcpidermal cystである事は明白であるが,しかし,顆粒層の存在する部位と欠如する部位とが混在する.DACM染色のパターンを通常の表皮嚢腫,正常爪床部表皮(爪中央部),毛包のtrichilemmal角化部と比較したところ,通常の表皮嚢腫に最もよく類似している.治療は爪甲部を剥離し,腫瘤摘出術を実施した.

Granular Cell Tumorの2例

著者: 高橋正明 ,   角田孝彦 ,   石河知之 ,   工藤浩三郎 ,   石館卓三

ページ範囲:P.35 - P.39

 Granular cell tumorの2例を報告した.第1例は慢性刺激部位に生じたもので,第2例は悪性黒色腫に併発したものであった.本症の発症因子として外傷,慢性刺激,内分泌系の影響を考えるとともに,本症組織中に見られるangulate bodyについて文献的に考察した.

皮膚T細胞性リンパ腫(菌状息肉症)の21例

著者: 長谷哲男 ,   宮本秀明 ,   中嶋弘 ,   永井隆吉 ,   飛内賢正 ,   湊啓輔 ,   下山正徳

ページ範囲:P.41 - P.49

 1973年から1982年までの10年間に,菌状息肉症と診断された症例は21例であった.紅斑期9例,扁平浸潤期6例,腫瘍期6例であった.これらは,初診時にすでに各段階に至っており,経過観察中に進展した症例は,現在のところ1例もなかった.初診時の年齢は紅斑期,扁平浸潤期,腫瘍期となるにつれ上昇した.紅斑期の症例は,神奈川県出身者がほとんどであったが,他のものは全国に亘っていた.抗ATLA抗体は,測定した5例すべて陰性であった.浸潤細胞は,腫瘍期になるほど大型化し,核のくびれも著明となっていた.単クローン抗体により表面膜性状を検討してみると,T3,T4型を示した.

痔瘻癌の1例

著者: 大西一徳 ,   前田秀文 ,   石川英一

ページ範囲:P.51 - P.55

 65歳,男性の長期にわたる臀部の痔瘻に生じた,非皮膚由来の粘液癌,いわゆる痔瘻癌の1例を報告した.組織像で自験例は一見,Mendozaらの報告した皮膚原発のmucinous (adenocystic) carcinoma of the skinに類似し,嚢腫内物質は組織化学的にシアロムチンと同定された.しかし,腫瘍細胞が円柱上皮で嚢腫構造が明瞭であったこと,及びReidらの記載に準じて行なったPB/KOH/PAS反応でO-acylated sialic acidsの存在が推測されたことより直腸粘膜由来が考えられた.

慢性放射線皮膚炎上に生じたエックリン汗腺癌

著者: 加藤一郎 ,   向井秀樹 ,   伊藤篤 ,   金丸哲山 ,   神崎保 ,   太田幸宏

ページ範囲:P.57 - P.60

 耳下腺腫瘍の放射線療法後数十年を経て,その慢性放射線皮膚炎上にエックリン汗腺癌を生じた症例を経験した.最近の報告では慢性放射線皮膚炎上に生じる皮膚腫瘍としては基底細胞上皮腫が圧倒的に多く,その他,扁平上皮癌・ケラトアカントーマ・悪性黒色腫・隆起性皮膚線維肉腫などがみられるが,汗器官腫瘍発生の報告は見当たらない.今回我々は症例報告をなすと共に,その発症機序及び放射線照射と皮膚腫瘍につぎ若干の考察をなした.

Morphea-like Basal Cell Epithelioma

著者: 四本秀昭 ,   下川優子 ,   酒井和彦 ,   田中隆光 ,   田代正昭

ページ範囲:P.61 - P.63

 皮膚科領域の悪性腫瘍の中で,基底細胞上皮腫(BCE)は我々が比較的よく遭遇する疾患である.しかし,mophea-like BCEはBCEの中では稀とされている.我々は37歳,女性の右頬部に生じたmorphea-like BCEを経験したので報告した.又,morphea-likeBCEの本邦報告例19例を集計し臨床症状,治療について検討した.本邦例においては,色素沈着,潰瘍化する症例の比較的多いことが特徴であると考えられた.本症では腫瘍が真皮深層や筋組織へ浸潤する傾向が強いことが特徴の一つとしてあげられているが,推定発症時より3年程度迄の症例では腫瘍細胞が真皮網状層にとどまっていることが多く,又,10年以上経過した症例では真皮深層や皮下脂肪組織へ浸潤している例が多く,本症の治療上,罹病期間が切除範囲を決める上で一つの指標となると考えた.

表在性平滑筋肉腫の1例

著者: 石倉多美子

ページ範囲:P.67 - P.71

 症例は53歳の男で,8年前に右下腿に本腫瘍(平滑筋肉腫)を生じ,切除後再発したものである.組織像は定型的で,真皮全層に亘って腫瘍塊があり,それは種々の方向に走る大きな束の集まりから成る.腫瘍細胞は細長く,核は先端鈍の腸詰状で異型性が強く,核分裂像も多い.胞体は豊富でアザン染色で赤染し,鍍銀染色で「箱入り像」がみられた.なお.本腫瘍のわが国における報告例(自験例を含めて30例)について集計を試みた.

Alopecia Triangularis

著者: 崔洙公 ,   中嶋弘 ,   三宅淳一

ページ範囲:P.73 - P.76

 Alopecia triangularisは,日本では先天性側頭部脱毛症とも呼ばれているが,未だに馴染みの薄い病名である.前頭側頭縫合線上にみられるほぼ三角形の脱毛巣であり,該部には毛髪を欠く以外に,肉眼的には何の異常も認められない.病理組織学的には,これまで外国で2例の報告がみられるだけであった.われわれは,最近本症に遭遇し,その病理組織像を検討した結果,毛嚢が索状のヒアリン物質におきかえられている像,ならびに,cystic changeをきたした毛嚢と考えられる多数の嚢胞像が認められた.これらの所見は,これまでに記載されていない新たな知見と思われるので報告する.

スメアおよびスタンプ標本中に多数の菌要素を認めたSporotrichosis

著者: 楠俊雄 ,   野崎昭 ,   原田誠一

ページ範囲:P.77 - P.80

 一般に皮膚スポロトリコーシスにおいては,組織内菌要素の検出が他の皮膚真菌症に較べて困難であるとされている.今回,我々は皮膚固定型と皮膚リンパ管型スポロトリコーシスにおいて,生検時に作製したスメアPAS染色標本とスタンプPAS染色標本中に多数の菌要素を認めた.皮膚固定型スポロトリコーシスからのスメア標本中には,多数の大小の円形胞子,buddingしている胞子,germ tubeや細長い菌糸を伸ばしている胞子,さらに巨細胞中で菌糸を伸ばしている胞子などが認められた.皮膚リンパ管型スポロトリコーシスからのスタンプ標本中には星芒体を思わせる菌要素を多数認めた.細胞診の方法を用い,比較的容易にSporothrix schenckiiの多彩な形態を観察できたので報告する.

皮膚の非定型抗酸菌症(Fish Tank Granuloma)—特に組織学的所見について

著者: 安間嗣郎 ,   斎藤脩 ,   乾道夫 ,   真田妙子 ,   黒田和夫

ページ範囲:P.81 - P.85

 自験例2例を含めて27例のM.marinum感染症(fish tank granuloma)に於ける病理学的所見について述べた.同時に特異性炎と非特異性炎の所見を認めることが多く,まれには非特異性炎の所見のみを認めることもある.結核結節を形成する場合は,孤立性のものが目立ち,乾酪壊死を伴わないことが多い.臨床経過の初期に非特異性炎を示し,その後,特異性炎の所見を示す明らかな傾向はみられなかった.

編集室だより

雑誌名の省略について

著者: 「臨床皮膚科」編集室

ページ範囲:P.49 - P.49

 最近,引用文献に掲載される雑誌名の略称は,1970年にAmerican National Standards Committeeから出された「International List of Periodical Title Word Abbreviations」による略し方が,国際標準として,一般化してきました.皮膚科領域に関係のある言葉の例を下記にあげました.御投稿の際には,これらを参考にして下さい.

連載 皮膚病理の電顕・31

付属器腫瘍(XX)—脂腺癌(3)

著者: 橋本健

ページ範囲:P.86 - P.88

 図76原発巣.正常に分化した脂腺細胞や正常に角化した導管の細胞は,癌化した組織にはないのであろうか?これらの細胞は量的には少ないが存在する.特に完全に分化した脂腺細胞を示すことができれば,診断は確定するので一層の努力を払う価値がある.木図で示した細胞は,ほぼ完全に脂質化した脂腺細胞といえる.先ず細胞の中心にある核(N)が濃縮して(pyknosis),電子密度が増加している.大きな核小体(n)の存在は,この細胞が悪性変化したものであることを示唆する.細胞質は図74で既に観察した脂質の小滴(l)が融合した大きな脂胞(L)でほぼ完全に占められ,蜂窩状にみえる.その隔壁にトノフィラメント(t)が残存しているが,その発達は正常脂腺細胞にみられる如く非常に不十分である.この細胞が貪食細胞でない証拠として,数個のデスモゾーム(矢尻)が細胞周辺に散見される.挿入図では小脂滴(*)を含む脂腺細胞に混じって,ほぼ完全に角化した細胞(K)がみられる.脂腺導管部の細胞は表皮細胞の如く完全に角化することは稀で,その中にトノフィラメントが認識され,且つ脂滴を含む.即ち一個一個の細胞はこの細胞に一致する.
×12,000挿入図×5,000

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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