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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科38巻10号

1984年10月発行

雑誌目次

図譜・504

梅毒性蠣殻疹

著者: 楠俊雄 ,   野崎昭 ,   原田誠一 ,   池谷精司

ページ範囲:P.914 - P.915

患者40歳,男子,調理士
初診昭和56年12月7日

原著

多様性ポルフィリン症の典型例

著者: 池澤善郎 ,   亀田洋 ,   塩之入洋 ,   大森薫

ページ範囲:P.917 - P.923

 31歳,女性.長期間にわたるバルビツール酸系薬剤,ピラゾロン系薬剤の連用および約半年間のホルモン療法などの薬剤によって発症したと思われる多様性ポルフィリン症(VP)を経験した.当初は多彩な腹部神経症状が出没し,その経過中にさらに循環器精神症状および皮膚光線過敏症を併発した.ポルフィリン(ポ)体の検査では赤血球のポ体が陰性で,糞便中のプロトポルフィリン(PP)とコプロポルフィリン(CP)が発症期,緩解期にかかわらず一貫して多量に排泄されていた.家系のポ体検査でも,1人の兄の糞便中に多量のPPとCPが認められた.以上より本症例は,臨床的にもポ体の代謝面からも典型的なVPと診断された.
 本症例の皮膚症状は肉眼的にも組織学的にも,遅発性皮膚ポルフィリン症(PCT)のそれと同じであり,ポ体の代謝はPCTと異なるが,本症の皮疹の発症機構には基本的にPCTと同じ機序が働いているものと思われた.

転移性結核膿瘍

著者: 土屋喜久夫 ,   白取昭 ,   安田耕一郎 ,   国分一郎 ,   足立柳理 ,   寺島嘉昭 ,   佐藤幹弥

ページ範囲:P.925 - P.931

 頸部リンパ節結核の治療歴ある40歳男で,今回,左膝関節結核として再燃をみ,その後,菌の血行散布により,四肢,腰,副睾丸に結核膿瘍の多発をみた転移性結核膿瘍の1例を報告した.本症例は,ツ反中等度陽性も,DNCB感作不成立,カンジダ,SK-SD皮内テスト陰性,PHA, Con Aによるリンパ球幼弱化試験の著しい低値およびLeuシリーズでのリンパ球表面マーカーの解析で,Leu 4(末梢T細胞・胸腺細胞),Leu 2 a (サプレッサー・細胞障害T細胞)は著しく減少しており,細胞性免疫は低下していた.SM,INH, RFPによる三者併用療法を行なったが,腰部膿瘍は下方へ移動し,巨大膿瘍化し,いわゆる流注膿瘍を形成した.

クリオグロブリン血症性紫斑

著者: 加藤一郎 ,   斉藤隆三

ページ範囲:P.933 - P.935

 肝硬変症を有する49歳男子にみられたクリオグロブリン血症性紫斑の1例を報告した.検出されたクリオグロブリンはIgG-lgM mixed typeである.臨床的にアナフィラキシー性紫斑に類似し,組織学的には細小血管の壊死性血管炎の像を呈する.治療として2回にわたり血漿交換療法を施行し,一時的に紫斑の消褪をみた.血管炎の原因としては,クリオグロブリンを含んだ循環免疫複合体の存在が想定される.Schonlein-Henoch purpuraとの差違についても若干の考察をなした.

Lupus Erythematosus Profundusの2例

著者: 島本順子 ,   岡野伸二 ,   片岡和洋 ,   水野正晴 ,   瀬分秀伸 ,   山本昇壯

ページ範囲:P.937 - P.941

 Lupus erythematosus profundusの2例について,主として血清学的,免疫組織学的検討を行なった.1例でSLEの合併がみられたが,他方ではSLEおよびDLEの合併は認められなかった.組織学的には両者とも真皮下層から皮下組織にかけて,リンパ球を主体とする炎症細胞浸潤がみられ,一部には胚中心を伴うリンパ濾胞様構造も散見され,さらに1例では筋にも同様の病変が得られた,免疫組織学的には2症例ともlupus band test陽性であり,さらに興味ある点は筋線維周囲に免疫グロブリン沈着がみられたことである.

家族性高脂血症Ⅱa型Hetero接合体

著者: 北孝子 ,   濱田稔夫

ページ範囲:P.943 - P.946

 3歳,女児.2歳頃より手関節部に黄色調の扁平な丘疹状小局面が出現し,徐々に大腿部,膝膕部に拡大した.臨床検査成績では,血清は清澄,血清総cholesterol,β—lipoprotein, LDLは高値を示すが,triglycerideは正常.その他に異常所見を認めない,皮疹の組織像では真皮に泡沫細胞の浸潤がみられる.母に眼瞼黄色腫があり,母と母方の家系2人に高cholesterol血症が存在することより家族性高脂血症Ⅱ a型hetero接合体と診断した.治療として患児および母親に,胆汁酸再吸収阻害剤であるcholestyramineを投与し,血清cholesterol値の減少とともに皮疹の拡大傾向もみられなくなった.

平滑筋肉腫の皮膚転移

著者: 橋爪鈴男 ,   久保和夫 ,   徳橋至 ,   下田祥由 ,   袖本幸男 ,   牛込新一郎

ページ範囲:P.947 - P.953

 患者は43歳,女性で,3年半前に子宮筋腫の診断のもとに子宮全摘術をうけている.初診3〜4カ月前に数個の小豆大までの頭皮下結節に気づき来院.リンパ節は触知せず.転移性皮膚腫瘍の診断にて生検を行なった.皮下病巣は分化度の高い平滑筋肉腫で,紡錘形細胞の集簇からなる境界鮮明な結節として認められた.腫瘍細胞は不規則,相互に交錯する束状構造をつくり,非常に密に増殖していた.核は比較的異型性に乏しいが,核分裂像をかなり認めた.酵素抗体法にてミオシン染色は陽性を示した.微細構造的にも平滑筋細胞構造を呈しており,平滑筋肉腫の皮膚転移と診断した.両肺に多発性転移を認めた.子宮筋腫とされた組織の再検討にて,子宮原発と考えた.平滑筋肉腫の皮膚転移は,皮膚科領域ではきわめて稀であり,文献的検討を行なった.その結果,頭部への転移が比較的多いことや,転移時期は他の悪性腫瘍に較べ,やや遅いことなどが認められた.

関節性乾癬にみられた金疹の1例

著者: 千代谷成史 ,   田崎理子 ,   高橋正明 ,   花田勝美 ,   亀田忠孝

ページ範囲:P.955 - P.958

 52歳,男性.関節性乾癬に対しPUVA療法,金療法施行.金投与総量125 mgの時点でバラ色粃糠疹と膿疱様皮疹新生.組織学的にはそれぞれ非特異的炎症像,典型的乾癬像を示した.金の貼布試験,皮内テストおよび金によるリンパ球幼若化反応はいずれも陰性.バラ色粃糠疹様皮疹部と無疹部の皮膚組織および毛髪内金濃度では,皮疹部,無疹部ともに真皮より表皮に蓄積量が多く,真皮では皮疹部に多かったが,毛髪では投与前後で差はなかった.このことより金疹の発生には金の組織内沈着が何らかの形で関与していることが考えられ,金蓄積の指標としての毛髪分析は有用な手段とならないことが示唆された.

Dermatitis Herpetiformis Duhringの1例

著者: 梶田哲 ,   大熊憲崇 ,   岸山和敬 ,   大河原章 ,   坂下茂夫

ページ範囲:P.959 - P.962

 螢光抗体直接法にて,紅斑部および無疹部ともにIgAが光顕的真皮・表皮接合部にlinearな沈着を示した27歳,男性の症例を報告した.Lamina lucidaに局在するlamininに着目し,本症例および水疱性類天疱瘡(以下BPと略)症例1例において,抗laminin抗体を用いた螢光抗体間接法を施行した.その結果,本症例においては,lamininによる螢光が初期水疱部では水疱蓋・水疱底の両側に認められ,またBP症例においては,水疱底にのみ螢光が認められた.以上の所見より,本症例の水疱形成はlamina lucida内で起こり,BPよりも下方であると推定した.

子宮体癌の広範な皮膚転移症例—転移病巣の局所酸素分圧について

著者: 大崎正文 ,   宇都宮卓二 ,   林久 ,   重見文雄 ,   武田克之

ページ範囲:P.963 - P.966

 57歳女子患者で子宮体部癌が広範囲に皮膚転移し,転移病巣の局所酸素分圧が著しく低下していたので報告した.

Fibrous Papule of the Noseの2例—興味ある組織像を伴った1例を含めて

著者: 木村俊次

ページ範囲:P.967 - P.971

 症例1:50歳,男.右鼻翼部に10年来ポリープ状腫瘤が単発.直径7mm,高さ10mm,弾性軟,常色,表面ほぼ平滑で自覚症を欠く,組織像:表皮はbasal melanosisと大型明調細胞,真皮は大小の血管増生・拡張,血管・毛嚢周囲性層状膠原線維増生,星形や2核の結合織細胞あり.この他,特筆すべき所見としてコロイド小体形成と表皮直下の基底細胞様細胞小塊とを認めた.
 症例2:32歳,家婦.鼻尖に9カ月前丘疹出現し,その1カ月後に消失した,同部に1カ月来再び丘疹出現し漸次増大.直径3mm,高さ1.5mm,紅色,硬,表面平滑,ドーム状で自覚症なし.組織像:症例1に比べて表面のbasal melanosis少なく,逆に真皮では小血管増生・小円形細胞浸潤が目立ち,2〜4核の結合織細胞も多数存在する.
 症例1,2ともマスト細胞が軽度増加する.Fibrous papule of the noseの内外報告例を集め,本症の位置づけを論じた.

特異な組織所見を呈した脂腺母斑の2例

著者: 城戸邦彦 ,   岩井雅彦

ページ範囲:P.973 - P.979

 症例1:53歳,女性.左側頭部の脂腺母斑の局面内に,約25年前から,二次性腫瘍が発生.病理組織学的検査の結果,径5mmの疣状結節はpilar tumor of the scalp,2個の黄色結節と2個の皮内結節はpilar cystであり,いずれも本症の二次性腫瘍としては極めて稀な種類であった.
 症例2:20歳,男性.前頭部の疣状,淡黄色局面において,典型的organoid nevusの組織所見とともに,病巣内の一部のアポクリン腺の腺腔内に充実性ないし泡沫状の細胞質を持つ細胞集団が認められた.この所見は乳腺症のアポクリン上皮化生でみられる所見に類似しており,発生学的に近縁関係にあるアポクリン腺と乳腺において,このような類似の所見がみられる点,興味深く思われた.

陰茎に単発した神経鞘腫の1例—特にS−100蛋白染色について

著者: 西尾達己 ,   森理 ,   加治英雅

ページ範囲:P.983 - P.986

 陰茎に単発した神経鞘腫の1例を報告し,本邦皮膚科領域で発表された96例と併せて統計的観察を行なった.症例は19歳男性で,約8年前より陰茎体に丘疹を認め,漸次大きくなった.組織学的には,真皮内の溝い線維性被膜に囲まれる腫瘍でVerocay bodyも存在する.Bodian染色は陰性,alcian blue染色は弱陽性.PAP法によるS−100蛋白の染色では腫瘍細胞のほとんどすべてが陽性で,neurofibromaとは染色パターンに差がみられた.
 統計上では単発59例,多発38例で,多発例は男性に多く,発症年齢が低く,他臓器にも腫瘍の合併する例が多かった.これらの点から,多発性神経鞘腫は先天的な神経系の奇形的変化を基盤とする母斑症の1症状と考えられる.

Pseudoglandular Squamous Cell Carcinomaの1例

著者: 岩井雅彦 ,   田中洋子 ,   藤澤龍一

ページ範囲:P.987 - P.990

1)症例:65歳,男.約2カ月前から右耳前部に発生した,直径1cmの紅褐色,弾性硬のドーム状腫瘍.中央部は陥凹してびらん面を形成し,臨床的にはkeratoacanthomaに類似.
2)病理組織所見では,被覆表皮の一部から連続した角化傾向の強い異型性のある有棘細胞の著明な増殖がみられ,胞巣の諸所において,1〜数層の壁を有する腺腔様構造を呈し,内部には,acantholytic, dyskeratotic様の細胞が存在.
3)体外培養所見でも,本腫瘍細胞は角化傾向が強く,分離傾向を示す性格を有し,長期培養(75日目)では,fibroblastにとり囲まれ変性する傾向を示したが,一方では再増殖した.
4)自験例を含む本邦報告例47例につき,臨床所見と組織発生について総括した.

Lentigo Maligna Melanomaの2例

著者: 佐藤千鶴 ,   小林まさ子

ページ範囲:P.991 - P.994

 68歳,78歳の女性.どちらも数年前より顔面に自覚症状のない褐色斑があり,その後徐々に増大し,隆起ないし浸潤を伴う黒色斑が出現した.組織学的には,色素斑部では明るい大きな胞体をもった楕円形の細胞を基底層に認め,一部で胞巣を形成,腫瘤部ないし黒色斑部では基底層から真皮に及ぶ紡錘形の腫瘍細胞の増殖を認めた.両者共にlentigomaligna melanoma, level IVと診断した.また,顔面に発生したLMMの過去の報告例に自験例を加えた22例に関して,若干の文献的考察を行なった.

編集室だより

雑誌名の省略について

著者: 「臨床皮膚科」編集室

ページ範囲:P.931 - P.931

 最近,引用文献に掲載される雑誌名の略称は,1970年にAmerican National Standards Committeeから出された「International List of Periodical Title Word Abbrcviations」による略し方が,国際標準として,一般化してきました.皮膚科領域に関係のある言葉の例を下記にあげました.御投稿の際には,これらを参考にして下さい.

連載 皮膚病理の電顕・39

表皮水疱症(III)

著者: 橋本健

ページ範囲:P.996 - P.997

 図89致死型表皮水疱症(致死型水疱性表皮解離症) Epidermolysis bullosa letalis (Herlitz)といわれる型は,その重症度において前述の単純型の比ではない,殆どの症例が生下時既に多数の巨大な水疱あるいは糜爛面を示す.これは産道を通過する際に摩擦によって生じたもので,人工的にも正常にみえる皮膚をこすると水疱が生ずる.授乳の際に生ずる摩擦によって口腔粘膜にも潰瘍が生ずるため,チューブや非経口的栄養が必要となり,嚥下性肺炎,栄養障害,糜爛面の二次感染等により2〜3週間で死の転帰(letalis)をとることが多い.図89A,Bでは典型的な表在性の糜爛面がみられる.これは後述する組織の変化が表皮と真皮の境界部にあるため,深い潰瘍を作ることなく,薄く剥離した表皮がめくれている.この変化は表皮または真皮浅層熱傷に類似する.二次感染が起こらなければ,病巣は軽い萎縮を残して完全に治癒する(図89C,D).図C,Dで左胸部には治癒していない糜爛面があり,胸骨部には多少の色調の変化を示すが完全に治った病巣をみることができる.
 致死型では病変が広範囲に及ぶために,臨床的には重症となるが,組織学的には殆ど変化を示さない正常に近い表皮が基底膜の直上部で分離している.変化はまずとびとびに起こり(図89E),これらの小さな分離がやがて連続的な表皮下水疱となる(図89F),真皮上層部は全く正常で,少数のリンパ球浸潤をみる以外に著変はない.膠原線維もエオジンに好染し,後述するdystrophic型にみられるような真皮上層の破壊や,水疱性類天疱瘡,ジューリング疱疹状皮膚炎にみられるような好中球や好酸球の浸潤が全くない.PAS染色を施すと基底膜は水疱の底部にあり(図89G),従って後述するように基底膜と基底細胞層の間(la—mina lucida)で分離が起こっていることがわかる,基底膜の直下の真皮乳頭層は表皮が剥離した後でも良く保たれ,結合織の変性がないことがわかる(図89H).以上の所見から,本型を(表皮—真皮)接合部型の水疱性表皮解離症,即ちjunc—tional EBと呼ぶこともある.本型では表皮に著変がないので,epidermolysisなる名称は適当でないが,基底膜より上を表皮と定義すれば,本型の変化は表皮内である.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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