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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科38巻11号

1984年11月発行

雑誌目次

図譜・505

ステロイドODTにより誘発された手のカンジダ症

著者: 滝野長平 ,   古井良彦 ,   山本泉

ページ範囲:P.1008 - P.1009

患者29歳,主婦
初診昭和57年11月29日

原著

X-linked Ichthyosisの2例

著者: 瀬下由美子 ,   高安進

ページ範囲:P.1011 - P.1013

 21歳男性と58歳男性,いずれも母方のおじに同様の皮疹があるという。躯幹,四肢伸側及び屈側,頸部,耳介に厚い褐色の鱗屑が付着.冬期に増悪.病理組織像では著明な過角化が見られ,顆粒層は明らかに認められた.2例とも白血球のsteroid sulfatase活性は欠損していた,症例1の母親(保因者)では正常値であった.また,症例1では夏期に皮疹の著明な軽快がみられ,日光照射の影響が推測された.以上のごとく本症の確定診断には,steroid sulfatase活性の測定が極めて有用と考えられた.

高齢男子に発症した全身性エリテマトーデス

著者: 亀山孝一郎 ,   長谷川正次 ,   金丸哲山

ページ範囲:P.1015 - P.1019

 症例は67歳男子.62歳頃より裸露部の紅斑.その後,凍瘡様皮疹,蝶形紅斑出現したため,昭和55年7月当科受診,精査治療目的にて入院した.SLEの診断にて,predni—solone 40mg/日にて治療を開始し,一過性の精神症状の出現をみるも,治療によく反応し同年10月退院した.その後,心包炎を伴うSLEの増悪を生じ,prednisoloneの増量にて寛解するも,心筋梗塞の発作をくり返し死亡した.老化によるSLE病像の変様について,および加齢,性別と免疫現象との関連について,自験106例を含め,文献的に考察し報告した.
1)高齢発症SLEは若年者と病型が異なり,軽症が多く,予後も良好である.
2)妊娠可能年齢の女性に頻度が高い理由として,性ホルモンの関与が推定される.
3)老年者に頻度が少なく,軽症が多い理由として,細胞性免疫の低下が推定される.

Cold Panniculitis—低体温麻酔下手術後に発症した2例

著者: 照井正 ,   加藤泰三

ページ範囲:P.1021 - P.1024

 心疾患に対する低体温麻酔下手術後,四肢の伸外側に左右対称性に出現したcoldpanniculitisの2例を報告した.症例1:2カ月,女児.大血管転換症に対するマスタード手術施行約1カ月後,上肢伸側および臀部外側から下肢外側に連続して帯状の,皮表にはほとんど変化がない皮下硬結に気づいた.これは6週後に消褪した.症例2:4カ月,女児.心室中隔欠損症の根治手術施行数日後,上肢伸側および下肢外側に表面淡紫紅色調を呈する鶏卵大前後の皮下硬結が出現してきた.その後1カ月で死亡し,経過を追うことができなかった.病理組織像はいずれも非特異的なlobular panniculitisの像を示した.

全身性エリテマトーデスに再発性多発性軟骨炎を合併した1例

著者: 石川治 ,   石川英一

ページ範囲:P.1025 - P.1030

 全身性エリテマトーデスに併発した再発性多発性軟骨炎の39歳,女子例を報告した.臨床症状として,耳介の疼痛性腫張・結膜炎・関節痛・気道圧迫感・嗄声を呈した.一般検査所見では,異常が認められなかった.組織学的に,軟骨の好塩基性低下と,リンパ球,好中球の浸潤を認めたが,螢光抗体直接法および間接法とも陰性であった.ステロイド投与により症状は軽快し,現在,経過観察中である.

アルゴン・ダイ・レーザー療法後に生じたヘマトポルフィリン誘導体による光線過敏症

著者: 児島孝行 ,   長谷川隆 ,   神津照雄

ページ範囲:P.1031 - P.1035

 悪性腫瘍の治療のためにアルゴン・ダイ・レーザー療法を施行し,その際静注したヘマトポルフィリン誘導体によって発生した光線過敏症の5例を報告した.作用波長は長波長紫外域から500nm以上の可視光にまで及んでいた.個体差はあるものの,光線過敏性は1カ月ないし1カ月半持続した.同療法を実施する際には,この間,遮光,β—caroteneなどの光防禦が必要と考えられた.

プロトポルフィリンNa製剤(NAPP)によると思われるポルフィリア様皮疹の1例

著者: 池澤善郎 ,   長岡英和

ページ範囲:P.1039 - P.1043

 70歳,女性.プロトポルフィリンNa製剤(NAPP)服用中に生じたポルフィリア様皮疹を経験した.初診時,顔面,耳介,前胸部,手背に水疱を伴う浮腫性のびまん性紅斑がみられた.皮疹は日光照射後しばらくして出現したという.手背の皮疹は組織学的に真皮上層から中層にかけた血管周囲性の軽い小円形細胞浸潤で,その血管壁はPAS染色陽性であった.ポルフィリン(ポ)体の検査によって尿中のコプロポルフィリン(CP)は陽性,糞便中のプロトポルフィリン(PP)とドイトロポルフィリン(DP)・メソポルフィリン(MP)は強陽性,そして赤血球のポ体は陰性であった.その後,NAPPの服用中止によって尿中CPは5日後に疑陽性に,糞便中のPPとDP・MPは17日後に陰性となった.尿と糞便中のポ体の陰性化に伴い,皮疹の再発は認められていない.
 以上より,本症例はNAPPの長期服用によってもたらされたと思われる,血漿中CPの増加によるポルフィリア様皮疹であると推察した.

免疫異常を示した汎発性扁平苔癬

著者: 山口茂光 ,   阿部真哉子 ,   坂本ふみ子 ,   伊藤雅章 ,   竹内誠司 ,   佐藤良夫 ,   赤井昭

ページ範囲:P.1045 - P.1050

 46歳,男子.海水浴後,ほぼ全身に疣贅様角化性皮疹が出現した.病変は四肢,躯幹,口腔粘膜などの好発部位のほか,頭,顔,掌蹠,肛囲,爪などにも存在した.検査所見は抗核抗体陽性,IgG低下,低補体価など免疫異常を示した.組織学的所見,電顕所見より汎発性扁平苔癬と診断した.臨床像および免疫異常に関し若干の考察を加え,何らかのnoxaが全身性に作用し,全身的な免疫系(液性免疫および細胞性免疫)が障害され,特異な臨床像と免疫異常がひきおこされたと推測した.

Alclofenacによる薬疹(粘膜皮膚眼症候群型)の1例

著者: 篠田英和 ,   吉田彦太郎

ページ範囲:P.1051 - P.1054

 57歳,男性.エピナール,ブリセフ内服後に高熱,全身倦怠感,眼球充血,眼脂および口腔内,陰嚢,肛門の皮膚粘膜移行部に糜爛を認め,ほぼ全身にアズキ大より拇指頭大までの浮腫性紅斑をきたした.特に背部では融合傾向の強い紅斑が多発し,一部に健常皮膚を残すのみとなった.組織所見では,表皮の変性と多数の壊死に陥ったケラチノサイトを認め,真皮では上層の著明な浮腫と表皮下水疱,強いリンパ球の浸潤がみられた.エピナールの貼布試験は陽性であり,その部の生検所見では真皮内に組織球を伴った著明なリンパ球浸潤を認めた.さらに,ANAE染色を行なうと浸潤リンパ球はANAE活性陽性であり,T細胞であることが明らかとなった.
 以上の結果より,エピナールによる薬疹(粘膜皮膚眼症候群型)と診断し,本病型の薬疹に遅延型アレルギー機序の関与があると考えた.

天疱瘡様抗体,類天疱瘡様抗体を併せもった水疱症例

著者: 宮澤順子 ,   関いづみ ,   根木信 ,   種田明生 ,   小川秀興

ページ範囲:P.1055 - P.1060

 流血中に抗表皮細胞膜(間)抗体と抗基底膜部抗体を認め,皮疹部表皮細胞膜(間)(ICS)及び基底膜部(BMZ)にIgG,C3の沈着を認めた82歳女性例を報告し,本例の抗体及びそれに対応する抗原の性状について検討した.本例は難治性の口内炎が先行し,初診時BMZ抗体が検出されたが,皮疹増悪時よりICS抗体の出現が認められた.組織学的には表皮内及び表皮下水疱を同時に認めた.本例のBMZ抗体はblocking immuno—fluorescence studyにて5例の類天疱瘡(B.P.)血清にてblockされず,ICS抗体は対応する抗原の性質より天疱瘡(P.V.)抗体と一部異なる性質を示した.以上より,本例において検出された2種の抗体は,B.P.,P.V.において認められる抗体とやや異なったものと考えられた.本症の成因は不明であるが,一応難治性の口腔内潰瘍によりICS,BMZ部に対応する抗体が産生されたと推察した.なお,本症はステロイド,免疫抑制剤に抵抗性であったが,血漿交換療法により速やかな改善を示した.

Epidermolysis Bullosa Simplex(KÖBNER)の1家系—HLAの分析を含めて

著者: 桜岡浩一 ,   宮川俊一 ,   宮本伸子 ,   西川武二 ,   木村俊次 ,   高田肇

ページ範囲:P.1061 - P.1066

 1家系内3代にわたり4名の先天性表皮水疱症単純型(以下EBS)(KÖBNER)の発症をみた1家系を経験.症例は,2歳男児(発端者),29歳女(母),24歳男(叔父)および59歳男(祖父)である.いずれの症例も,生後まもなくより手指,足趾に水疱の形成を認め,夏季に増悪するも加齢と共に症状は軽快し,また水疱形成後に瘢痕や稗粒腫の形成は認められない.病理組織学的に,いずれの症例もHE染色で表皮下水疱を,PAS染色ではPAS陽性基底膜が水疱底を構成していた.電顕的には,表皮基底細胞下端に裂隙を認めた.また,一般にepidermolysis bullosaの1群の疾患はHLAと相関しないといわれているが,著者らは,本疾患の遺伝性の検索の一助として本症例に対し,HLAのA-locus,B-locusおよびDR-locusの検索を行なったので,若干の考察と合わせて報告した.

Blue Rubber Bleb Nevus症候群

著者: 岡田正博 ,   庄司昭伸 ,   依藤時子 ,   濱田稔夫 ,   杉山正夫 ,   山本茂

ページ範囲:P.1067 - P.1075

 47歳,女性.20歳頃より発症したblue rubber bleb nevus症候群の1例を報告した.全身十数カ所にBean (1958)の定義した1型と2型の血管腫が多発し,特に口腔,舌,咽頭,喉頭など消化管の上部に血管腫が見出された.また頭蓋内において,上矢状静脈洞の腫瘤状の異常な拡張や,他の大きな静脈の拡張蛇行が血管造影により見出され,頭蓋内に血管腫の存在する可能性が示唆された.併せて外国,本邦の報告76例を収録するとともに,統計的観察を試みた.

編集室だより

雑誌名の省略について

著者: 「臨床皮膚科」編集室

ページ範囲:P.1024 - P.1024

 最近,引用文献に掲載される雑誌名の略称は,1970年にAmerican National Standards Committeeから出された「International List of Periodical Title Word Abbreviations」による略し方が,国際標準として,一般化してきました.皮膚科領域に関係のある言葉の例を下記にあげました.御投稿の際には,これらを参考にして下さい.

連載 皮膚病理の電顕・40

表皮水疱症(Ⅳ)

著者: 橋本健

ページ範囲:P.1076 - P.1077

 図90表皮基底層と基底板の間には多数の細い(4mn)細線維が往復している(f).これらをanchoring filament (係留細線維)と呼んでいる.これらの細線維はヘミデスモゾーム(d)の部分に,特に多数存在する.この部分には更にsub—basal cell dense layer或はplaqueなる非常に薄いが基底細胞の細胞膜とは明らかに区別できる電子密な一層を区別することができる(矢尻).An—choring filamentはこのdense plaqueを貫通して基底細胞の細胞膜に連結するものもあるし,このplaqueの所で終るものもある.いずれにせよ,これらの細線維が基底細胞を基底板に連結する役目を果たすことは疑いない.基底板の電子密度に比較するとanchoring filamentの張っているスペースは電子明調にみえる.特にヘミデスモゾームのない部分には,これらの細線維の数が少ないために,殆ど空虚にみえる.これらの理由により基底細胞の基底側の細胞膜と基底板の間をlaininalucida (透明層)(LL)と呼び,基底板そのものをlamina densa (暗調層)(LD)と呼ぶ.即ち,この呼び方ではlamina densaとbasal laminaは同義語である.Lamina lucidaは体表面,口腔粘膜,更に表皮に接続する附属器,例えばエクリン汗腺,毛包の外側に沿って存在する.ただし毛包や汗腺ではanchoring filamentの発達は悪くなる.図89E,Fでエクリン汗腺の真皮上層にある直導管部に沿って周囲の真皮が剥離しているのがみられるが,これもlamina lucidaのanchoringfilamentの破壊による,即ち病変の発生する基盤となる微細構造は麦皮と同一であることを示唆する.
 基底板(basal lamina,lamina densa)の下面には,やや太い(35nm)線維が付着し,これらが真皮上層の細い膠原線維や弾力線維の構成成分であるmicrofibril (或はelastofibril)(F)と絡み合って基底板を真皮乳頭層に係留している.Juncti—onal EBではanchoring filarnentの方が選択的に破壊され,そのために基底板と基底細胞の接着が不可能となる.PAS染色で陽性に染まる成分は主に基底板であり,従って図89Gで観察したように,PASで赤く染まる基底膜は水疱の底面を形成することになる.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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