原著
天疱瘡様抗体,類天疱瘡様抗体を併せもった水疱症例
著者:
宮澤順子1
関いづみ1
根木信1
種田明生1
小川秀興1
所属機関:
1順天堂大学医学部皮膚科教室
ページ範囲:P.1055 - P.1060
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流血中に抗表皮細胞膜(間)抗体と抗基底膜部抗体を認め,皮疹部表皮細胞膜(間)(ICS)及び基底膜部(BMZ)にIgG,C3の沈着を認めた82歳女性例を報告し,本例の抗体及びそれに対応する抗原の性状について検討した.本例は難治性の口内炎が先行し,初診時BMZ抗体が検出されたが,皮疹増悪時よりICS抗体の出現が認められた.組織学的には表皮内及び表皮下水疱を同時に認めた.本例のBMZ抗体はblocking immuno—fluorescence studyにて5例の類天疱瘡(B.P.)血清にてblockされず,ICS抗体は対応する抗原の性質より天疱瘡(P.V.)抗体と一部異なる性質を示した.以上より,本例において検出された2種の抗体は,B.P.,P.V.において認められる抗体とやや異なったものと考えられた.本症の成因は不明であるが,一応難治性の口腔内潰瘍によりICS,BMZ部に対応する抗体が産生されたと推察した.なお,本症はステロイド,免疫抑制剤に抵抗性であったが,血漿交換療法により速やかな改善を示した.