icon fsr

文献詳細

雑誌文献

臨床皮膚科38巻11号

1984年11月発行

文献概要

連載 皮膚病理の電顕・40

表皮水疱症(Ⅳ)

著者: 橋本健1

所属機関: 1

ページ範囲:P.1076 - P.1077

文献購入ページに移動
 図90表皮基底層と基底板の間には多数の細い(4mn)細線維が往復している(f).これらをanchoring filament (係留細線維)と呼んでいる.これらの細線維はヘミデスモゾーム(d)の部分に,特に多数存在する.この部分には更にsub—basal cell dense layer或はplaqueなる非常に薄いが基底細胞の細胞膜とは明らかに区別できる電子密な一層を区別することができる(矢尻).An—choring filamentはこのdense plaqueを貫通して基底細胞の細胞膜に連結するものもあるし,このplaqueの所で終るものもある.いずれにせよ,これらの細線維が基底細胞を基底板に連結する役目を果たすことは疑いない.基底板の電子密度に比較するとanchoring filamentの張っているスペースは電子明調にみえる.特にヘミデスモゾームのない部分には,これらの細線維の数が少ないために,殆ど空虚にみえる.これらの理由により基底細胞の基底側の細胞膜と基底板の間をlaininalucida (透明層)(LL)と呼び,基底板そのものをlamina densa (暗調層)(LD)と呼ぶ.即ち,この呼び方ではlamina densaとbasal laminaは同義語である.Lamina lucidaは体表面,口腔粘膜,更に表皮に接続する附属器,例えばエクリン汗腺,毛包の外側に沿って存在する.ただし毛包や汗腺ではanchoring filamentの発達は悪くなる.図89E,Fでエクリン汗腺の真皮上層にある直導管部に沿って周囲の真皮が剥離しているのがみられるが,これもlamina lucidaのanchoringfilamentの破壊による,即ち病変の発生する基盤となる微細構造は麦皮と同一であることを示唆する.
 基底板(basal lamina,lamina densa)の下面には,やや太い(35nm)線維が付着し,これらが真皮上層の細い膠原線維や弾力線維の構成成分であるmicrofibril (或はelastofibril)(F)と絡み合って基底板を真皮乳頭層に係留している.Juncti—onal EBではanchoring filarnentの方が選択的に破壊され,そのために基底板と基底細胞の接着が不可能となる.PAS染色で陽性に染まる成分は主に基底板であり,従って図89Gで観察したように,PASで赤く染まる基底膜は水疱の底面を形成することになる.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1324

印刷版ISSN:0021-4973

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?