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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科38巻12号

1984年12月発行

雑誌目次

図譜・506

皮脂腺分化のみられた基底細胞上皮腫

著者: 長田浩行 ,   幸田衞 ,   武井洋二 ,   植木宏明

ページ範囲:P.1086 - P.1087

患者52歳,女性
初診昭和58年4月1日

原著

特異な組織像を呈した乳輪部のFibrous Papule

著者: 玉田康彦 ,   池谷敏彦

ページ範囲:P.1089 - P.1091

 41歳女性の乳輪部に生じた丘疹を切除,組織学的に炎皮に大型空胞様細胞の出現,真皮では小血管の拡張と網状層に脂腺にて接して膠原線維が太く均質化した部分があり,紡錘形や星芒状の線維芽細胞様の細胞,小血管の増生,小円形細胞の浸潤が認められた.Reedらは皮膚のfibrous noduleを組織学的に検討し,その主たる病変部位が真皮乳頭層と真皮網状層にみられるものを分類している.自験例の組織学的所見から,真皮網状層に,膠原線維の病変を有するirritation fibromaに近い疾患ではないかと推察された.又,その発症要因として乳輪部がブラジャー等の外的刺激や授乳等による炎症性の変化を起こしやすい部位であることから,それらによる2次的な反応性の変化ではないかと考える.

妊娠により誘発された黄色腫

著者: 武誠 ,   西岡裕定 ,   花咲宏一 ,   小玉肇

ページ範囲:P.1093 - P.1096

 24歳,女性.妊娠後期にtype V高リポ蛋白血症の合併症として発疹性黄色腫が発生し,分娩5カ月後に発疹性黄色腫は完全に消腿した.妊娠中の血清総脂質は正常値の約6倍に達し,総コレステロール,トリグリセライドとも高値を示した.総コレステロール値は分娩後急速に減少したが,高トリグリセライド血症は残った.

高齢者に初発した多発性毛嚢嚢腫症—稗粒腫およびEruptive Vellus Hair Cystsとの鑑別を中心に

著者: 木村俊次

ページ範囲:P.1097 - P.1101

要約 十数年来,瘙痒性皮疹にて副腎皮質ステロイド剤外用中の69歳男子に,1,2年来黄色皮疹が多発.現症:頸部右側に約10個,左に約15個,右腋窩および肘窩に各2個,直径2〜5mmの黄色調小皮疹が散在多発.皮疹は表在性で皮膚面よりドーム状に隆起し,下床と可動で自覚症を欠く.両頸部にはステロイド皮膚萎縮もみられる.組織像:真皮内に大小の嚢腫が存在L,壁は菲薄化した2〜4層の重層扁平皮から成る.おおむね顆粒層を欠くが,一部に小型のケラトヒアリン顆粒が少数存在する.嚢腫壁は一部毛嚢脂腺系との連続性を有する.嚢腫内には層状の角質物質や無定形物質の他,少数の軟毛をみる.本例は多発性毛嚢嚢腫症(MFC)と診断したが,続発性稗粒腫やeruptive vellus hair cysts(EVHC)との鑑別を要した.3者について比較・検討したところ,表皮型角化を示すMFCとEVHCとは同症である可能性が示唆された.

顔面に多発した孤立性毛嚢上皮腫

著者: 大草康弘 ,   長島正治

ページ範囲:P.1103 - P.1107

 37歳,女性の顔面に孤立性毛嚢上皮腫が多発した1例を報告した.上口唇右鼻翼付着部下方,左右鼻背にそれぞれ1個の孤立した腫瘤が認められた.組織学的には,いずれの腫瘤もほぼ同様で,毛嚢上皮腫と診断された.電顕的に腫瘍細胞は明調・暗調細胞の2種類に大別された.
 孤立性毛嚢上皮腫の多発例の報告は本邦にはなく,極めて稀な症例と考えられたので,これを報告するとともに,本症の組織像,電顕像につき若干の考察を加えた.なお,solitarytrichoepitheliomaの邦語名としては単発性よりも孤立性毛嚢上皮腫が最も適切であることを述べた.

限局性(単発性)神経線維腫

著者: 熊切正信 ,   村本文男 ,   安田秀美 ,   具志堅初男

ページ範囲:P.1109 - P.1113

 限局性(単発性)神経線維腫の13例を報告した.平均年齢は55歳であり,皮疹の分布は体幹7例,頭部4例,前腕2例であった.1例は多発していた.腫瘍は皮表から半球状に盛り上がっており,軟らかく,2例に圧痛があった.S−100蛋白をPAP法で調べたところ,陽性細胞と陰性細胞とが混在していた.電顕で腫瘍細胞のSchwann細胞,神経周膜細胞,線維芽細胞への分化が観察された.

神経鞘腫におけるVerocay小体について—Meissner小体との比較

著者: 熊切正信 ,   安田秀美 ,   森川玲子 ,   村本文男

ページ範囲:P.1115 - P.1119

 8歳,男児の左手掌に発症した皮膚神経鞘腫に観察されたVerocay小体を検討した,S−100蛋白の分布をPAP法で調べたところ,シュワン細胞に一致して陽性であり,とくに核が柵状に配列する部分で強陽性であった.電顕的には細長い腫瘍細胞は不完全ながらシュワン細胞の特徴を備えており,Verocay小体の部では多数の細胞が平行に走っている.Verocay小体はしばしばMeissner小体と類似することが指摘されているが,細胞の特徴に類似性はなかった.

von Recklinghausen病における皮下神経線維腫を伴う巨大色素斑について

著者: 北島淳一 ,   寺尾祐一 ,   濱田稔夫

ページ範囲:P.1121 - P.1125

 皮下神経線維腫を伴う有毛性巨大色素斑を有したvon Recklinghausen病の3例(3歳,男.16歳,男.8歳,女)を報告し,本症における皮膚色素斑の分類に対し考察を加えた.
 従来,巨大Recklinghausen斑と呼ばれていたこれらの色素斑に対し,cutaneous hyperpig—mentation overlying plexiform neurofibroma (Riccardi)と呼称する方がより合理的と考えられた.本病変は単なるcafé-au-lait spotと臨床,病理組織学的に相違点を有しており,巨大色素斑の分類および本症の予後という面で,巨大なcafé-au-lait spotと充分鑑別しておくことが重要と考えられた.

Epithelioid Hemangioendotheliomaの1例

著者: 幸田衞 ,   和田民子 ,   植木宏明 ,   真鍋俊明

ページ範囲:P.1127 - P.1131

 症例:33歳,男.初診1年前から右臀部に直径5mm程度の皮内〜皮下結節が3個生じた.組織像はよく分化した悪性血管内皮細胞腫に類似していたが,腫瘍細胞は類上皮細胞様で異型性や核分裂像に乏しかった.小範囲切除後,放射線照射した.術後3年,初診より4年経過したが再発や転移の兆候はない.
 本症例は臨床,組織像とも1982年,Weiss & Enzingerが報告した"epithelioid hemangio—endothelioma"に類似しており,良性と悪性の中間に位置する血管内皮細胞腫と考えた.

Poroepithelioma Folliculareと基底細胞上皮腫の合併例

著者: 津田道夫 ,   鈴木敦 ,   遠藤秀彦

ページ範囲:P.1133 - P.1137

 71歳女子のporoepithelioma folliculareと基底細胞上皮腫の合併例を報告した,表皮内上皮腫の形成,squamous eddy, clear cell, trichilemmal keratinization等の組織学的特徴より,本腫瘍は毛包漏斗部より発生した腫瘍であるが,毛包中間部への分化形質を,同時に保有するものであると考えた.

Malignant Clear Cell Hidradenomaの1例

著者: 阿久津裕 ,   石田修 ,   本間光一 ,   西尾千恵子

ページ範囲:P.1139 - P.1143

 76歳,女性の右大腿部外側に生じたmalignant clear cell hidradenomaの1例を報告した.組織学的には,明るい細胞質をもつ大型の細胞と好塩基性の細胞質をもつ細胞からなる腫瘍で,細胞は異型性のある核と分裂像が認められる.酵素組織化学的には,amylophosphorylase, succinic dehydrogcnase, leucine aminopeptidasc陽性,acid phospha—tase陰性を示した.電顕的には微絨毛を多数認める細胞からなり,管腔構造が認められた.組織学的,酵素化学的,電顕的検索により,自験例はエクリン汗器官の表皮内汗管,真皮内汗管由来の腫瘍と考えられた.

涙腺に原発した粘表皮癌の1例

著者: 高橋博之 ,   横山寧恵 ,   片岡和洋 ,   水野正晴 ,   碓井美智子 ,   中村浩二 ,   山本昇壯 ,   藤武俊治 ,   坂田広志 ,   大江一彦

ページ範囲:P.1145 - P.1148

 65歳男性.右上眼瞼外側部に皮下腫瘤が出現し,摘出術を受けた.摘出腫瘤の組織像では,涙腺に連続し粘液産生細胞および扁平上皮様細胞の混在した,異型性に富む腫瘍細胞の増殖がみられ,涙腺に原発した粘表皮癌と診断した.その後,前頭部皮下,骨へ転移をきたし,種々の化学療法,放射線療法を行なったが死の転帰をとった.
 耳下腺に原発した粘表皮癌の報告は数多くみられるが,涙腺原発の本腫瘍の報告は少なく,若干の文献的考察を加えて報告した.

皮膚転移巣がAmelanoticであった悪性黒色腫—その診断,尿中5-S-Cysteinyldopaの経時的測定ならびに胸水中5-S-Cysteinyldopa値について

著者: 深田栄俊 ,   長島典安 ,   花輪滋 ,   森嶋隆文

ページ範囲:P.1149 - P.1153

 皮膚転移巣がamelanoticであった悪性黒色腫の29歳,男子例を経験し,以下の興味ある知見をえた.すなわち,1)スタンプ螢光法ならびに病巣中5-S-cysteinyldopaの測定が,しばしば診断に苦慮することが多い無色性黒色腫の確定診断に有用であること,2)尿中5-S-cysteinyldopaの経時的測定が黒色腫の病勢を知る上のbiochcmical markerになること,3)胸水中の5-S-cysteinyldopaの測定が胸腔内の黒色腫の転移を予測する指標になりうることなどである.

編集室だより

雑誌名の省略について

著者: 「臨床皮膚科」編集室

ページ範囲:P.1131 - P.1131

 最近,引用文献に掲載される雑誌名の略称は,1970年にAmerican National Standards Committeeから出された「International List of Periodical Title Word Abbreviations」による略し方が,国際標準として,一般化してきました.皮膚科領域に関係のある言葉の例を下記にあげました.御投稿の際には,これらを参考にして下さい.

印象記

Skin Pharmacology Society Symposium

著者: 山本昇壯

ページ範囲:P.1154 - P.1155

 Skin Pharmacology Society Symposiumの印象記を書くようにと編集部から依頼を受けた.それに先だち,まずSkin Pharmacology Society(SPS)について少しその設立の過程を紹介してみたい.
 SPSは昨年(1983年)発足した学会である.昨年の2月,The Institute of Dermatology(London)のMalcolm W. Greaves教授から,皮膚におけるpharmacologyの国際的研究グループをつくろうと思うがどうかという手紙が届いた.わが国では,"pharmacology"の語は治療薬理学のイメージをもつ場合が多いように思われるが,ここでいう"pharmacology"は"therapeutic pharmacology"の意味のみではなく,薬理学的(生物学的)活性物質の解析,それらの生体における役割の解析など,あらゆる領域の"pharmacology"を含む広い意味に用いられる.皮膚におけるこの分野の研究は大変興味のあるところであり,直ちにGreaves教授に賛同の手紙を書いた,学会設立の準備が始まり,1983年9刀2,3の両日,London,CIBA Foundationにおいて9カ国16名からなるBoardが発足した.その中から,M. W. Greaves(Chairman/Secretary),D. R. Bickers(Treasurer),M. Rawlins,H. Schaefer,V. A. Ziboh,S. Yamamotoの6名でExecutive Committeeが構成された.

連載 皮膚病理の電顕・41

表皮水疱症(Ⅴ)

著者: 橋本健 ,   松本光博

ページ範囲:P.1156 - P.1158

 図91Letalisあるいはjunction型の表皮—真皮の境界部を電顕で観察すると,主要な変化が基底細胞(B)と基底板(矢尻)の間で起こっていることが判る.原因の如何を問わず,これだけの大きな変化が起こっているので,真皮上層の浮腫(E),基底細胞の多少の破壊は理解できる.基底板が真皮内へ喰い込んだ所では,それに沿って陥入した基底細胞の細い細胞突起がちぎれている(*).しかし一般にこの分離はclean separationということができる.基底細胞の中には多数の顆粒が含まれている.その或るものは明らかにメラノゾームではない.これらはリゾゾーム(矢印)と考えられる(次図参照).
×9,000

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臨床皮膚科 第38巻 総索引

ページ範囲:P. - P.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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