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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科38巻2号

1984年02月発行

雑誌目次

図譜・496

線状迂曲状魚鱗癬の1例

著者: 真鍋求 ,   吉池高志 ,   根木信 ,   小川秀興

ページ範囲:P.100 - P.101

患者18歳,男性
 既往歴正常分娩,奇形なし,発育正常,一般状態良好.

原著

皮膚症状が初発と考えられたAdult T-cell Leukemia

著者: 山崎玲子 ,   山崎正博 ,   地土井襄璽 ,   森川茂 ,   小笹正三郎

ページ範囲:P.103 - P.109

 72歳,男性,島根県生.躯幹の紅色皮疹を初発症状とし,のちにリンパ節腫脹,末梢血への異型細胞の出現をみたT細胞性腫瘍の1例を報告した.腫瘍細胞は多形性に富み,初期には真皮へのみ浸潤したが,のちには表皮へも浸潤した.リンパ節より得た腫瘍細胞の継代培養株から電顕的にC型ウイルスを証明,また螢光抗体法にて自己血清と反応する抗原を胞体内に認め,adult T-cell leukemia associated antigen (ATLA)と判断した.島根県では2例目のATLA陽性のadult T-cell leukemia (ATL)と診断した.

電顕酵素抗体法により診断した汎発性単純疱疹

著者: 金生英雄 ,   林節 ,   高丸宏 ,   牧野正人 ,   松本一郎 ,   川名林治 ,   昆宰市

ページ範囲:P.111 - P.116

1)ヘルペス性歯齦口内炎に気管支炎を併発し入院中,HSV I型による汎発性単純性疱疹の出現をみた1歳7カ月の女児の症例を報告した.
2)水疱内容からの分離株について,病因ウイルスの検索を進めた.本報告では,従来の生化学的性状,細胞感受性,螢光抗体法,透過電顕,中和反応速度法などの診断法に電顕酵素抗体法を加えた.その結果,オスミウムブラックの沈着物がウイルスのエンベロープに付着する像が観察され,螢光抗体法の結果を電顕レベルで確認することが可能であり,有用な診断法と考えられた.
3)汎発性単純性疱疹について若干の文献的考察を行ない,あわせて本症におけるウイルス分離,同定の重要性について述べた.

S−100蛋白陽性細胞をみた,いわゆる皮膚混合腫瘍の2例

著者: 服部瑛 ,   佐藤兼重 ,   中島孝 ,   田口修之

ページ範囲:P.117 - P.120

 いわゆる皮膚混合腫瘍の2例を報告した.第1例は23歳女子の右鼻翼部の小結節,第2例は43歳女子の左上口唇部の小結節で,組織学的に管腔様構造を示す上皮性腫瘍細胞巣と間質よりなっていた.腫瘍細胞の中には,S−100蛋白陽性,またPTAH染色で青染する細胞を認めた,このことから,本腫瘍には筋上皮細胞あるいは筋上皮細胞に分化傾向を有する細胞の存在が示唆された.

Extranodal T-cell Lymphomaの1剖検例について

著者: 平野京子 ,   安田和正 ,   梶田昭 ,   金井孝夫

ページ範囲:P.121 - P.125

 右下腿に初発し,初診時には他臓器への侵襲はなく,漸次全身の皮膚に腫瘍が多発.腫瘍細胞の免疫学的検索にてinducer/helper typeのT-cell lymphomaと診定.発症後2年にて肺への腫瘍像を認め,以後,皮膚と肺への発症を交互に繰り返す.3年の経過後,肺炎にて死亡す.剖検所見にて,肺(多発性),心,肝,腎,腹膜,腸間膜など多臓器への転移腫瘍を認めたが,口蓋扁桃,リンパ節などnodal sitesは一般に萎縮性.リンパ節は肺門,頸のみ転移があり,これは肺腫瘍からの2次的なものと思われるほか,全身のリンパ節には転移がみられなかった.本症例はcutaneous typeのextranodal T-cell lymphomaの剖検所見として興味あるものと思われた.

良性単発型皮膚Hemangiopericytoma—特異な臨床・組織像を呈した1例

著者: 木村俊次 ,   禾紀子

ページ範囲:P.129 - P.134

 30歳,女子,右手掌皮膚に単発し,臨床的に圧痛・放散痛を伴い,組織学的に特異な構築を示した良性型hemangiopericytoma (HP)の1例を報告した.臨床的に直径4mmの紅色小結節をなし,容易に表皮剥脱してびらんをきたす,圧痛,ときに放散痛あり.組織学的に病変は真皮上層から皮下脂肪織上部にかけて存在し,境界は比較的明瞭であるが被膜を欠く.類円形ないし紡錘形の腫瘍細胞は異型性を欠き,大小の島しょ状胞巣を形成する.その中心部にあるいはやや偏って1層の内皮細胞で覆われた血管腔が存在するが,血管腔が不明瞭な胞巣も少なくない.これらの胞巣はPTAH染色一部陽性で,また鍍銀染色ではかなりの胞巣で嗜銀線維が個々の腫瘍細胞を囲繞する.本腫瘍は電顕的にも観察し,その所見からHPと確定診断した.HPの本邦報告例を集計し,その臨床的・組織学的・電顕的所見について自験例と比較・検討した.

Auto-immune Annular Erythemaの1例

著者: 安野洋一 ,   松原基夫 ,   丸尾充 ,   岸本三郎

ページ範囲:P.135 - P.139

 46歳,家婦.1年前から両手背に始まり,次第に上下肢,肩,上背に及ぶ遠心性環状紅斑様皮疹がみられ,ステロイド外用剤による治療で寛解を示すが,再発を繰返した.臨床検査成績で血清γ—Glb.の上昇,血沈亢進,CRP陽性,血清IgG,IgAの増加が認められ,病理組織所見はlupus erythematosus (LE)に近い像を示した.また皮疹部の螢光抗体直接法で,表皮・真皮境界部にフィブリノーゲン(Fib)のlincarな沈着,cytoid bodyに一致してIgM,C3,C1q,Fibの沈着が認められた.以上の所見から,自験例はRekantらのauto-immune annular erythemaに該当する疾患と考えられ,本症がchronic dissemi-nated LEの特殊型であるとする説を支持した.

Epidermal Inclusion Cystの2例

著者: 沢田幸正 ,   角田孝彦 ,   山原慎一 ,   枝松満

ページ範囲:P.141 - P.144

 手掌,足底に発生する上皮嚢腫は,外傷などによる表皮迷入により発生し,他の上皮嚢腫とはやや異なった発生機転をとるとされ,特にepidermal inclusion cystと呼ばれている.本症は外傷をうけやすい青壮年男子に多くみられ,腫瘤部の外傷や手術の既往,瘢痕の存在などにより診断されることも多い.今回,われわれは足底に発生し,腫瘤上層に腓胝腫形成がみられた1例,ならびに外傷の既往は得られなかったものの腫瘤上層皮膚に瘢痕がみとめられた1例をあいついで経験したので,若干の文献的考按を加え報告した.

Giant Cell Tumor of Tendon Sheathの1例

著者: 本間光一 ,   堀越貴志 ,   嵯峨賢次 ,   阿久津裕 ,   杉山貞夫 ,   竹田勇士

ページ範囲:P.145 - P.149

 30歳女性の右足趾に生じたgiant cell tumor of tendon sheathの1例を報告した.組織学的には典型的である.電顕観察で構成細胞には,正常滑膜と同じようなtype A cell(macrophage-like cell)とtype B cell (fibroblast-like cell)がみられ滑膜由来を想定させる.その他,foam cell, type A cellの特徴を有するgiant cellが認められた.しかし中間型の細胞が多数存在し,基本的には同一の細胞から成り立っていると考えられる.本症の成因に関し,炎症説と腫瘍説がある.現在,滑膜の腫瘍とする考えが主体をなすが,その由来,位置づけについて議論されている.

点状汗口角化症の1例

著者: 麻生和雄 ,   近藤慈夫 ,   渡辺修一 ,   清川貴子

ページ範囲:P.151 - P.155

 点状汗口角化症は,汗口角化症の一型で掌無の棘状,点状角化性皮疹として認められる.本邦でのこれまでの報告はない.著者らは,右側額,頸部に汗口角化症を伴った右手掌の点状角化症とおもわれる症例を経験,報告した.

黒子様形態を示すアミロイドーシス

著者: 堀口典子 ,   氏原真弓 ,   堀口裕治 ,   尾崎元昭 ,   今村貞夫

ページ範囲:P.159 - P.163

 我々は,臨床的に黒子様形態を示す5例のアミロイドーシスを経験した.皮疹は,壮年以上の男性に多く,上背部,前胸部,上腕伸側部に存在する褐色粟粒大の黒子様形態を示す丘疹であり,前胸部では色素沈着を伴わず,上背部や上腕部では,びまん性の褐色色素沈着を伴っていた.又,上腕伸側部のものは一見,毛孔性苔癬様形態を示していた.又,患者の多くには,長年の湿疹やアトピー歴があった.これらの丘疹は組織学的に真皮乳頭層の汗管周囲のアミロイド沈着を特徴とし,同部の角層肥厚や真皮乳頭層の拡大を伴う場合もあった.又,表皮のコロイド体や基底層の液化変性を伴う例もあるところより,湿疹やアトピー性皮膚炎より続発性に生じたアミロイドーシスの可能性もあると考え,その際,汗管周囲の表皮細胞が変性を受けやすいのではないかと思われた.

外陰部に生じたRhabdomyosarcomaの1例

著者: 桑名隆一郎 ,   山崎悟 ,   高井和子 ,   辻麻里 ,   浦田喜子 ,   安積輝夫 ,   小崎武

ページ範囲:P.165 - P.169

 患者は1歳5カ月の女児.外陰部のブドウの房様腫瘤を主訴として来院,組織検査により小円形細胞のびまん性増殖と細胞質が好酸性に染まり"縦走するmyofibril"と"交叉する横紋"とを有する皮ひも状のrhabdomyoblastを認めたため,本症をrhabdomyo-sarcomaと診断した.腫瘍の部分切除,放射線照射,化学療法にて治療を続けているが経過良好である.

Amelanotic Malignant Melanomaの1例

著者: 麻生和雄 ,   穂積豊

ページ範囲:P.171 - P.177

 46歳女子の右拇指,爪甲下に生じたamelanotic malignant melanomaの1例について報告,本邦報告例からの臨床像についてのべ,病理学的な腫瘍の生物学的性状について考察した.

肺炎マイコプラズマ感染に併発した多形滲出性紅斑及びStevens-Johnson症候群

著者: 秋田晴男 ,   石橋明 ,   藤田恵一

ページ範囲:P.179 - P.185

 第1例はアトピー性素因のある17歳女子.4〜5年来,アフタ様〜汎潰瘍性の口内炎と,紅暈を伴う水疱性皮疹をくり返し,肺炎マイコプラズマ抗原に対し強い遅延型アレルギーをもつに至ったStevens-Johnson症候群.
 第2例はアトピー性素因と甲状腺炎を有する12歳女子.微熱,口内炎と共に多形滲出性紅斑が全身に汎発,4〜5日で消え始め,滲出性紅斑の一部は中心治癒して疱疹状皮膚炎様の環状紅斑となった.
 第3例は55歳男子.39℃の発熱と水疱〜糜爛を伴う表皮型多形滲出性紅斑が口腔粘膜疹を随伴したStevens-Johnson症候群.胸部X線写真で両側下肺野にスリガラス様陰影を認めた.

編集室だより

雑誌名の省略について

著者: 「臨床皮膚科」編集室

ページ範囲:P.139 - P.139

 最近,引用文献に掲載される雑誌名の略称は,1970年にAmerican National Standards Committeeから出された「International List of Periodical Title Word Abbreviations」による略し方が,国際標準として,一般化してきました.皮膚科領域に関係のある言葉の例を下記にあげました.御投稿の際には,これらを参考にして下さい.

印象記

第47回日本皮膚科学会東日本学術大会印象記

著者: 滝川雅浩

ページ範囲:P.186 - P.187

 日本皮膚科学会の秋の支部会として最大の,東京支部,東部支部連合の第47回東日本学術大会が東京医科歯科大学教授・香川三郎会頭のもとで,昭和58年10月22日(土),23日(日)の2日間にわたって開催された.招待講演1,特別講演2,教育講演1が企画され,一般演題も含めて150以上の発表があった.京王プラザホテル5階の2会場が,これら学術発表の場に当てられた.両会場は隣接しており,移動は容易に行なえ,自分の興味ある演題はほとんどもれなく聞くことができたのではないかと思われる.
 香川会頭のプレジデンシャル・アドレスでは,東京医科歯科大学医学部皮膚科教授就任以来の教室の真菌症についての統計を,多くの症例を示されつつ講演された.教授のライフワークの集大成ともいうべきもので,厖大な材料をきちんと整理され,一大学の記録としてのみならず,日本の皮膚科学会全体としても貴重な資料と思われた.大ホール満員の参加者に強い印象を与えたものと思う.

連載 皮膚病理の電顕・32

菌状息肉症(I)

著者: 橋本健

ページ範囲:P.189 - P.194

 図78,79菌状息肉症(mycosis fungoides)なる名称は,本症の末期,即ち腫瘍期に茸状(fun—goid)隆起を示す腫瘍が形成されるところから由来している.この時期には臨床的にも,組織学的にも診断は容易である.本症で診断が最も困難な時期は,その初期であろう.2〜3カ所に紅斑と軽い鱗屑を伴う発疹が持続的にみられ,他の疾患,例えば慢性湿疹脂漏性湿疹などと紛らわしい(図78A,B).組織学的にも,軽度のリンパ球浸潤がある以外に特徴的な所見がなく(図79A,B),慢性皮膚炎として片付けられる場合が多い.しかし,よくみると表皮内に浸潤したリンパ球は,小さなポケット状にかたまる傾向を示す(図79B).この時期の病変は他の名称,例えばsmall plaqueparapsoriasis, digitate dermatosisなどと呼ばれている.後者はこの時期の発疹が,時に手指で押した跡のような形態をとることがあるのを指す(図78C,D).この時期が過ぎると,或は最初から,かなり大きな斑状の発疹に軽度の鱗屑を伴った局面が現われる.即ち,parapsoriasis en plaque,或はlarge plaque parapsoriasisと呼ばれている型である.この発疹はしばしば表皮の萎縮を伴い,色素沈着をみる(図78E,F).色素沈着は大抵の場合poikiloderma様であり,parapsoriasisvariegataと呼ばれる(図78F).この時期には軽度の浸潤を触れることができる.組織学的には真皮上層にリンパ球,組織球の帯状の浸潤があり,表皮基底層にも時にこれらの細胞集塊が見出される(図79C,D),Poikiloderma様,或はpara—psoriasis variegataといわれる型の組織像は,poikiloderma atrophicans vascularcのそれと区別しかねるが,リンパ球,組織球の浸潤がより高度である(図79E,F).表皮基底層は完全に破壊されている場合があり(図79E),従って,そこに含まれていたメラニンの真皮上層への落下,即ち色素失調が起こり,これによってpoikiloderma様の臨床像が説明できる.更に破壊された基底層からは表皮角化細胞の再生が起こりにくいため,表皮の萎縮を招き,臨床的に紙の様に薄く,かつチリメン皺の様な外観を呈するのである.
 局面期(Plaque stage)はIarge plaque parapso-riasisから移行するものが多いが,少数は前述のatrophic, poikilodermatous, variegate typesにも続発する.ここで注意しなければならないのは,plaqueなる用語が2つの意味を持っていることである.フランス学派の用法では,plaqucは平らな発疹でmaculeと同義である.例えばDegosの教科書1)でparapsoriasis en plaqueの個所をみると……Plane ou tres legerement saillante, noninfiltree (平坦,或は極く軽度に隆起し浸潤がない)となっている.米国ではplaqueというと,隆起して境界明瞭な浸潤を意味する.英国の文献でも同様の用法がみられる.従って,plaque stage は明瞭に認識できる隆起した局面で,いろいろな色を呈する時期である(図78G,H).組織学的には,真皮上層から中層にかけて強いリンパ球の浸潤があり(図79G,H),時にはリンパ球の集塊が他より離れて,かなり深い所にも点在する(図79G).

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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