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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科38巻3号

1984年03月発行

雑誌目次

図譜・497

Erythema Elevatum Diutinum

著者: 安田和正 ,   平野京子

ページ範囲:P.202 - P.203

患者58歳,女性
初診昭和56年1月10日

原著

D-ペニシラミンによるHerpetiform Pemphigus様皮膚病変の1例

著者: 田中源一 ,   横田朝男 ,   川端善司 ,   城戸邦彦 ,   田中洋子 ,   村田譲治 ,   藤澤龍一

ページ範囲:P.205 - P.209

要約 47歳.女.RAに対し,D-ペニシラミン1日量100mgの治療を3年3カ月継続し,初診の約4カ月前から皮疹発生.初診時,躯幹・四肢にDuhring疱疹状皮膚炎様の臨床所見.瘙痒(+).Nikolsky現象(-).粘膜疹(-).組織像は尋常性天疱瘡様の棘融解性表皮内水疱.螢光抗体直接法で表皮細胞間にIgG沈着(+).間接法(-).ステロイド全身療法で皮膚症状は漸次軽快した.また2週後の生検では所見が変化し,表皮有棘層ないし角層内に膿疱形成.螢光抗体直接法,陰性化.類似例につき若干の文献的考察を行なった.

Thrombophlebitis Migransを伴ったBuerger病

著者: 加藤一郎 ,   長谷川正次 ,   斉藤隆三 ,   根本ひろむ

ページ範囲:P.211 - P.214

 Thrombophlebitis migransを伴ったBuerger病を経験した.症例は29歳男子.誘因なく左足背に発赤を伴う硬結が出現.圧痛を伴い索状に触れる.病理組織学的には皮下脂肪織内の中等大の静脈に器質化した血栓を認め,壁は肥厚していることより血栓性静脈炎と診断.さらに現病歴で腓腹筋痛を認め,足背動脈の拍動減弱,末梢の冷感があり,動脈造影を施行したところ左膝窩動脈にabrupt occlusion型の閉塞を認め,Buerger病の確診を得た.本院外科にて左腰部交感神経切除術を施行し,経過は良好である.
 Buerger病においてthrombophlebitis migransを病初期に認める例は60%をこえる.またBuerger病全例の5%がthrombophlebitis migransを初発症状とする点を考えれば,皮膚科医も常にその背景としてBuerger病を考えるべきであろう.

Civatte Bodyの電顕および螢光抗体法による研究—扁平苔癬とエリテマトーデスの比較

著者: 木内一佳志 ,   三橋善比古

ページ範囲:P.215 - P.221

 扁平苔癬(Lp),Lp型薬疹,SLEおよびDLEにおいてみられたCivatte body(Cb)を,電顕および螢光抗体直接法(DIF)により観察したところ,1)Cbの出現と基底細胞の液状変性との間に高い相関をみ,2)DIFでCbに一致してIgMとfibrinogenの沈着が高頻度にみられた.3)電顕的観察では,Cbは細線維塊よりなり,細胞内小器官の遺残を認めた.4)SLEのCbとLpのそれとの比較では,本質的差異はなかった.以上から,Cbは疾患の原因を示すものではなく,種々の原因によって障害された表皮細胞の変性終末像であり,基底細胞の液状変性は誘因の1つと考えた.

膿瘍性穿掘性頭部毛嚢周囲炎の1例

著者: 長谷川隆 ,   小林まさ子 ,   伊藤達也 ,   岡本昭二

ページ範囲:P.223 - P.227

要約 23歳,男性の膿瘍性穿掘性頭部毛嚢周囲炎の1例を報告した.発症の1年位前より痤瘡は顔面から頸,胸,背部に拡大した.発症は受診の1カ月前で,頭部に脱毛を伴う多発性皮下膿瘍を認めた.諸検査成績では白血球高値以外に著変なく,膿汁および組織片による一般細菌,抗酸菌,真菌培養は陰性であった.組織学的には皮下に膿瘍性変化,毛嚢・附属器周囲には巨細胞を混ずるリンパ球浸潤巣を認めた.手術的治療に抵抗し,ステロイド局注にて軽快したが,治療前に細菌,真菌感染を否定する必要がある.

Generalized Morpheaの1例

著者: 武内幸恵 ,   角田克博 ,   大滝倫子

ページ範囲:P.229 - P.233

 特異な脱色素斑を伴い,組織学的に真皮小血管壁にPAS陽性物質の沈着と螢光抗体直接法でIgMの沈着をみたgeneralized morphea (以下GMと略す)の1例を報告し,血管変化と脱色素斑について私見を述べた.

Generalized Morpheaの2例

著者: 片岡和洋 ,   島本順子 ,   水野正晴 ,   高路修 ,   高橋博之 ,   池田早苗 ,   山本昇壯

ページ範囲:P.235 - P.239

 Generalized morpheaの2例について主として,血清学的,免疫組織学的検討をおこなった.皮疹は,症例1では白色硬化局面が,症例2では褐色硬化局面が多発している.組織学的には両者とも硝子化した膠原線維の増生が認められた.免疫組織学的には2症例とも表皮細胞核へのIgG沈着,皮膚基底膜部へのIgM沈着がみられた.免疫血清学的検査においては2症例とも抗核抗体陽性(homogenous pattern),抗DNA抗体陽性,LE test陽性,C3, C4低値と同様所見が得られ,SLE類似の所見を呈しているが,免疫組織学的には,SLEのそれとは異なる所見が得られた.

白斑を伴った多発性Morpheaの1例

著者: 佐久間満里子 ,   大見尚 ,   上野賢一

ページ範囲:P.241 - P.245

 多発性morpheaに,剣創状強皮症,顔面半側萎縮を伴い,さらに白斑を合併した5歳男児の1例を報告した.抗核抗体陽性,抗RNP抗体陽性所見が認められた.Morpheaと白斑の合併例を文献的に考察し,morpheaに合併した白斑はdermatomeに一致しない分布を示し,免疫異常が両疾患の発生に関与するのではないかと思われた.

クロモミコーシスの1例

著者: 仲弥 ,   原田敬之 ,   西川武二

ページ範囲:P.247 - P.250

 85歳,男性の左膝蓋上部に生じたクロモミコーシスの1例を報告した.「白金カイロ」を患部に貼布し,約3カ月間温熱療法を試みたが,縮小傾向をみたものの完治しないため切除した.切除組織片を細分し,培養するとともに組織学的に検討したところ,病巣辺縁部のみに菌の発育がみられ,中心部ではsclerotic cellが認められた.また,本菌の温度依存性についても検討したので,合わせて若干の考察を試みた.

5-FCが奏効したChromomycosisの1例

著者: 高瀬孝子 ,   大見尚 ,   上野賢一

ページ範囲:P.251 - P.253

 症例は50歳,男性.右大腿屈側部の局面型皮疹からFonsecaea pedrosoiを分離した.治療には5-FCの内服を施行した.一日量,88mg/kgという比較的少量で約4カ月間で瘢痕治癒をみた.2年経過した現在再発をみず,5-FCが奏効した1例と考えた.

Eruptive Vellus Hair Cystsの1例

著者: 太居英夫 ,   高木圭一 ,   松本博仁 ,   広田さち子 ,   坂本邦樹

ページ範囲:P.255 - P.258

 11歳男児のeruptive vellus hair cystsの1例を報告した.約6カ月前に両側大腿後面に自覚症状を欠く多発する丘疹に気づき受診した.丘疹は径数mmで正常皮膚色,青黒色のものと発赤してやや大きいものとがあり,一部は毛孔一致性で面皰様黒色小点を認める.組織学的には真皮中層に位置する表皮嚢腫で,層状角質物質と多数の軟毛を含み,嚢腫壁は顆粒層を形成して角質に移行している.附随する皮脂腺は認められない.嚢腫に接して2個の毛漏斗部に3つの毛包が開口する像もみられた.連続切片により表皮と連続している像,軟毛が穿孔し異物型巨細胞を中心とした炎症反応を伴う像,休止期毛包と連続している像が観察された.毛包の先天的な形態異常を基盤として,二次的に嚢腫が発生すると考えられる.3年間経過観察したが不変.

原発性皮膚骨腫の1例

著者: 安井伸代 ,   山下典子 ,   西島明子

ページ範囲:P.259 - P.264

 皮膚内の骨形成は続発性の骨化生が主であり,原発性皮膚骨腫は非常に稀な疾患で,現在までの本邦報告例をまとめても20例に過ぎない.生下時から乳幼児期に発症することが多く,女性に多く,かつ多発する傾向がみられる.本症の合併疾患として多いものはAlbright's hereditary osteodystrophyで,本邦報告例でも20例中6例にこ認められた.自験例は20歳女で,右耳後部に局所多発した硬い結節を認めた.血清Ca, P正常.短躯幹,円形顔貌,中手骨・中足骨短縮等の身体異常はなく,皮疹部に先行皮膚病変を認めない.組織所見は典型的でHavers管を備えた層板骨構造を認めた.

Recklinghausen病の1例—とくに面皰形成を伴った神経線維腫について

著者: 乃木田俊辰 ,   友田哲郎 ,   小野友道

ページ範囲:P.265 - P.267

 48歳,男子のRecklinghausen病の1例を報告した.全身に存在する神経線維腫の約20〜30%に面皰形成を認めた.面皰と神経線維腫との関連について若干の考察を試みた.

Eccrine Spiradenomaの1例

著者: 岩井雅彦 ,   藤澤龍一 ,   橋本謙

ページ範囲:P.271 - P.276

1)症例:82歳,女.約5年前から左上腕に発生した,7×4mmの淡紅褐色小腫瘍.圧痛(+),触痛(+),ときに肩方向への放散痛(+).
2)病理組織所見は典型的で,Kerstingらの分類によればA型と考えられた.また,Bodian染色で,腫瘍内に神経線維が認められた.
3)電顕所見では,間質において腫瘍細胞に近接して,また腫瘍細胞間にも介在して,豊富な神経線維が認められた.この所見は,本症の疼痛に関係するものと考えられた.
4)体外培養所見では,偽足様の細胞質突起をもち,管腔様構造を形成する傾向のある特異な細胞の遊出を認めた.
5)自験例を含む本邦報告例37例につき,臨床所見を総括した.

嚢腫内容に骨様変化をみた足底表皮嚢腫

著者: 木村俊次

ページ範囲:P.277 - P.281

 12歳,女子.左足底に約8カ月来皮下腫瘤あり.圧痛・腫脹・発赤を伴う.消炎後,小指頭大,白色調の腫瘤を摘出した.摘出腫瘤はきわめて硬く,十分な脱灰後ようやく切片作製が可能となった.組織学的に腫瘤は好酸性塊状物とその上半部周囲を被う嚢腫壁とから成り,嚢腫壁には顆粒層および好中球浸潤がみられた.塊状物は帯状ないし層状をなし,残存する角質物質に比べて複屈折像の著明な減少を示した.塊状物はまた網目状ないし層板状の嗜銀線維の存在を示した.塊状物中には明るい細胞が孤立性および集合性に存在し,これらはPASおよびコロイド鉄陽性を示した.以上の所見から本例を嚢腫内容そのものが化生的に骨ないし軟骨様変化を示した足底表皮嚢腫と診断した.文献的に表皮嚢腫に伴う骨形成はきわめて稀であり,自験例の如き嚢腫内容そのものの骨様変化ははじめてと思われる.

アミロイドおよび酸性ムコ多糖が沈着した有棘細胞癌

著者: 佐伯誠 ,   小玉肇

ページ範囲:P.285 - P.288

 腫瘍周辺の表皮直下乳頭層に多量のアミロイドが沈着し,腫瘍周囲の結合織に酸性ムコ多糖が,また腫瘍巣の細胞質内にアルシアン青陽性物質が沈着している有棘細胞癌の1例を報告した.さらに有棘細胞癌の教室例における酸性ムコ多糖の沈着について検討した結果,多くの症例(38例中25例)で腫瘍周辺の結合織に酸性ムコ多糖が沈着し,特に浸潤性に増殖している部位に多かった.また増殖している腫瘍細胞巣内の一部の細胞質内にアルシアン青陽性物質の沈着を認めた症例がかなり認められた(38例中9例).アミロイド沈着を認めた例は少なく(38例中2例),その沈着量は少量であった.

Adult T Cell Leukemia(ATL)の1例

著者: 長谷哲男 ,   小清水満 ,   田中盛久 ,   林正幸 ,   中嶋弘 ,   永井隆吉 ,   宮本秀明 ,   湊啓輔 ,   下山正徳

ページ範囲:P.289 - P.293

要約 伊豆半島出身で,急激な経過をたどったATLの1例を経験した.症例は45歳の男性で,全身の瘙痒性皮疹を主訴として来院した.初診時,リンパ節腫脹が認められ,末梢血液中に,44%の異型リンパ球(核異型の著しいフラワー細胞など)が認められた.腫瘍細胞の膜表面形質は,En(+),OKT3(+),4(+)であった.皮疹部の生検組織H-E染色標本では,表皮向性も顕著で,分葉した核を持つリンパ球も認められた.また抗ATLA抗体は陽性であった.化学療法に対しては抵抗性で,全経過19カ月であった.経過中,間質性肺炎,帯状疱疹,単純疱疹を併発した.

編集室だより

雑誌名の省略について

著者: 「臨床皮膚科」編集室

ページ範囲:P.221 - P.221

 最近,引用文献に掲載される雑誌名の略称は,1970年にAmerican National Standards Committeeから出された「International List of Periodical Title Word Abbreviations」による略し方が,国際標準として,一般化してきました.皮膚科領域に関係のある言葉の例を下記にあげました.御投稿の際には,これらを参考にして下さい.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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