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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科38巻4号

1984年04月発行

雑誌目次

図譜・498

Sudoriparous Angioma

著者: 長尾洋

ページ範囲:P.300 - P.301

患者49歳,女子
初診昭和57年8月18日

原著

抗SS-A抗体を示したANA-negative SLE(Subacute Cutaneous LE)の1例

著者: 河内山明 ,   植木宏明

ページ範囲:P.303 - P.306

要約 71歳,男,日光露出部に鱗屑,浸潤を伴う瘙痒性紅斑,丘疹,色素沈着及び脱失斑,頭部の脱毛を認めた.病理組織像及び螢光抗体直接法でSLEの典型的所見を呈するも,抗核抗体は持続して陰性で抗SS-A抗体が64倍を示し全身症状を認めなかった.皮疹は中等量のステロイド内服にて瘢痕を残さず軽快した,自験例はLEの1つのsubsetとしてDLEとSLEの中間に位置づけられるsubacute cutaneous LEあるいはANA-negative SLEと考えられた.
著明な日光皮膚炎様皮疹を呈し,病理学的所見や診断基準からSLEが疑われるも抗核抗体陰性の場合,又,診断基準を満足しない軽症及び小項目SLEの疑われる場合には,抗SS-A,SS-B抗体の検索が必要と思われる.又,治療及び予後の面からも,この様な中間型の把握が大切であろう.

無事出産しえた全身性エリテマトーデスの1例

著者: 森理 ,   阿部順一 ,   津田真五 ,   皆見紀久男

ページ範囲:P.307 - P.312

 26歳,女性.全身性エリテマトーデス(SLE)にて経過観察中に妊娠.妊娠10週頃と23週頃に皮疹及び全身状態の増悪がみられた.妊娠37週,経腟分娩にて2,260gの女児を出産.分娩後は症状,検査値に増悪はみられなかった.児には新生児エリテマトーデスは認められず,児の抗核抗体も4カ月目には自然消失した.胎盤には絨毛の低形成以外,異常所見はみられなかった.

前脛骨型表皮水疱症(純型)の1家系

著者: 小池玲子 ,   御子柴甫 ,   池川修一 ,   橋本功

ページ範囲:P.313 - P.319

 前脛骨型表皮水疱症はごく稀な病型であり,従来,電顕的検索は全くなされていない.また,その独立性についても種々の論議がある.今回,著者らは前脛骨部に限局せる水疱発生が4世代にわたり9例に認められた1家系を経験したので,このうち4例を臨床的,電顕的に検索した.その結果,本症は臨床的には常染色体性優性遺伝形式を示す栄養障害型表皮水疱症の範疇に属し,電顕的に基底膜直下に水疱を形成し,非水疱部ではan—choring fibrilの発育不全を伴うことを見出した.また,前脛骨型に関する従来の報告を検討して,水疱ないし皮膚剥離が前脛骨部に限局しているような症例が同一家系内に3代以上にわたって発生しており,かつその家系内にPasini型やCockayne-Touraine型を思わせる症例が混在していないものを前脛骨型の純型と定義した.この定義によれば自験家系は純型として世界で3番目のものである.

放射線皮膚炎後に発症した尋常性天疱瘡

著者: 義沢雄介 ,   勝岡憲生 ,   小幡秀一

ページ範囲:P.321 - P.323

 79歳,女性,乳癌のため左乳房切断術を行なう.後療法としてのCo60照射療法施行中,照射部に一致してびらんを生じ,以後びらんは持続.約6カ月後より口腔粘膜,体幹にびらん,水疱が出現した.組織学的,免疫組織学的に尋常性天疱瘡と診断し,発症要因として放射線皮膚炎が強く示唆された.

アナフィラクトイド紫斑の1例—第XIII因子製剤の投与が奏効した症例

著者: 戸田道子 ,   山崎雄一郎 ,   富田幸治 ,   稲垣稔

ページ範囲:P.325 - P.329

 53歳男子,両足踵部に有痛性の浮腫性紅斑〜血疱,四肢に出血性小丘疹を生じ,経過中に腹部に移動性の激痛を伴ったSchönlein-Henoch型アナフィラクトイド紫斑の1例.血中の血液凝固第XIII因子が低下し,同製剤の投与にて,腹痛のすみやかな消失,やや遅れて紫斑の軽快をみた.本疾患における同製剤の作用機序は不明の点が多いが,本例では紫斑に対してよりは腹部症状および炎症の強い紅斑部に対して速効性がみられた.さらに多数の使用例を重ねて,その作用機序,有効性について検討を必要とすると思われた.

Eosinophilic Pustular Folliculitisの2例

著者: 渡辺知雄 ,   稲本伸子 ,   中村絹代

ページ範囲:P.331 - P.336

 29歳男子の顔面,55歳男子の右足蹠に膿疱症様病変として初発,ついで両下肢,臀部および顔面に認めたeosinophilic pustular folliculitisの2例を報告した.両例における歯科金属パッチテストにて種々金属に陽性を示し,同部の生検にて,表皮に海綿状態および表皮内水疱を伴うが,その他はeosinophilic pustular folliculitisの病理所見と同様の結果を得た.本症の病因はなお不明であるが,金属をも含めたある種の刺激に対するhost側の非特異的な毛嚢炎様反応を呈する皮膚炎と解釈した.

Persistent Light Reactionの4例

著者: 酉抜和喜夫 ,   熊井則夫 ,   三浦隆

ページ範囲:P.337 - P.340

 症例は,2〜10数年におよぶ光過敏を有する70歳男,58歳男,65歳男,55歳女.慢性湿疹様皮疹が露出部および躯幹部に認められ,光線試験でUVA, UVBに過敏性を示した.光貼布試験で陽性部位はなく,原因物質は不明であった.手背皮疹の組織像で真皮浸潤細胞に異型性はなく,actinic reticuloidまでは進行していないpersistent light reactionの症例と考えられた.

PUVA治療部に生じたPigmentatio Petaloides Actinica

著者: 清水宏 ,   馬場恵美 ,   原田敬之 ,   倉持正雄

ページ範囲:P.341 - P.344

 13歳,男子.約7年前,左腋窩,上肢に尋常性白斑が出現.外用PUVA療法にて治療していたが,最近,白斑周囲皮膚に臨床的に花弁状を呈する,いわゆるpigmentatiopetaloides actinica(PPA)に相当する多数の小豆大色素斑の出現をみた.PUVAの副作用としてlentigo senilis様小色素斑が生じることは既に周知であるが,PPAが生じることは比較的稀であること,また今後PPAをPUVAの皮膚副作用の新たな1項目として加える必要性のあることを述べた.さらにlentigo senilis様小色素斑の発生には紫外線の総照射線量が関与しているのに対し,PPAの発生にはsunburnを生じるような短期間の強い紫外線照射が強く関与している可能性を示唆した.最後にPPAの治療法として,液体窒素凍結療法が有用であることを紹介した.

壊疽性膿皮症の1例

著者: 八木橋陽子 ,   佐藤静生 ,   花田勝美

ページ範囲:P.345 - P.348

 44歳女性の左下腹部に帯状の特異な形態の潰瘍をみた単発型壊疽性膿皮症の1例を報告した.検査成績では,皮疹増悪時に末梢血中単球(マクロファージ)の著明な相対的増加をみたほか,ベーチェット病で関連があるとされる,necrotizing factorの存在を示唆する実験成績および有機塩素の高い血中濃度がえられた.またツ反部には3週後に臨床的,組織学的にも腹部潰瘍に類似する小潰瘍が生じた.治療はステロイドおよびDDSの全身投与が奏効,約3.5カ月で瘢痕治癒している.

白血病患者の緑膿菌敗血症にみられた壊疽性膿瘡の2例

著者: 江川政昭 ,   徳毛幸枝 ,   沼田恒実 ,   山本昇壯 ,   高田昇 ,   今中文雄 ,   梶原博毅

ページ範囲:P.351 - P.357

 白血病患者に合併した,緑膿菌を起炎菌とする壊疽性膿瘡の2例を報告した.2例とも緑膿菌敗血症の経過中に生じたものと考えられ,臨床的に辺縁鋭利な出血性,壊疽性潰瘍,組織学的にも,血管周囲に緑膿菌が集簇したperivascular cuffing等の特徴的な所見がみられた.

手指の著しい変形を来した尋常性狼瘡

著者: 藤垣奉正 ,   田中壯一 ,   広永正紀 ,   上原正巳 ,   渡辺昌平 ,   立脇憲一

ページ範囲:P.361 - P.365

 初発疹が右手背に出現してより,61年間適切な治療を受けずに経過したため,右上肢に著しい変形をきたし,また発病より58年を経てから躯幹等に乾癬様の落屑性紅斑局面が多発した尋常性狼瘡の1例を報告した.本症における皮疹の発生機序ならびに真性皮膚結核の治療について,若干の文献的考察を加えた.

Microsporum canis感染症の6例

著者: 新村陽子 ,   安木良博 ,   村田譲治 ,   岩重毅 ,   藤澤龍一

ページ範囲:P.367 - P.371

 家族内感染を含むMicrosporum canis感染症6例を報告し,その感染源を追求するとともに,家塵のM.canis分離を試みた.

先天性三角形脱毛症(Congenital Triangular Alopecia)の2例

著者: 前川嘉洋 ,   木藤正人 ,   江川清文

ページ範囲:P.373 - P.376

 症例1は11歳男子.生下時より右側頭部に生毛を有する脱毛巣があったが,水疱・糜爛などは認められなかった.脱毛巣は比較的境界明確な三角を呈する不完全脱毛巣で,底辺は前力髪際に接し,頂点は前頭骨の縫合線上で頭頂部を指す様な位置にある.病巣皮膚は軽度萎縮状を呈し,軟毛多数を認めるが終毛は認められない.組織学的に表皮には異常ないが,毛包数は減少しそれらのすべては小型で,軟毛型毛包の所見を呈する.弾力線維,膠原線維には著変はなく,附属器周囲に炎症性細胞浸潤を認めない.症例2は12歳男子で,生下時より右前頭部の脱毛巣が存在した.組織像は症例1とほぼ同様で,これらの所見からSabouraud, Minarsらが報告した先天性三角形脱毛症(congcnital triangular alope—cia)と考え,先天性脱毛症における本症の鑑別疾患や治療について言及した.

熱傷水疱蓋表皮細胞の組織学的観察

著者: 青島敏行 ,   三谷恒雄 ,   桜井みち代 ,   氏原真弓

ページ範囲:P.377 - P.381

 熱瘍患者24例の受傷後24時間以内に採取した水疱蓋組織像を観察し,治療期間との関係を検討した,水疱蓋表皮細胞の核,細胞質の形態,染色性を基準に,組織像を変性の軽度なものから高度なものへ4群に分類した.治療期間はそれぞれ7〜14日(平均9.5日),7〜31日(17.5日),7〜45日(21.3日),28〜90日(46.3日)であり,熱湯によるものに限るとそれぞれ7〜14日(平均10.0日),15〜17日(16.0日),8〜37日(22.8日),28〜45日(36.0日)であった.以上の結果から,熱傷水疱蓋表皮細胞の変性度と治療期間には,とくに熱湯による熱傷においては,ある程度の相関が認められた.

Hereditary Papulotranslucent Acrokeratodermaの1例

著者: 籏持淳 ,   和田民子 ,   植木宏明

ページ範囲:P.383 - P.387

 Hereditary papulotranslucent acrokeratodermaの1例(50歳,女性)を報告した.臨床的に両拇指球部,小指球部,手指背および足縁から足底にかけて半透明,常色ないし黄白色の扁平丘疹が多発集簇して認められた.病理組織学的に限局性の角質増殖,顆粒層・有棘層の肥厚を呈し,真皮弾力線維に異常は認められなかった,表皮に対し組織化学的,生化学的に検討を行なった.

編集室だより

雑誌名の省略について

著者: 「臨床皮膚科」編集室

ページ範囲:P.312 - P.312

 最近,引用文献に掲載される雑誌名の略称は,1970年にAmerican National Standards Committeeから出された「International List of Periodical Title Word Abbreviations」による略し方が,国際標準として,一般化してきました.皮膚科領域に関係のある言葉の例を下記にあげました.御投稿の際には,これらを参考にして下さい.

連載 皮膚病理の電顕・33

菌状息肉症(II)

著者: 橋本健 ,   岩原邦夫

ページ範囲:P.388 - P.389

 図80 Woringer-Kolopp病と呼ばれる特殊な型の菌状息肉症がある1).四肢に単発する稀な疾患で,その経過は長いが,拡大浸潤がおそく,何年も経過するのに一向に腫瘍化しない.図80 Aにみられるように軽い紅斑,または浸潤を示す局面が,周囲より明瞭に分界された病巣を形成する.自覚症状はない.表面に僅かな細かい鱗屑を生じ,周辺に向かって遠心性に拡大することがあるので,一見浅在性白癬,環状肉芽腫,ザルコイドなどと紛らわしい.生検をとると,真皮上層から表皮へかけて大小のリンパ球の浸潤がみられ(図80 B, C),特に表皮内で集団を作る傾向が顕著である(図80 D, E, F).本症で表皮内に腫瘍細胞の集合したものをポートリエ微小膿瘍(Pa—utrier's microabscess)という.表皮内へ集まる傾向が強いことをepidermotropismというが,本症の別名としてepidermotropic reticulosisのある所以である.また表皮内にボコボコと穴の空いたような空隙を作り,その中に腫瘍細胞を含む像(図80 D, E, F)はバジェット病の組織像に似ているので,pagetoid reticulosis2)なる名称も使用されている.電顕用に固定した組織に光顕用の染色(アズールB)を施した1μの"thick section"が図80 D, E, Fである.オスミウムとグルタールアルデヒドの二重固定により細胞の微細構造や脂質,糖原などの保存が良好なので,フォルマリン固定でパラフィン包埋した組織とは比較にならないほど,組織,細胞の保存が良い.即ち組織や細胞がグサグサに抜けた感じがしない.このような組織でポートリエ微小膿瘍をみると,周囲の角化細胞(keratinocyte)とは明らかに異なる明調な腫瘍細胞が区別できる(図80 D, E, F).細胞質が明るいのはトノフィラメントがないからである.細胞と細胞の間には何の連結もなく,この点でも周囲の角化細胞が多数の細胞間橋を有するのと明瞭な差がみられる.微小膿瘍中の腫瘍細胞の核の切れ込みは,菌状息肉症やセザリー症候群の腫瘍細胞のそれほど深くない.これは後述する如く本症が良性の腫瘍に属するためである.即ち核の切れ込みの度合いは腫瘍細胞の悪性度に比例すると考えられている.図80 Fには真皮乳頭層に浸潤している腫瘍細胞もみられるが,これらの細胞の核の切れ込みの低度も程い.
80B:×1080C:×4080D,E,F:×252

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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