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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科38巻5号

1984年05月発行

雑誌目次

図譜・499

Clear Cell Acanthoma

著者: 武田孝爾 ,   幸田衞

ページ範囲:P.396 - P.397

患者57歳,女性
初診昭和56年10月1日

原著

続発性皮膚アミロイドーシス—主に非腫瘍性疾患の観察

著者: 堀口典子 ,   堀口裕治 ,   初岡美智子 ,   今村貞夫

ページ範囲:P.401 - P.405

 非腫瘍性疾患169例におけるアミロイド沈着の有無を検討し,比較のため表皮性腫瘍性疾患73例,非表皮性腫瘍性疾患16例についても合わせて検討した.その結果,非腫瘍性疾患では,アミロイド沈着は一般に低率であったが,汗孔角化症と慢性湿疹では高率にみられた.中でも汗孔角化症では12例中7例にアミロイド沈着がみられ,その沈着部位は主にcomoid lamellaの直下にみられた.汗孔角化症における高いアミロイド沈着の原因は,本症が日光刺激により異常クローンを生じ,表皮の変性細胞が生じやすいことと関係があるものと思われた.また扁平苔癬や円板状紅斑性狼瘡の基底層には,チオフラビンT染色でのみ陽性のコロイド体様小体がみられ,扁平苔癬の真皮乳頭層に,チオフラビンT染色でのみ陽性のコロイド体様の集塊状物質がみられた.これらの所見は,コロイド体とアミロイド物質の産生機序の近似性を示唆する所見と考えた.

Amyloidosis Cutis Nodularis Atrophicansの1例

著者: 青木重信 ,   加藤英行 ,   矢尾板英夫 ,   兼子耕

ページ範囲:P.407 - P.411

 63歳,女性.腹部,大腿に表面が萎縮性でチリメン皺様の外観を呈する橙黄色の結節性皮疹が多発した.全身状態は良好であり,尿中Bence-Jones蛋白は陰性である.組織学的に,真皮上層から一部皮下組織にかけてエオジンに淡染する塊状物質の沈着をみ,とくに真皮深層以下では血管,附属器周囲に顕著であり,組織化学的にアミロイドと同定した.電顕的にamyloid fibrilを確認した.さらに本物質の,PAP法を用いた抗AL抗体(κ,λ),抗AA抗体,抗ケラチン線維抗体との反応性を検索したが,いずれも陰性であった.なお直腸では,アミロイド物質の沈着を認めていない.

皮疹を伴ったFamilial Amyloid Polyneuropathyの1例

著者: 内山紀子 ,   進藤泰子 ,   小俣隆 ,   太田久彦 ,   張洛禹 ,   小林信也

ページ範囲:P.415 - P.420

 Familial amyloid polyneuropathy (以下FAPと略記)は全身の多臓器にアミロイドが沈着する遺伝性の疾患であり,著しい末梢神経障害と自律神経障害が発現することが特徴であるが,主として四肢に局所性の栄養障害または循環障害による水疱,潰瘍,出血斑,皮膚萎縮,瘢痕等の非特異的な皮疹を時々認めることがある.今回,両下腿に誘因なく水疱と潰瘍が出現したFAPの症例を報告し,併せてFAPの皮疹について若干の文献的考察を述べ,更に皮膚生検の有用性を示す.

臍部に見られた転移性腺癌の経表皮性排除

著者: 山田瑞穂

ページ範囲:P.421 - P.428

 患者は69歳の男で,19年前に胃切除を受け,数年前からこの手術瘢痕の臍の部と,その少し上に小結節を生じ,徐々に増大した.組織学的には,真皮に管腔を形成する腫瘍病巣が多数認められ,管腔構造のまま表皮に取り込まれ,角層に排除されている像も見られた.電顕的には,表皮内に取り込まれた腫瘍細胞に変性を示しているものがあり,また,腫瘍細胞と周囲のケラチノサイトとの間にデスモゾームが認められた.胃癌の再発,転移が疑われたが,X線検査で残存胃に異常なく,原発臓器は不明である.

Paradoxical Bowen's Carcinoma

著者: 玉田伸二 ,   佐野寿昭 ,   橧澤一夫 ,   榊哲彦

ページ範囲:P.429 - P.432

 80歳,男性.約4ヵ月前から左腰部にくるみ大疣状腫瘤が発生.5—FU軟膏外用治療受けるも増大するので切除.病理組織学的に,毛包上中部にボーエン病様変化を認め,paradoxical Bowen's carcinomaと診断した.
 抗癌剤外用治療の既往がある場合,附属器内に残存した腫瘍細胞が毛包上中部を中心に異型的増殖を示し,再生した表皮は正常か,あるいは腫瘍の毛包からの逆侵入を受けることがあると考えられる,このような病変を見た時は毛包原発性悪性腫瘍と鑑別する必要がある.

Bowen病を併発した汗孔角化症の1例

著者: 石倉多美子 ,   畷稀吉

ページ範囲:P.433 - P.436

 54歳,男.15年前から陰茎背面に局面状の汗孔角化症があった.病巣を切除して調べたところ,病巣辺縁部と局面内の角化性丘疹の一部に組織学的に汗孔角化症の像があり,病巣中心部にはBowen病の所見がみられた.

Granulocytic Sarcoma(Myeloblastoma)—腫瘤形成後3年を経て白血化を認めた症例

著者: 窪田泰夫 ,   渡辺晋一 ,   堀嘉昭 ,   岩田純一 ,   大橋辰哉

ページ範囲:P.437 - P.442

 白血病の経過中,結節や腫瘤の形成をみることは少なくない.これらは"腫瘤形成性白血病"と呼ばれている1).このうち骨髄性幼若細胞より成る骨髄芽球腫を形成するものでは急性転化などと密接に関連し,予後不良の前兆と理解されている,しかし,きわめて稀ではあるが,末梢血や骨髄への白血病細胞の浸潤に先行して腫瘤形成をみることがあり,しばしばmycosis fungoidesなどのmalignant lymphomaと誤診されやすい.
 今回われわれは左副睾丸腫瘤で気づかれ,その後著明な多発性皮膚腫瘤とリンパ節腫脹をきたし,これら腫瘤は骨髄芽球腫であり,腫瘤形成後3年を経てはじめて末梢血や骨髄に白血化を認めた41歳,男性の症例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する.

熱傷瘢痕上に有棘細胞癌と並列して生じたMalignant Fibrous Histiocytoma

著者: 小原淳伸 ,   荒田次郎 ,   山本康生

ページ範囲:P.443 - P.446

 84歳,女.79年前,左腰〜下肢にかけて熱傷をうけ瘢痕治癒したが,同部に有棘細胞癌による潰瘍性病変が生じ,それに並列して肉腫様増殖が生じた.この肉腫様病変は組織学的にmalignant fibrous histiocytomaと考えられた.同部を広範囲に摘出し,以後1年間再発をみていない.

非特異的環状紅斑を伴ったHodgkin病の1例

著者: 林葉子 ,   南光弘子 ,   森茂郎

ページ範囲:P.447 - P.453

 62歳,女.環状紅斑を伴い,右側前腋窩部のリンパ節に発症したHodgkin病の1例を報告する.病理組織,リンパ管造影,CTスキャン,Gaシンチ等により,nodularsclerosis型stage Iと診断した.局所に放射線療法施行し,リンパ節の縮小を見た.Hodgkin病の皮膚症状とnodular sclerosis型に特微的なlacunar cellにつき,若干の考察を加えた.

Ferguson-Smith型多発性ケラトアカントーマの家族内発生例

著者: 伊藤達也 ,   岡本昭二

ページ範囲:P.455 - P.458

 74歳,男.20歳より顔面,手背に紅色結節が多発し,瘢痕治癒となる.兄,姉,長男に同症あり.Fcrguson-Smith型多発性ケラトアカントーマと診断.また,患者は膀胱腫瘍を合併している.

再発したProliferating Trichilemmal Cystの1例

著者: 清島真理子 ,   森俊二 ,   北島康雄

ページ範囲:P.459 - P.463

 61歳,女性.約1年半前より右腋窩後部に大豆大の腫瘤を生じ,摘出を受けたが,約半年前より同部に腫瘤が出現し,増大してきたため切除した.組織学的には,真皮上層から皮下組織にわたって,一部で表皮と連続した腫瘍巣がみられた.腫瘍巣は大小の嚢腫様構造からなり,嚢腫内には好酸性の無構造物が入っている.嚢腫壁の構造は,1〜2層の小型で核が好塩基性に濃染する細胞が最外層となり,内層になるにつれて,より大型で,淡染性の核をもつ細胞となっており,proliferating trichilemmal cystと診断した.初回摘出時の標本も合わせて検討し,また,本邦報告例53例についての統計的観察も合わせて報告する.

外毛根鞘性腫瘍の1例

著者: 木村俊次

ページ範囲:P.465 - P.470

 88歳女子に生じた外毛根鞘性腫瘍の1例を報告した,本例は臨床的に19×9×18mmの有茎性腫瘤として前胸部に単発し,表面角質性で硬く,全体として褐色調を呈する.組織学的には大小の嚢腫状構造を有する胞巣が茎部表皮から連続性に増殖し,各胞巣は主に胞体の明るい細胞から成り,辺縁部では基底細胞様細胞が柵状配列を示す部分もみられる.細胞の配列の軽度の乱れやclumping cellも存在する.嚢腫状構造は多くは空虚で若干の絮状物質を容れるのみであるが,一部は角質物質を容れ,それに接する腫瘍細胞は外毛根鞘性角化を示す,この他茎部表皮近傍の腫瘍最外層には,典型的な外毛根鞘性角化を示す大型明調細胞の増殖をみる.明調細胞はいずれも多量のグリコゲンを含む.以上の所見から本例を一部にtrichilemmoma, proliferating trichilemmal cyst,およびtricholemmalkeratosisの所見を併有する外毛根鞘性腫瘍と診断し,類似報告例との比較・検討を行った.

臍部にみられた原発性皮膚カルチノイド

著者: 西本正賢 ,   難波紘二 ,   板垣哲朗 ,   上村昻

ページ範囲:P.471 - P.476

 79歳,男性.7〜8年前より臍部に板状硬の皮下硬結を触れる.組織所見では真皮中層以下に結節状,索状あるいはリボン状を呈する充実性腫瘍細胞巣がみられ,一部で腺腔形成を示す.個々の細胞は小型で円形の核と中等量のやや好酸性の細胞質を有する.この細胞は親銀反応陽性で,セロトニンをもち,電顕的に多形性に富む分泌顆粒を有する.カルチノイドとして摘出し,尿中5HIAAは減少し正常化した.レ線,内視鏡などで消化器,呼吸器の精査を行なうも,内臓カルチノイドは認められず,皮膚原発と考えた.皮膚原発のカルチノイドとしては第2例目(本邦第1例)にあたる.摘出2年8ヵ月後の現在,再発はない.

Giant Cell Tumor of Tendon Sheathの1例

著者: 北島淳一 ,   濱田稔夫 ,   長濱萬蔵 ,   櫻根弘忠

ページ範囲:P.477 - P.481

 19歳,女性の左小指末節指腹に生じたgiant cell tumor of tendon sheathの1例を報告した.約10年前に該部に外傷の既往がある.臨床的には小豆大,弾性硬の可動性に乏しい皮下結節で,表面皮膚は淡赤紫色を呈し,軽度の疼痛と著明な圧痛を認めた.病理組織学的には結合織性被膜を有し,単核ないし多核の組織球様細胞,多核巨細胞および膠原線維性結合織が胞巣状構造を呈し,硝子様変化やヘモジデリンの沈着もみられた.またBodian染色にて神経線維が認められた.摘出時,腫瘍と下部組織との癒着が認められた.以上より自験例を滑液膜より発生したgiant cell tumor of tendon sheathと診断した.本症は通常,手指に生じる場合は無痛性であり,自験例の如く著明な圧痛を伴う例は特異と思われる.本症は手指に生じる良性軟部腫瘍のうち頻度の高いものであるが,再発率の高いことが特徴であり,本症の可能性がある場合は十分な皮膚切開を加えて摘出術を施行することが望ましいと思われた.

爪下外骨腫の3例

著者: 渡辺富美子 ,   長谷川隆 ,   藤田優

ページ範囲:P.483 - P.487

 爪下外骨腫の3例(12歳,男子.19歳,女性,19歳,女性)を経験したので報告した.本症は近年,病理組織学的に骨軟骨腫型と外骨腫型の2型に分類されている.症例1は典型的な骨軟骨腫型,症例2は菲薄化した軟骨帽を有する骨軟骨腫型であったが軟骨の一部に亀裂像を認めた.症例3は骨軟骨腫型と外骨腫型の中間型ともいえる像を呈していた.軟骨の変性に注目し,自験例及び文献的に検討を加えた結果,外骨腫型は骨軟骨腫型の変性像と考えられ,爪下外骨腫の多くは病理組織学的に基本的には骨軟骨腫であって,外的因子の影響をうけ多彩な組織像を呈すると思われる.

小児のPityriasis Lichenoidesの3例

著者: 春日井和子 ,   二村省三 ,   西嶋攝子 ,   河村甚郎 ,   朝田康夫

ページ範囲:P.489 - P.493

 Pityriasis lichenoides chronica (PLC)の臨床像を呈する7歳,5歳3歳の男児例を経験した.組織学的には3例とも典型的な表皮の変化の他に,血管周囲性の密なリンパ球様細胞浸潤,血管壁の膨化,血管壁内のリンパ球様細胞浸潤,赤血球の遊出などpity—riasis lichenoides et varioliformis acuta (PLVA)に一歩近づく所見を呈した.2例の螢光抗体直接法は陰性であった.我々はPLCとPLVAは同一の範疇に入る疾患と考える.

編集室だより

雑誌名の省略について

著者: 「臨床皮膚科」編集室

ページ範囲:P.413 - P.413

 最近,引用文献に掲載される雑誌名の略称は,1970年にAmerican National Standards Committeeから出された「International List of Periodical Title Word Abbreviations」による略し方が,国際標準として,一般化してきました.皮膚科領域に関係のある言葉の例を下記にあげました.御投稿の際には,これらを参考にして下さい.

連載 皮膚病理の電顕・34

菌状息肉症(III)

著者: 橋本健 ,   岩原邦夫

ページ範囲:P.494 - P.497

 図81リンパ球には大きく分けて,免疫グロプリンを作るB cellと免疫反応に関与するT cellがある.末梢血のB cellの約10%には細胞膜上に免疫グロブリンが証明されるので,T cellとの鑑別が可能である1).これらは主としてIgD,IgMであるが,少数のものにはIgG,IgAも証明される1).IgEを持ったB cellはアレルギー性疾患に際して出現するが,普通は稀である.これらの膜に付着した免疫グロブリンは細胞内への膜の取り込みによって細胞質中にも散在するので,螢光抗体法で探すと細胞膜のみならず,細胞質に顆粒状の螢光物質が証明されるのである1).B cellの表面には多くの絨毛が発生するのに対し,T cellの表面は割合平滑であるとされたが,この走査電顕による鑑別法は,細胞の固定操作の方法によって一定しないといわれる.更にマウスの赤血球凝集,細胞膜にIa抗原の存在することなどがB cell鑑別に使用された.T cellは羊の赤血球を凝集する反応以外には決定的な同定の方法がなかった.しかし最近,単クローン抗体でTcellの細胞膜抗原を識別する方法が確立され,Tcellのsubsetも皮膚で染め分けられるようになった.
 T cellの細胞膜を分離してマウスの腹腔内に注射すると,それに対する抗体産生細胞(B stemcell)が刺激されて増殖し,同一細胞の系列化(クローン)ができる.これが単クローンである.そのようなB cellを脾臓より取り出して,マウス骨髄腫に由来し,それ自身は免疫グロブリン産生能を失った腫瘍細胞と融合させると,半永久的にTcellの膜抗体を産生し続けるhybridomaができる.脾臓の単クローンB cellを培養してT cell膜抗体を作らせてもよいが,B cellの寿命は短く,且つ大量生産には向かない.腫瘍細胞との合成細胞を作った所が本法2)のミソであろう.現在手に入るT cellとそのsubsetの膜抗原に対する単クローン抗体には次のような種類がある.これらはすべてマウスで作られたIgGである(Leu7とLeu11はIgM).

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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