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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科38巻6号

1984年06月発行

雑誌目次

図譜・500

Subepidermal Calcified Nodule

著者: 大原国章

ページ範囲:P.506 - P.507

〔症例1〕
患者11歳,女性
初診昭和57年8月18日

原著

Etretinate内服療法が奏効したPapillon-Lefèyre症候群の1例—Etretinate(Ro 10-9359)と主代謝物(Ro 10-1670)の薬物動態について

著者: 森嶋隆文 ,   桧垣美奈子

ページ範囲:P.509 - P.515

 Etretinate 1日20mgの内服療法が奏効したPapillon-Lefèyre症候群の成人例を報告した.奏効過程は劇的で,1ヵ月後には掌蹠の一部を除いて角化性病変は消褪した.しかし,休薬1ヵ月後には皮疹の再燃が認められた.Etretinateの薬物動態に関し,主代謝物の血中濃度が未変性体値よりも高値という理想的なパターンを示した.臨床効果,etretinateの薬物動態からみても,自験例における1日20mgの内服療法(約0.3mg/kg)は妥当と考えられ,今後,1mg/kg/dayの寛解導入量は再検討されるべきことを指摘した.

全身性エリテマトーデス,皮膚筋炎にみられた特異なムチン沈着の2例

著者: 松尾忍 ,   渡辺信 ,   飯塚一 ,   大河原章 ,   日下部芳志

ページ範囲:P.517 - P.521

 症例1:40歳女性,全身性エリテマトーデス.関節痛,皮疹の増悪時に一致して上背部に拇指頭大までの正常皮膚色ないしは黄色の皮下結節が出現した.
 症例2:50歳男性,皮膚筋炎.発病時から頸部,上背部,上胸部に半米粒大までの淡紅色毛孔一致性丘疹が出現した.
 2症例とも組織学的に真皮上層から中層にかけて著明なムチンの沈着を認めた.プレドニゾロン内服投与により皮疹は平坦化,痕跡を残さず消褪した.膠原病におけるムチン沈着としては臨床像が特異であると考え報告し,文献的に検討した.

Pulse療法を行なった全身性エリテマトーデスの1例

著者: 四本秀昭 ,   下川優子 ,   田代正昭

ページ範囲:P.523 - P.526

 近年,超大量のコルチコステロイド剤を一時的に投与するpulse療法が重症のSLE患者で行なわれ,その有効性が指摘されている.
 我々は,従来のpulse療法の適応から多少はずれた,発熱,関節痛,全身倦怠感があり,検査成績でcirculating immune complexes (CIC)がやや高値,低補体価(CH50)を示したSLE患者にpulse療法を行なった.Pulse療法後3日目には自覚症状は消失し,CICは,pulse療法直後高値を示したものの,3日目にはpulse療法前のレベルとなった.そして,6日目に正常上限迄CIC値が低下した.CH50は6日目にやや上昇傾向がみられた.5週目にはCICはほとんど検出できず,CH50は正常値となった.
 以上から,ループス腎炎や脳神経症状を伴うSLEの他にも,SLEのいくつかの指標が活動性を示すような症例ではpulse療法が十分に適応となると考えた.

モルフェア,アナフィラクトイド紫斑,発作性夜間血色素尿症を伴った顔面半側萎縮症

著者: 長谷川正次 ,   大井田真紀子 ,   伊藤篤

ページ範囲:P.527 - P.531

 22歳の女性にみられた顔面半側萎縮症,モルフェア,アナフィラクトイド紫斑,発作性夜間血色素尿症の合併例について報告した.免疫学的異常が根底にあって発症した可能性が示唆された以外は関連性が認められず,現時点では単なる合併と考えた方が無難な症例と思われた.

難治性皮膚潰瘍を伴い急性びまん性間質性肺炎にて死亡した皮膚筋炎の剖検例

著者: 服部智子 ,   北出勘治 ,   志田祐子 ,   水谷仁 ,   白石泰三

ページ範囲:P.533 - P.538

 皮膚筋炎に肺線維症を合併し,肺病変の急性増悪により死亡した症例を報告した.本例の特徴的所見として,典型的な皮膚病変の外に,全身皮膚に多発性の難治性潰瘍が認められ,本疾患における肺病変の発症機序との関連が推測されたが,肺の剖検所見では血管炎は証明し得なかった.皮膚症状,筋炎症状共に通常量のステロイド投与により一時軽快したが,皮膚潰瘍病変及び肺病変は,ステロイド大量投与にも反応せず死亡した.皮膚筋炎における肺病変の病理組織学的所見及びその治療法につき考察を加えた.

Herpetiform Pemphigusの1例

著者: 四本秀昭 ,   下川優子 ,   田代正昭

ページ範囲:P.539 - P.543

 Herpetiform pemphigusの80歳,男性例を報告した.これ迄の本邦における30例の報告例について,臨床症状,組織学的所見,免疫組織学的所見,治療,一般検査成績について統計的観察を行なった.又,本症の発症機序及び天疱瘡群における本症の位置づけについて私見を述べた.

Amyloidosis Cutis Nodularis Atrophicansの1例における沈着アミロイドの検討

著者: 増田智栄子 ,   林正幸 ,   亀田洋 ,   中嶋弘 ,   永井隆吉

ページ範囲:P.545 - P.547

 60歳,女性.外陰部から大腿部にかけて計4個の柔かい結節を生じたamyloidosiscutis nodularis atrophicans (Gottron)の1例を報告した.病理組織化学的に,真皮全層および皮下組織にわたり,びまん性あるいは塊状に,また血管・付属器周囲にアミロイド物質の沈着を認め,その近接部に主として形質細胞よりなる細胞浸潤をみた.血清学的にM蛋白は証明されなかったが,局所浸潤形質細胞には,免疫グロブリンL鎖(κ,λ型),Bence-Jones蛋白(κ,λ型)の局在がPAP法により証明された.以上より,本症は,これら形質細胞が産生する免疫グロブリンL鎖ないしBence-Jones蛋白がアミロイド蛋白(AL)に変化して沈着した結果生じたものと推察した.

先天性表皮水疱症の剖検2症例

著者: 野口信子 ,   真鍋求 ,   高森建二 ,   小川秀興

ページ範囲:P.549 - P.554

 劣性遺伝性栄養障害型先天性表皮水疱症の剖検2症例を報告した.本邦における先天性表皮水疱症の報告例につき,剖検例を中心に整理し,その病変部位の拡がり,死因等につき考察を行なった.尚,症例2は骨肉腫を合併していたので,本症と悪性腫瘍の合併について,国内外の報告を検討し,その関連性を考按した.

モノクローナル抗体により組織内リンパ球サブセットを検討したサルコイドーシスの1例

著者: 森田秀樹 ,   森田吉和 ,   相模成一郎

ページ範囲:P.555 - P.557

 53歳女性の皮膚サルコイドーシス病巣部における組織内リンパ球サブセットを,モノクローナル抗体Leu−1, Leu−2a, Leu−3a, Leu−4を用いて検討した.その結果,肉芽腫病巣内に多数のLeu−1, Leu−3a, Leu−4陽性細胞と少数のLeu−2a陽性細胞が見出された.以上の結果により,サルコイドーシスの病態にTリンパ球のうちの,特にhelper T細胞が関与している可能性が示唆された.

Solitary Angiokeratoma

著者: 沢田幸正 ,   角田孝彦

ページ範囲:P.559 - P.563

 39歳男子,右第5指DIP関節部橈側に発生したsolitary angiokeratomaの1例を報告した.本症例については,軽度の外傷刺激により少なからざる量の静脈性出血をみたとの病歴より,容易に血管性病変との疑診をおきえたが,本症は外見上悪性黒色腫に似る場合が多いとされており,鑑別診断上留意すべき疾患と考えられる.

比較的まれな部位に発生した基底細胞腫の3例—昭和40年から昭和57年までの本邦皮膚科領域における被髪頭部および外陰部発生例の集計

著者: 篠田英和 ,   堀真

ページ範囲:P.565 - P.570

 24歳女性の被髪頭部,84歳女性の大陰唇および74歳男性の右陰股部から陰嚢にかけて発生した基底細胞腫の3例を報告するとともに,昭和40年から57年までの被髪頭部,外陰部に発生した本邦基底細胞腫報告例について統計的な検討を加えた.被髪頭部に生じた基底細胞腫は49例みられ,女性に好発し脂腺母斑に続発した症例が多かった.一方,外陰部に発生をみた報告例は33例であり,男性では陰嚢,女性では大陰唇に好発する傾向がみられた.被髪頭部および外陰部の各臨床型,組織型の頻度には性別による違いは認められなかった.

多発性皮下結節(Trichoepithelioma?)の1例

著者: 一木幹生 ,   阿部順一 ,   加治英雅

ページ範囲:P.571 - P.575

 64歳男性.小児期より,顔面,躯幹,下肢に皮下結節が出現し,加齢と共に数および大きさを増してきた.腫瘍は組織学的に真皮深層から皮下組織に存在し,豊富な結合組織の増殖を伴う基底細胞様細胞からなり,角質嚢胞やprimary hair germ様の構造がみられた.組織学的にtrichoepitheliomaを考えた.

Desmoplastic Malignant Melanomaの所見を示した爪甲下黒色腫の1例

著者: 藤田優 ,   小林まさ子

ページ範囲:P.577 - P.580

 67歳,男,右第1指爪甲下の黒色腫を報告した.臨床的に灰褐色の弾性硬の腫瘤で,組織学的に結合織増生を伴う紡錘形腫瘍細胞の束状増殖からなり,desmoplastic malignant melanomaと診断した.本症の内外文献例は27例におよび,それらにつき若干の検討を行なった.

肺小細胞癌の皮膚転移

著者: 儘田晃 ,   比留間政太郎

ページ範囲:P.581 - P.584

 67歳,女.初診の3カ月前,右下背部の自覚症状を欠く拇指頭大腫瘤に気づく.その後急速に増大し小児手拳大,半球状隆起性腫瘤となった.初診時,腫瘤は表面平滑,その中央には毛細血管拡張を認め,弾性硬で,下床とは可動性があった.右腋窩に胡桃大,弾性硬の皮下結節を1個触知した.背部腫瘤の組織像は,真皮における小型で異型性に富む細胞の稠密な浸潤性増殖であった.胸部レ線にて右肺門部に異常陰影を認め,経気管支肺生検にて肺小細胞癌と診断された.背部皮膚腫瘤の電顕像も肺小細胞癌の所見に一致し,その皮膚転移と診断した.

Mycobacterium marinum感染症の1例—ST合剤による治癒例

著者: 新井裕子 ,   中嶋弘 ,   黒沢伝枝 ,   高橋泰英 ,   神永陽一郎

ページ範囲:P.585 - P.589

 ST合剤(sulfamethoxazole-trimethoprim)が奏効したMycobacterium marinum感染症の1例を報告した.また同薬剤の本菌に対する試験管内感受性成績を報告した.
 症例:30歳,男性,某水族館飼育係,初診の1年4カ月前より,左肘頭部に皮疹出現し漸次拡大.小外傷は常にあり詳細不明,現症:左肘頭部に15×25mmの紅色,軽度隆起性局面があり,鱗屑,痂皮を伴う.領域リンパ節腫脹なし,生検組織学的所見は化膿性,肉芽腫性反応.組織学的に菌要素は検出されず.組織片からの分離株は細菌学的にMycobacterium marinumと同定された.ツ反陽性.ST合剤3錠/日,8週間投与にて治癒した.分離株に対するST合剤のMICは6.25mcg/mlで,また,sulfamethoxazoleでも6.25mcg/mlを示したのに対し,trimethoprimのMICは50mcg/mlにとどまった.

弘前大学皮膚科における最近10年間(昭和48年〜57年)のベーチェット病の統計

著者: 高橋正明 ,   花田勝美 ,   橋本功 ,   帷子康雄

ページ範囲:P.591 - P.595

 昭和48年から57年までの10年間に弘前大学皮膚科においてベーチェット病と診断された58例(完全型17例,不全型41例)およびその疑わしい型24例について統計的観察を行なうと共に,本邦におけるベーチェット病の変貌について若干の考察を加えた.先ず完全型および不全型では,①その合計58例は10年間の外来新患総数19,058名の0.3%であった.②初発年齢の平均は29.0歳で女子が男子より高齢に偏して幅広く分布する傾向がみられた.③4主症状の発現頻度は口腔アフタ96.5%,皮膚症状94.8%,陰部潰瘍79.3%,眼病変50%であり,従来の報告と略一致した.④経過・予後は,治癒・軽快が29例と50%を占め,死亡例2例はともに神経ベーチェットであった.次に疑わしい型でも治癒・軽快例は16例66・7%で,完全型・不全型のそれと大差のない成績であった.

編集室だより

雑誌名の省略について

著者: 「臨床皮膚科」編集室

ページ範囲:P.515 - P.515

 最近,引用文献に掲載される雑誌名の略称は,1970年にAmerican National Standards Committeeから出された「International List of Periodical Title Word Abbreviations」による略し方が,国際標準として,一般化してきました.皮膚科領域に関係のある言葉の例を下記にあげました.御投稿の際には,これらを参考にして下さい.

連載 皮膚病理の電顕・35

菌状息肉症(IV)

著者: 橋本健 ,   岩原邦夫

ページ範囲:P.596 - P.598

 図82 T cellのsubsetの割合がT cellの浸潤を主病変とする腫瘍の悪性度の尺度になることを図81で述べたが,核の切れ入みの程度も悪性度の指標として使用されている.むしろこの方が文献的にも古く1,2),多数の研究者の一致した支持を得ている,数量的な標示をする場合,悪性度を主眼にするか良性度を示したいのかを,まず決める必要がある.核の切れ込みの場合には悪性になるほど,その程度が増すので,標示数が大きいほど悪性というふうになると便利である.また標示数が小数点以下では扱いにくい.勿論,核膜の長さ対核の容積を求めるわけである.これらの点を考慮に入れながら,もし核が満月のように真ん丸であった場合を考えよう.核膜の長さ(円周)は核の半径をγとすると2πγであり,核の容積(円の面積)はπγ2である.核膜の長さの核質に対する割合が核の切れ込みの指標となるので,核膜の長さを分子にすると2πγ/πγ2=2/γとなり,その値は半径に左右されることになる.かつ半径2以上の場合には,その指標数は小数点以下の値となる.γを消去し,指標数を1以上の値にするには,分母のルートをとればよいことは明瞭であろう.このようにして考案され,現在一般に使用されているのがnuclear contour index (NCI)である.即ち,NCI=核膜の全長/√核の面積である.勿論,計測は電顕写真の上で行なわれなければならない.この計算式で,切れ込みの全然ない正円形の核のNCIを試算すると,2πγ/√γ2π=2√πとなり,その値は約3.54である(図82A),少しでも核に切れ込みがあればこの値は増加するので(図82B〜I),NCIが小数点以下になることはない.本図では種々のNCIを持ったT cellの例を示した.NCI3.67の細胞の核(図82A)はほぼ正円に近く,NCI13,9のそれ(図821)は白血球の分葉核のように中途で分離している.これは切れ込みが深く,かつ入りくんでいるために超薄切片中で不連続となったのである.本図で示した凡ての細胞は,その細胞膜をLeu 1, Leu 3aまたはOKT 8で標識してある.即ちこれらの細胞は確実にT cellである,細胞膜に存在するそれぞれの抗原はこれらの単クローン抗体と反応し,更にperoxidase—antimouse IgGがその反応部に吸着し,最後にdiaminobenzidine (DAB)を加えてその酸化物を作る手順は図81で解説した.図81では最終反応物質は褐色の酸化されたDABであったが,この酸化物は電子線を通さず(電子密),従ってフィルムの上では陰影となって結像する.即ち電顕でも同時に使用できるのである(図83参照).
×10,200H:×14,000

印象記

第10回Fortbildungswoche für praktische Dermatologie und Venerologieに出席して

著者: 今井清治

ページ範囲:P.600 - P.602

 1983年5月より半年間,ミュンヘン大学皮膚科学教室に留学し,たまたまこの学会に出席する機会を得たので,ここにその大要を報告したいと思う.
 この学会は大体3年に1回,ミュンヘン大学皮膚科学教室とドイツ皮膚科医連盟共催の下に開かれており,今回は第10回で,1983年7月25日から29日までの5日間,ミュンヘンのSheraton Hotelで催された.内容は表題に示される如く臨床に直結した教育講演的な色彩の強いもので,従って対象は主に皮膚科臨床医である.演者はドイツ内外の第一線級の皮膚科学者及びミュンヘン大学皮膚科学教室の講師級の人たちである.この学会の第1回は1951年,Marchioniniがミュンヘン大学の教授の時で,Braun-Falcoが当大学の主任教授になってからは,今回が5回目である.学会の名称も前回まではFortbildungskursと呼ばれており,この学会の性格をよく表わしている.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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