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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科38巻7号

1984年07月発行

雑誌目次

図譜・501

Amalgam Tattoo

著者: 岡大介 ,   幸田衞 ,   中川昌次郎 ,   植木宏明

ページ範囲:P.612 - P.613

患者56歳,男性,歯科医師
初診昭和57年5月1日

原著

好酸球性膿疱性毛嚢炎—組織像形成機序の解析の試み

著者: 中村晃一郎 ,   竹松英明 ,   五十嵐稔 ,   田上八朗

ページ範囲:P.615 - P.618

要約 29歳,女性.初診3カ月前より両頬部,上肢に痒い環状の紅斑局面が出現.末梢血に好酸球増多(15%)を見,病理組織像では毛嚢上皮内に好酸球が主体の膿疱形成を認め,好酸球性膿疱性毛嚢炎と診断.本症ではこの症例を含め毛嚢,脂腺にAlcian blue染色陽性像を認める報告が7例ある.毛嚢壁破壊のある酒皶2例,毛孔性角化症1例でも同様の陽性物質沈着があり,このムチン沈着は毛嚢壁破壊に二次的なものと考えた.一方,毛嚢脂腺への好酸球遊走機序を解明すべく行なったin vitroの走化性の実験からは,皮脂が好中球に対して著明な,また好酸球にも弱いながら走化性活性を有することを認めた.

無汗症を続発したコリン性蕁麻疹の1例

著者: 相原道子 ,   林正幸 ,   中嶋弘

ページ範囲:P.619 - P.623

 無汗症を伴ったコリン性蕁麻疹の1例を報告した.患者は30歳の男性で,初診の約半年前から運動時や入浴時に,全身に白色の膨疹が出現するようになった.この頃から発汗の減少を訴え,初診の約半年後には全身性無汗症となった.ニコチン酸,10%塩化ナトリウム,塩化アセチルコリンの皮内試験で膨疹を形成し,前2者では衛星状の紅斑を伴った.アトロピン試験,アドレナリン試験は正常であったが,ピロカルピン投与による発汗試験は陰性であった.皮膚組織所見では,真皮中・下層の汗管周囲にリンパ球浸潤が認められたが,汗腺の周囲には細胞浸潤はみられず,管腔内にはエオジン好性の分泌物が認められた.PAS染色では,リンパ球浸潤を伴った汗腺で多数の空胞が認められた.
 以上報告するとともに,本例の後天性全身性無汗症の発症機序について考察した.

心臓病変を伴った全身性強皮症の1例

著者: 川村いづみ ,   山崎雄一郎 ,   栗原誠一 ,   西川武二

ページ範囲:P.625 - P.629

 心臓病変(強皮症心)を伴った典型的な全身性強皮症の1例を経験した.心臓病変の病因を追究すべく種々の検査を行なった.自験例では,心臓病変は冠循環系の異常による可能性はむしろ少なく,冠循環系とは無関係な膠原線維の増生によるものと推察された.心臓病変は強皮症患者の予後を左右する重要な合併症の1つで,又その発生機序は,皮膚病変の発生機序と関連がありうると考え,若干の文献的考察を加えて報告した.

指端壊疽を併発したMCTDの1例

著者: 武内幸恵 ,   角田克博 ,   大滝倫子 ,   吉田正己

ページ範囲:P.631 - P.637

 指端壊疽を併発したmixed connective tissue disease (以下MCTDと略す)の1例を報告し,指端壊疽の原因としての微小血栓の関与,治療に用いられる副腎皮質ホルモン剤大量使用の是否,プロスタグランディンE1(以下PGE1と略す)点滴静注法の効果などについて言及した.

耳介の潰瘍を伴ったChondrodermatitis Nodularis Chronica Helicisの1症例

著者: 橋本久美子 ,   細川倫子

ページ範囲:P.639 - P.643

 79歳男性の両耳介に見られたchondrodermatitis nodularis chronica helicis (CNCH)と診断した症例を報告した.症例は初診3年前より冬になると両耳介に凍瘡様皮診を反復していたが,昭和58年3月,同様の皮疹が左耳介に出現し潰瘍を形成した.難治性のため,悪性腫瘍を疑い生検した結果,組織学的にCNCHと考えられる所見が得られた.なお,右耳介にも小結節が認められたが,いずれも臨床的にCNCHに典型的な自発痛を欠いていた.過去の報告例を統計的に検討すると共に,典型的有痛性小結節を欠く場合の本症の診断上の問題点について述べた.

汎発性環状肉芽腫の1例—病変中に出現する組織球および変性膠原線維の電顕像について

著者: 下田肇 ,   伊崎誠一 ,   丹治修

ページ範囲:P.645 - P.650

 汎発性環状肉芽腫の75歳・男性例を経験し,肉芽腫を構成する膠原線維と組織球の微細構造を電顕的に検索した.初診時,前胸部・肩甲部・上背部及び手背に9〜15mmの環状に配列する赤褐色小丘疹を多数散在性あるいは融合性に認めた.組織学的検索では真皮全層に膠原線維の変性像,それらに混じ線維芽細胞・リンパ球・組織球が認められた.一部では柵状肉芽腫の典型像を呈していた.電顕的には膠原線維の類壊死性変化が認められ,組織球・線維芽細胞には著明な活性化像が認められた.紐織球は粗面小胞体の発達した結核結節型と空胞形成の多いサルコイドーシス型が混在する像を呈した.このような組織球の変化は金属アレルギーに伴う肉芽腫によく見られる変化であり,環状肉芽腫の発症因子に何らかの示唆を与えるものであった.

異型線維黄色腫の1例

著者: 麻生和雄 ,   今村明 ,   穂積豊

ページ範囲:P.651 - P.656

 80歳,女子の頭部に単発した異型線維黄色腫の1例を報告した.本症は間葉系の増殖反応で良好な経過をとるとされるが,最近転移例が報告され,特に悪性組織球腫との関連が改めて論じられている.電顕的には組織球様細胞,線維芽細胞様細胞,未分化細胞,巨細胞,黄色腫細胞より構成され,間葉系由来を示した.

Letterer-Siwe病の1例

著者: 大沢純子 ,   石井則久 ,   長谷哲男 ,   中嶋弘

ページ範囲:P.657 - P.661

 8カ月,男児.生後5カ月頃より,陰股部に紅斑・びらんが出現し,某医にてステロイド外用療法を受けたが改善せず,皮疹は漸次拡大し,生後8カ月目に皮膚生検により,Letterer-Siwe病と診断された.診断時のLahey scoreは2点で,肝・肺・造血器など主要臓器の機能障害は認められなかった.腹部の痂皮性丘疹の生検像は典型的で,真皮上層から一部表皮内にかけて組織球の浸潤が著明であった.さらにPAP法によるS−100蛋白染色を行なったところ,浸潤した組織球が核・細胞質ともに選択的に染まる所見を得た.治療はプレドニゾロンとメトトレキセートの経口投与を4週間施行したのみで,皮膚症状,血液所見ともに正常化した.発症後7カ月に至る現在も重篤な障害は現われず,Letterer-Siwe病の良性型と考えられる.

疱疹状膿痂疹の1例

著者: 岡野昌樹 ,   畑清一郎 ,   船井龍彦 ,   岡田奈津子 ,   喜多野征夫 ,   清水広

ページ範囲:P.663 - P.667

 23歳,女性.妊娠5カ月時に汎発性に膿疱性皮疹と発熱を来した症例で,病理組織学的にはKogojの海綿状膿疱を呈し,尋常性乾癬の既往がないので疱疹状膿痂疹と診断した,検査成績では好中球増加,血沈亢進の他,血中プロゲステロン,イオン化カルシウムの高値を示し,好中球遊走能の亢進を認めた.入院後,ゴナドトロピン筋注,次いで副腎皮質ホルモン内服を行なったが,皮疹に対し効果なく,分娩後の自然軽快も認められなかったので,etretinate (Ro 10-9359)を投与したところ奏効した.

真皮型若年性黒色腫の1例

著者: 玉田伸二 ,   佐野寿昭 ,   檜澤一夫 ,   法村晢史 ,   荒瀬誠治

ページ範囲:P.669 - P.672

 18歳,女性.生下時より全身にcafé au lait spot,2年前より全頭脱毛あり.昭和58年6月頃より,左下腿内側に小指頭大の赤色腫瘤出現.現症:左下腿下部内側に境界明瞭な直径約1cm大,暗赤色,表面疣状の腫瘤を認めた.自覚症状無し.病理組織学的所見:病変は真皮内に限局し被覆表皮は過角化と萎縮を示す.増殖は紡錘形細胞と,多核巨細胞を含む大型の類上皮細胞より成るが,いずれにもメラニン顆粒は認められない.紡錘形細胞は腫瘤の大部分を占め,皮面に対して垂直に配列し,所によっては腫瘍細胞はまばらで,線維化,著しい小血管増生,びまん性リンパ球浸潤を示した.類上皮細胞は真皮上層で2,3の胞巣を形成している.PAP法で腫瘍細胞は,S−100蛋白強陽性であったが,リゾチーム,第Ⅷ因子関連抗原は陰性であった.以上の所見より,真皮型若年性黒色腫と診断した.真皮型若年性黒色腫には,いわゆる境界部活性を欠き,増殖細胞内にメラニン顆粒が認められないことが多く,炎症性肉芽組織や若年性黄色肉芽腫,血管拡張性肉芽腫,硬化性血管腫等の間葉系良性腫瘍と紛らわしい組織像を示すことがある.

いわゆる血管芽細胞腫(中川)について—5例の観察

著者: 村本文男 ,   熊切正信

ページ範囲:P.673 - P.677

 最近我々は5例の血管芽細胞腫(中川)と考えられる症例を経験した.組織学的にいずれも未熟な間葉系の細胞集団が真皮内と一部皮下組織に散在し,部分的に血管形成傾向を認めた.うち4例を電顕的に観察したが,出現する細胞はスリット状の管腔を囲む未熟な内皮細胞と,さらにその外側を囲む周皮細胞とveil cellと同定され,これらの細胞間の関係は正常血管におけるものと同じであった.また内皮細胞内に直径1μの直線と破線が交互に配列する特異な結晶様構造を認めた.

急性骨髄性白血病の経過中に併発したSweet症候群の1例

著者: 柏原万里 ,   古川福実 ,   加川大三郎

ページ範囲:P.679 - P.685

 62歳女性で,AML (急性骨髄性白血病)の非寛解中(AML発症後9カ月目)に,頬部に,表面に多数の小水疱を伴う境界明瞭な隆起性紅斑が生じ,組織学的には1964年にSweetの報告したSweet症候群に合致するものであった.皮疹は,約1カ月にて,瘢痕を残さずに自然消褪した.
 近年,Sweet症候群が,悪性腫瘍,特に,白血病と合併する率が高いことが注目されている.我々は,既報告例をまとめると共に,本症例に生じたSweet症候群の皮疹を,AMLに併発した非特異疹の1つとしてとらえ,その発生機序について多少の文献的考察を加えた.

早期胃癌の皮膚転移例

著者: 橋爪鈴男 ,   久保和夫 ,   土屋雅則 ,   下田祥由 ,   田所衛

ページ範囲:P.687 - P.690

 頸部から後頭部にかけ硬結性腫瘤を呈した早期胃癌(Ⅲ+Ⅱc)の皮膚転移例を報告した.69歳,女性.昭和51年8月,早期胃癌にて手術した.術後約2年8カ月後に皮膚転移が出現した.その後全身状態悪化し,皮膚転移出現後約1年6カ月後に死亡した.皮疹は圧痛,熱感のない硬結性腫瘤で,被髪部は一部粗毛となっていた.組織学的には真皮膠原線維間に印環細胞型の腫瘍細胞が散在し,PAS染色,alcian-blue染色は陽性であった.剖検にて肺,肝,腎,卵巣など多臓器に転移巣を認めた.既往歴,皮膚転移臨床所見,皮膚生検所見,剖検所見より早期胃癌の皮膚転移(sclerodermoid type)と確定診断し,転移はリンパ行性の可能性が強いと思われた.また,alopecia neoplasticaと思われる所見も認められた.

Superficial Spreading Melanoma

著者: 加藤泰三 ,   谷田泰男 ,   竹松英明

ページ範囲:P.691 - P.695

 50歳,女性の下腿に出現した表在拡大型悪性黒色腫superficial spreading melano—ma (SSM)の1例を報告する.17×13mm大,境界鮮明,全体がわずかに盛り上がりを示す黒色腫瘤である.色調が単調であることと,受診前10年の間増大傾向が認められなかったことから良性腫瘍を考え,最初腫瘍より数mmの範囲で切除した.病理組織学的にいわゆるpagetoid patternがみられ,最終的にSSM,level 2と診断した.改めて3cmの正常皮膚を含め広範囲切除術を施行した.本症例は東北大学皮膚科の悪性黒色腫100例のうち,日本人として最初の症例である.

5-FCにより光線過敏症を起こし温熱療法によって治癒したクロモミコーシスの1例

著者: 高橋泰英 ,   黒沢伝枝 ,   中嶋弘 ,   丸山光雄

ページ範囲:P.697 - P.702

 5-Fluorocytosine(5-FC)により光線過敏症を起こしたため,局所温熱療法を施行し治癒せしめたクロモミコーシスの1例を報告した.症例は51歳,男性.初診8年前より前腕伸側に皮疹があり,KOH法にて鱗屑中に,また病理組織標本にて膿瘍ないし肉芽腫中に,sclerotic cellsを確認.組織片を培養し,Fonsecaea pedrosoiを分離.5-FC 200mg/kg(12g/日)内服で皮疹はやや軽快したが,3週間後に裸露部に皮疹出現.5-FCによる光線過敏症を疑い内服中止したところ速やかに消失.クロモミコーシスの治療は以後,化学カイロによる局所温熱療法に変更.約5カ月後,軽度の瘢痕を残し治癒.その後,再発を見ない.分離菌は39℃以上で発育が抑制された.あわせて本邦における5-FCの副作用,特に薬疹についての集計と,化学カイロ貼布後の皮膚温の変化について若干の考察を加えた.

菌体周囲沈着物を認めたクロモミコーシスの2例

著者: 松尾茂 ,   奥田長三郎 ,   竹内誠司 ,   佐藤良夫 ,   黒川捷

ページ範囲:P.703 - P.706

 クロモミコーシスにおいて菌体周囲沈着物を認めた報告はきわめて少ない.症例1は34歳,女性.約10年前に発症した背部の鱗屑を有する浸潤性紅斑.症例2は70歳,男性.数年前に発症した左臀部の痂皮状の鱗屑を伴う浸潤性紅斑.2例とも外傷の既往はなく,原因菌はFonsecaea pedrosoiであった.組織学的に真皮に多核白血球からなる微小膿瘍がみられ,そこに存在するsclerotic cellsの周囲にエオジン好性物質の沈着を認めた.この沈着物質は星芒状体と同質のものと考えられ,その形成には多核白血球が関与しているものと推測された.

編集室だより

雑誌名の省略について

著者: 「臨床皮膚科」編集室

ページ範囲:P.618 - P.618

 最近,引用文献に掲載される雑誌名の略称は,1970年にAmerican National Standards Committeeから出された「International List of Periodical Title Word Abbreviations」による略し方が,国際標準として,一般化してきました.皮膚科領域に関係のある言葉の例を下記にあげました.御投稿の際には,これらを参考にして下さい.

連載 皮膚病理の電顕・36

菌状息肉症(Ⅴ)

著者: 橋本健 ,   岩原邦夫

ページ範囲:P.707 - P.710

 図83菌状息肉症やセザリー症候群がT cellの腫瘍であるとすると,NCIはT cellのみで計測しなければ意味がない.普通の電顕写真でTcellをB cellや組織球などから区別する微細構造的特徴はない.従って膜抗原の染色が単クローン抗体の応用により組織で可能となるまでは,核膜の入りくんだいわゆるcerebriform cellのNCIを計測していた1〜4).図83Aで示したようなLeu 3a陽性のhelper cellの集合部分を電顕でみると,図83Bのようにリンパ球様の細胞の集合がみられる,しかし,この中でNCI 7.18の細胞のみがLeu 3a陽性,即ち細胞膜がDABの酸化物で電子密にラベルされている.他の2つの細胞は染まっていない,しかし核には中等度の切れ込みがあり,Leu 3aの染色なしでは最初の細胞との区別が難しい.NCIを無染色の標本で計測する場合,当然これら2個の細胞のNCIも計算に入れることになり,不正確なデータの原因となる.我々の最近の研究5)では,T cellは一般にnon—T cellよりNCIの値が高い.本図でもNCI5.67と6.25の細胞はLeu 3a陽性の細胞のNCI7.18より低い値を示す.NCI 6.25の細胞はsup—prcssorかもしれないがNCI 5.67の細胞は組織球のようである.
×3,600挿入図:×189

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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