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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科38巻8号

1984年08月発行

雑誌目次

図譜・502

有棘細胞癌

著者: 樋口道生 ,   古賀美保 ,   脇元敦彦

ページ範囲:P.722 - P.723

患者46歳,男性
初診昭和56年6月22日

原著

Cutaneous Plasmacytosisの1例

著者: 石井則久 ,   宮川淳子 ,   林正幸 ,   中嶋弘

ページ範囲:P.725 - P.729

 66歳,女性.1年前より,ほぼ全身に自覚症のない直径5〜30mm,不正形の赤褐色〜暗褐色斑を多数認めた.組織学的には真皮,一部皮下組織に血管周囲を中心とするpatchyな形質細胞の浸潤を認めた.この形質細胞には異型性,分裂像を認めなかった.PAP法では,この形質細胞はIgG,IgA,κlight chain,λlight chainで陽性,IgMは軽度陽性,IgEは陰性所見を呈した.従って,多クローン性の形質細胞浸潤と結論した.また,STS陽性であったが,抗生物質内服療法による皮疹の変化はみられなかった.これらより本症例を皮膚に限局するcutaneous plasmacytosisと診断した.

Inflammatory Linear Verrucous Epidermal Nevusの兄弟例

著者: 鈴木恵 ,   斎藤昭雄 ,   結城直方 ,   森下美知子 ,   佐藤信輔 ,   佐藤良夫

ページ範囲:P.731 - P.736

要約 Inflammatory linear verrucous epidermal nevusの兄弟例を報告した.兄(8歳),弟(5歳)ともに生後まもなく列序性配列を示す紅色疣状皮疹が出現し,徐々に拡大した.激しい瘙痒を伴い,切除術を除く各種治療に抵抗性であった.2例ともに,皮疹は広範囲に分布し,兄では体表の右側に偏位し,弟では左右対称性の分布を示した.また,兄の内足縁には,正常皮膚色の疣状皮疹がみられた.弟では,脳波,頭部CTスキャン,歯の石灰化に異常を認め,epidermal nevus syndromeとの関連を疑わせた.本症の同胞発症は稀であり,著者らの調べ得た限りでは他に1報告をみるのみである.

エクリンらせん腫

著者: 熊切正信 ,   月永一郎

ページ範囲:P.737 - P.741

 43歳,女.胸部に15年前からある皮下腫瘤.圧痛がある.組織学的には真皮深層に数個の腫瘍細胞巣があり好塩基性である.各腫瘍細胞巣は偽管状構造が特徴で,小円形細胞が辺縁に並び,大型の明るい細胞が内側にみられる.電顕所見では筋上皮細胞,トノフィラメントの発達した細胞,ミトコンドリアの豊富な細胞が区別できた.ヒアリン体は基底板,係留線維が集まってできている.

Eccrine Nevusの1例

著者: 真木登喜世 ,   田中洋子

ページ範囲:P.743 - P.746

 37歳,男性の右前腕に発症した単純型エックリン母斑を報告.15年来の痒疹様皮疹の加療後,半米粒大,扁平隆起性丘疹,色素斑,色素脱失などの混在した帯状局面が明瞭となり,暑い日に,局所多汗あり.組織所見では,エックリン汗腺の増生と汗管の一部に拡張所見が認められた.また,発汗テストで,病変部に多汗が証明された.本症の単純型と複合型を合わせた本邦報告例12例を中心に,若干の考按を行なった.

特異な組織像を示したアポクリン腺腫

著者: 木村俊次 ,   馬場恵美

ページ範囲:P.749 - P.753

 60歳,男.頭頂に2年来,1.6×1.4×0.8cmの広基有茎性腫瘤が単発.組織学的に大小の胞巣をなす腫瘍細胞が真皮全層に増殖し,一部被覆表皮および毛嚢と連続する.被膜はない.腫瘍細胞はクロマチンに乏しい明るい核を有する細胞が主体をなし,その大部分は1〜2列の吻合状索条をなす.異型性や分裂像はない.これら胞巣内には充実性増殖部,嚢腫様構造,管腔構造,断頭分泌,角質嚢腫,脂腺様変化なども散在する.索条間や胞巣周囲の間質は弱好酸性,ほぼ均質化して硝子様を呈し,ジアスターゼ抵抗性PAS陽性を示した.これらの所見は一見,円柱腫のそれと類似するが,主たる細胞が基底細胞様細胞でない点などが合致しない.また自験例は他のアポクリン系良性腫瘍とも合致しないことから,表題のごとき名称を冠して報告した.

血管芽細胞腫(中川)の1例—電顕的観察

著者: 白井利彦 ,   松本博仁 ,   高木圭一 ,   北村弥 ,   坂本邦樹

ページ範囲:P.755 - P.759

 3カ月の女児.生後2カ月頃から右大腿,膝関節から2横指上方に拇指頭大の硬結を伴う紅斑を生じ,生検にて血管芽細胞腫(中川)と診断した,電顕的観察で内皮細胞中に高電子密度の顕粒を多数認めた.このものはX線微量分析にて鉄を含有することが明らかにされた.
 腫瘤は生後10カ月頃から自然消褪しはじめ,満1歳時には硬結は触れず,潮紅もほとんど消失している.

限局性多発性神経線維腫—自験2例と内外報告例の検討

著者: 大草康弘 ,   長島正治

ページ範囲:P.761 - P.765

 身体の一部皮膚に限局して多発した神経線維腫の2例を報告した.第1例は33歳男性,左肩から鎖骨部,上腕伸側に,第2例は55歳女性,右耳後部,顎下,側頸部から上腕伸側,右上背部に,それぞれ限局して多発性,散在性に弾性軟の小腫瘤が認められ,他にレックリングハウゼン病の症状はなかった.これら腫瘤は組織学的に神経線維腫であった.また電顕的にも検索した.内外文献例21例および自験2例を総括し若干の考察を加え,本症の名称としては限局性多発性神経線維腫が最も適切であることを述べた.

悪性線維性組織球腫の電顕的検討

著者: 宮入宏之 ,   諸橋正昭

ページ範囲:P.767 - P.774

 悪性線維性組織球腫の電顕的観察を行なった,腫瘍は多種類の細胞より構成され,線維芽細胞様細胞,組織球様細胞,未分化間葉細胞,多核巨細胞,黄色腫細胞,平滑筋細胞様細胞などが認められた.これら腫瘍細胞の大部分は前2者の細胞により占められていた.組織発生に関しては,多分化能を有する未分化間葉細胞に本症は由来し,これらの細胞から腫瘍細胞が分化して本症が発症すると推測された.特異的な電顕所見として,トノフィラメント様物質が線維芽細胞様細胞内に認められた,これらのトノフィラメント様物質は腫瘍性の性格を有する代謝の活発な線維芽細胞様細胞で観察された.このような異常な線維性蛋白は,これらの細胞によって生合成されるものと考えた.

手指に発生したボーエン病の2例

著者: 沢田幸正

ページ範囲:P.775 - P.778

 比較的稀と思われる58歳男性の右第4指指背に発生したBowen病,ならびに73歳女性の右第3指指背に発生したBowen癌の各1例につき報告した.組織学的に両者とも有棘層の乳頭状増殖がみられ,個々の細胞の大小不同,異染性,核分裂,individual cellkeratinizationをみとめ,Bowen癌症例では皮疹中央部の潰瘍形成,腫瘍細胞塊の真皮内増殖もみられた.

爪周囲に発症した若年者のBowen病—北里大皮膚科12年間の統計を加えて

著者: 勝岡憲生 ,   近江正人

ページ範囲:P.779 - P.782

 23歳,男.右第1指爪郭部打撲.その後,同部に黒色および黒褐色結節出現.病理組織学的にBowen病と診断した.自験例は若年者であること,爪周囲に生じたことでBowen病としては稀な症例である.

手掌に発生した基底細胞上皮腫の1例

著者: 赤松徹 ,   伊藤達也 ,   守田英治 ,   藤田優

ページ範囲:P.783 - P.787

 57歳,女性の右手掌に発生した基底細胞上皮腫の1例を報告した.基底細胞上皮腫の発生部位としては稀で,著者らの集計では内外合わせて5症例の報告をみるのみである.臨床的には周囲に角質の浸軟を伴った赤色肉芽腫様の半球状に隆起する腫瘤で,組織学的には真皮上層から下層にかけて索状を呈する多数の基底細胞腫細胞塊と,これらを取り巻く結合組織の著明な増殖を認め,fibrosing basal cell epitheliomaの組織像に一致した.電顕的検索も施行したが,毛嚢脂腺,汗腺などへの明確な分化傾向を示す所見は得られなかった.

膀胱癌原発と思われる丹毒様癌の1例

著者: 箸方葉子 ,   浦上紘三

ページ範囲:P.789 - P.791

 他臓器悪性腫瘍の皮膚転移,とくに膀胱癌の皮膚転移は極めてまれである.今回我々は膀胱癌原発と思われる丹毒様癌の1例を経験したので,ここに報告する.
 81歳,女子.約4年前より多発性膀胱腫瘍として加療していたところ,約1年前より下腹部に,いわゆる丹毒に似た有痛性の浸潤性紅斑が出現した.同部の病理組織では,Leverのいうinflammatory carcinoma, nodular carcinoma,およびcancer en cuiraseの像が混在してみられた.

滲出性紅斑を主徴とした急性骨髄単球性白血病

著者: 小林勝 ,   田村晋也 ,   長島正治 ,   西田法孝 ,   嵐賢治 ,   肥後理

ページ範囲:P.793 - P.796

 16歳,女.手に凍瘡様紅斑,下肢に持久性隆起性紅斑に類似の皮疹を生じ,生検,臨床検査の結果,急性骨髄単球性白血病とそれに伴う皮膚白血病と診断した1例を報告した.手の紅斑は生検により,主として真皮血管周囲に白血病細胞の浸潤を認め特異疹と診断した.また下肢の持久性隆起性紅斑様病変も類似の紅斑性皮疹であることから特異疹と類推された.内科に転科の上,化学療法施行し皮疹は消褪したが,治療開始約半月後DICを惹起して死亡した.
 皮膚白血病について若干の考察を加え,凍瘡様あるいは持久性隆起性紅斑様皮疹を示す特異疹が稀であることを述べた.

連載 皮膚病理の電顕・37

表皮水疱症(Ⅰ)

著者: 橋本健

ページ範囲:P.800 - P.802

 表皮水疱症epidermolysis bullosa (EB)は先天性の遺伝性疾患で,軽症の単純型から重症の致死型まである.例外として後天性のものもある.劣性遺伝をするといわれる型では家族性を証明することが困難な場合が多い.
 本症の分類は症例が少ないために,なかなか捗らず,最近になってようやく統一見解が得られるようになった.しかし,その病因をめぐっては,依然として意見の対立が著しい.Lever & Schaum—burg-Leverの第6版1)に収められている分類が,最も妥当と思われるので,本稿においては,それに従うことにしよう.

編集室だより

雑誌名の省略について

著者: 「臨床皮膚科」編集室

ページ範囲:P.802 - P.802

 最近,引用文献に掲載される雑誌名の略称は,1970年にAmerican National Standards Committeeから出された「International List of Periodical Title Word Abbreviations」による略し方が,国際標準として,一般化してきました.皮膚科領域に関係のある言葉の例を下記にあげました.御投稿の際には,これらを参考にして下さい.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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