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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科38巻9号

1984年09月発行

雑誌目次

図譜・503

Nonvenereal Sclerosing Lymphangitis of the Penis

著者: 大原国章

ページ範囲:P.812 - P.813

患者38歳,男性
初診昭和56年3月7日

原著

無疹部にも棘融解を認めた家族性良性慢性天疱瘡の2例

著者: 宮川俊一 ,   山崎雄一郎 ,   西川武二

ページ範囲:P.815 - P.818

 無疹部にも棘融解を認めた家族性良性慢性天疱瘡の2例を報告した.症例1は58歳,男性.家族歴を有し,30歳頃より発症.夏季に増悪傾向あり.組織学的に隣接する無疹部にも棘融解像あり.症例2は43歳,男性.家族歴なく25歳頃より発症.無疹部である顔面の色素性母斑,背部の粉瘤を摘出したところ,健常と思われる被覆表皮に棘融解像あり.
 2例とも治療にaromatic retinoid内服を試用したが効果はみられず,少量の副腎皮質ホルモン(プレドニゾロン5〜20mg/日)内服により症状の軽快を認めた.
 同時にHLA typingを施行したので,その結果についても検討を加えた.

Impetigo Herpetiformisの1例

著者: 大崎正文 ,   林久 ,   宇都宮正裕 ,   武田克之

ページ範囲:P.819 - P.822

 65歳,女.39℃の発熱を伴い,辺縁に小膿疱を伴う紅斑が躯幹,四肢に生じた.組織はKogoj's spongiform pustuleで,螢光抗体直接法は陰性.ステロイドとレチノイドが奏効した.新旧の膿疱を生検し,膿疱形成過程を推測した.

Acute Graft Versus Host Disease—電顕的検索

著者: 増子倫樹 ,   伊藤薫 ,   伊藤雅章 ,   佐藤信輔 ,   佐藤良夫 ,   新潟大学骨髄移植チーム

ページ範囲:P.823 - P.828

 25歳,男性.急性骨髄性単球性白血病のため骨髄移植施行.移植後,手掌・足底に出現した皮疹を電顕的に観察した.1)表皮細胞は2通りの変性像を示した.すなわち,ミトコンドリア由来と考えられる細胞質内空胞を主体とする変性と多数のintracytoplasmicdesmosomeを形成する変性である.2)表皮細胞の変性と共にメラノサイトおよび真皮内の線維芽細胞,血管,組織球,リンパ球等も細胞変性を示した.

Membranocystic Lesion(那須)を認めたPigmented Pretibial Patches(BAUER)の1例

著者: 末木博彦 ,   新村陽子 ,   藤澤龍一

ページ範囲:P.829 - P.835

 60歳男の糖尿病に伴うpigmented pretibial patches(BAUER)の1例を報告した.病理組織学的に,皮下脂肪組織および真皮中下層に,小嚢胞状,唐草模様状あるいは網目状の断面を有する特異な膜様構造物が認められ,那須らの提唱するmembranocystic lesion(膜嚢胞性病変)に一致した.糖尿病と本病変との関係につき若干の考察を加えた.本病変は一般に,疾患特異性を欠き,脂肪組織の局所的退行性病変と考えられている.自験例では,真皮および皮下脂肪組織にmicroangiopathyの所見が認められ,本病変の病理発生との関連性に興味がもたれる.

尋常性乾癬のPUVA治療中にみられた汗孔角化症の1例

著者: 安藤佳洋 ,   柏原万里 ,   宇谷厚志 ,   谷口信吉

ページ範囲:P.837 - P.839

 9年来の尋常性乾癬の経過中に,汗孔角化症を併発した63歳男性の1例を報告した.本症例では,汗孔角化症の発症誘因として,乾癬に対して行なわれたPUVA療法が疑われた.

Paraneoplastic Acrokeratosisの1例

著者: 立花隆夫 ,   米沢郁雄 ,   武内重二

ページ範囲:P.841 - P.845

 79歳,女性.3カ月前より手足末端に紅斑,腫脹をみるようになり,さらには同部に角化病変を認めるようになってきたため本科を受診した.悪性腫瘍の合併を疑い頭頸部を含めた検索を行なったところ,肝右葉に径7cm大の腫瘍塊とトルコ鞍に一致した異常陰影を認めた.肝腫瘍は肝動脈造影で原発性肝細胞癌と診断し,抗癌剤の動注を行なったが皮疹に変化はみられなかった.下垂体腫瘍に対し経鼻的全摘術を行なったところ,術後1週間目より皮疹の改善を認めるようになった.
 下垂体腫瘍の病理組織学的診断は得られていないが,手足の特徴的な皮膚病変が同腫瘍摘出により消失したことより,自験例をparaneoplastic acrokeratosis (PNA)と診断した.また本例に見られた皮疹は,BazexらのいうPNA第一期もしくは第二期に一致する.我我が調べた限りでは本邦でのPNA報告例はなく,自験例を第1報と考えている.

紅斑を主徴としたSubclinical Sjögren's Syndromeの1例

著者: 古川徹 ,   長島正治

ページ範囲:P.847 - P.850

 自覚的な乾燥症状を欠き,顔面・手・足に浮腫性〜環状紅斑を生じた31歳女性例を経験した.当初,エリテマトーデス(LE)を考え,種々検索したがLE特有の所見は得られなかった.自覚的な乾燥症状は訴えなかったが,シェーグレン症候群(SjS)を疑い検索したところ,SjSに相当する異常所見を得た.
 SjSの自覚的な乾燥症状には個人差があり客観的な評価は難しい.臨床的には乾燥症状を訴えなくとも,種々の検査所見でSjSとして異常を示すsubclinical SjS (s-SjS)の存在も明らかとなってきている.このようなs-SjSの発見に紅斑,ことに浮腫性〜環状紅斑が重要であり,このような皮疹と免疫学的異常がくり返し証明される場合,SjSに関する検索が必要であると考えた.

Eosinophilic Fasciitis—血液異常および心病変を伴った1例

著者: 石川利之 ,   長谷哲男 ,   内山光明 ,   中嶋弘 ,   永井隆吉

ページ範囲:P.851 - P.856

 Eosinophilic fasciitisと考えられる1例を報告した.症例は55歳,女性.肉体労働に従事.昭和54年頃より四肢の皮膚の硬化.昭和57年10月より肘関節屈曲障害および前腕部皮膚硬化増強が出現.昭和58年1月より,全身倦怠感,下腿の浮腫,硬化,大腿部筋痛,歩行障害,高熱等が出現したため当科入院.白血球数減少,白血球分画にて分葉核球減少,好酸球増多,高γグロブリン血症.RA (+),心エコーにてpericardial effusion(+).骨髄穿刺にて悪性所見(—).好中球に関しては,分葉核球の百分率のみ低下.皮疹部皮膚生検組織にて,真皮の浮腫,血管周囲性リンパ球浸潤と膠原線維の増加,筋膜の肥厚,皮下組織および筋膜筋層への密なリンパ球浸潤が認められた.酵素抗体法により,IgG,IgM, IgAが筋膜および筋組織の間質,真皮線維に沿って認められた.プレドニン40mg/day投与により,著明に改善した.以上より,血液・心病変を合併したeosinophilic fas—ciitisと考えられた.

左顔面神経麻痺と両側内耳神経障害を伴ったサルコイドーシスの1例

著者: 田中信 ,   小川郁 ,   長島正治

ページ範囲:P.857 - P.860

 33歳,女性.四肢の紅色結節を主訴として来院組織学的には,結節型皮膚サルコイドと診断された.諸検査の結果,BHL,両下肺野の網状粒状影,ぶどう膜炎,眼底の静脈拡張および静脈周囲炎がみられ,アンジオテンシン転換酵素上昇(56I.U.)をみとめた.皮疹に対するステロイド外用療法中,左顔面神経麻痺とめまい,耳鳴・眼振等の内耳神経障害を併発し,耳下腺腫脹はみられなかったが,Heerfordt症候群の不全型が考えられた,PSL内服にて,皮疹はすみやかに消失し,7週目には,BHL・眼振を残し,全ての症状は消失した.サルコイドーシスにみられる稀な神経障害について若干の考察を加えた.

複数の抗生物質で感作された薬疹の1例

著者: 上田正登 ,   熊谷正彦 ,   清水良輔 ,   熊野公子 ,   玉置昭治 ,   市橋正光

ページ範囲:P.861 - P.864

 38歳,男.外傷のためAKM,AB-PCの投与を受け,その3日後,紅斑性皮疹出現.この薬疹の治療中併発した皮膚感染症治療の目的で投与したMINOにても皮疹出現.パッチテストにてAKM,AB-PC,MINO全てに陽性所見.誘発テストはAKMについてのみ行ない陽性であった.感染症及び他剤による薬疹が,薬疹の発生を誘発する可能性を示唆する症例と思われた.

ピロキシカムによる光線過敏性薬疹の1例

著者: 児島孝行 ,   村山憲太

ページ範囲:P.865 - P.869

 48歳男性にみられたピロキシカム(バキソ)による光線過敏性薬疹の1例を報告した.バキソ内服後5日目より,露光部に浮腫性紅斑が生じた.一般血液検査ではCRP陽性,γ—グロブリン高値の他は血液,尿検査に異常を認めなかった.組織所見は急性皮膚炎の像を示したが,sunburn cellは認めなかった.光照射試験では長波長紫外線領域に作用波長があった.同領域でのバキソの光貼布試験は陰性であった,しかし内服照射試験により最小紅斑量の低下,皮疹の再現を認めた,発生機序は光毒性の可能性が高いと考えられたが,光アレルギーの関与もなお否定できなかった.ピロキシカムによる光線過敏症は散発しており,その光毒性には注意を払う必要があるが,個々の症例の発生機序については,なお検討を要すると.考えられた.

ヒトのペニシリン疹とセファロスポリン疹における皮膚試験—実験動物における皮膚試験との比較

著者: 池澤善郎

ページ範囲:P.871 - P.875

 臨床経過からペニシリン(PC)系とセファロスポリン(CS)系の薬剤によると思われる発疹症型薬疹患者16例において施行した皮膚試験の成績を,実験動物における皮膚試験の成績と比較した.
 2%生食溶液による皮内試験は,少なくとも発疹症型のPC疹とCS疹に限る場合,その診断学的意義は非常に高い.これまでPC系とCS系の薬剤は,それぞれの抗体との反応において相互に交叉反応することがあるとされてきたが,薬剤に対する局所皮膚の遅延型過敏反応(DTH)および全身性のDTHに基づくと思われる発疹痛型薬疹では,PC系とCS系の薬剤は相互に交叉反応しないことが示され,このことは動物実験においても確認された.さらに,PC系薬剤間およびCS系薬剤間のそれぞれの交叉反応性に関しても若干の考察を加えた.

汗腺におけるS−100蛋白の超微形態学的局在

著者: 広瀬隆則 ,   玉田伸二 ,   檜沢一夫

ページ範囲:P.877 - P.881

 最近,末梢神経系腫瘍,悪性黒色腫などの腫瘍マーカーとして注目されているS—100蛋白の人汗腺における局在を光顕的にperoxidase-antiperoxidase法を用いて,また電顕的に免疫電顕間接法を用いて検討した.エックリン汗腺においてS−100蛋白は基底細胞と筋上皮細胞の細胞質基質と核に存在し,表層細胞ではほとんど認められなかった.アポクリン汗腺では,その分泌細胞には局在せず,筋上皮細胞に認められるだけであった.両汗腺とも,その導管部には存在していなかった.すなわち正常汗腺でS−100蛋白は筋上皮細胞とエックリン汗腺基底細胞だけに局在した.この結果をふまえ,S−100蛋白を汗腺系腫瘍に対するひとつのマーカーとして用いれば,腫瘍細胞の分化の方向が推測でき,組織診断また組織発生研究の一助になるものと考えられる.

ダニ皮膚炎と病理組織像

著者: 前田健 ,   姉小路公久

ページ範囲:P.883 - P.887

 近年ダニによる皮膚炎が増加しているといわれているが,虫刺症と思われても,ダニによるものかどうかは不明なことが多い.しかし精しく問診すること,虫が見つかったら持参させることなどにより,かなり診断がつくように思われる.
 症例1は家の雨戸の戸袋に鳥の巣があり,その巣よりトリサシダニ,スズメサシダニ,ワクモを同定.症例2は家の畳にいた多数の虫をつかまえて調べたところ,ツメダニであった.症例3は家屋塵を調べたところ,ケラカロプシスが異常に増加していた.
 また今回,人体実験によるダニ皮膚炎の病理組織像を観察する機会を得たので報告する.

脂腺上皮腫

著者: 熊切正信 ,   月永一郎 ,   高橋康一

ページ範囲:P.889 - P.891

 77歳,女性.3年前から項部に1.3×1.0cm大の,黄色調を帯びた赤色を呈し,皮表にドーム状に盛り上がった腫瘍を生じた.組織学的には基底細胞上皮腫様の組織構築をとるが,basaloid cellに混じて成熟脂腺細胞がみられ,脂腺上皮腫と診断した.この症例に特異的な所見は,腫瘍細胞巣内のcystic space内に明らかな毛幹が含まれていることである.

点状集簇性母斑上に生じた血管線維腫性変化

著者: 木村俊次

ページ範囲:P.895 - P.899

 右膝上方に生来存在した点状集簇性母斑の中央部に血管線維腫性変化を生じた12歳男児例を報告した.血管線維腫性変化は臨床的に直径4mm,淡紅色扁平隆起性の小結節をなし,組織学的に表皮突起の不規則な延長,真皮上・中層の膠原線維増生,小血管の増生と拡張,星形および2核の結合織細胞などを示し,その下方には母斑細胞巣が残存していた.メラニン色素は表皮・真皮とも周囲の母斑部に比べて著減を示した.周囲の母斑巣は臨床的に毛孔一致性黒色調小丘疹,組織学的にも毛嚢中心性の複合母斑を示した.自験例にみられた血管線維種性変化が臨床的・組織学的にfibrous papule of the nose (FPN)にきわめて類似することから,FPNが顔面以外にも発生しうること,およびFPNの少なくとも一部は母斑細胞母斑に由来することが示唆された.

連載 皮膚病理の電顕・38

表皮水疱症(Ⅱ)

著者: 橋本健

ページ範囲:P.900 - P.904

 図86電顕的には表皮基底層に空胞が生じている.最初の変化は普通,基底細胞の浮腫(*)とトノフィラメントの凝縮ないしは断裂である(図87参照).凝縮したトノフィラメントは恰もケラトピアリン顆粒のようにみえる(矢尻).線維成分が大部分消失するか凝縮しているため,細胞は明調で,核(n)のみが目立つ.図85B,Cで基底層が抜けたように見えたのは,このためである.細胞に対する障害が基底細胞に主として起こるのは,恐らくこれらの幼若な細胞の細い線維成分のためであろう.例えば,トノフィラメントが特異的に消化される場合,基底細胞には50,56KDクラスの分子量の比較的小さい線維しか存在せず,表皮上層に行くにつれて大きな分子量を持った(58,65-67KD)太い線維が形成されてくる1,2).障害がトノフィラメント或は分子量の小さいケラチンに特異的であろうという推測は,病巣に同時に存在するメラノサイト(M),顆粒(1)を含むランゲルハンス細胞(L)が全く障害を受けていない事実,表皮中層の既に分化の進んだ細胞(P)のトノフィラメントは多少の凝集を示すが細胞自身は全く健常である事実,基底細胞でもトノフィラメントが完全に消失しているのに核は正常にみえることなどから,一次的変化は幼若なトノフィラメントに起こっていることが想像される.この拡大でも基底板(B)とその附近の膠原線維に異常のないことが窺える.
×7,500

編集室だより

雑誌名の省略について

著者: 「臨床皮膚科」編集室

ページ範囲:P.904 - P.904

 最近,引用文献に掲載される雑誌名の略称は,1970年にAmerican National Standards Committeeから出された「International List of Pcriodical Title Word Abbreviations」による略し方が,国際標準として,一般化してきました.皮膚科領域に関係のある言葉の例を下記にあげました.御投稿の際には,これらを参考にして下さい.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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