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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科39巻1号

1985年01月発行

雑誌目次

図譜・507

第二期顕症梅毒の1例

著者: 片山一朗 ,   西岡清 ,   佐野榮春

ページ範囲:P.6 - P.7

患者41歳,男性.大工
 現病歴初診2週間前より全身倦怠感,軽度発熱あり.顔面,腋窩,前胸部に自覚症状のない皮疹を生じてきた.3日前より咽頭部痛,39℃前後の発熱を来したため当科初診する.なお感染機会に関しては不明である.

原著

Annular Elastolytic Giant Cell Granulomaの1例

著者: 池田和夫 ,   斉藤明宏 ,   諸橋正昭 ,   阿部貞夫

ページ範囲:P.9 - P.14

 55歳,男性,農業.7〜8年前,左手背に紅色丘疹が出現.皮疹は次第に遠心性に環状に拡大.その後,右手背にも同様の皮疹が出現.自覚症状はない.現在,左手背に径11cm,右手背に径8cm.径4.5cmの計3個のほぼ円形の環状局面がみられ,辺縁は堤防状に軽度隆起し,境界は明瞭で赤褐色を呈する.環状隆起部外側の病理組織学的所見では,弾力線維の変性がみられ,環状隆起部では,多数の多核巨細胞と組織球,リンパ球などよりなる肉芽腫の形成と巨細胞による弾力線維の貪食がみられた.臨床像,病理組織像からannular elastolytic giant cell granulomaと診断した.また,annular elastolytic giant cellgranulomaについて若干の文献的考察を加えた.

環状紅斑を主訴としたシェーグレン症候群の1例

著者: 川村いづみ ,   西川武二 ,   栗原誠一

ページ範囲:P.17 - P.21

 環状紅斑を主訴とし,免疫学的検査をはじめとする種々の検査から最終的にシェーグレン症候群と診断した,26歳女子症例を報告した.抗核抗体(抗SS-B抗体)陽性で,皮疹に対して少量のステロイド内服が有効であった.免疫異常を伴う環状紅斑及び抗SS—A,SS-B抗体と紅斑との関連について,若干の考察をあわせて行なった.

両下肢にも皮疹のみられた顔面播種状粟粒性狼瘡

著者: 設楽篤幸 ,   佐藤信輔 ,   濱路政博

ページ範囲:P.23 - P.26

 47歳,男性の顔面と両下肢に生じた顔面播種状粟粒性狼瘡の1例を報告した.治療はテトラサイクリン系抗生物質が有効であった.顔面以外の四肢あるいは全身に皮疹のみられた症例,大きな皮疹の生じた症例について文献的考察を行なった.

らい療養所における皮膚疾患について—第II報

著者: 石井則久 ,   一山伸一 ,   中嶋弘 ,   永井隆吉

ページ範囲:P.27 - P.32

 前回(1980年2月)にひきつづき,今回,国立駿河療養所において,164名の患者の皮膚疾患調査を行なった.有病者は106名(64.6%)で,平均年齢は63.3歳であった.疾患別では表在性真菌症が多くみられ,季節的なものと,らい病変に伴う二次的変形などが大きな要因と考えられた.乾燥性皮膚は前回に比し減少したが,湿度の関与が示唆された.悪性腫瘍はボーエン病の1名のみで,前回から経過をみている症例であった.臨床的にも組織学的にも前回に比しほとんど変化がみられず,長期間ボーエン病のままで経過した皮疹として興味深かった.

異なる皮膚疾患を生じた一卵性双生児例—アトピー皮膚炎と尋常乾癬

著者: 吉利優子 ,   磯田美登里 ,   占部治邦

ページ範囲:P.33 - P.36

 17歳の一卵性双生児姉妹.姉は3歳頃よりアトピー皮膚炎,妹は12歳のとき尋常乾癬に罹患した.家系にはアトピー疾患および乾癬を認めない.11歳頃より,双方とも高度の肥満を来し,黒色表皮腫様皮疹を生じた.種々の検索の結果,内分泌異常あるいは先天異常による症候性肥満は否定され,単純性肥満と考えた.双生児双方に高IgE血症が認められ,HLA抗原のうち乾癬と最も関連が深いとされるCw6は陰性であったが,日本人の乾癬患者で高頻度に出現するA1,B37が陽性であった.

Palmar Fibromatosisの1例—過去10年間の本邦皮膚科領域の本症報告例24例の臨床的考察

著者: 野池尚美 ,   小野田進

ページ範囲:P.37 - P.40

 51歳男性に発生したpalmar fibromatosisの1例を報告した.併せて過去10年間の本邦皮膚科領域の本症報告例24例の臨床的,統計的考察を行なった.その結果,以下の特徴が認められた,①男:女=3:1と男性に多い.②50歳代に好発しやすい.③皮疹は第3,4,5指に最も好発する.その数は少ないもので1個,多いもので両側合わせて9個,平均3,4個である,尚,左右差は殆どない.皮疹は通常,皮表正常色,弾性硬,下床と癒着,時に軽度圧痛のある2cm以下の皮下結節である.1/3の例に指の拘縮を伴う.経過1年未満では拘縮を起こしにくいと思われる.④糖尿病の有無の記載明らかな症例中,約2/3に顕性あるいは不顕性糖尿病を伴う.

電顕的に奇妙な凝集塊の認められたVörner型掌蹠角化腫

著者: 手塚正 ,   山田秀和

ページ範囲:P.41 - P.44

 1歳男児のVörner型掌蹠角化腫を電顕的に検索したところ,顆粒細胞内に直径25nmの粒子状物質を構成成分とする,電子密度のきわめて低い塊状物質が多数認められた.この物質の内部または周囲に通常のケラチン線維(トノフィラメント,直径7.7nm)が認められた.その一部はデスモソームに連なっていた.

乾癬様皮疹を伴ったPapillon-Lèfevre症候群の1例

著者: 田島裕美子 ,   田上八朗 ,   大迫武治

ページ範囲:P.45 - P.49

 31歳男子のPapillon-Lèfevre症候群の1例を報告し,あわせて27例の本邦報告例と比較検討した.本症例は典型的な掌蹠の角化性病変と口腔病変に加え,臀部と四肢に乾癬様病変,顔面に膿皮症がみられた.Papillon-Lèfevre症候群における乾癬様病変については,外国に数例報告があるが,本邦では本症例が最初であると思われる.また膿皮症については,本邦では自験例を含め,7例が報告されている.Papillon-Lèfevre症候群と免疫能低下の関連性が,最近注目されているが,本症例における免疫機能検査では以下の通りであった.DNCB接触過敏テストで感作成立.PPD皮内試験は陽性であったが,PHA皮内試験は陰性であった.Etretinate内服中の大腸菌培養濾液に対する白血球遊走能は著明に低下していた.治療は各種外用剤に反応せず,etretinate内服を行なった.その結果,短期間で皮疹の著明な改善が認められた.

卵黄腸管遺残

著者: 伊藤薫 ,   伊藤雅章

ページ範囲:P.51 - P.54

 13歳,男児の臍部の卵黄腸管遺残の1例を報告した.本例は,生下時より臍部に滲出液が認められ,7歳頃,同部の紅色小腫瘤の存在に気付かれていた.運動時に軽度の出血が見られたが,疼痛はなく,消化器症状は特に認められなかった.臍部の腫瘤は小指頭大の軟らかい紅色腫瘤で,表面は湿潤性で,出血を認めた,瘻孔は認められなかった.組織学的に腫瘤部の真皮上層に小腸粘膜上皮組織を認め,その下方に真皮深層に向かって延びる結合組織の索状構造物をみた.その索状構造物の中に幽門腺組織がみられた.本例は臨床的には臍部表面の臍ポリープに最も近いが,真皮深層の索状構造物の合併した例と考えた.

Focal Dermal Hypoplasia Syndromeの1例

著者: 増田光喜 ,   禾紀子 ,   清水宏 ,   倉持正雄 ,   木村俊次

ページ範囲:P.55 - P.58

 Focal dermal hypoplasia syndrome (Goltz症候群)の典型例と思われる1例を報告した.患者は生後3カ月の女児で,皮膚症状として躯幹にほぼ線状に配列する毛細血管拡張を伴う皮膚萎縮,網状・篩状の脱色素斑および脱色素性皮膚萎縮,左大腿の瘢痕,左足底の著明な皺襞および黄色調小丘疹の集簇,後頭部の不完全脱毛,指趾爪の形成不全がみられ,骨格系の異常として,合指症,趾間の深い切れ込みを認めた.皮膚萎縮部の生検組織像では,真皮の線維芽細胞の増加および幼若な膠原線維,表皮直下にまで達する脂肪組織を認めた.本症の診断は,特徴的な皮膚所見が決め手となるため,本症が念頭にあれば診断はそれほど困難ではないと思われた.また,本症の本邦報告例と欧米における報告例との間には,特に差を認めなかった.

皮膚神経系腫瘍の光顕レベルにおける再検討—特に抗S−100蛋白による染色を中心として

著者: 田中光 ,   蜂須賀裕志 ,   森理 ,   笹井陽一郎

ページ範囲:P.61 - P.64

 牛の脳より抽出したS−100蛋白で兎を免疫し,抗S−100蛋白抗体を作製した.この抗体を用いて,PAP法により皮膚神経系腫瘍群(神経腫・神経鞘腫・神経線維腫)を鑑別した.その結果,染色されたシュワン細胞の腫瘍内に占める割合・分布・染色性により従来のあらゆる染色法よりも,より明確に皮膚神経系腫瘍群を鑑別できた.なお対照として神経系腫瘍ではない皮膚線維腫を用いた.

乳房外Paget病におけるCEA(Carcinoembryonic Antigen)の意義

著者: 柏原万里 ,   今村貞夫 ,   古川福実 ,   山辺博彦 ,   宮内東光

ページ範囲:P.65 - P.68

 乳房外Paget病17例の組織標本を対象として,酵素抗体法(PAP法)によりcarcinoembryonic antigen(CEA)の局在を検討したところ,全例でPaget細胞に一致してCEAが陽性であった.PAS染色やアルシャンブルー染色結果と比較検討したところ,CEA染色はこれらの組織学的検索と同等の補助的診断価値を有するものと思われた.さらに,本症の13例の血中CEAは,6名(46%)が高値を示した.このような実験事実と若干の文献的考察をふまえて,乳房外Paget病におけるCEAの意義について考察した.

斑状鞏皮症型基底細胞上皮腫の1例—過去8年間の教室経験例の集計を含めて

著者: 川村いづみ ,   桜岡浩一 ,   木花光 ,   山崎雄一郎 ,   北村啓次郎 ,   栗原誠一

ページ範囲:P.69 - P.73

 斑状鞏皮症型基底細胞上皮腫の1例を報告し,併せて過去8年間の当教室における基底細胞上皮腫79例100検体について集計,検討した.症例は37歳の女性で,20年以上前から,鼻根部に爪甲大の白色硬化性局面を認めていた.臨床的にも,組織学的にも典型的であったが,手術時一見正常と思われた腫瘍辺縁より約7〜8mmの周辺皮膚まで.腫瘍細胞の浸潤を認めた,斑状鞏皮症型基底細胞上皮腫は.以前の当教室の集計を合わせてもわずか2例で,教室例においても本型が極めて少ないことを知った.

編集室だより

雑誌名の省略について

著者: 「臨床皮膚科」編集室

ページ範囲:P.64 - P.64

 最近,引用文献に掲載される雑誌名の略称は,1970年にAmerican National Standards Committeeから出された「International List of Periodical Title Word Abbreviations」による略し方が,国際標準として,一般化してきました.皮膚科領域に関係のある言葉の例を下記にあげました.御投稿の際には,これらを参考にして下さい.

連載 皮膚病理の電顕・42

表皮水疱症(VI)

著者: 橋本健 ,   松本光博

ページ範囲:P.74 - P.76

 図93近代細菌学の黎明期に出現した巨人の一人にKochが数えられる.1882年に結核菌の発見を報じた論文で,彼の有名なコッホの四原則あるいは必要条件(Koch's postulates)を提唱している.即ち病原菌が特殊な疾病を惹起すると仮定するには次の四つの条件を満足しなければならない.1)その病原菌がその疾患のすべての症例から分離されること.2)病原菌と考えられるものは純粋に分離培養できること.3)培養した病原菌が感受性のある動物で疾患を再現できること.4)その病原菌はその動物より再び分離され,純粋に培養できること.
 さて図85で解説した如く,simplex型1),dystro—phic型2)では蛋白分解酵素(protease)が基底細胞,真皮コラゲンなどの傷害を起こす原因であるとする高森らの説がある.ここで細菌をproteaseに置き換えてみると,上の四原則のうち三つまでは実験が可能であることに気付く.1)の条件を満足するには多数例からchromatographyによりproteaseを分離精製すればよい.しかし症例数の限られたjunction型では根気の要る仕事となる.従って間接的方法としてproteaseを含むと考えられる新鮮な水疱の内容を注射器で吸引し,正常なヒトの皮膚を浸漬したのがこの標本である3).表皮が真皮より分離しているが,両者それ自身には著変のない点で,この変化は図89の患者より採取した水疱の組織像に似ている.上図は24時間の浸漬で矢印の部分に分離の開始がみられる.下図は72時間後に完全な分離の起こった標本である.基質として用いた皮膚は正常な成人の腹部より採ったものである.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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