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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科39巻10号

1985年10月発行

雑誌目次

図譜・516

Intravenous Pyogenic Granuloma

著者: 片山治子 ,   長尾洋 ,   小玉肇

ページ範囲:P.822 - P.823

患者56歳,女性
初診昭和56年4月6日

原著

糖尿病にみられた手の強皮症様変化

著者: 羽田俊六 ,   生野麻美子 ,   荒隆一

ページ範囲:P.825 - P.828

 糖尿病に伴う手の強皮症様変化は最近指摘されたもので,皮膚科領域での記載は少ない.中年男性の糖尿病患者に,この変化を認めたので報告し,本症を概説した.

病変部表皮下層に補体(C3)の沈着をみた尋常性天疱瘡の1例

著者: 細貝浩章 ,   渡辺剛一 ,   石川英一

ページ範囲:P.829 - P.833

 螢光抗体直接法で,表皮細胞間全層にIgGの沈着を,下層にC3の沈着を認めた39歳女性の尋常性天疱瘡の1例を報告した.過去10年間の本邦例につき集計した結果では,C3の沈着は尋常性天疱瘡患者螢光抗体検索記載例43例中28例(65%)に認められた.そのうち,水疱発生部位である表皮下層にC3の沈着をみた例は,28例中11例(39%)あり,報告例と同じく表皮全層にIgGを,下層にC3の沈着をみた例は28例中9例(32%)であった.このことは補体が尋常性天疱瘡の病変局在性に何らかの影響を及ぼしていることを示唆するかも知れない.

膿疱性乾癬から再発性環状紅斑様乾癬へ移行したと考えられる1例

著者: 小幡仁子 ,   麻生和雄 ,   渡辺修一 ,   小川俊一

ページ範囲:P.835 - P.840

 28歳,女性.6歳時より躯幹に紅斑出現.13歳,17歳,18歳時にそれぞれ再発.25歳時には,紅斑,膿疱,落屑とともに39℃台の発熱,関節痛を伴い,組織学的には角層下膿疱を伴う尋常性乾癬の像を呈し,膿疱性乾癬と診断した.皮疹の増悪は月経周期にほぼ一致する変動を示した.28歳時,妊娠とともに再発し,全身状態は良好であったが,環状紅斑,膿疱,落屑が難治性となった.組織学的に角層下膿疱を認めるが,海綿状膿疱は明らかでなかった.個々の皮疹の速い経過と特徴ある形態より再発性環状紅斑様乾癬と診断し,膿疱性乾癬からの移行例と考えられた.再発性環状紅斑様乾癬と膿疱性乾癬,さらにsubcorneal pustular dermatosisとの関係などについて若干の考察を加えた.

尋常性乾癬と水疱性類天疱瘡の合併

著者: 宮脇由美子 ,   草場辰哉 ,   桑原宏始 ,   奥村之啓

ページ範囲:P.841 - P.844

 糖尿病,高脂血症,脳梗塞による片麻痺を治療中の72歳の男性.尋常性乾癬5年の経過後,PUVA療法により類天疱瘡を発症.直接螢光抗体法では,水疱以外の一見正常部にもIgG, C3の沈着がみられた.乾癬に類天疱瘡が合併した報告は,自験例を含めて27例,そのうちゲッケルマン療法,PUVAなど紫外線が誘因と考えられたのは13例である.紫外線との関連について若干の免疫学的考えを述べた.

多発性筋炎を併発した菌状息肉症の1例

著者: 村松千鶴子 ,   守田英治 ,   長谷川隆 ,   田辺恵美子 ,   藤田優 ,   中野義澄

ページ範囲:P.845 - P.849

 69歳,女性.約4年の経過で,躯幹,四肢に浸潤性紅斑が徐々に拡大し,腫瘤形成を伴うようになる.その臨床症状および組織学的所見より菌状息肉症と診断し,PUVA療法,ステロイド内服,さらに局所化学療法,局所電子線照射にて加療中,頸筋および四肢近位筋の筋力低下が出現する.その後,皮疹,筋症状の増悪,リンパ節腫大と全身状態の急速な悪化をみて死亡した.経過中生じた筋症状について,多発性筋炎およびステロイド投与中であることよりstcroid myopathyが疑われたが,筋生検による病理組織学的所見より多発性筋炎と考えられた.

Premalignant Fibroepithelial Tumor(Pinkus)の1例

著者: 功野泰三 ,   酒井伊勢子 ,   島本順子 ,   稲田修一 ,   西田俊博

ページ範囲:P.851 - P.854

 64歳,男性.陰嚢部に生じたpremalignant fibroepithelial tumorの1例を報告した.臨床的には淡紅色,弾性硬,表面平滑な隆起性腫瘤で,組織学的には表皮より連続する細い上皮索が下方に延長し,互いに不規則に吻合し網状構造を呈し,この上皮索を取り囲んで密な細線維性あるいは浮腫性の間質が多量に増殖しており,上皮索の側方あるいは先端に柵状配列を示す基底細胞の集団を認めた.本腫瘍の本邦報告例は現在まで自験例も含めて9例報告されており,それらにつき若干の検討を行った.

Tricho-Rhino-Phalangeal Syndrome

著者: 小林聰也 ,   森下美知子 ,   伊藤雅章 ,   佐藤信輔 ,   佐藤良夫 ,   藤野圭司

ページ範囲:P.855 - P.861

 Tricho-rhino-phalangeal syndromeの1例を報告した.33歳の女性で,頭部びまん性脱毛,西洋梨状鼻,円錐状指趾骨骨端を呈し,本症の臨床的特徴を満足していた.家系には同症なく,単発例と考えられた.頭髪は細く短く,組織学的に真皮は薄く,毛包は数が少なく小型で,毛球部は浅い位置に存在していたが,毛組織各層の構造は正常であった.走査電顕にて毛小皮に異常なく,透過型電顕でも毛小皮,毛皮質に異常はみられなかった.即ち,自験例における毛髪異常は単に毛包が小型で,数が減少しているという所見であった.また,tricho-rhino-phalangeal syndromeの本邦報告例を集計した.

原発性Bartholin腺癌の1例

著者: 吉田秀史 ,   守田英治 ,   藤田優 ,   岡本昭二 ,   田丸淳一 ,   長尾孝一

ページ範囲:P.863 - P.867

 71歳,女性.初診約1年前より外陰部に出血性皮疹出現.初診時,外陰部から会陰,肛門にかけて表面ゼラチン様物質に被おれる潰瘍と腫瘤および浸潤性紅斑を呈した.この腫瘍は組織学的に多彩な像を示していた.即ち,乳頭状腺癌(papillary adcnocarcino—ma)と粘液産生型腺癌(muconodular adenocarcinoma)が混在する像を呈した.その結果,転移性皮膚癌の診断で胃,腸,肺,卵巣など原発巣の検索を行ったが異常なく,手術標本の所見も合わせ,Bartholin腺癌と診断した.本症例は臨床的にも組織学的にも示唆に富む症例で,本腫瘍の診断基準,臨床症状,組織像などにつき若干の文献的考察を加え報告した.

成人T細胞白血病の1例

著者: 青山文代 ,   北村清隆 ,   清水史郎 ,   紺田進

ページ範囲:P.869 - P.875

 成人T細胞白血病の1例を経験し,本邦皮膚科領域報告症例41例に自験例を加え,その特異疹を中心に検討し報告した.症例は57歳の女性,福島県いわき市植田町(海沿いの町)出身.全身のリンパ節腫大に加え,全身にくるみ大までの紅斑,浸潤性紅斑,結節の特異疹あり,表皮向性を認め,皮膚,リンパ節ともに組織像はmalignant lymphoma,diffuse,mixed type(LSG分類)を示した.末梢血および骨髄に分葉傾向をもつ核を有する異常リンパ球を各々39%,32.4%認め,その膜表面形質は末梢血,リンパ節ともにEロゼット陽性,OKT 3(+),T4(+),T8(-),抗ATLA抗体は患者および患者の息子3人共に陽性,リンパ節腫瘍細胞にATLV proviral DNAを認めた.著明な高Ca血症を示した他,多量の消化管出血あり,大腸に腫瘍細胞浸潤を思わす腫瘤形成を認め,経管栄養下に化学療法を行うも,間質性肺炎を併発,全経過6カ月にて死亡した.

表皮下水疱の多発をみた悪性腫瘍の2例

著者: 瀬戸山充 ,   田渕香代子 ,   金蔵拓郎 ,   田代正昭

ページ範囲:P.877 - P.882

 表皮下水疱の多発をみた悪性腫瘍2例を報告した.症例1は53歳,男性.T細胞性リンパ腫を伴っており,皮疹は特異疹と診断され,原病治療により水疱は速やかに消褪した.症例2は61歳,男性.食道癌を併発しており,皮疹については,螢光抗体直接法で基底膜部にC3の沈着が証明され,水疱性類天疱瘡と診断されたが,血中抗体は証明されなかった.なお食道癌術後も皮疹の消長がみられ,病勢とは一致しなかった.自験例2例を報告するとともに本邦における悪性腫瘍を伴った表皮下水疱症報告例40例について統計的観察を行い,若干の文献的考察を加えた.

脂漏性角化症から発生した有棘細胞癌

著者: 金内日出男 ,   桜井みち代 ,   青島敏行 ,   今村貞夫

ページ範囲:P.883 - P.885

 88歳,男性.背部に多発していた黒褐色小丘疹の1つが腫大したため生検し,脂漏性角化症と診断した.その1年5カ月後,有痛性に腫大してきたため再度生検し,有棘細胞癌と診断した.2回の組織学的検索により,脂漏性角化症から有棘細胞癌が発生したと考えられる.

リンパ管腫,血管腫合併症例に対する第VIII因子関連抗原をマーカーとして用いた非標識酵素抗体法の応用

著者: 佐藤貴美子 ,   原徹 ,   佐野豊 ,   菅原光雄 ,   三上英樹

ページ範囲:P.887 - P.890

 第VIII因子関連抗原は血管内皮細胞で生成分泌されていることが証明されて以来,血管内皮細胞の同定に利用されてきた,我々は,世界的に稀であるとされているリンパ管腫・血管腫の合併症例について,ヘマトキシリン・エオジン染色標本では血管かリンパ管かの鑑別が困難な部分がみられたため,第VIII因子を血管内皮細胞のマーカーとしてPAP法を行った.症例は2歳1カ月,男児.生下時より,右腸骨棘前部〜腰部にかけて小児頭大,扁平な紅斑がみられ,出没を繰り返す小指頭大の腫瘤を認めた.PAP法を施行した結果,真皮深層の血管腔,リンパ管腔の鑑別に有用であることが実証された.

Klippel-Weber症候群,Sturge-Weber症候群および乳糜胸を合併した色素血管母斑症の1例

著者: 松川中 ,   中川和代 ,   森田博

ページ範囲:P.891 - P.895

 9歳,女子.生下時より,ほぼ全身に紅色斑散在.2カ月時に左牛眼と乳糜胸を指摘される.2歳時に右上下肢の痙攣発作.4歳時に乳糜胸および腹部リンパ管腫の手術施行.5歳時に発作性の意識消失と右上下肢の麻痺.現症および検査所見:紅色斑以外に躯幹に蒙古斑様背色斑および右大腿に褐色斑が散在.紅色斑は病理組織にて単純性血管腫の像を呈していた.両眼球鞏膜に青色斑あり,左眼に牛眼を認めた.両手および両大腿の左右の長さが異なっていた.CTスキャンおよびCAGにて両側頭から後頭部に,一部に石灰化を伴ったangioma patternを認めた.以上の所見より,Sturge-Weber症候群,Klippel—Weber症候群および乳糜胸を合併した色素血管母斑症と診断した.自験例は長谷川らの分類ではNb型に相当する.自験例および本症について若干の考按を加えた.

Corticosteroid内服で誘発されたSenile Sebaceous Hyperplasiaの2例

著者: 茶之木美也子 ,   泉谷一裕 ,   濱田稔夫

ページ範囲:P.897 - P.902

 Prednisolone内服によって誘発されたsenile sebaceous hyperplasiaの2例を報告した.
 症例1:83歳,男.Bullous pemphigoid治療のため,prednisolone1日30mgを2週,25mgを2週内服後,顔面に中心臍窩を持つ黄色調を帯びた丘疹,小結節が出現した.Pred—nisolone中断と共に皮疹は消褪した.原疾患増悪のため内服再開後,皮疹は再び出現した.症例2:64歳,男.Sarcoidosis治療のため,prednisolone1日40mgを1.5カ月内服後,顔面に黄色調の小丘疹が出現してきた.病理組織像はいずれも中央に角質を入れ開大した毛包があり,その周囲に多数の成熟した脂腺がブドウ房状に増生していた.Corticosteroidの脂腺への作用機序は十分解明されていないが,1)直接,脂腺細胞を刺激する,2) metabolicderivativesが脂腺増生を促す,3) androgenic hormoneが脂腺に作用するのを助ける,もしくは増強する,の3つの可能性が考えられ,2),3)の可能性が強いように思われた.

Piezogenic Pedal Papules

著者: 高橋泰英

ページ範囲:P.903 - P.908

 Piczogenic pedal papulesの2例を記載し,外来患者100例についてその有無を検討し文献的考察を加えた.症例1:19歳,女.1年前より両側踵部に丘疹が多発.自覚症状はない.立位で両側踵部内側面に常色ないし黄白色,半米粒大弾性軟の丘疹が数個出現し,臥位で消失.症例2:47歳,女.足白癬で来院した際,偶然,症例1と同様の踵部多発性丘疹を発見.生検は施行しなかったが,立位で出現し臥位で消失する特微的臨床像よりpiezogenic pcdal papulesと診断.その後,外来患者100例(男55例,女45例)について本症の有無を検索したところ,男17例,女21例に本症を認めた.いずれも自覚症状はなく,また本症に気づいている者もなかった.

編集室だより

雑誌名の省略について

著者: 「臨床皮膚科」編集室

ページ範囲:P.828 - P.828

 最近,引用文献に掲載される雑誌名の略称は,1970年にAmerican National Standards Committeeから出された「International List of Periodical Title Word Abbreviations」による略し方が,国際標準として,一般化してきました.皮膚科領域に関係のある言葉の例を下記にあげました.御投稿の際には,これらを参考にして下さい.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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