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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科39巻11号

1985年11月発行

雑誌目次

図譜・517

外陰部Paget癌

著者: 国枝美穂子 ,   杉田一之 ,   前田求 ,   西岡清

ページ範囲:P.918 - P.919

 患者80歳,男性.
初診昭和58年7月8日

原著

抗Scl−70抗体,抗ヒストン抗体陽性水疱性類天疱瘡の1例

著者: 田村敦志 ,   渡辺剛一 ,   山蔭明生 ,   久保川透 ,   石川英一

ページ範囲:P.921 - P.926

 71歳女性の類天疱瘡患者において,免疫血清学的に特異な所見を認めた.本症例は臨床的,組織学的に定型像を示し,螢光抗体直接法でlgG,C3が基底膜部に線状に沈着し,間接法で抗基底膜抗体640倍陽性であった.他方,臨床的に汎発性常皮症,皮膚筋炎,全身性エリテマトーデスを思わす所見を全く認めなかったにもかかわらず,抗核抗体1,024倍陽性,抗Scl−70抗体1,024倍陽性,抗ピストン抗体80倍陽性を示した.本症例では,鞏皮症を初めとする膠原病と共通した免疫学的背景あるいは結合組織病変が存在する可能性が示唆される.

水疱性類天疱瘡の非定型例

著者: 赤木真由美 ,   堀口裕治 ,   堀口典子 ,   西澤波子 ,   尾崎元昭 ,   段野貴一郎 ,   今村貞夫

ページ範囲:P.927 - P.930

 80歳,女性.手足に紅斑が多発し,臨床的,組織学的に多形紅斑と診断された.非ステロイド系消炎剤にて寛解したが,1年後,手足に緊満性水疱を伴う紅斑が多発した.組織学的には表皮下水疱を認め,螢光抗体法にて表皮真皮接合部にIgG,C3の線状沈着と血清中の抗基底膜部抗体を認め,水疱性類天疱瘡と診断した.内科学的に橋本病との合併が指摘され,抗基底膜部抗体以外に各種の自己抗体が検出された.

Propranolol(β-blocker)による乾癬様薬疹の1例

著者: 宮川加奈太 ,   池澤善郎

ページ範囲:P.933 - P.938

要約 β-blockerの代表的薬剤であるpropranolol(PPL;Inderal®)による乾癬様薬疹の1例を経験した.症例は56歳の女性で,頻脈のためPPL(30〜90mg/日)の内服開始後1カ月で,全身,特に掌蹠.足背,膝蓋,肘頭,四肢伸側,肩甲等に瘙痒を伴う乾癬様皮疹が出現した.組織所見は軽度な乾癬様組織反応と湿疹様組織反応に一致.抗核抗体陽性(40×,homogenous).PPL遅延型皮内試験陰性.皮疹は,休薬により消褪し,再投薬により再燃した.本邦におけるβ-blockerによる薬疹の報告は極めて少なく,臨床的な特微は余り知られていない.その紹介を兼ねて若干の文献的考察を加えて報告した.

晩発性皮膚ポルフィリン症の1例—スルフォニールウレア系薬剤投与中に発症

著者: 大阪正視 ,   杉本直 ,   長等 ,   津田道夫

ページ範囲:P.939 - P.942

 晩発性皮膚ポルフィリン症の臨床像を呈する45歳の男子例について記述した.尿中ポルフィリン体のうち,ウロポルフィリンの著明な増加を見た.患者には飲酒歴がなく,発症前に糖尿病を指摘され,スルフォニールウレア系経口糖尿病薬にて治療をうけており,その治療中に発症した.発症後も同様の治療が続けられていたが,同薬剤を中止後も晩発性皮膚ポルフィリン症の皮膚症状は消褪することなく慢性に経過した.自験症例の発症の原因ないし誘因として同薬剤が関与した可能性があることを指摘した.

全身性エリテマトーデスに見られたAtrophie Blanche様皮疹

著者: 幸田衞 ,   稲垣安紀 ,   荒川雅美 ,   浦上更三 ,   植木宏明

ページ範囲:P.943 - P.946

 2例のSLEに生じたatrophie blanche様皮疹を組織,免疫病理学的に検討した.症例1は上背部と両上腕外側に,症例2は両膝部に米粒大から爪甲大までの辺縁不整,軽度陥凹した白色瘢痕状皮疹が多発し,周辺に色素沈着と網状の紅斑,毛細血管拡張を伴っていた.組織では真皮中層から脂肪織にかけてのnecrobiosis,ヒアリン化が主体で,大小の血管壁は著明に肥厚しヒアリン化していた.液状変性や真皮血管周囲性のリンパ球浸潤,cell debrisが軽度認められた.螢光抗体法では真皮,表皮境界部と血管壁に免疫グロブリンや補体が沈着していた.以上より免疫複合体が関与し,比較的緩徐に発症した持続性の血管炎によって生じた皮疹と考えた.

Cutis Marmorata Teleangiectatica Congenita

著者: 友野仁 ,   井階幸一 ,   森美喜夫

ページ範囲:P.947 - P.949

 生下時より全身に粗大な網目様,樹枝様の紫紅色の皮斑が存在したcutis marmo-rata teleangiectatica congenitaの女児例を報告した.躯幹を中心にして皮静脈の怒張が認められ,一部に小さな潰瘍も認められた.眼底にも血管の拡張がみられた.合併症として左足趾の形成不全が認められ,この疾患が,皮膚のみならず,全身の奇形を合併する可能性のある先天異常症であることが示唆された.成長,発育は正常であり,生後1年6カ月の時点で,皮疹はかなりの軽快を認めた.

Symmetrical Lividities of the Soles of the Feetの3例

著者: 吉岡晃 ,   米澤郁雄 ,   家城晃

ページ範囲:P.951 - P.954

要約 Symmetrical lividities of the soles of the feetの3例を報告した.症例1:17歳,女子高校生.テニスを始めてから両外足縁に多発性紅斑が生ずる.自覚症状なく,組織学的には軽度の表皮肥厚が見られたが,特記するほどの所見はなかった.症例2:19歳,女子学生.特に誘因なく内外両足縁に軽度隆起した紅斑が多発.軽度圧痛あり.組織学的には症例1と同様の所見であった.症例3:21歳,看護婦.サンダルをナース靴にかえてから両側足蹠に小紅斑が多発してくる.瘙痒感が認められる.3例とも掌蹠の多汗がある.以上の報告とともに,本症について若干の考察を加えた.

外用コルチコステロイド,感染,予防接種によりそれぞれ誘発された汎発性膿疱性乾癬の小児例

著者: 田中正明 ,   坂本ふみ子 ,   松崎照樹 ,   早川さゆり ,   松原三希子 ,   竹重量子 ,   佐藤良夫

ページ範囲:P.955 - P.959

 汎発性膿疱性乾癬の小児例を報告した.乳児期に難治性のおむつ皮膚炎様皮疹がみられ,2歳から7歳の現在まで,尋常性乾癬をもつこの男児は,全身症状を伴うZum-busch typeの膿疱化を3回経過した.発症の誘因はそれぞれ,コルチコステロイド外用,水痘罹患と溶連菌性慢性扁桃炎および日本脳炎予防接種であった.なお本例の父は尋常性乾癬に罹患している.コルチコステロイド外用剤の使用停止,抗生剤の投与,安静と対症療法により軽快した自験例の経験をもとに,小児の本症は成人例に比べ予後良好であること,また膿疱化の誘因として,コルチコステロイド剤のほかに種々のストレス,特に感染症に注目すべきことを指摘した.

Adult T cell Leukemiaに合併した続発性皮膚クリプトコックス症

著者: 芦澤かがり ,   中北隆 ,   河内康憲

ページ範囲:P.961 - P.964

 66歳,女性,鹿児島県出身.後腹膜結核性膿瘍術後抗結核剤投与中,白血球129,100と増加し全身倦怠感出現.諸検査によりadult T cell leukemia (ATL)と診断し,VEMP療法を開始するも,右腋窩リンパ節生検組織の病理像,墨汁法によりクリプトコックス症の合併を認める.顔面,四肢の軟属腫様丘疹に気づく.アンホテリシンB投与するも全身状態,肺所見悪化し死亡.剖検にて,ATLの浸潤およびCryptococcus neoformansの胞子が多数の臓器で認められた.続発性皮膚クリプトコックス症の統計的観察,特に基礎疾患について述べた.

Rudimentary Polydactyly

著者: 藤本篤夫 ,   玉田伸二 ,   重見文雄

ページ範囲:P.965 - P.967

 患者は6歳女児で,右拇指基部橈側に生じた小結節を訴えて来院した.同部には生下時小突起があり,それを切除してから2,3年後に生じたという.淡紅色,米粒大の小結節で圧痛など自覚症状はない.組織学的には多数のMeissner小体,神経線維束が認められた.また,酵素抗体法を用いたS−100蛋白の検索で,S−100蛋白強陽性所見がえられた.自験例は,既往に同部の小突起を切除したことがあり,本症を切断神経腫であるとする見解を容認する症例と考えた.

Myxomaの1例

著者: 石井晶子 ,   斎田俊明

ページ範囲:P.969 - P.971

 21歳女子の上腕に生じたmyxomaと思われる1例を報告した.半球状に隆起する弾性軟の皮内結節で,下床との癒着はなく,やや透明感のある黄紅色調を呈する.組織学的には,ヒアルロン酸を主体とする豊富な粘液様物質の中に,星芒状の細胞がほぼ均一に疎に存在し,レース状のパターンをなして細網線維が認められる,Myxomaと他のmyxoidtumorおよび限局性ムチン沈着症との異同について考察を加えた.

下肢熱傷瘢痕部に生じた両側性のVerrucous Carcinoma

著者: 麻生和雄 ,   佐藤紀嗣 ,   伊藤義彦

ページ範囲:P.973 - P.977

 Verrucous carcinomaは普通,口腔,外陰部,足蹠にみられることが多く,躯幹,四肢には稀である.著者らは45歳,女子の約20年前の両下肢屈側瘢痕部に生じた症例を経験し報告した.

表在性基底細胞上皮腫の2例

著者: 薄場秀 ,   馬場俊一 ,   鈴木啓之

ページ範囲:P.979 - P.983

 65歳男子と39歳女子の表在性基底細胞上皮腫(SBCE)を報告し,若干の考察および統計的観察を行った.その結果,第1例は熱傷が発症誘因になったと思われる例,第2例は比較的若年に発症した例である.光顕的に自験例2例とも,腫瘍周囲の間質には酸性ムコ多糖類の沈着が認められた.さらに第1例では,電顕的にもルテニウム赤処理を行い,同部位に酸性ムコ多糖類の沈着がシダ状に認められた.

Clear Cell Sarcoma of Tendon and Aponeurosisの1例

著者: 月永一郎 ,   熊切正信 ,   安田秀美 ,   国分一郎 ,   杉原平樹 ,   吉本正典

ページ範囲:P.985 - P.989

 Clear cell sarcoma of tendon and aponeurosisは軟部腫瘍の中で比較的稀な疾患であり,その組織発生論についても多くの論議がある.症例は51歳,主婦.昭和52年頃より出現してきた右手関節部の腫瘍を主訴に受診.受診時は胡桃大,下床,腱との癒着を認める.組織学的には胞体の明るい大きな細胞が島状あるいは小葉状に増殖する.腫瘍細胞は円形の核を持ち,核小体も1〜2個みられ,核分裂像も散見される.S−100蛋白を用いたPAP法では大部分の腫瘍細胞が陰性であった.電顕像では,明るい細胞と暗い細胞の2種類よりなり,粗面小胞体の発達はよく,細胞間は密に接着している.基底板ないしメラノソームもなかった.

脳内浸潤を来した菌状息肉症の1症例—腫瘤で発症し短期間のうちに脳内浸潤を来して死亡した菌状息肉症の1症例と文献的考察

著者: 園田早苗 ,   熊野公子 ,   玉置昭治

ページ範囲:P.991 - P.996

 腫瘤で発症し2年後に脳内浸潤を来した菌状息肉症の症例を報告した.47歳,男性,初診1カ月前に背部の腫瘤に気づき,1カ月で全身に腫瘤・結節・紅斑が拡大した.電子線照射療法・VEMP療法等の治療で皮疹の軽快をみたが,初診1年7カ月後に舌のもつれ・振頭・右半身運動麻痺を来し,開頭術2カ月後死亡した.剖検では胃・脾臓・左頭頂葉・右前頭葉・右大脳基底核・左海馬・左大脳基底核・小脳歯状核にmycosis cellの浸潤を確認した.菌状息肉症の脳内浸潤症例報告は数少ない.また電撃型症例報告も稀である.過去に報告された症例を集め文献的考察を試み,脳浸潤症例は経過が短く,浸潤臓器特異性をもつのではないかと考えた.

編集室だより

雑誌名の省略について

著者: 「臨床皮膚科」編集室

ページ範囲:P.989 - P.989

 最近,引用文献に掲載される雑誌名の略称は,1970年にAmerican National Standards Committeeから出された「International List of Periodical Title Word Abbreviations」による略し方が,国際標準として,一般化してきました.皮膚科領域に関係のある言葉の例を下記にあげました.御投稿の際には,これらを参考にして下さい.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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